『林業経済』誌編集後記(2015/12/20)(2016/11/27最新改定)

『林業経済』誌は、1948年に第1号を発刊して以来、林業経済分野の専門誌として毎月発刊をつづけています。

その、出版元である林業経済研究所のマネジメントに従事することになり、毎号の編集後記を執筆することとなりました。

編集委員会の了解を得て、このページに転載することとします。

学会と業界、官界、市民との間と架け橋になれるかどうか、大切な役割です。

少しでも、『林業経済』誌の認知度が広がる(なかで、購読者が増える)ことを願っています。

 目次 編集後記 
 2017年5月号

<やまがら>インドネシアと日本.......stray sheep
 
林業経済研究所創立70周年記念企画 リレーインタビューD 
 私の研究史〈村嶌 由直〉

論文
 秩父多摩甲斐国立公園における地種区分と施業規制
  ─多摩川・荒川源流部を中心に─ .池田 友仁・志賀 和人・志賀  薫
 
 『林業経済』掲載規定
 『林業経済』投稿連絡票
  「林業経済」誌に掲載された記事について、読者から筆者に対して様々なフォードバックがあるだろう。所長という立場の私に掲載記事について連絡をいただく機会はあまりないのだが、先般元林野庁長官のI氏から20年数年ぶりでお電話をいただいた。長い間農林水産省の政策づくりに関係されていたI氏には本誌を読んでいただいてきたが「70周年記念企画 リレーインタビューC箕輪理事長の「私の研究史」」を読まれて、「政策の本丸と政策研究がかみ合うことがあまりないことが気になっていたが、今回の記事はその点でわかりやすかった」とされた。「いろんな方に読んだかどうか聞いている(が、あまり読んだという人はいない)」ともいわれていた。早速お礼と、「政策立案サイドからみた林業経済誌の評価、可能性、今後の期待、提言を含む論説を寄稿いただきたい」とお願いし快諾をいただいた。

70年を迎える林業経済研究所は様々な記念事業を企画しているが、周年事業をきっかけにもう一回り広い関係を持てるかどうか、周年行事の重要な課題である。「林業経済」誌の特集企画がそのきっかけとなったことは、うれしいことである。

今月号の70周年の企画リレーインタビュー第5弾は村嶌由直京都大学名誉教授。木曽や桜井の定点情報・東北山村で木材流通を通じた地域経済論から、米材の産地の研究へ。日本の木材市場のグローバル化と並行した、研究分野と研究対象のグローバル化。森林と市場動向の最前線を縦横に歩かれた跡が語られている。後から自らの研究史を、研究対象が置かれている社会的な中心課題と関連して語ることができるのかどうか、経済・社会分野の研究者にとっては関心事項だろうが、それだけでも若手の研究者にとっては刺激があるだろう。

本号の掲載論文は「秩父多摩甲斐国立公園における地種区分と施業規制―多摩川・荒川源流部を中心にー」(池田友仁ほか)。自然公園の地種区分の決定過程で森林所有者の意向がどのように反映されるのか、丹念に追跡している。制度上の問題点が総括されており、関係者には是非読んでいいただきたい。国有林や東京都の水源林などでも経営計画という基本的な決定の過程が意外と不透明なのが気になるところだった。
2017年4月号

 <やまがら>“カスタネット風”楽器をつくる....杉の家 i 
林業経済研究所創立70周年記念企画 リレーインタビューB
 私の研究史〈石井 寛〉..........  1
2016年国土緑化推進機構「緑と水の森林ファンド」助成シンポジウム
子どもと森のルネサンス─育てよう 地域の宝もの─
 開催にあたって.....土屋 俊幸  8
 第1報告 都市と地域と子どもをつなぐデザイン
  ─日本全国スギダラケ倶楽部の活動─......若杉 浩一  9
 第2報告 体験から学ぶ森と川のプログラム
  ─演習林における小学校の総合学習─......井倉 洋二 14
 第3報告 北海道の森の恵みを都会の子どもに...高橋 直樹 18
 第4報告 保育園児への自然労作保育─フォレスト・
  ガーディアン制度を活用して川上から川下へつなぐこと─
  .....福田 珠子 22
 第5報告 人生の門出を木のおもちゃとともに!
  ─ウッドスタートで生涯木育を推進─...馬場  清 26
 パネルディスカッション.... 30
 
 『林業経済』2016年度通巻目録......... 39
 平成29年度林業経済研究所研究奨励事業(小瀧奨励金)公募のお知らせ..... 41
 『林業経済』投稿連絡票.... 42
鹿児島大学で開催された森林学会大会の「木質バイオマス発電のための未利用木材を長期にわたり安定的かつ調和的に供給するために」というセッションに参加し「固体木質バイオマスエネルギーの需給動向と環境基準の展開の可能性」と題する報告をさせていただく機会があった。再生可能電力の固定価格買い取り制度という強力な支援策をえて、木質バイオマスのエネルギー利用が、地域の木材の需給動向に影響を与えつつあるという情勢の中で、多くの研究者が「安定的供給体制という視点で現場に密着した関連研究をしていることを再認識させていただいた。需給関係に思ったほどの問題点が発生していないが、潜在的にいろいろなリスクがあるのでないか。サプライチェーン管理というキーワードが一つのポイントにとなっている。電力会社のFITを使わないCSRからみのバイオマス利用の事例があるなど勉強になった。本件の全体的な課題の中で「環境性能のサプライチェーンを通じた管理」が重要で、グローバルな仕組みの調整が差し迫った課題になっている、ということが私のテーマだったが、調和的供給という大きな議論のなかで、この話題の重要性がかならずしも共有しきれていないという問題意識をもった。当方としても研究的視点で十分な展望をしめせるわけでないので、隔靴掻痒である。

今月号の70周年の企画リレーインタビュー第4弾は当研究所箕輪理事長。個人の研究史をベースに若手研究者への熱いメッセージだが、他の学術分野で開発されたツールを森林分野の取り入れるときに、道具として使うだけでなく森林分野での体系化の挑戦が必要など、若い研究者には刺激的な内容だろう。また、推定統計学などの森林経理学分野の議論の発展が、国有林経営方針に大きな影響を与えた様子など、学会と行政のリンクが興味深いものである。

特集「林業種苗生産の現状と課題」の第6弾は「戦後の林業種苗政策の確立過程」(田村和也)である。
戦前期の種苗政策形成過程、戦後の需給政策展開過程につぐ三部作の終章。100年に林業種苗政策を供給政策とに整理して提示していただいた。民間事業者音参入の可能性や海外の政策事例との比較など、いくつかの課題がのこっているだろうが、この分野の今後の研究のベースとしての役割をはたすことだろ。24ページの本論文は16ページ以内という執筆細則の本則をこえるものとなったが、特集としての依頼論文で3部作を掲載する過程で編集委員会の判断によるものである。
2017年3月号

