里山広葉樹林の利活用と再生に向けてー新たな森林政策への手がかり(2025/6/24)

5月21日日本林政ジャーナリストの会 令和7年度第2回研究会 で、「里山広葉樹林の再生に向けて~林野庁国産広葉樹利活用推進チームの挑戦~」 とうイベントがあり、林野庁森林整備部 長崎屋部長の話を聞きました。

日本の森林は、1100万haの人工林(育成単層林)の再生は3割?森林・林業基本計画によると、次世代の人工林は660万haだけど、どのような道筋なの?などいろんな森づくりの課題があるなかで、その総責任者である林野庁の森林整備部長の話です

プレゼン内容を二つに分けて紹介します

$1 里山広葉樹の利活用と再生に向けてプレゼン本体
$2 現行森林林業基本計画の中での里山広葉樹対策の位置づけ

(((里山広葉樹の利活用と再生に向けてープレゼン本体)))

((イントロ:里山広葉樹利活用推進会議))

林野庁では、里山広葉樹の利活用を通じた再生の方策について検討するため、昨年11 月に、森林・林業関係者や家具・薪炭などの業界の方々、消費行動に詳しい立場の方々など幅広い層の方々の参画による『里山広葉樹利活用推進会議』を設置し、昨年度末に提言をとりまとめたんだそうです。

里山広葉樹林の利活用を通じた再生に向けての提言(2025/3)

今回のプレゼンは、提案書の概要説明です。

この利活用推進会議の議論に向けて、林野庁内でどんぐり好きを募り、『国産広葉樹利活用推進チーム』を組織し(22名)、調査や資料の作成等を実施、したんだそうです。

林野庁の施策形成過程で、面白そう。

((里山広葉樹林とは))

(里山林とは)

里山林は、地域住民の生活必需品であった燃料、農具などの生活に必要な資材、農業肥料用の落ち葉など、日々の暮らし・生業と密接に結びついて形成された森林です。

<お爺さんは山に柴刈りに>

(里山広葉樹とは、そしてその現状)

「我が国の森林総蓄積56億㎥のうち、広葉樹は16億㎥で約3割」とあります

これがすべて里山でなく、奥地の天然林も含まっていますね

「里山広葉樹林はかつて地域住民に利用されてきたが、燃料革命等により利用されなくなり、高齢化・大径化が進行。こうした放置里山林は約400万haあると推計」

推計根拠が、右の図です

縦は、面積、横は齢級(5年で括約した林の年齢)61年性から80年生の広葉樹天然林が放置された広葉樹林(それより右は奥山の天然林、それより左は放置されないで、バイオマス利用や榾木利用などに利用された)その後針葉樹が植栽されなかった広葉樹林ですね

(アンダ―ユースの問題点)

里山広葉樹林の放置は、人々の暮らしや生態系へ様々な悪影響。が生まれています。
「ナラ枯れ被害の拡大」、
「野生動物との軋轢の増加(里山林における人間活動の低下や大径木の増加は、サル、シカ、イノシシ、クマ類等の分布の拡大、生息数の増加等につながり、農業被害といった人との軋轢が増加。)」、
「竹林の侵入拡大」など、

これらが、「日本の生物多様性の危機のうち第2の危機といわれるアンダーユースによる危機」というんだそうです。

((広葉樹の需要動向))

(広葉樹の需要量)

左の図にあるように広葉樹の総需要量は2366万m3(2023年)です

<同年の針葉樹もあわせた総需要量は8003万m3ですので広葉樹広葉樹の需要量は約3割>

そのうち国産材は約1割、で残りは輸入材。

それも、殆どが製紙用の木材チップ(ピンク色)その他、おが粉・シイタケ原木・薪・木炭などで、「製品用途」(赤枠)でない

<木材チップなどが「製品用途」ではないんですか?という説明がありませんが、製材されて加工される用途は多分取引価格が高いので、この検討会では「製品用途」というカテゴリでくくっています少し解りづらいかな>

(広葉樹利用の新しい動き)

「近年、輸入広葉樹は価格が急騰しており、家具製造等の業界から国産広葉樹への供給ニーズが高まってます。」ロいう説明

「その際、国内の広葉樹林の資源内容や近年のエシカル消費への意識の高まり等を背景に、従来の樹材種だけでなく、これまで未利用だった虫害被害木も含め、積極的に里山広葉樹材を利用する動きも見られます」(右の図)としていくつか例示gさています

これらを踏まえて、新しい国産材利活用と再生に向けた取り組みが行われています

左の事例は飛騨市広葉樹活用コンソーシアムの事例です

飛騨市は広葉樹のサプライチェーン構築のため、川上から川下の事業者と行政からなる「飛騨市広葉樹活用推進コンソーシアム」を立ち上げました

。• 広葉樹活用コンシェルジュを配置し、流通拠点にある広葉樹原木と家具メーカー等の作り手をマッチングさせ、販路開拓に取り組むなど、広葉樹の新たな価値創造を実現しています

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(まとめ:里山広葉樹利活用推進会議の提言)

里山広葉樹林は、かつての地域住民の利用が衰退した結果、現在は放置され樹木の大径化や植生の劣化が進み、それによる国民の暮らしや生態系への悪影響が危惧されている。

一方で、国内の広葉樹資源を求める動きが活発化していることから、現在地域の点にとどまっている取組を効果的なサプライチェーンにまで引き上げることができれば、広葉樹の利活用を通じた里山広葉樹林の再生が可能と考えられる。

