目次
日本のエネルギーの行方
木質バイオマス発電への期待
スウェーデンのバイオマスエネルギーの秘密
林野庁「国有林のエネルギー資源利用検討会」
我が国のバイオマスエネルギーのポテンシャル
住宅の近山度を表すウッドマイルズの提案
木材関連製品ののライフサイクルエネルギー参考資料集
循環社会と輸入木材の輸送過程消費エネルギーーー地域材利用促進の一側面ーーー
エコマテリアルとしての木材、国産材
エコマテリアルとしての木材の需要形態で、日本と欧米の違いの一つは、燃料としての消費量差です。一次エネルギー消費い占めるバイオエネルギー(現在のところこのほとんどが木材)の比率は日本の場合統計に現れないほど微少ですが、例えばスウェーデンの場合、19%がバイオマスエネルギーといわれています。我が国の循環社会へのカギであるバイオマスエネルギーについての資料を掲載します。また、地球上のエネルギーがどうなるか、にも焦点を当てます。
「環境経済・政策学会2001年大会から」の話題から(1)日本のエネルギーの行方
9月29日30日と二日間にわたり京都国際会館で開催された、環境経済・政策学会2001年大会に出席してきました。
エネルギー・資源と環境という分科会で、エネルギー戦略会議報告「シナリオプランニング手法による日本のエネルギー戦略:2030年に向けての政策提言」という報告がありました(発表者電力中央研究所鈴木達治郎上席研究員)。現時点で3つの全く構造が違ったそれぞれありそうなシナリオをエネルギー政策の専門家が議論した結果です。@国家主導、Aビッグバン、B環境共同体の三つのシナリオがフレキシブルに描かれています。(関心ある方は構想日本というプロジェクトのホームページで詳しく説明しています。同サイトからダウンロードした三つのシナリオの全体図を転載します。)
報告者が3つのうちのどれを取るか、直接言及されませんが、政策提言の第一に「ガバナンス改革」第二に「エネルギー市場の自由化」を持ってきており、第一のシナリオを棄却し、第二のシナリオに近い第三のシナリオとの中間ということのようです(上記図の青い線)。小ホームページにとって魅力的な第三のシナリオ(発表では「環境共同体シナリオですが、プレゼンテーションの場に応じて、「環境ユートピアシナリオ」・「風の谷のナウシカシナリオ」となったりしています。)、エネルギー需要を抑え原子力・化石燃料の消費を抑制的してゆくものです。このグループの作業ののかで第三のシナリオについて否定的な記述は、「環境規制による慢性的な電力不足」と「GNP成長率の中長期的低下」(プレゼンテーション資料)ということのようですが、循環社会への転換のため、むしろポジティブな要素ということができるのではないかと思います。それが、現時点で第一のプライオリティとなっていないのは、このグループでエネルギーの量的制約についての問題意識が希薄なことだとおもいます。このことは小生もフロアから質問し結構話題となりました。「化石燃料はなくなるのは間違えないが、人間が死ぬことがわかっていてそのことをばかり考えてることが、ポジティブな姿勢か?生命保険をかけておくことが重要」という発表者の発言が印象的でした。いろいろ、議論が発展しそうな名言だと思いました。関連してそもそも地下資源は化石資源ではないのだという議論もあるようです。(→地球深層ガス)。「地下に無限に眠るガスを21世紀の人間が解き放す」ちょっと恐ろしいですね。
問題が拡散してゆきますが、エネルギーの制約に関するホームページ岐阜大学の若井研究室のホームページ紹介します。
書籍紹介 木質バイオマス発電への期待(2000/6/26)
本HP重要テーマであるで来るべき循環社会の見通しなどに関する資料(スライドショウ 「来るべき循環社会と日本の森林林業の将来」など)の中の将来のエネルギー供給とバイオマスエネルギーの見通しなど、重要な部分は、筑波大学名誉教授熊崎実先生が作成された資料によっています。先生は自然エネルギー促進議員連盟の勉強会の講師をされるなど、我が国のバイオエネルギー問題の第一人者で、活発に論陣を張っていらっしゃいます。引用されている資料の原典や最近の資料などについてご教示いただくべく連絡を取っている中で、最近出版された書籍を紹介いただきました。
「木質バイオマス発電への期待」熊崎実著(全国林業改良普及協会)です。
目次は
序章 バイオエネルギー紆余曲折
第一章 持続可能な社会に向けて
第二章 化石燃料と生物燃料
第三章 進歩するエネルギー変換技術
第四章 多様な木質バイオマス
第五章 林業再建とバイオマスエネルギー利用
第六章 温暖化防止とバイオマスエネルギー
終章 短いエピローグ
となっています。
新書版で手頃なボリュームであり大変読みやすい本です。もちろん「循環社会のなかでのバイオマスエネルギーの位置づけ」といった骨になる部分についての指摘(1,2章)を改めてかみしめたところですが、小生としては3ー5章の、石炭と比較した木質燃料の類似性と優位な点の指摘、技術的特色を生かした実現可能な発電プラントの規模と立地、など、具体的な実現プロセスにふれた部分が大変勉強になりました。また、一般向けの入門書にもかかわらず、引用された文献の詳しいリストがついているので研究者の方にも参考になると思います。自然エネルギーやバイオエネルギーに関心のある方に是非一読をおすすめします。