 <やまがら>“カスタネット風”楽器をつくる....杉の家 i 
林業経済研究所創立70周年記念企画 リレーインタビューB
 私の研究史〈石井 寛〉..........  1
2016年国土緑化推進機構「緑と水の森林ファンド」助成シンポジウム
子どもと森のルネサンス─育てよう 地域の宝もの─
 開催にあたって.....土屋 俊幸  8
 第1報告 都市と地域と子どもをつなぐデザイン
  ─日本全国スギダラケ倶楽部の活動─......若杉 浩一  9
 第2報告 体験から学ぶ森と川のプログラム
  ─演習林における小学校の総合学習─......井倉 洋二 14
 第3報告 北海道の森の恵みを都会の子どもに...高橋 直樹 18
 第4報告 保育園児への自然労作保育─フォレスト・
  ガーディアン制度を活用して川上から川下へつなぐこと─
  .....福田 珠子 22
 第5報告 人生の門出を木のおもちゃとともに!
  ─ウッドスタートで生涯木育を推進─...馬場  清 26
 パネルディスカッション.... 30
 
 『林業経済』2016年度通巻目録......... 39
 平成29年度林業経済研究所研究奨励事業(小瀧奨励金)公募のお知らせ..... 41
 『林業経済』投稿連絡票.... 42

クリーンウッド法の運用案が公表され、意見募集が行われている。
世界の森林のガバナンス向上のため、木材事業者のサプライチェーンを通じて、消費者と環境情報の共有。森林認証制度が開発た、Gohoウッドなどの取組を一歩すめようという趣旨である。
信頼性確保のため業界団体の役割が後退し、「木材業界に支配されていない者」(法20条2項)が行うGW事業者登録制度がポイント。Gohoウッド事業の実績があり、「木材業界に支配されていない」当研究所の出番はないか思案中。

今号は昨年10月に行われたシンポジウム「子どもと森のルネサンス−育てよう」の特集。
若杉浩一氏(パワープレイス株式会社シニアディレクター)、井倉洋二氏(鹿児島大学農学部准教授)、高橋直樹氏(北海道中川町産業振興課主任)、福田珠子氏(全国林業研究グループ連絡協議会女性会議相談役)、馬場清氏(東京おもちゃ美術館副館長)の5人の報告が並ぶ。子育て問題が切り口であるが、経済合理主義を背景とした現代社会に切り込む「社会の利益につながる」(岩手大学山本信次座長)論考となっている。

70周年企画のリレーインタビュー私の研究史第3弾は、北大の石井寛名誉教授。
欧州の森林政策をベースとした森林政策本丸への論説、というのが小生の印象だったが、幅広い人材バンクの恩恵を受けていることを再認識させていただいた。
 2017年2月号
<やまがら>World Logging Championships................サイドスロー i
 
林業経済研究所創立70周年記念企画 リレーインタビューA
 私の研究史〈野口 俊邦〉...................................................................  1
特集 林業種苗生産の現状と課題(5)
論文
 戦後の林業種苗政策の展開過程
  ─1960年代までの需給対策を中心に─.....................田村 和也
書評
 愛甲哲也・庄子 康・栗山浩一編『自然保護と利用の
  アンケート調査─公園管理・野生動物・観光のための
  社会調査ハンドブック─』............................................本田 裕子 
 
 林業経済学会2017年春季大会のお知らせ........................................ 
 平成29年度林業経済研究所研究奨励事業(小瀧奨励金)公募のお知らせ..... 
 『林業経済』投稿連絡票.........................................
 先月も触れた当研究所がかかわっている林野公共事業の費用対効果分析手法に関することだが、ダムや国道など社会的インフラに税金を投じた時にこの先何年間国民が便益を享受するかを仮定して将来の便益を今の税金投入額と比較するという作業が重要な作業内容となる。その場合将来の便益を現在価格に割戻す社会的割引率を霞が関全体で4パーセントという数字を使っているが、100年にわたる評価期間をもっている国の投資は林野公共事業しかないので、「長期にわたる社会的割引率は低減する」という学会での定説にしたがって、欧州の諸国のように林野公共事業では割引率を引き下げたらどうか?未来へ向かう森林への社会投資の意味を国民に分かりやすく知ってもらう機会となる大きなテーマである。

海外の政治状況をみると、理念を語るより短期的な利害を語るポピュリズムが進行中。長期にわたる社会的割引率問題は、理念が示す「長期的なビジョン」を短期的な利害の物差しに照らして語るためのツールでもある重要な課題である。

70周年企画のリレーインタビュー私の研究史第二弾は、信州大学の野口俊邦名誉教授。初期の林業経済研究所の事業をささえた方だが、学術分野の活動と行政の間合いの取り方についての厳しい言説。社会系の学術研究者にとって、社会・行政・政治などへの関与の仕方は常に気にしておかねばならない永遠のテーマである。

特集「林業種苗生産の現状と課題」の第5弾は「戦後の林業需給政策の展開過程」(田村和也)である。拡大する需要に応じた国と都道府県が相俟った需給調整策。当時よりも格段に力を増している都道府県と国の連携政策の可能性を現時点で探る上で大切な論考である。

書評「自然保護と利用のアンケート調査─公園管理・野生動物・観光のための社会調査ハンドブック─」(太田裕子)。社会系の研究ツールとして大切なアンケート調査の自然保護分野での利用マニュアルについてであるが、森林の環境価値を算出する有力な手法が表明選好法であることからしても、このようなマニュアルが今までなかったことが不思議である。

読者諸氏の社会への関与への広がりの一助になれば幸いである。
 2017年1月号
<やまがら>傀儡国家は(  )依頼か?.......あべしっ、ひでぶっ
 
新年のご挨..................箕輪 光博 
創立70周年を迎えて....藤原  敬 
林業経済研究所創立70周年記念企画 リレーインタビュー@
 私の研究史〈熊崎実)......
特集 林業種苗生産の現状と課題(4)論文
 戦前期における林業種苗政策の形成過程......田村 和也 
 
 平成29年度林業経済研究所研究奨励事業(小瀧奨励金)公募のお知らせ.
 『林業経済』投稿連絡票...
 誓約承諾書...
 森林関係者の新年会を歩いてみると、今年のトピックスは森林環境税が決着する年。

与党の税制大綱に「市町村が主体となって実施する森林整備等の必要な財源に充てるため、都市地方を通じて国民に負担を求めることを基本とする森林環境税の創設に向けて検討し、平成30年度税英改正において結論を得る」とされた。

森林整備に関する予算が国の補正予算に依存し、安定的な財源確保が必要との長年の関係者の思にそったものだが、国民の側から見ると増税である。都市住民が森林への税の投入をどんなにみているかが問われるのだろう。その点、当研究所がかかわっている「森林整備保全事業の費用対効果分析手法検討調査事業」「森林整備保全事業推進調査」の二つの調査は、森林の公的投資が国民の便益を与えるのか、をテーマとしたもので、背筋を伸ばして取り組んでいきたい。

本号から70周年特集が始まる。
そのはじめはリレーインタビュー熊崎実筑波大学名誉教授の「私の研究史」。旧林業試験場から筑波大学での研究生活を通じた、「水源林の応益分担」、「熱帯林土地利用」など社会的課題解明の最前線にかかわる研究史である。「これからあなた方が何を訴えていこうとするかを問いたい」。「中堅・若手研究者へのメッセージ」という節の冒頭の言葉が重さを持って伝わってくる。

特集「林業種苗生産の現状と課題」の第4弾は「戦前期における林業種苗政策の形成過程」(田村和也)である。外見で評価できない種苗の質が数十年後に買手の資産に重要な影響を与えるという種苗供給の特質に基づく種苗政策の原点を示してくれている。