「里山広葉樹利活用推進会議」においては、里山広葉樹林の再生が生み出す『新たな価値』として以下の4点を提示するとともに、『展開すべき施策』として以下を提言。

 里山広葉樹林の再生が生み出す新たな価値
 ①国民目線から~生物多様性の回復~
我が国が直面している生物多様性の危機の一つである「アンダーユースによる危機」を脱し、生物多様性の回復に資する。
②地球市民として~地球環境の保全~輸入広葉樹を国産に置き換えていくことによる海外の森林生態系の保全や、輸送距離の短縮によるCO2排出量の削減に貢献
③地域住民目線で~地方創生~
里山広葉樹は地域で多様性をもつことから、その再生に取り組むことは、例えば小規模製材工場の再生など、地域の産業の結びつきを取り戻すことにつながる。
④林業・木材産業の視点から~産業の持続性の向上~
・針葉樹供給以外の道が開けることによる素材生産の多角化(川上)
・輸入広葉樹材から国産広葉樹材への切り替えによる為替変動リスクの低減(川中)
・持続可能性を求める消費者の意向にかなう商品を提供することによる経営の持続性向上(川上・川中・川下)
 展開すべき政策
 ① 各地域の取組への支援の強化地域性があることや少量多品種であるといった里山広葉樹の特徴を踏まえた支援メニューの充実・強化(例)○川上:実生更新のための伐採前の刈り払い、機械化を含めた効率的な作業システム構築等への支援○川中:地域資源を活用した商品開発や販売促進、小規模遊休工場の再生等への支援 など

② 里山広葉樹利活用・再生プラットフォーム(仮称)の構築~「森の彩りを暮らしへ」~
森林側がマーケットに積極的にアプローチすることで、需要側のニーズの発掘と里山林への理解を促進し、最終的には伐採地から生産される少量・多樹種の広葉樹材全てを利活用(プロダクトアウト)できるようにするため、基盤となる情報を共有する場としてプラットフォームを設立する。 

(ア)参加者のイメージ
(ⅰ)里山広葉樹林の計画的な伐採・再生に取り組む団体(地方公共団体、森林組合、林業経営者、素材生産事業者等)
(ⅱ)広葉樹材を利用する者(建築・内装材・家具・フローリング・楽器・伝統工芸製造業、きのこ生産者・種菌メーカー、薪炭製造業等)(ⅲ)上記の趣旨に賛同する者(生物多様性保全への貢献等に関心のある民間企業・消費者団体等)
(イ)取組事項
○すぐに取り組むべきこと
(ⅰ)里山広葉樹の立木伐採予定情報、原木の市況情報や流通している材の品質等の共有
(ⅱ)家具メーカーや材木店、きのこ生産者等が欲している木材情報等の共有
(ⅲ)供給側と需要側の交流とビジネスマッチングとコーディネーターの育成
(ⅳ)(ⅰ)~(ⅲ)を円滑に進めるために必要な情報共有や流通拠点のあり方の検討
(ⅴ)里山広葉樹材の利活用の意義等の情報発信
○発足後2~3 年先から取り組むべきこと
当面、上記に取り組みつつ準備検討を重ね、数年後に以下に取り組む。
(ⅰ)建築家やデザイナー等の需要者からの相談の受付
(ⅱ)広葉樹材の伐採・造材・仕分けや、加工・流通、里山広葉樹林の管理等に関する人材育成や相互研鑽
(ⅲ)広葉樹林の管理や利用によるインパクト評価の検討

森林整備部長プレゼン資料以上です

この話をきいていて、林野庁の責任者の口から「広葉樹の施策は「針葉樹脳」から開放しないとうまくいきません」といった、現在の施策体系全体を新たに組み立てていくのだ、といった気持ちが伝わってきました。

また、前述したように、この利活用推進会議の議論に向けて、林野庁内でどんぐり好きを募り、『国産広葉樹利活用推進チーム』を組織し(22名)、調査や資料の作成等を実施、しということも既存のシステムの中にtおさまていな 、新たなシステムの提案という木本が伝わってきます。

来年予定される新たな森林林業基本計画の内容にかかわるものかな?

(((森林林業基本計画の中での里山広葉樹対策の位置づけ))

ということで、現在の森林林業基本計画のなかで、里山広葉樹林がどのような、位置づけになっているかチェックしてみました。

左の図の右側は林野庁サイトに掲載されている、「森林・林業基本計画のポイントという資料の最初の一枚に記載されている図です。5つのポイント

〇森林資源の適正な管理・利用
〇「新しい林業」に向けた取組の展開
〇木材産業の国際+地場競争力の強化• J
〇都市等における「第2の森林」づくり
〇新たな山村価値の創造

それぞれの課題に里山広葉樹問題が、関係あるのかないのか?右側に記載してみました。

一番最初の森林部分の「〇森林資源の適正な管理」に記載されている以下の4つの課題

①利用• 適正な伐採と再造林の確保(林業適地)、②• 針広混交林等の森林づくり(上記以外)、③ 森林整備・治山対策による国土強靱化• 間伐、④再造林による森林吸収量の確保強化

そのうち③を除く、3つは針葉樹の人工林に関するものであり、里山広葉樹林とは全く関係がありません(これが「針葉樹脳」の結果?)

あとの、ポイント(森林でなく林業木材産業といった森林づくりの手段)に関する部分では上記に記載したように、〇木材産業の国際+地場競争力の強化の項目で「・生活分野での木材利用(広葉樹家具など)」、もう一つ、○ 新たな山村価値の創造で・集落の維持活性化(里山管理等の協働活動)

の二点が里山広葉樹に関する重要な指摘です

以上のように、今回のプレゼンの問題意識である「里山広葉樹林での利活用と再生問題」は、4年前に作成した現行森林・林業基本計画の枠組みでは、しっかりと位置付けられていません。

来年度の新基本計画策定上の重要なテーマですね。

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