20世紀の最後の年に、グリーン購入法や循環型社会形成推進基本法などが成立し大量消費社会から決別する、大きな流れを感じます。ただ、心配なのは、循環型社会形成基本法の循環型社会の定義にみるように、循環型社会が資源のリサイクル問題に矮小化されている点です。
現在取り組まれているリサイクルについて、鋭い批判が芝浦工業大学武田武彦教授(「リサイクル幻想」(文春文庫)2000年)によってなされています。ペットボトルを再生すると石油から作るのの4倍の資源がいる、という指摘です。小生も名古屋市民としてわが国で最先端をゆく分別収集に取り組んでいますが、それ自体は市民社会が成熟してゆく過程としてあまり悪口は言いたくはありません。
しかし、グリーン購入法の基本計画の議論のように、「どの資材が化石燃料を節約できるか」という、最も重要な点になると、「話が大きくなりすぎて議論が収束せず、法律の施行自体ができなるから、とりあえず、リサイクルからやりましょう」(環境庁担当者の意見)、という政策当事者の問題意識では、本当の意味での循環社会に挑戦する気構えがあるのか疑問になります。
現在の循環型社会論に重要な視点が欠けているということを示してくれる本でした。(その他、化石資源を遺産型資源、森林のような太陽エネルギーによって補填される資源を月給型資源とネーミングしているところなど面白いところです。)
大きな意味での循環社会論を見通す意味で、少し古い本ですが「限界を超えて」(Beyond the Limits(メドウズ他、ダイヤモンド社)を読んでみました(京都大学内藤教授の推薦によるもの)。
現在の大量消費社会に対する警鐘の先駆けとなったローマクラブの「成長の限界」の著者のグループが20年後の92年に出した本です。(結構話題となって本ですから、たくさんの関連サイトがありますが、広がりのある面白いサイトを紹介します。)
この本の中で、持続可能社会の条件として、@再生可能な資源の消費ペースはその生成ペースを上回らないこと、A再生不能な資源の消費ペースはそれに変わりうる持続可能な再生可能資源が開発されるペースを上回ってはならないこと、B汚染の排出量は、環境の吸収能力を上回ってはならないこと、の三つを上げています。
@は92年の地球サミット以降盛んに議論されていている持続可能な森林経営の中心的な概念で解りやすい課題です。また、Bは、木材を生産する際の環境へのインパクトを汚染の排出量とすれば、その吸収の範囲内での循環という、持続可能な森林生態系の管理の基本と関係する問題です。
これも、持続可能な森林経営の重要な側面です。さて、問題のAですが、こう書かれると誰も否定しようがないが、誰もがこのように立論するのを躊躇するほど難問です。私たち自身のライフスタイルの変更や、本書が指摘するように現在の社会経済システムの構造変革なしには達成できない問題なのかもしれません。
上記のリサイクル関連法などが避けている問題点です。ただし、小サイトでもとり上げている、木材のライフサイクルエネルギー、バイオマスエネルギーなどの問題などは、「再生不能資源に代わりうる持続可能な再生資源の開発」に関係する、この課題の一部を担うテーマであることは間違えないと思います。