本号は本誌の二つの特集が、重要な情報発信になることをしっかり伝えていただいた。
2016年12月号
<やまがら>傀儡国家は(  )依頼か?.......あべしっ、ひでぶっ
 
新年のご挨..................箕輪 光博 
創立70周年を迎えて....藤原  敬 
林業経済研究所創立70周年記念企画 リレーインタビュー@
 私の研究史〈熊崎実)......
特集 林業種苗生産の現状と課題(4)論文
 戦前期における林業種苗政策の形成過程......田村 和也 
 
 平成29年度林業経済研究所研究奨励事業(小瀧奨励金)公募のお知らせ.
 『林業経済』投稿連絡票...
 誓約承諾書...
日帰りで、紅葉のまっさかりの南会津に行く機会があった。建築関係者が中心となった「木の建築賞」いうイベントに南会津地域で開発された「縦ログ構法」(加工度の少な木材を横につたログハウス(丸太小屋)に対して、縦にログ(構造材)を敷き詰めて構造と意匠を担う構法)の公共建築物がノミネートされたので、審査過程の一端を担う立場の一日であった。行政が推進しているCLT(直交集成板)が加工拠点の制約から広がりにハードルがあるのに対して、地方にある普通の技術と事業者によって担うことができるのが売りである。木造建築の新たな可能性をもとめる設計者・建築業者がサプライチェーンのすべての関係者と連携できるすばらしい可能性を見ることができた。

本号の内容は二つの論文と書評である。
論文「木材価格における季節要素の析出と構成要素の類似性の検討」(林宇一他)。長い研究蓄積のある木材価格の季節変動の分析が、近年の久しぶりに本格的におこなわれ、国産材のサプライチェーンの脆弱性など政策課題の提示にも資する可能性を示している。

総説論文「本邦における森林資産の流動化とその課題―ファンド組成を念頭におあいたフォールドワークを通じての報告―」(遠藤暁)。市場の主流にある資本からみた日本の森林経営の現場。制度資金を前提としたフィールドワークの経験から、実践的な提言を含めた興味深い論考。当然市場のもっている短期的視野と森林経営の折り合いをどうつけるのかが問題である。

書評「環境政策と環境運動の社会学―自然保護問題における解決過程及び政策課題設定メカニズムの中範囲理論」(山本信次)は、社会学研究の最近のツールを使った森林政策過程の分析である。、森林サイドからの情報発信の必要性の、双方の問題提起をしている。
本号も、それぞれ、ビジネス、学会の隣接部分の方々に幅広く読んでいただきたいものになっているので、よろしくお願いししたい。
2016年11月号
<やまがら>イヌワシの子育て成功から...あけみさん 
 
論文
 国勢調査における「従業上の地位」を踏まえた林業労働者数の分析.............林 宇一・永田 信 
論文
 月次データを用いた需給関数の推定による素材市場短期変動の分析......................藤掛 一郎 
書評
 田代洋一編著『TPPと農林業・国民生活』..................島本美保子 
米国の大統領選挙の過程と結果はビックすることの連続だった

。TPPに候補者二人とも反対。

「要するに内外多国籍企業と諸国民との対立こそがTPPの本質」(今月号の書評の対象となった「TPPと農林業・国民生活」より)だとすれば、市場のグローバル化をリードしてきた米国(の多国籍企業)が国民の投票行動という重要な意思決定ツールうまく使いこなせなくなってきたということか?

とはいえ「グローバル化とはなにか、「もう一度規範とは何かということを厚く議論すべき」(島本)だろう。

本号の論文「国勢調査における「従業上の地位を踏まえた林業労働者数の分析」(林・永田)調査項目の豊富な国勢調査をベースとし研究の広がりが期待されるが、そのベースとなる論考。雇用者と非雇用者を分けて分析するツールの可能性を提起している。

もう一つの論文「月次データを用いた需給関数の推計による素材市場短期変動の分析」(藤掛)、国産材化の最先端を走る宮崎県関連データを用いた、国産材供給体制構築への課題に迫る論考。

本号もよろしく
 2016年10月号
<やまがら>真田昌幸と戦国期の山林保護思想...........村野八兵衛
 
論文
 近代材木商同業組合の成立と機能
  ─準則組合西川材木商組合を事例として─...............丸山 美季
書評
 岩田基嗣著『改訂版 異説 多摩川上流水源地の歴史』
  .........................................根津 基和
国際会議の紹介
 第23回FAO林業委員会の概要......................................増山 寿政 
  「木材が最先端な材となったいま、世界の建築家は、サステナブルな木造建築で競い合っている」(隈研吾「21世紀はなぜ『木の時代』なのか」)前回の東京オリンピックにちなんだ体育の日には、マスコミが「世界中の目が集まるイベントでどのようなレガシーを作れるのか」という情報発信をしている。オリンピック憲章には「オリンピック競技大会の有益な遺産(レガシー)を、開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する」という一節があるそうだが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが「木の時代」の始まりを告げるイベントになるのかどうか。林業経済誌がグローバルの視野にたって議論すべきことだろう。

本号の内容は論文と書評、国際会議の紹介である。
論文「近代材木商同業組合の成立と機能―準則組合西川材木商組合を事例として」。市場経済の中で業界団体の果たすべき役割はなにかは、常に気になるところだが、秩父から東京への商品輸送を荒川での流送にたよる木材業者が、沿岸住民との紛争事案に対応するために形成した西川材木商組合。法令や社会インフラ整備が形成される以前の時代の同業者組合の背景・原点がわかる。

書評「改訂版異説多摩川上流水源地の歴史」は東京都の水源地管理の歴史だが、東京都の公式の見解に対する、異説。指摘する一つ一つの真偽は不明だが、行政の情報発信に潜在するリスクの可能性に思いをするのは大切なことだろう。
国際会議情報、FAO林業委員会。森林行政機関のグローバルなつながりの中で重要な会議の記録。政策の評価でグローバルな視点が不可欠な中で、大切な情報のわりに、ネット上でも十分な日本語の情報発信がされていないことを気にしていたこところ。
本号もよろしく。
 2016年9月号
<やまがら>一冊の綴りから...Let it be ? i
 
特集 森林・林業基本計画の「変更」をめぐって
 森林・林業基本計画の変更について......上  練三
論説
 平成28年森林・林業基本計画と森林・林業基本法についての
  いくつかの考察.............柿澤 宏昭
論説
 計画の意義、目標、検証から考える森林・林業基本計画
  .............當山 啓介
論説
 新「森林・林業基本計画」をどう理解し、評価するのか
  ................泉  英二 
 英国の「固体バイオマスの環境基準」について政策担当者から話を聞く機会があった。日本では固定価格買取り制度により需要が拡大する将来の発電用木質バイオマス燃料が、相当量の輸入燃料に依存する見通しであり、英国でも発電用バイオマス燃料の輸入が拡大している。木質バイオマス燃料の市場がグローバル化しつつある。環境的要素で各国が支援している木質バイオマスのような製品市場がグローバル化すると、それに応じて「環境基準のグローバル化」が重要な課題となってくる。
英国の再生可能エネルギーによる電力を支援、助成の条件に「固定バイオマスの環境基準」が運用されており、土地の基準・温室効果ガス排出基準からなっている。日本の発電用木質バイオマスの供給ガイドラインに基づく証明制度は上記のカテゴリーの土地の基準であり、燃料のライフサイクルでの環境負荷を示す温室効果ガス排出基準はない。他方英国の土地基準には、日本のガイドラインが提唱するような、業界団体による認定をうけた事業者による証明書の連鎖といった基盤がないため、低リスク地域を規定してサプライチェーンの管理を省くような仕組みをとっている。木質バイオマスの主役化のために、環境基準の議論のグローバルな共有化が必要であり、この分野でも産学官の協力が大切だと感じた。
さて、本号の内容は5月に策定された、「森林・林業基本計画」のをめぐる4つの論説である。上練三(林野庁研究普及課長)、柿澤宏昭(北海道大学教授)、當山啓介(東京大学助教)、泉英二(愛媛大学名誉教授)
5年に一度の「森林林業施策の基本方針」改定について、策定過程の中心者の解説と、長年フォローしてきたアカデミアの論客による評論である。林業の成長産業化を進めて成熟化する森林の次世代の森林をどう作るのかという重要なタイミングでの今回の計画だが、林業施策に比べて多面的機能に関する政策が見えにくいとの共通した指摘となっている。策定過程で突っ込んだ議論ができないものか、国民参加型計画の課題でもあるだろう。
2016年8月号
<やまがら>ランキング.森の奏 i
 
