自然に基づく解決策NbSの拡がりと森林の役割(2020/11/15)

最近、Nature based Solution「自然に基づく解決(策)」という言葉をよく聞くようになりました。

国際自然保護協会(IUCN)が提唱し、EUが最近使い始めたいようです。(林業経済研究所のシンポ「勉強部屋で先月紹介した「シンポジウムグローバル森林新時代」森田香菜子さんの報告)(左の図)

日本語でのネット上の解説は「自然資本を活用した防災減災ーIUCN ジャパン(古田尚也氏)が分かり易くいです。

解決策というので、何を解決するのか?というと。最近2016年IUCNが公表したNbSも定義は「社会的課題に効果的に順応して対処し、人間の幸福と生物多様性便益をもたらす、自然あるいは改変された生態系の保護、持続的な管理、回復」だそうで、つまり、社会的課題の解決策。

森林関係の人が長年主張してきた、森林の多面的機能(林野庁)(生物多様性保全機能、地球環境保全機能、土砂災害防止機能、土壌保全機能、水源涵養機能、快適環境形成機能、保健・レクリエーション機能、文化機能、物質生産機能)

「自然或いは改変された生態系」が我が国の陸地の場合殆どが「森林」を表すことばでしょうから(都市公園や農地も含むかな?)、その取扱が社会課題の解決に役立つ、ということは、林業の社会的な重要性を表すコンセプトですね。

いよいよ、森林の重要性の認識が拡がり、社会や経済で主流化する道筋が見えてきたと言うことかも知れません。ということで、このコンセプトを確り追いかけていこうと思います。

とりあえず、IUCNが公表したIUCN Global Standard for Nature-based Solutionsが大切な文書。

IUCNが作成したガイドラインのバックグラウンドの情報を翻訳してみます。

20世紀のほとんどの間、意思決定者は自然保護を国内および世界の課題の周辺事案として扱ってきました。せいぜい、それは価値のある関心であり、最悪の場合、開発の障害と見なされていました。しかし、科学的コンセンサスの高まりは、そのような見解が間違えであり、「自然は人間の存在と質の高い生活に不可欠である」ことを示しています6。

この事実を認識しないと、生物多様性の損失に大きく寄与する経済成長のモデルがもたらされるだけでなく、気候変動、食料安全保障、災害リスクの軽減などの主要な社会的課題の解決を支援する自然を効果的に展開する機会も逃します。

自然資本の持続可能な展開、つまり地質、土壌、空気、水、すべての生物を含む世界の自然資産のストックは、国連の持続可能な開発目標を達成する上で重要な役割を果たしています。 IUCNは何十年にもわたって革新的な保全イニシアチブを実施し、同時に環境の保護、管理、復元を支援すると同時に、人々に具体的で持続可能な利益をもたらしてきました。
このタイプのアプローチは現在、Nature-based Solutionsとして広く知られています(図1上の図です)。

流域保護などのNature-based Solutions(NbS)は、地域社会に収入をもたらすだけでなく、健康と福祉のためにこれらの資源に依存している自治体に利益をもたらすことができることが明らかになっています。荒廃した土地や海岸線の修復への投資から、ダムや堤防などの従来のインフラストラクチャのパフォーマンスの最適化まで、自然が私たちの社会的ニーズを満たす上で重要な役割を果たしていることを示す多数の証拠があります。 
IUCNは、自然保護を主要な経済部門に主流化することが不可欠であると考えています。政府と企業は、NbSが有用なツールであるだけでなく、生物多様性の損失と気候変動に関する二重の世界的危機に対処するために不可欠であることをますます認識しています。
研究によると、NbSは、温暖化を2°C未満に安定させるために2030年までに必要な費用効果の高い緩和策の約30%を提供できる可能性があります。また、生物多様性への最大の脅威である気候変動の影響と長期的な危険に対する強力な防御を提供することもできます。従来の工学的ソリューションだけに頼るのではなく、生態系を扱う方法を見つけることは、コミュニティが気候変動の影響に適応するのに役立ちます。自然を緑豊かな都市に利用することは、大幅なエネルギー節約と健康上の利益にもつながります。
多くの国がすでに国の気候戦略にNbSを含めるための行動を取っています。そのため、これらの行動が利用可能な最善の基準と慣行に基づいて開発および実施されるようにすることが重要です。この取り込みを導くために、IUCNは2016年にNbSの最初のグローバル定義を作成しました。すなわち「自然または改変された生態系を保護、持続的に使用、管理、復元するための行動であり、社会的課題に対して、人類の福祉と生物多様性の恩恵を供与しながら、効果的かつ順応的に対処すること」。
NbSの基本は、森林景観の回復、統合された水資源管理、生態系に基づく適応と緩和、生態系に基づく災害リスクの軽減などの確立された慣行に由来します。これらのいくつかは、1990年代後半から2000年代初頭にかけてIUCNによって最初に開発され、推進されました。それ以来、政府、企業、学界、非政府団体はその価値を示し続けてきました。

今日、NbSは、持続可能な開発を達成するための不可欠なメカニズムとして、幅広い利害関係者から認識されてています。自然に基づく解決策に関するIUCNグローバルスタンダードは、このアプローチの適用が信頼できるものであり、その貢献が他の人々に刺激を与えることができるように、順応的管理のためにその取り込みを追跡および測定することを目的としています。この作業を進めるには、科学的厳密さ、学術研究、優れたガバナンス、そして何よりも、標準の主流化を支援し、そうすることによって、主要な保全および開発ツールとして進化するのを支援するさまざまな当事者の意欲が必要になります。。

IUCNという自然保護団体がリードしてきたコンセプトなので、循環可能な木材の利用の炭素固定する効果など物質生産機能の環境的側面などが十分に評価されにくいという面もあるかと思います。どんな方向にこのコンセプトが育っていくのか、フォローしていきたいと思います。


junkan6-11<NbSstandardIUCN>
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