美しい木組みの家ー古民家になる家と森林との関係(2021/11/23)

建築設計事務所主宰、ワークショップ木組みの代表をされている、松井郁夫さん(ウッドマイルズフォーラム会員)から、美しい木組みの家「いつか古民家になる」という題の近著をいただきました。

木にこだわる建築関係者が今後の森林ガバナンスの一つのカギを握るはず、と気になっていた私としては(★2 次世代に向けた山づくりのリスクへの対応、再造林に関するガバナンス ☆意見2−2 消費者と連携したガバナンスの確立)、木の建築賞審査過程などで、本当に木にこだわっておられる松井さんの著作はしっかり勉強しよう!!!

ご紹介します。

(作品集でなく仕事集)

「美しい木組みの家」とい主タイトルにあるように、いままでの建築例を写真で見せるのですから、こんな中に住んでみないなー、左の表紙にもある美しさを訴求するすばらしい建築事例の写真集。

それも特別の家でなく、一般の人が手の届く!!、木組みの家、だれが建てたんだろうなーとなるんですが・・・

もっとすごいのは、建築プロセスが詳しく紹介されていることです。

「「作品集」とは呼ばずに、あえて「仕事集」と呼ぶことにします。なぜならば「家づくり」は、設計者と山や職人たちの「つくり手」が「住まい手」に家を提供するために、協働した「仕事」の成果だと考えるからです。」

(ワークショップ「き」組)

そのシステムを支えるのが、各地の工務店と、山の木材事業者(天然乾燥を実施している全国でも貴重な方々)などを集めた、ワークショップ「き」組みという組織です。

ワークショップ「き」組は、「一般的なサラリーマンでも手の届く価格で本格的な木の家を提供したい、という気持ちで始めた住生活向上運動」!

山に育つ樹木の「き」/職人の心意気の「き」/伝統的な木組みの「き」/きれいな空気の「き」

少し時間はかかるけど、山の木を自然乾燥させ、(人工乾燥では中心に割列があるので、骨組みの細かい加工(平刻みのほぞやさお)をすると折れる)金物を使わない職人の技の木組み、それでできた骨組み(架構)に支えられて「いつか古民家になる」庶民の家!

(直接山から木を買うわけ)

左の図は「直接山から木を買うわけ」と題するコラムからもってきたものです。

原木データは「一本の木がどこの山で育てて伐ったのか、生まれも育ちもわかる木の「トレーサピリティ」という仕組みを作って、一軒の家のすぺての木の「履歴」を表示しています。」

山を守る木の値段は「植林費用から逆算して一本の木の値段を決めて、山主に払っています。一般に流通している木材より割高ですが、その代わりに直接山に行って買付をしているので、流通のマージンをカットできます。番付を打った図面を持って山の製材所に行くので、木は選り取り見取りで良い木が買えます」

そんな素晴らしいことが、どうやってできるんだろう?勉強しよう!

と思って、ワークショップのメンバーである木材供給元天竜T.S.ドライシステム協同組合(以下天竜TS)森下代表理事に電話をかけて聞いてみました。

原木データは、月齢伐採をおこなっているので一本一本の原木を伐採する日がわかる、葉枯らし乾燥をしているので原木の搬出日がわかる、天然乾燥を行っているので製材日がわかってるなどのデータが、製材の木口にはあってあるんだそうです(天竜TSのサイトの動画にもあります

そして上の図に書いてある値段。「植栽育林の値段をもとに山林所有者に払う値段に、伐採搬出輸送製材の経費を載せて、製材販売価格109千/m3を認めてもらいました」ということで、この価格表は天竜TSと打合せの上、松井さんが作成した図です。

究極のトレーサビリティですね。

ただ、この絵と実際が違うのは、「植林と育林経費が計算されてますが、皆伐新植は経費が無理なので、すべて間伐です!」

なんだそうです。日本の木材産地として有名な天竜で、皆伐して次世代森林をつくることはできないの?それとも、皆伐しない方針なの?この辺は今度天竜にいっていろいろ勉強していきます。

ーーーー

ご関心のある方は、どうぞ美しい木組みの家「いつか古民家になる」。

junkan1-28<kiguminoie>

■いいねボタン