論説
 古代人の森林資源利用
  ─滋賀県内の「遺跡発掘調査報告書」から─...村嶌 由直 
書評
 ヨアヒム・ラートカウ、ロータル・ハーン著(山縣光晶、  長谷川純、小澤彩羽訳)『原子力と人間の歴史  ─ドイツ原子力産業の興亡と自然エネルギー─』...神沼公三郎
 山口明日香著『森林資源の環境経済史  ─近代日本の産業化と木材─』.....嶋瀬 拓也 
フィールドより
 棚田のある風景を守る─笠原棚田米プロジェクト─...川ア 章惠
リオ五輪が始まった。体操競技で金メダルをとった瞬間には皆で拍手をする。市民が属している多様で重層的な所属団体のなかで国家というレベルの団体の重みを感じるイベントである。森林の減少が続く熱帯地域で初のオリンピックの開会式では、出場選手全員が渡された樹木の種をポットに植え記念植樹につなげるといった演出で森林の再生への取り組みがアピールされた。視聴者が十数億人といわれる巨大イベントで地球環境問題や森林の再生の大切さが訴求されるのは重要なことだ。東京オリンピックでは国産材をつかった新国立競技場の舞台にどんなメッセージが届けられるのか楽しみである。
本号の内容は論説と二つの書評とフィールドよりの報告
論説「古代人の森林資源利用―滋賀県内の「遺跡発掘調査報告書」から」滋賀県の行った遺跡調査から縄文時代から古墳時代までの木材の利用の推移を跡付けたもの。琵琶湖周辺の水没木材遺跡といった特殊な条件にめぐまれたからなのかは不明だが、各地で同じような作業を行われると、「人類史が木材利用を過小評価」されているといわれることはなくなるのだろうか。
書評はヨアヒム・カートラウ、ロータル・ハーン著「原子力と人間の歴史―ドイツ原子力産業の興亡と自然エネルギー」。前任の当研究所所長による大部の訳業。福島電発事故の4か月後に脱原発化を明確にしたドイツと政策変更が難しい日本の差。
絶妙のタイミングである。もう一つの書評は山口明日香著「森林資源の環境経済史―近代日本の産業化と木材―」近代社会の産業化の基盤となった産業群で共通に大きな役割を果たした木材が紹介されている。
「棚田のある風景を守る」市場と生産現場を結ぶNGOの取り組みフィールドからの報告
今月号も夏休みにじっくり読んでいただきたい論考が並んでいる。
 2016年7月号
<やまがら>家具にまつわる「ストーリー」.Dwiのともだち i
 
特集 林業種苗生産の現状と課題(3)
論文
 需給調整が困難化する林業用苗木の生産及び流通の現局面
  .都築 伸行 
書評
 “Multi-level Forest Governance in Asia: Concepts, Challenges
  and the Way Forward”edited by Makoto Inoue and
  Ganesh P. Shivakoti..葉山アツコ
白書の紹介
 「平成27年度森林・林業白書」の作成・公表について
  ..寺村  智 
 
 平成28年度国土緑化推進機構「緑と水の森林ファンド」助成
  シンポジウムのご案内.
 参議院議員選挙の結果が明らかになった。改憲勢力が2/3、与党が勝敗ラインとしていた改選議席の半数を大きく上回る、といいながら、3年前の結果に比べると一人区の野党の健闘など「揺り戻し」という要素もある。米国の大統領予備選挙、英国の国民投票など最近の先進国での国民の投票行動は、既成のシステムへの反発の風が吹き荒れているようだが、日本の有権者は、新たに投票権を獲得した若者を含めて、ほとんど風が吹かせなかったといえる。アベノミクス・地方創生、どれも「道半ば」の経済政策の推移が、今後、問われることとなるだろう。「林業経済」誌としてもしっかりフォローしてきたい。
本号の内容は論文・書評各一編づつと「白書の紹介」である。
論文「需給調整が困難化する林業用苗機生産及び流通の現局面」は特集「林業種苗生産の現状と課題」の3編目。長期の縮減から一部拡大がみられる林業用種苗の需給局面に、いままで構築された調整機能が対応できるのか。広域の需給調整、コンテナ苗などの生産要素の移行現局面の課題が把握できる論考である。是非、山林種苗業界の関係者のみならず、行政・森林資源に依拠する国産材関係者に広く読んで頂いたいものである。
書評は「Multi-level Forest Governance in Asia: Concepts, Challenges and the Way Forward(アジアにおける森林管理の多様な形態:明確な概念・挑戦、そしてその先に)仮訳」日本の研究者がリードしたアジアの多様な森林管理に関するセミナーの結果を取りまとめた英文の文献。気候・文化・歴史など多様条件下で「よそ者を排除しない開かれた地域コミュニティによる森林管理の可能性」という、明快なメッセージが発信されている。日本発・世界へ、魅力的な内容である。
白書の概要と舞台裏を紹介した「『平成27年度森林・林業白書』の作成・公表について」。編集委員でもある筆者が執筆する白書の概要と、閣議決定にいたる策定過程、来年度の内容の予告まで。サービス精神に富んだ論考を掲載していただいた。
今号も、ビジネスから行政・アカデミアまで、幅広い住民の皆さん方が読んでいただきたい論考がそろった充実した内容となっている
 2016年6月号
<やまがら>クラフトビールと地ビール・ブーム.........クラフト飲ん兵衛
 
研究ノート
 山梨県内の非合併山村自治体における高齢化・町村財政・ー女性就業率の推移─水源林地元村に着目して─.泉 桂子
論説
 TIMO・REITと育林資本─餅田論文への疑問─..村嶌 由直
書評
 奥田裕規編著『「田舎暮らし」と豊かさ─コモンズと山村振興─』
  .......沢畑  亨
 
