欧州の過ちから学ぶ森林バイオマスエネルギー−海外における木質バイオマスエネルギー推進についての最近の論調より(2019/2/24)

1月30日バイオマス産業社会ネットワークBINの研究会「海外における木質バイオマスエネルギー推進についての最近の論調、産官学が直面する新たな課題」でが開催されました。

講演者は 藤原敬(一般財団法人林業経済研究所フェロー研究員)、マイケル・ノートン教授(ヨーロッパアカデミー科学諮問委員会環境ディレクター ) の二人

私(藤原敬)の話の内容は勉強部屋で紹介した、森林を畑にしてバイオマスを地中化するBECCSの功罪ーNature Comunications掲載論文(2018/8/18)というページをごらんになった主催者からの要請に応えたもので、次ページに別途紹介しますが、ここでご紹介するのは、よりインパクトのあるマイケル・ノートン氏の報告です。

(Forest biomass for energy- learning from Europe’s mistakes 欧州の過ちから学ぶ森林バイオマスエネルギー)

ノートン教授の報告のタイトルです(刺激的)

大変印象深かったのは、森林を木質バイオマスエネルギーに使った場合の得失をしめす左の図です。

森林の立木に含まれる炭素が赤で示されていて半分伐採してその後に成長することが示されていまるのがわかりやすいですが、その上にのっている緑の部分。

収穫された木材が燃焼されて、化石資源を代替して化石資源の炭素放出を節約した部分がみどり色です(もえずに資源のまま残っているので森林のエネルギー利用の貢献分として赤と緑が積み重なる)。

(バイオマスエネルギーはカーボンニュートラル?)

ポイントはバイオますエネルギーは化石資源ほどエネルギー効率性が高くないので、一部しか代替できず、差分は紫色の余分は炭素排出部分となります。

こうして、木材をエネルギーに使う場合、しばらくの間、化石資源を使うより排出量が多くなる。その時間は森林の条件によるが、場合によっては何世紀もかかるのだそうです。

バイオマスエネルギーはライフサイクルの中で吸収と排出が釣り合うので空気中の二酸化炭素を増やさないから、カーボンニュートラルでその排出量は無視して良いという議論がありますが、時間を分析の中にいれないと・・・。

現在のように一刻もはやく排出量をへらさなかければ1.5度はおおろか2.0度の危ないという時期に、この問題をしっかり管理していかなければならない、というのがこの報告の主張です(と理解しました)。

EUでもまたその最先端をいっていた、英国でもカーボンニュートラルだといってバイオマスエネルギー推進を進めてきたが、これがつづくと、排出量がかえって増える。

最近英国では,バイオマス燃料を助成するのは供給過程のエネルギー排出量を厳しくして、北米からのペレットなどは助成されなくなったそうです。

(参考資料)

BIN研究会のページに、ノートン教授資料がダウンロードできますので、 是非どうぞ。

会場で紹介されましたが、元になった論文がネット上でダウンロードできます。

Science Advisory Council, European Academies "Multi-functionality and Sustainability in the European Union's Forests"

同上 "Negative emission technologies: What role in meeting Paris Agreement targets?"

energy1-31 <BINnorton>.

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