いま、求められる木の建築・活動とはー沖縄の木の建築などー木の建築賞2023の審査結果(2024/5/8)

NPO木の建築フォラムが発行する雑誌「NPO木の建築58号」が出版され第18回木の建築賞の結果が掲載されています。また、ネット上に第18回木の建築賞の結果概要が公表されています。

私自身が審査委員を務める大切なイベント。

木の建築や木の利用に関わる活動を発表し、相互に評価するとともに、賞の選考過程をこれからの木の建築や活動のあるべき方向を探る議論の場とする。」がイベントの趣旨です。

木をつかった建築物の表彰は木材利用優良施設等コンクール(主催木材利用推進中央協議会)、ウッドデザイン賞(主催ウッドデザイン協会)など広がっていますが、これらは木材業界や林野庁などがどちらかちうと川上が主導するコンクールです。

これに対して木の建築賞は、NPO木の建築フォラム(「自然環境との共生を図りつつ、質の高い生活文化の再構築を目指」(設立趣意書)と、公益社団法人日本建築士会連合が共催する川下の問題意識が主導した建築賞です。

「木の建築」だけでなく、「木の活動」を評価しようというところも重要ですね。

発表の結果は以下のとおり。もう少し詳しい情報はNPO木の建築58号からどうぞ。

このページでは提案者のネット上の情報と、私が現地審査に行った沖縄のプロジェクトを中心に紹介します。

 
◆木の建築大賞
グランツたけた/長谷川祥久(有限会社香山建築研究所)
大分県竹田市は人口2万の山間の町だが、滝廉太郎荒城の月の構想を練ったところとして知られている。
毎年滝廉太郎記念とした声楽コンクールが行われているが、その会場を念頭に構成された竹田市の総合文化ホール_グランツたけた
「計画のすばらしさとともに、木造ならではの空間の創造や特性を生かしかたが 評価され大賞に。」
◆選考委員特別賞
屋久島町庁舎/武田光史(アルセッド建築研究所)
◆選考委員特別賞
鳥飼八幡宮 対拝殿/二宮隆史(一級建築士事務所二宮設計)
◆木の活動賞
本部町の新民家 新民家MAKER/漢那潤(株式会社ISSHO建築設計事務所

(藤原の講評から)
「本プロジェクトは、2016年以来、沖縄本島中南部で、沖縄の歴史的な木造住宅の構造構成をベースとした木造民家を、南九州産スギ材で構築しながら、将来の沖縄産木材での建築を視野に、敷地内の植林による補修材の提供システムなどの提案を行っている。
沖縄県では、戦後ほとんどの建築物がRC造となり、木造建築をになう大工、木材の供給の仕組みがなくなっている
ただし、歴史的にみると琉球王国時代から首里城の累次の火災修復や造船に必要な大径材を確保する森林管理制度の中で、庶民の民家材を供給するための集団的な蓄材システムや台風常襲地域に対応する集落・建築様式などが蓄積されてきた。このプロジェクトはこれら沖縄の歴史的な木造住宅の構造・構成を読み取り、魅力ある空間として再構成し、また敷地への植林・購入者のグループによる共有林管理などの提案をしている。
利用しやすい木造住宅・地域材の供給、地域に根付いた経済循環を育てるという、社会のサスティナビリティにまで踏み込む視座の高い取り組みである。
まだ、始まったばかりだが、マスコミの訴求・購入者のネットワークなどの実績があり、学術・行政などの連携が図られつつあり、今後の可能性が広がっている。」
 木の住宅賞(協賛:鹿児島県木造住宅推進協議会)
 佐賀葦葺き屋根の家と地域の資源/鈴山弘祐(ie工房弘祐)(参考)
◆木の建築賞(ムクファースト崇秀記念賞)
森と人の輪 立田山憩の森・お祭り広場公衆トイレ/坂本達典(株式会社山下設計)
◆木のチカラ建築賞・メンバーズチョイス賞
danken.HOLZ/鷹野敦(株式会社IFOO、鹿児島大学)
◆森のチカラ賞
立命館アジア太平洋大学 Green Commons/永井務(株式会社竹中工務店)
◆木の建築賞(木の住宅賞)
コトリワークス事務所/宮本繁雄(有限会社建築工房悠山想)(参考)
◆木の建築賞<2作品>
・コミュニティ・アパート 山城のあまはじや/伊良皆盛栄(株式会社琉球住樂)
サバニ(沖縄で古くから使われていた木造船)の材料である妖肥杉を主な構造材とし、独立柱や造作材にはチャーギ(イヌマキ)を用い、外壁には建主が焼いた焼杉板、内壁には琉球石灰岩を含む漆喰が用いられ、木と漆喰に包まれる空間が生まれている。
建築用材の自給が難しく、米国施政時代以降、台風に強いRC造、CB造が推奨され、住宅の木造化率も木造志向も低い状態が続いてきた環境下にあって、地域の素材を取り入れ、台風にもシロアリにも強く、NEHの省エネ性も備えた木造の新たな集住空間を実現した取り組みは評価に値する。(今井さんの講評から)

・コチンダホテル/下地洋平(クロトン設計)

これ以上は雑誌「NPO木の建築58号」をご覧ください

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