 『林業経済』掲載規............... 30
 平成28年度 一般財団法人 林業経済研究所研究奨励事業
  (小瀧奨励賞)助成対象者決定のお知らせ...... ii
 13日参議院本会議で、「合法伐採木材流通・利用促進法」が全会一致で可決成立した。欧州木材規則、米国レーシー法などの動きを受け違法伐採問題に対応する我が国の姿勢を示そうと、G7サミット前のタイミグで新たな法律ができたものである。木材の加工と流通にたずさわる無数の中小企業者のネットワークを管理して、消費者に森林のガバナンス情報をとどけようという10年前にできた林野庁ガイドラインの提案は画期的なものだと思うが、さらにその信頼性を高めるためのツールが、登録した登録実施機関による「木材関連事業者」の登録制度。業界団体と一線を画した登録実施機関による何万社という木材事業者登録という大変な作業が始まることになる。登録実施機関という緑のサプライチェーン管理の大切な役割を研究所として果たすことができないか、検討のしどころだろう。
本号の内容は論文・書評・研究動向報告各一編づつである。
論文「北海道における苗木生産の現状と生産力拡大に向けた課題―苗木生産業者2社の実態調査を中心として」は先月号から始まった特集「林業種苗生産の現状と課題」の一編。今後期待される苗木生産者の生産能力の拡大に向け、製品基準の緩和や、専業機械メーカーへの存続施策など大胆な内容を含む提言となっている。是非、山林種苗業界の関係者にも読んで頂いたものである。
書評は「森林社会学への道」。今年「みどりの学術賞」を受賞された当研究所の評議員でもある三井昭二三重大学名誉教授の著作集である。自然しか見ていない自然保護活動と経済しか見ていない一部の林業経営者の対立構造に対して、学術的ないかなるアプローチがありうるか、きわめて実践的内容を含む問題提起である。
さらに、海外研究動向「カルロヴィッツ300年」は、現代のキーワードとなっている「持続可能性」という言葉で、300年前森林問題を論考したドイツの鉱山技師カルロヴィッツの業績の紹介である。
林業経済学のアカデミアの住民以外の方にも広く読んで頂きたい論考がそろった充実した内容となっている。
 2016年5月号
<やまがら>近代化と周辺化
 
特集 林業種苗生産の現状と課題(2)
論文
 北海道における苗木生産の現状と生産力拡大に向けた課題
  ─苗木生産業者2社の実態調査を中心にして─安村 直樹・立花  敏

書評
 三井昭二著『森林社会学への道』餅田 治之
海外研究動向
 カルロヴィッツ300年寺下 太郎 
 
 『林業経済』掲載規定 
 『林業経済』投稿連絡票
 13日参議院本会議で、「合法伐採木材流通・利用促進法」が全会一致で可決成立した。欧州木材規則、米国レーシー法などの動きを受け違法伐採問題に対応する我が国の姿勢を示そうと、G7サミット前のタイミグで新たな法律ができたものである。木材の加工と流通にたずさわる無数の中小企業者のネットワークを管理して、消費者に森林のガバナンス情報をとどけようという10年前にできた林野庁ガイドラインの提案は画期的なものだと思うが、さらにその信頼性を高めるためのツールが、登録した登録実施機関による「木材関連事業者」の登録制度。業界団体と一線を画した登録実施機関による何万社という木材事業者登録という大変な作業が始まることになる。登録実施機関という緑のサプライチェーン管理の大切な役割を研究所として果たすことができないか、検討のしどころだろう。
本号の内容は論文・書評・研究動向報告各一編づつである。
論文「北海道における苗木生産の現状と生産力拡大に向けた課題―苗木生産業者2社の実態調査を中心として」は先月号から始まった特集「林業種苗生産の現状と課題」の一編。今後期待される苗木生産者の生産能力の拡大に向け、製品基準の緩和や、専業機械メーカーへの存続施策など大胆な内容を含む提言となっている。是非、山林種苗業界の関係者にも読んで頂いたものである。
書評は「森林社会学への道」。今年「みどりの学術賞」を受賞された当研究所の評議員でもある三井昭二三重大学名誉教授の著作集である。自然しか見ていない自然保護活動と経済しか見ていない一部の林業経営者の対立構造に対して、学術的ないかなるアプローチがありうるか、きわめて実践的内容を含む問題提起である。
さらに、海外研究動向「カルロヴィッツ300年」は、現代のキーワードとなっている「持続可能性」という言葉で、300年前森林問題を論考したドイツの鉱山技師カルロヴィッツの業績の紹介である。
林業経済学のアカデミアの住民以外の方にも広く読んで頂きたい論考がそろった充実した内容となっている。
 2016年4月号
<やまがら>「解題」という文化
 
特集 林業種苗生産の現状と課題(1)
 特集「林業種苗生産の現状と課題」
論文
 林業用苗木の生産をめぐる期待と問題の関係構造
  ─北信越地方を事例として─平野悠一郎・鹿又 秀聡・石崎 涼子・天野 智将

国際学会紹介
 2015年国際コモンズ学会エドモントン大会に参加して、..林雅秀

書評
 徳川林政史研究所編『森林の江戸学U─徳川の歴史再発見─』.戸石 七生
 春・林業経済誌と市民
熊本地震で被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。

林業経済誌の送付先の変更、新しい職場・連絡先・メールアドレスのお知らせ・・・読者やお世話になっている関係者の思いがけないご連絡を受け、「新たな年度の始まり」を実感している。

春の林業経済学会大会の統一テーマは「自然資源管理の論点―林業経済研究の視点から」。「自然資源の3つの担い手は住民・技術者・市民」だが、森林をはじめとした自然資源への関心が広がる中で、「市民」の視点をどうとらえるか重要な課題になっている。林業経済誌という歴史あるメディアが21世紀の「市民」にどう受け入れられるのか、70周年を来年に迎える当研究所としても、紙面・営業の両面における新たな年度の挑戦的課題だといえる。
本号の内容は、1つの原著論文と、1つの書評・国際学会報告。
原著論文「林業用苗木の生産を巡る期待と問題の関係構造―北信越地方を事例として」(平野悠一郎他)は特集「林業種苗生産の現状と課題」の初掲論文。縮小され続けてきた林業種苗の供給基盤の強化は次世代の森林資源の循環に関係する政策的な課題。学術論文を時々の政策課題に応じて特集企画するというのは、学術雑誌にとっては難しい面を持っているものだが、政策の担い手を広く読者に持つ「林業経済誌」ならではの企画といえる。平野論文も種苗生産の新たな担い手が地域に蓄積された知恵を引き継ぐ課題など、具体的な事例にそった説得力のあるもので、期待に応えるものである。今後の充実した特集の展開に期待されたい。

書評は「徳川林政史研究会編、森林の江戸学U」(戸石七生)。工業化以前の社会の森林との関係性は現在の途上国を含めた持続可能な社会のための開発目標SDGsの森林の課題と重なる。また、2015年国際コモンズ学会エドモントン大会の出席報告はグローバル化した市場に対応した資源ガバナンスあり方が世界中で問われていることがわかる
2016年3月号
<やまがら>確実な未来の下で
 
原著論文
 日本における製紙産業の立地調整と広葉樹材原料選択要因
  ─印刷情報用紙を事例として(早舩真智他)
書評
 “Collaborative.Governance.of
.Forests.:.Towards.Sustainable.
  Forest.Resource.Utilization”.edited.by.TANAKA.Motomu.and.
  INOUE.Makoto( 相川 高信)
 永田 信著『林政学講義』(藤掛一郎)

