プランBと森林資源の価格 (2004/6/13) |
地球白書のワールドウォッチ研究所を率いるレスターブラウンの講演が6月の上旬に数カ所でありましたが、その中の一つ、シンポジウム「自然エネルギー拡大の政策と税制」に出席しました。 「プランB」という近著に関するレスターの講演があり、引き続き京都大学経済研究所佐和教授他のコメントという進行でした。 農業経済学者らしく、世界の穀倉地帯の生産環境が急激に悪化し、中国が食糧輸入国になり国際市場にインパクトを与える兆候がある、という現在の大量消費社会(プランA)の行き着く先についての警告が導入部になっています。 それに対置するプランBは、おおざっぱに言うと、@水対策や土壌保全を柱とした農業生産環境の保全と食糧生産の増加、A風力発電を中心とした化石エネルギー代替措置による炭素排出量の半減、B途上地域の教育など社会基盤の強化による人口抑制策などの各論と、C化石資源などの生産排出による社会コスト・環境コストを反映した資源価格の再構成とそのための環境税の導入、という要素からなっています。 各論では森林については特にふれていないのですが(注1)、彼の主張の一番のポイントとなっている「環境的コストを反映する市場を構築する」という節(p313-320)では、資源の価格が適切に社会コストを反映していないという主張を裏付けるものとして、ガソリンなどの化石資源の価格とともに、木材の価格が森林価値を反映していないということが強調されます。 中国の長江の水害により中国政府が森林伐採禁止へ政策転換をする際に、中国政府が洪水を防止する機能の経済的価値と木材の価格の計量比較をして前者は後者の3倍であるという説明をしたという、経緯にふれています。p318 資源の価値をどう見るかという点が問題になりますが、そんな文脈で、我が国のような島国ではあまあり意識がされませんが、森林が大陸内部への水循環に役割を果たしていている役割が取り上げられています。アマゾンでは森林の状態であると、降水の3/4が流出せずに蒸散してさらに内陸への運ばれ降水をもたらすという循環になるが、森林が牧草になると比が逆転し乾燥に向かうという、興味深い20年前のサイエンスの記事も紹介されています。p319 この節の最後で、化石資源の価格や木材の価格に対して社会コストを反映させる、という課題がいかに重要か、石油会社エクソンの元ノルウェー副社長、オイスタン・ダーレン(
Oystein Dahle, former Vice President of Exxon for Norwayand the North Sea)の指摘を引用しています。 As, has pointed out: “Socialism collapsed because it did
not allow the market to tell the economic truth. Capitalism may collapse
because it does not allow the market to tell the ecological truth." 注
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