2030年に向けた新EU森林戦略ー森林林業基本計画とどう違う?(2021/8/15) | |||||||||||
日本の森林林業基本計画、Zoom会議などで視てきましたが、林政審議会土屋会長が指摘されていたように、グローバルな視点から日本の森林政策を評価してみよう、おもっていると、ちょうど、「EUの新たな森林戦略」が7月14日に公開されました。 New EU forest strategy for 2030 日本の計画とどのような違いがあるかな? 特に前から気になっていた、木材利用がカーボンニュートラルなかで、どんな書きぶりになっているか、勉強してみました。 とりあえず原文の日本語仮訳を作成してみました 構成は以下のとおり。
8つのセッションの分かれていますが、具体的な施策内容が記載してあるのが、2と3。 木材利用の話は2の社会経済的側面についてのセッション。3は山づくりに関する記述です。その他のセッションは計画を進めるフレームワークが記述されています。 ((EU森林戦略の木材利用戦略)) 2.1が建築材料(長寿命)、2.2がエネルギー(短寿命)といった二つのストーリーが記載されています。順番に紹介 (建築材料としての木材利用の促進) 「2. 繁栄する農村地域のための森林の社会経済的機能を支援し、持続可能性の境界内で森林ベースの生物経済を後押しする」というタイトルの、2の総論が書いてあるセッションの、木材利用については、以下の通りです。 持続可能な方法で生産され、長寿命の木材ベースの製品は、炭素を貯蔵し、化石ベースの材料に置き換えることで、特に生物学的プロセスを通じて行われる炭素除去に炭素を追加することで、気候の中立性を実現するのに役立つ。収穫時または自然枯死時、火事、エネルギーの燃焼、焼却、または自然の腐敗過程による時間の経過、樹木は炭素を大気中に放出する。木質バイオマスをライフサイクルの長い木質材料や製品に変換する場合、炭素除去期間を大幅に延長することとなる。(4ページ) そして、「2.1。長寿命の木材製品のための持続可能な森林生物経済の促進」という本文のセッションの中に以下のような記述があります 木製品の最も重要な役割は、建設部門を温室効果ガスの排出源から炭素吸収源に変える手助けをすることである。これらは、かなりの改善の余地がある。市場シェアの3%未満である木製品は、依然としてヨーロッパの建築材料のごく一部にすぎず、エネルギー集約型で現在は化石燃料ベースの材料が大部分を占めている。委員会は、建物のライフサイクル全体の炭素排出量を削減するための2050年のロードマップを作成する。建設製品規則の改訂に関連して、委員会は、木材建設製品およびその他の建築材料の気候上の利点を定量化するための、標準的で堅牢かつ透明な方法論を開発する。 (バイオマスエネルギー) 「2.2。バイオエナジーのための木材ベースの資源の持続可能な利用の確保」というセッションの記載は以下の通り。 木材ベースのバイオエネルギーは現在、再生可能エネルギーの主な供給源であり、EUの再生可能エネルギー使用量の60%を供給している。 2030年までに少なくとも55%の排出削減目標を達成するには、加盟国はエネルギーミックスにおける再生可能エネルギー源のシェアを大幅に増やす必要がある。バイオマスが持続可能に生産され、効率的に使用される場合、カスケードの原則に沿って、EUの炭素吸収源と生物多様性の目標、および持続可能性の境界内での木材の全体的な利用可能性を考慮に入れて、2030年の展望を見据えて、バイオエナジーはこのミックスで引き続き注目すべき役割を果たすだろう。(7ページ) 木材ベースのバイオエネルギーの使用に関連する潜在的な気候と環境のリスクを軽減し、そのプラスの気候への影響を最大化するために、2030年のEU生物多様性戦略は、エネルギー生産のための樹木全体の使用は、EUからであろうと輸入であろうと、最小限の抑えるべきであるとした。(8ページ) 再生可能エネルギー指令の改訂の提案は、追加の具体的な保護手段を定めた。これには、バイオエナジーの持続可能性基準の強化、適用範囲の拡大、調達のための立ち入り禁止区域の拡大が含まれる。これは、原生林からの森林バイオマスの調達を禁止し、自然保護の目的に干渉しないように、生物多様性の高い森林でそれを制限することを意味する。(8ページ) (木材利用の全体動向) 建築の中で木材利用をすすめるために、環境性能の見える化のための色んな情報を開発してくる可能性、楽しみです。それに対して、エネルギーは再生エネルギーの大半をになっている木質バイオマスの方は、いろいろ課題をかぶせて少しブレーキを踏んで来るみたいです。 ((EUの森づくりは)) 森林戦略の本体となる、セッション3。タイトルは、「気候変動と戦い、生物多様性の喪失を逆転させ、回復力のある多機能な森林生態系を確保するために、EUの森林を保護、回復、拡大」です。 (3億本の植樹) 「3 3.3。生物多様性のある森林 再植と。生物多様性のある森林 再植と。生物多様性のある森林」というセッションに3億本の植樹記載している。 「主に、都市および都市周辺地域(都市公園、公共および私有地の樹木、緑化建物とインフラストラクチャ、都市庭園を含む)および農業地域(たとえば、放棄された地域、アグロフォレストリーおよび森林放牧地、および景観の特徴を含む生態学的回廊の確立)に関係する。強化された植林は、森林セクターで最も効果的な気候変動と災害リスク軽減戦略の1つ」とされます。 「2030年までに少なくとも30億本の追加の木を植えるためのロードマップ」という文書が作られていて、この事業のモニタリングのやり方などが記載されているようです。 原文はこちらに公開→COMMISSION STAFF WORKING DOCUMENT The 3 Billion Tree Planting Pledge For 2030 今回の作業アウトプットを紹介する文書に「2030年までに少なくとも30億本植樹」というキーワードがはいっていますので、はー当たり1000本うえると10年間で30万ヘクタール(1年あたり3万ヘクタール)の植林ですね。 多分いろんな形でフォローされていくでしょう。 (森づくりのための補助金) 「3.4。 EUの森林の量と質を改善するための森林所有者と管理者への金銭的インセンティブ」というセッションは、所有者を意識させるための手法ですね。 「特に小規模な所有地の私有林の所有者と管理者は、生計を直接森林に依存することが多く、今日、彼らの主な収入は木材の供給から来ている。他の利点、特に生態系サービスの提供は、めったにまたは決して報われない。これは変革する必要がある。森林の所有者と管理者は、木材と非木材の材料と製品に加えて、ほとんどの気候と生物多様性にやさしい森林管理の実践を通して、森林の保護と回復を通じて生態系サービスを提供する、原動力と支援をうけなければならない。これは、予想よりも早く、より困難な気候変動に見舞われ、農村地域が森林災害による収入、生計、さらには生命の損失に苦しんでいるヨーロッパの一部で特に重要である。」としえて、優良事例が紹介されています。
この辺は、日本の環境税・譲与税 の話などがのれば、大きく光る部分ですね。 いずれにしても、ご関心のあるあるかたは、記載事項の出所情報などもしっかり記載されていて、面白いです。原文の和訳も作成しておきましたので、ご関心のある方はどうぞ。 オリジナル:New EU forest strategy for 2030 勉強部屋による仮訳:2030年に向けた新たなEU森林戦略 chikyu7-2<EUFS2021> |
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