 平成28 年度林業経済研究所研究奨励事業(小瀧奨励金)公募のお知らせ 
企業による森林づくり・木材利用の二酸化炭素吸収・固定量の「見える化」シンポジウムが2月29日東京大学弥生講堂で開催された。当研究所が今年度取組んだ林野庁の委託調査の成果発表会である。企業が社会的貢献(CSR)といった視点から製造拠点の工場の周辺の森林を間伐したり、コンビニや地方銀行が店内内装に地元の木材を使い地元の住民とコミュニケーションをはかる取組事例、などが増えている。これらの活動を支援するために、それぞれの取組みで二酸化炭素の吸収量・固定量がどうなるか簡単に算出できるツールをつくり、普及のためのガイドラインづくりをする、という事業だった。企業の活動が日本の森林整備の中でどの程度の広がりになるかは今後の重要な注目点である。成果品は研究所のホームページに掲載されているので是非チェックしていただきたい。
本号の内容は、1つの原著論文と、2つの書評。
原著論文「日本における製紙産業の立地調整と広葉樹材原料選択要因」木質資材のサプライチェーンで巨大な力をもっている製紙産業の立地が資源要因に規定される姿を示しているが、さらに持続可能な資源管理への関与などこの産業の幅広い可能性について検討が進むことを期待したい。
書評1”Collaborative Governance of Forest: Towards Sustainable Forest Resource Utilization”(田中求・井上真編)日本発、森林のガバナンスを含む英文の近著。書評2「林政学講義」(永田信著)、林政学の学生向けの教科書。読者が手にする機会が少ない最新の有益な書籍情報を、政策やビジネスの視点も含めて解説をするのは本誌書評の重要な機能だが、この2つはその役割をしっかり果たしていただいている。
 2016年2月号
<やまがら>一物多価
2015年西日本林業経済研究会報告
研究会の概要(枚田 邦宏・奥山洋一郎)
報告 鹿児島大学農学部附属演習林における社会人教育の取り組(芦原 誠一)
コメント:広域・小規模森林組合の活動と集約化(嶺 隆太郎)/都築伸行氏の報告に対するコメント(新井 愛那)/川ア章惠氏の報告に対するコメント(峰尾 恵人)/芳賀大地氏の報告に対するコメント(杉山 沙織)
書評
岡裕泰・石崎涼子編著「森林経営をめぐる組織イノベーション」(根本昌彦)
書評 農林水産奨励会『「生産力増強・木材増産計画」による国有林経営近代化政策の展開を現代から見る─増補─』(野口 俊邦)
書評 フランク・ユケッター著 和田佐規子訳『ナチスと自然保護 ─景観美・アウトバーン・森林と狩猟─(八巻一成)
国際会議の紹介「第14 回世界林業会議と日本の森林林業分野の活動」(藤原敬)
 1月中旬から2月にかけて札幌・広島・宮崎と出張する機会があった。テーマは「発電用木質バイオマス証明のためのガイドラインの運用状況」。再生可能エネルギー発電の固定価格買取り制度で、間伐材や適切に管理された木材由来の木質バイオマスによる電力を消費者が市場より高い価格で購入することとなった。その由来の証明を事業者の証明書の連鎖で担保することとなり、先行した合法性証明を担保する業界団体認定による証明書の連鎖を下敷きにしてできたガイドラインである。方や違法伐採問題、方や再生可能性と、どちらも商品の川上に起因する環境性能を消費者に伝達するツールだが、証明書を受け取ったエンドユーザーのメリットに違いがある。発電用の場合はユーザーがこれを根拠に高い電力を売れる。合法性証明はユーザーが地球環境問題に対する姿勢を評価される。この二つでは、証明書を発給する事業者と認定した団体の社会的責任の問われ方が全く違うのが現実である。環境問題と市場との関係性は本誌としての重要なテーマ。とりあえず3月上旬東京・神戸での成果発表会に期待いただきたい。
本号の内容は、2015年西日本林業経済研究会の報告と、3つの書評、国際会議の報告である。
昨年7月鹿児島大学演習林で開催された研究会の報告は、森林組合組織論、志布志港の輸出まで、明日の林業問題が一番先に生じる九州の最南端で開催された研究会の若さにあふれる雰囲気が伝わってくる。書評は、日本の林業政策を意識した欧州の森林施策の最前線の動向を紹介した「森林経営をめぐる組織イノベーション」、木材生産と持続可能な森林の政策論の原点となるべき「『生産力増強・木材増産計画』による国有林経営近代化政策の展開を現代から考える」、社会全体の大きな視野を欠落した森林政策の内在的なリスクに関する「ナチスと自然保護ー景観美・アウトバーン・森林と狩猟」。どれも、重いテーマである。
 2016年1月号
<やまがら>国際会議の進め方(ボヤンスコハンチェ・メラック)
新年のご挨拶( 箕輪光博)
2015 年国土緑化推進機構助成シンポジウーWood Job ルネサンスへの道─若者を山村、林業へ─
開催にあたって(土屋俊幸)
第1 報告 西粟倉村百年の森林構想と起業家的人材の発掘・育成(牧大介)
第2 報告 山村で「働くこと」の意味─緑の雇用と各種研修の取り組みから─(奥山洋一郎)
第3 報告 山とつながる暮らしをめざして ─「緑のふるさと協力隊」の若者たち─(金井久美子)
第4 報告 Wood.Job.3 年目の現場経験から(齋藤 朱里)
書評 餅田治之・遠藤日雄編著『林業構造問題研究』(三木敦朗)
  2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場が、「日本の伝統的な木構造を現代の技術で甦らせ、世界に向けて発信する」(隈研吾建築都市設計事務所等共同企業体案技術提案書)とした「木と緑のスタジアム」となることが公表された。世界中の人が注目する日本のイベントの中心舞台が「木材を使った大規模建築物」となったことは、行政関係者、林業・木材業界、学会など関係者が長年かけた願いと、取組の結果であり、素直に喜びたい。と同時に、次の世代の主役としての循環可能な木材を供給する林業や木材産業の全プロセスが注目を浴びる機会でもある。オリンピック運動が積み上げてきた、環境と木材を橋渡しするトレーサビリティの仕組みなど、真正面から取り組んでいく必要があるのだろう。グローバルとローカルの関係、業界のロジックと環境サイドのロジックの関係など、本誌のフィールドの新たな課題は、業界関係者だけでなく、本誌および、読者・関係者の皆さん方の課題でもある。新たな年に新たな課題。しっかり受け止めていきたい。

本号の主たる内容は、昨年10月に本研究所が主催した、シンポジウム、「Wood Jobルネサンスへの道、若者を山村、林業へ」の詳しい記録である。「山村の若者離れ」の流れは近年変化が現れているが、まだ過渡期であり、「10年の壁」といわれる状況が立ちはだかっている。明快な視野が広がっているとはいいにくいこの状況に、このシンポジウムはいくつかの積極的な事例をもとに積極的に切り込んでおり、是非一読をお願いしたい。