一般の書店にはおいてありません。直接発行元に注文するのがよいようです。
社団法人 全国林業改良普及協会
107-0052 東京都港区赤坂1-9-13三会堂ビル7F
電話 03-3583-8461 FAX 03-3583-8465
スウェーデンのバイオエネルギーの秘密
化石燃料に替わるバイオエネルギーが注目されており、スウェーデンでは一次エネルギーの19%をバイオマスでまかなっています。炭素税の導入を含め70年代以来の政策的努力の結果です。来日した同国のバイオエネルギー協会会長で、EUバイオエネルギー協会会長でもあるケント・二ストロームさんのインタビュー記事を生活クラブ生協「生活と自治」誌から編集部の許可を得て転載します。
林野庁「国有林のエネルギー資源利用検討会」
森林に関するバイオマスエネルギーについては、林野庁の「国有林のエネルギー資源利用検討会」が作成した報告書が大変まとまっていて参考になります(報告書要旨、目次、若干の余部があるようです必要な方はこちらへメールを下さい、本文ダウンロード28mb工事中)。
我が国のバイオマスエネルギーのポテンシャル
その中に一部掲載されていますが、日本中のバイオマスエネルギーのポテンシャルがどれだけあるか、という興味深い報告が最近いくつか公表されています。下表のとおりで、二つの報告に少し差があるようですが前者はポテンシャルそのままの、後者は技術的な制約を勘案と数字の性格が違うようです。日本の化石燃料によるエネルギー消費量の中でのオーダーを見ると約2%から約4%といったところのようです。山側には結構増やせる余地があると見ました。
原田寿郎
*南英治・坂史朗** 山から ササタケ 万トン 330 <941 里山広葉樹 万トン 900 270−320 間伐 万トン 500 197 林地残材 万トン 300 50 街から 工場廃材 万トン 40 216 建築廃材 万トン 800 206 古紙 万トン 1400 <280 合計 万トン 4270 <2210 石油換算 万トン 1800 930 備考 農林水産技術研究ジャーナル
2000/6
*森林総合研究所第51回木材学会大会
**京都大学
住宅の近山度を表すウッドマイルズの提案new
(2002/12/11)
12月7日の緑の列島ネットワークの総会で、小生は、「住宅の近山度を表すウッドマイルズの提案」という報告をしました。小サイトでも紹介した小論「『ウッドマイルズ』(木材総輸送距離)と地域材利用住宅」(木材情報2002年8月号)を説明しながら、これに基づく活動モデルの私案を紹介しました。(詳細)
ウッドマイルズと地域材利用住宅(2002/8.11)
イギリスの消費者運動家ティムラングが食糧の総輸送距離Food Milesを指標として食料品の輸送距離を少なくする運動を進めていおり、それが農林水産政策研究所の篠原所長によって紹介され、我が国においても消費者運動の中で定着しつつあります。篠原所長からの示唆もあり、木材総輸送距離ウッドマイルズという物差しを使って木材貿易や住宅建築について考えてみました。
その結果を(財)日本木材情報センターが発刊する「木材情報」に表記の題目で寄稿しました。要旨を掲載します。(こちら)
ウッドマイルズを使うと、日本の木材貿易の際だった特徴がわかります。また、近くの山の木で家をつくる運動や地域材・県産材住宅の運動などを進めるときの分かりやすい指標になるのではないかと思います。
ご関心のある方は本文をご覧下さい→申込書
木材関連製品ののライフサイクルエネルギー参考資料集
木材の生産流通消費に関してエネルギー省エネルギーであるということについて色々な場所で議論されていますがデータの出所を整理しておきます。関連する情報があればお寄せ下さい。
1 地球温暖化防止行動としての木材利用の促進
中村資料・大熊幹章
木材工業Vo;.46,No.3,1991
製造時の消費エネルギーを単位体積当たり比較すると人工乾燥木材に対してlぴざおが約200倍、アルミニュームが約800倍というデータがさまざまな木材利用推進資料に引用されていますが、その出所となる古典的な資料です。その他にこの資料にはそれぞれの生産のための炭素放出量や、同じ機能をもつ横架材やサッシの木材と鋼材・アルミ材製造する場合のエネルギーや炭素放出量などのデータも掲載されている。ニュージーランドのBuchanan教授の報告をベースにして製造時の直接エネルギー(製造装置の製造などに係る間接エネルギーは除外)を計算している。
2 木質系資材等地球環境影響調査報告書
同調査委員会 財団法人日本木材総合情報センター 1995年
木造・鉄筋コンクリート。鉄骨の3つの構造の住宅について、建築・居住・解体時に係る炭素放出量を比較
3 家庭生活のライフサイクルエネルギー
社団法人 資源協会編 1994年
構造別住宅のライフサイクルエネルギー
4 建物のLCA指針案
財団法人日本建築学会 1999年
森林・林業白書の引用文献(2002/5/11)
