ロシアの森林法施行とガバナンスに関する会合(2005/11/6)
 

11月22日から25日にかけてロシアの古都サンクトペテルスブルグにおいて「欧州および北アジア地域(ENA地域)における森林法の施行とガバナンスに関する閣僚会合(Europe and North Asia Forest Law Enforcement and Governance (ENA FLEG) Ministerial Conference)」が開催され私も出席する機会がありました。

来年度のG8サミットを、初めてロシアで開催するという日程を念頭に、G8の政治的な課題の一つになっている違法伐採問題について、国内での取り組みの方針を固めようというロシア政府が、世界銀行に全体の運営を委託して取り組んだものです。

(サンクトペテルスブルグ宣言)

政府,民間セクター、環境NGOなど300人近い参加者がありましたが、政府間の4日間に亘る協議の結果、サンクトペテルスブルグ宣言が採択されました。ロシアを含む当該地域(東欧および旧ソ連圏)の違法伐採問題の重要性を認識し、当該地域国は時限を区切った明快な目標を持った国別計画の策定すること、国際的な協同した取り組みが必要であること、などを内容とした宣言は、それなりの意義をもったものですが、「これが始まり」ということが強調さていました。

会議の概要は各種プレスリリースを参照(全木連世銀
サンクトペテルスブルグ宣言(本文《世銀HPより》和文《全木連仮訳》

(違法伐採問題に関しする学術文献集)

違法伐採問題について焦点となる大きな会議であったため、様々な団体がこの会議に向けて今までの蓄積を披露する場ともなり参考になりました。

世界銀行を中心とした大会事務局が二つの学術的なペーパーを提出しています。

その一つは、会議の冒頭での世銀の責任者(Tapani ksanon)による基調技術報告の基礎となった、"Forest Law Enforecment and Governance in ENA, Reference paper prepared for Ministreal Conference" でロシアの違法伐採量は適法に伐採された伐採量に対して、アジア地域では18%、欧州地域では6%を占めているといった数字が提示されています。

二つ目は、Compilation of Executive Summaries of Key Documents Prepared for the Europe and North Asia Forest Law Enforcement and Governance (ENA FLEG) Ministerial Conferenceという文書で、次の6つの文献のサマリーを提供しています。

1.      Illegal Logging and Global Wood Markets: The Competitive Impacts on the U.S. Wood Products Industry,  
Seneca Creek Associates, LLC, Wood Resources International, LLC, November 2004

2.      Ensuring Sustainability of Forests and Livelihoods through Improved Governance and Control of Illegal Logging for Economies in Transition
Savcor Indufor Oy, Helsinki, 31 May 2005

3.      Best practices for improving law compliance in the forest sector,
Food and Agriculture and Organization of the United Nations (FAO) and International Tropical Timber Organization (ITTO)

4.      Controlling Imports of Illegal Timber: Options for Europe,
The Royal Institute of International Affairs (Chatham House)

5.      China’s Wood Market, Trade and the Environment,
Zhu Chunquan, Rodney Taylor, Feng Guoqiang, WWF International

6.      Impacts of Reduction of Illegal Logging in European Russia on the EU and European Russia Forest Sector and Trade
Andreas Ottitsch, Alexander Moiseyev, Nikolai Burdin and Lauma Kazusa, European Forest Institute

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世界銀行が作成して会議で配布した上記二つのペーパーのデジタルデータを世銀事務局から入手しましたので、資料室に所蔵します。

(欧州の大企業の存在感)

この会合は閣僚会議ですので政府間の会議となるわけですが、この種の会議の最近のトレンドとして、それ以外の関係者の参加を得て広範なコンセンサスを求めるという形となります。全木連に所属する私の参加もその流れで、各国あるいは国際的な、企業ないし企業団体、環境NGOが参画をしました。

その中で目立ったのは、欧州の国際的な大企業のこの会合に対する積極的な姿勢です。

欧州製紙業連合(CEPI)は開催中にセミナーを開催し、Storaenso社(フィンランドおよびスウェーデンのトップ企業が連合してできた製材生産額世界第二の総合森林企業)、Metsaliitto(フィンランドの森林所有者連合を背景とした総合森林企業)の副社長クラスがプレゼンテーションを行いました。

両社とも伐採現場から工場まで原材料のトレーサビリティは完璧で、どの資材も伐採現場を特定できるようになっている、といっていました。

「製材工場から購入する木材チップも現場が特定できるのか?」と意地悪な質問をしてみましたが、それも答えはイエスでした。

ただし、「それでは東京港に入荷しているストラエンソの梱包したホワイトウッドの製材品を特定して伐採現場が分かるのか?」と聞くと、原料段階で100%認証材や自社のトレーサビリティの仕組みによって責任ある管理された原料であるということを確認した後は、分別管理は行っておらず、製品の段階での原産地は分からないとのこと。

今年の5月に策定したストラエンソ社の原料調達方針は(こちら
Metsaliitto社の木材追跡システム(こちら

つねに違法伐採や持続可能な森林管理の問題についての厳しい世論にさらされている欧州の大企業のトレーサビリティに関する方針の現時点の到達点といってよいと思います。

なお、本会合に向けてのWBCSDとICFPA(国際森林製紙産業協会)が共同で発表したポジションペーパの邦訳を王子製紙の西村さんに提供頂きましたので、掲載します。
ENAFLEG閣僚会議に対する、共同ポジションペーパー仮約pdf
原文WBCSDホームページよりpdf

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