当研究所フォロー研究員2名の編になる近著「林業構造問題研究」の書評。長い蓄積のある林業構造論研究がグローバル化時代の現時点の政策評価のプロセスに有効に機能するか、興味深い視点を提示している。
 2015年12月号
<やまがら>機械屋O さん( 何刷斗)
総説論文
参加型森林管理の類型化─政府の関与と住民の関与の変化に着目して─(山内 弘美)
林業経済学会2015 年春季大会シンポジウム
一般会計化のもとでの国有林の公共性
主催者挨拶(柿澤 宏昭報告1 我が国における国有林の存在意義に関する一考察(大田伊久雄)
報告2 木材供給における国有林の課題(久保山裕史)
報告3 国有林の公益的機能と公共性の現代的意味(八巻 一成)
 長野県最南端、根羽村を訪問する機会があった。新設された高齢者福祉施設が、「木の建築賞」にノミネートされ「木の建築」ができる過程の活動が審査の対象になったためである。「地元の木材を使った建築物」は多いが、全村民が会員の森林組合の、山から住宅資材提供までの事業展開を基盤に、建築の構造材・内装材の95%は地元材という建物はほかにないだろう。大変勉強をさせられた。
気になったのは、6次産業化のモデルともいうべきこの取り組みが、私が「住んでいる」林野庁周辺の情報共有のネットワークにかかってこないのはなぜかということ。長野県の最南端、愛知県三河地区の農業の発展に重要な役割を果たした明治用水の水源である長野県の根羽村。林業の行政情報の主たる発信地である都道府県の森林管理行政が、県境にまたがる特筆すべき活動を見逃す可能性があるのでないか、というのが一つの「回答」だった。
森林管理のガバナンスに関する有用な情報を行政や学界の関係者に提供することは本誌の役割の一つだろうが、行政が不得意なこのような情報領域があるという「発見」は、かならずしも行政情報ネットワークの構成にとらわれない、本誌の情報発信の存在意義を提示しているといえるだろう。
今号の掲載論文「参加型森林管理の類型化―政府の官許と住民の管理の変化に着目して」は先行研究などをもとに、政府と住民の関与を軸にした途上国の参加型森林管理の類型化を試みている。さらに市場の関与を含めた展開など示唆されているが、先進国を含めたガバナンス論を期待したい。
林業経済学会春期シンポジウムの「一般会計化のもとでの国有林の公共性」の概要を掲載した。タイミングがよい企画で、具体的な議論が日常的に各地で行われるベースになることを期待したい。
2015年11月号
<やまがら>限界集落。限界って誰が決めたの?.(フール・オン・ザ・ヒル )
特集 林業基本法50年(6)
論説 所有者主義と「規模の経済」に束縛された林業基本法と林政(菊間満)
原著論文 伝統的工芸品産業に関する市町村条例等整備の現状と課題(前川 洋平・宮林 茂幸・関岡 東生)
書評
ジェームズ・C・スコット著(佐藤 仁監訳) 『ゾミア─脱国家の世界史』(笹岡 正俊)
小口好昭編著『会計と社会─ミクロ会計・メソ会計・マクロ会計の視点から』(比屋根 哲)
 オランダの担当大臣が来日した機会に「日本における違法伐採対策の取り組みを支援し、EUにおける違法伐採法の実施および執行について紹介・議論することを目的とする」とした国際セミナー「違法伐採対策と合法木材貿易の振興」に出席する機会があった。日本の違法伐採問題対策の新たな展開にかかる、日本の関係議員も含めた貴重な討議の機会だった。輸入業者対する努力義務を基盤とした罰則規定を含む法制が、日本の業界団体認定を基礎としたサプライチェーンの管理と上手くマッチすれば10年たった日本の合法性証明の新たなステップとなる可能性がある。と同時に、EU側にも、日本の業界団体認定システムの成果を是非研究していただきたいと、長年このシステムにかかわった一人として申し上げておいた。
このように、国同士の利害に関係する貿易政策が国を超えてグローバルな視点で議論されるのは当然のことだが、国内の政策が海外での政策論の発展を踏まえてグローバルな視点で評価議論をされることは、望ましいことだが、難しい面がある。グローバルに政策論を追いかける学会の関係者の存在無くてはできない、展開である。
この点で、本号の林業基本法特集「所有者主権と『規模の経済』に束縛された林業基本法と林政」(菊間満)が指摘するヨーロッパ小企業憲章・FAOの中小規模経営論などの「世界の潮流」が本誌で適切に紹介されることは、重要な本誌のテーマだろう。
また、本号の「伝統的工芸品産業に関する市町村等整備の現状と課題」(前川洋平ほか)は、森林政策担い手たるべき市町村段階の行政の評価を伝統的工芸品産業分野から行う意欲的なものだが、歴史あるローカル資源としての森林と伝統文化の結びつきが現代においてどのように発展する可能性があるのか、今後に期待したい。

 2015年10月号
<やまがら>安保法と大学(stray sheep) 
平成18年度 林業経済研究所研究奨励事業(小瀧奨励金)助成研究
原著論文、違法伐採の構造の変容と地元住民の役割の変化  ─インドネシア、グヌンパルン国立公園を事例として─(御田 成顕)
書評
戦後日本の食料・農業・農村編集委員会編『戦後日本の食料・農業・農村 第2巻(U) 戦後改革・経済復興期U』別編 戦後林業(泉  英二)
興梠克久編著 全国森林組合連合会監修 林業経済研究所協力『「緑の雇用」のすべて』(林宇一)
宇沢弘文・関良基編『社会的共通資本としての森(山下 詠子)