基本法が改正されて初めての森林林業白書(平成13年度)の概要が林野庁のサイトに掲載されていますが、「第四章木材の供給と利用の確保」に「人と環境に優しい木材利用の推進」という項があり、小論の一部が「主な外材輸入消費エネルギー」として引用されています(該当部分)。関心のある方は本サイト内の関係ページを参照してください→循環社会と輸入木材の輸送過程消費エネルギーーー地域材利用促進の一側面ーーー。また、ご要望により掲載論文のコピーを配布します(こちらへ)。
循環社会と輸入木材の輸送過程消費エネルギーーー地域材利用促進の一側面ーーー
社団法人日本木材加工技術協会発行の月刊誌木材工業6月号に表記の小論が掲載されました。2月6日のエコマテリアルとしての木材、国産材ライフサイクルアセスメントと木材への導入で述べたように、木材の製造過程の消費エネルギーに比べて輸入材の輸送過程で消費されるエネルギー量が随分大きいのでないかという問題意識を深めてゆくこととしていました。大手の商社木材関係者のご協力も得て、資料を整理し、具体的な試算をし小論にまとめてみたものです。この間、九州大学大熊幹章先生、國學院大學古沢広祐先生、三井共同建設コンサルタント(株)泉浩二さんにはコメントをいただき、元ニチメン木材部長小林さんには実態に基づく輸入の経路などにつき詳しい情報を提供していただきました。結果はもちろん産地によって違いますが、例えば、今、市場を席巻している欧州材のホワイトウッドは、製造過程の数倍のエネルギーと費やして輸入されていることが明らかになりました。
小論結語の部分でふれましたが、他方で、現実に我々の前で展開されているのは、1m3当たり200リットルの原油を消費し地球を半周して輸入される製品が、さらに国内でエネルギーを消費して集成材に加工された上で市場に出荷され、安い価格と安定した品質を武器に市場を席巻しつつあるという実態です。再生不可能なことが誰の目にも明白な化石燃料の、国際的な市場の中での価格水準が、大きな問題をはらんでいることを示していると思います。再生可能な資材と再生不可能な資材の価格を、どのように設定し消費者を誘導するかは、循環社会を実現する上で国際社会が解決すべき中心課題です。炭素税はそのホンの入り口にすぎません。今後、議論を深めてゆくことが重要だと思います。
小論の概要を掲載します。
エコマテリアルとしての木材、国産材
ライフサイクルアセスメントと木材への導入
三重県からの要請で行った「地球環境と熊野地域の林業」という報告を準備の過程で、色々資料をあさっていて、エコマテリアルとしての木材、そして輸入材の輸送エネルギーについて考えさせられました。ご案内のように、木材の製造過程で消費されるエネルギーは鉄やアルミニュームなど製造過程で高熱処理しなければならない殆どの競合材に比べて圧倒的に少ないとが知られています。具体的データとしては、九州大学の大熊幹章教授が作成された 鉄266000メガジュール/M3、アルミニューム1100000MJ/M3、コンクリート4800MJ/M3、に比べ人工乾燥木材は1390MJ/M3、天然乾燥木材750MJ/M3が公表され、木材利用促進の資料などに引用されているところです。ところで、最近同じ献立を輸入食材で作った場合と国産食材で作った場合の輸送エネルギーの比較表というのを目にしました。日科技連出版社で最近出版された「地球の限界」という本です。森林分野は熊崎先生がお書きになっているのですが、「地球はどれだけの人間を養えるか」というタイトルの食糧分野の章は國學院大學の古沢教授他が執筆されています。その中に、
食材産地と輸送エネルギー(kcal)
メニュー 海外産 国内産 ごはん(52g) 米国 東北 焼き鳥(120g) タイ 東北 野菜付け合わせ(33g) 韓国、メキシコ、米国 関東 くだもの(80g) 米国 東北 輸送エネルギー合計 691.0 86.5
と言うのがあります。
古沢先生に連絡をとってデータの出所などを教えていただきましたが、輸送距離は理科年表による東京都各国の首都の距離、輸送エネルギーの計算は日本エネルギー経済研究所の推計による輸送エネルギー消費原単位(エネルギー経済統計要覧に掲載)だそうです。
それでは、輸入木材の場合はどの程度になるのか、大熊先生にもご相談して試算して見ましたが、ざっと5000MJ程度となるようです。製造エネルギーが1300MJ程度に対してその3−4倍のエネルギーを輸送過程で消費すると言う結果です。もう少しデータの整備をして、また、ライフサイクルアセスメントという大きな概念の中での位置付けをしっかり行って、この問題を少しフォローしてゆきたいと思います。すこし、手が広がりすぎかもしれませんが、今後、第四の部屋の中で「ライフサイクルアセスメントと木材」といったセクションを作ってゆきたいと思います。そんな分野の研究結果や参考書があれば教えていただけますか。
なお、ライフサイクルアセスメントについては、化学工業日報社ライフサイクルアセスメントの実践、社団法人資源協会「家庭生活のライフサイクルエネルギー」というおもしろそうな本がでていますので、紹介します。
2000/2/6
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