 9月26日の国連総会で「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030年アジェンダ」SDGsが採択され、10月6日には環太平洋パートナーシップTPP協定が合意された。
前者は17の目標と169のターゲトからなる今後の15年間の世界で共通した開発・成長の指針であり、先行した「ミレニアム開発目標」MDGsが途上国の開発を念頭におかれていたのに対して、「持続可能な開発に先進国はない日本も途上国」(慶応大学蟹江教授)というように、今回のSDGsはすべての国がその進捗状況を閣僚級会合で検証するシステムが盛り込まれている(フォローアップとレビュー(パラ71-91))。持続可能な開発の三側面(経済・社会・環境)の調和をめざす(前文)この目標の実現にむけて森林分野の果たす役割は大きい。
後者のTPP協定は物の貿易の市場アクセスについての自由貿易協定に端を発しているが、「21世紀型の包括的な協定」(前文「主な特徴」)と自称するように、自由貿易による格差、環境などのネガティブな面をどのように管理するか、といった側面も含む、30章からなる包括的な内容となっている。違法伐採問題など森林の管理の共通課題に対処するため協働して取り組むこと(20環境)、中小企業支援の定期会合を実施(24中小企業)などの内容を含んでおり、これらも含めた「実施運用の管理」「将来の進化を誘導する」制度的枠組み(27)も規定している。
市場のグローバル化に対して、森林管理のグローバル化を図ることは大切な課題であり、是非本誌の読者は二つの文書を手に取ってご覧いただきたい。
今号の掲載論文「違法伐採問題の構造の変容と地元住民の役割の変化〜インドネシア、クヌスバルン国立公園を事例として〜」は、上記の文脈で大切な論稿である
 2015年9月号
<やまがら>自分たちにできることがみえるという希望(黄山吹)
原著論文
 北海道カラマツ人工林の主伐・再造林問題 ─人工林経営の資金循環と資源保続─(志賀 和人・志賀  薫・早舩 真智)
書評
岡本雅美監修 寺西俊一・井上 真・山下英俊編『自立と連携の農村再生論』(伊藤 幸男)
濱田武士・小山良太・早尻正宏著『福島に農林漁業をとり戻す(山本信次)
フィールドより喜連川丘陵の志─スギを究める異色のデザイナー山本 美穂)
 9月6日から11日南アフリカダーバン市で6年ぶりに世界林業大会が開催された。12月の気候変動枠組み条約COP21で新たな政策枠組みが決定され、また国連総会で持続可能な開発目標(SDGs)が決議されようとしているなかで、世界中の林業政策やビジネス、その他関連する関係者が140か国から4千人集まり、森林政策・施策などの経験を共有・提言をするというもの。海外の政策動向についての情報収取と同時に、日本の政策の経験が海外の関係者に貢献できるものがあるはず、という思いで参加をしてきた。
「熱帯林の減少が地球環境の問題の重要な課題」というメッセージに支えられ、1980年代から30年ほど地球環境問題という視点で活性化してきた、国際的な森林政策の議論も、少し状況に変化がある。持続可能な森林管理のための政策を進めていくためには、気候変動問題といった環境政策との関連とともに貧困問題・食糧安保といった優先政策課題にどう連携していくかが課題となっていることがわかるものだった。政策優先度があがりにくい長期的な視野が必要な森林分野の政策について関係者の努力がさらに必要になっている。「本来の姿になった」ということだろうが、本件については別途報告をしたい。
今号の原著論文「北海道カラマツ人工林の主伐再造林問題―人工林経営の資金循環と資源保全」は、次世代森林造成をどのように構想するのか、皆伐再造林がある程度定着している北海道のカラマツ造林地を対象にした論稿である。北海道の林務当局が進めた皆伐跡地の造林の自己負担率を数パーセントにする助成政策「未来森事業」の役割が大きいとされる。日本の資源政策の次のステップを考える上で重要な論稿だが、このような施策の合意がどのように形成されるのか、国際的な場でだれもが知りたい点だろう。国際的な文脈のなかで評価・検討望まれる。
 2015年8月号
<やまがら>木の笛、新作発表(杉の家)
中長期的な国産材需要拡大方策の一考察─製材品に適さない品質の原木を原材料とする木質建材の新たな用途開発に向けて─(青井 秀樹・五十田 博・小林 道和)
2014年度東日本林業経済研究会シンポジウム
2000年代以降における林業の主産地形成
第1報告 林業の主産地形成と原木流通の構造的変化
  ─伊万里木材市場を事例に─(興梠 克久)
第2報告 北関東・南東北の木材加工(餅田 治之)
第3報告 震災後の東北における原木需給構造の現局面と課題(大塚 生美)
第4報告 人工林業・私有林業に軸足を移した  ゼロ年代の北海道林業(早尻 正宏)
コメント 林業・木材産業の発展をめぐる二つの論点(嶋瀬 拓也)
 討論要旨
「平成26年度 森林・林業白書」の概要(藤岡 義生)
 「子や孫に謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」という一念のこもった、戦後70周年安倍談話が閣議決定されて公表された。謝罪という外交行為自体が謝罪相手との共同作業という側面があり、関係国との国際関係をどう構築するか、安保法制の行く末などと関係する難しい問題をはらんでいる。「歴史から未来への知恵を学ばなければならない」のは政治だけでなく、本誌の情報発信の重要な部分でもある。
「8月は私たち日本人にはしばしば立ち止まることを求めます。」公表時の総理の冒頭発言だが、林業関係する産学官民の読者にとっていかがだっただろうか。
8月号本誌が掲載する「2000年年代以降における林業の主産地形成」は、14年度東日本林業経済研究会シンポジウムの少し大部な記録だが、8月の終わりに「すこし立ち止まて」是非、読んでいただきたい内容である。2000年前後を画期とした林業木材産業の川上主導から川下主導への転換、そのことの地域創生や資源再生産なに及ぼす影響など、政策課題を議論していく上で不可欠なポイントが熱く語られている。
総説論文「中長期的な国産材需要拡大の方策のー考察」は、CLTなど高耐力木質面材建築材料の普及に関して、材料の技術的な特色、設計技術者の関心の程度など関連事象の評価を踏まえて、きわめて具体的政策提言となっていて、本誌の読者にかぎらず是非参考にしていただきたいものである。
また、恒例の「「平成26年度森林林業白書」の概要」の寄稿を掲載している。今年度の特集は「森林産業の循環利用を担う木材産業」。戦後の木材産業史を3期にわけて紹介している。上記の主産地形成論と合わせてお読みいただきたい。
 2015年7月号
<やまがら>現場が求めている研究(.イチ現場の声)
特集 林業基本法50年(5)
論説
現代林政50年の底流─林業基本法(中岡  茂)
2011年度東日本林業経済研究会シンポジウム
人と「赤谷の森」の新たな関係─国有林・地域社会・ガバナンス─
はじめに(土屋 俊幸)/第1報告 官民協働型森林管理における地域環境ガバナンスの実態と課題について(
林 あかね)/第2報告 国有林野事業における赤谷プロジェクトの意義─多様な意見の反映を中心に(藤江達之)/第3報告 赤谷プロジェクトについて(林泉)/第4報告 赤谷プロジェクトと日本自然保護協会(出島 誠一)/コメント(
小池 俊弘)
書評 公益社団法人 沖縄県緑化推進委員会編『沖縄県緑化運動65年史』(齋藤 和彦)
 「長期エネルギー需給見通し」、「2020年以降の温室効果ガス削減に向けた我が国の約束草案(政府原案))と、マスコミの話題となった関連する二つの文書が相次いで政府から公表され、意見募集が求められた。吸収源対策、再生可能エネルギーの中の木質バイオマスの役割、という二つの側面で林業経済のフォールドと関係深いもの。研究所としても理事長名で、政策実現のための財源問題とともに「バイオマスエネルギーの供給源を明確にし、持続可能な森林経営と両立する確かな展望を示すべきである」との意見を提示した。(内容は研究所のウェブページを参照されたい)
研究所が生の政策に関心を持ち情報発信する社会的意味は大きいが、今号の二つの内容もその点で注目されるものである。
林業基本法50年特集中原茂論説は、経営の大規模化論や拡大する公共事業補助金の自説を踏まえて、研究者に対して、「現場と政策のかい離」を真剣に議論してほしい、との提言になっている。
また、2011年の東日本林業経済研究会報告「人と『赤谷の森』の新たな関係」は、国有林が自然環境、地方創生の二つの課題を幅広いステークホルダーと議論する枠組み作りの生々しい経験が紹介されている。
 2015年6月
<やまがら>嘘も繰り返せば真実となる....?(巧言令色鮮矣仁 あべしっ ひでぶっ)
総説論文
FPICをめぐる論点とその森林分野での対応─ガイドラインの比較分析を通して─(相楽美穂・庄野眞一郎・川上豊幸)
書評
奥田進一編著『中国の森林をめぐる法政策研究』(續ィ恭介)
斎藤 修著『環境の経済史─森林・市場・国家─』(高橋卓也)
私の本棚
REDD+を紹介する(藤間 剛)
 6月の理事会で前山縣所長からバトンタッチを受けた。その、初仕事が通算800号の雑誌の編集後記となった
どこの雑誌でも通算○百号は大騒ぎとなると思われるが、そこは歴史と伝統の「林業経済」誌、そっと通過することなる。「『林業経済研究所』とは何か」。60年数年にわたる毎月一回の先輩方の地道な作業の積み重ねで構築された「林業経済」誌を世に出す所である。将来の研究所のあり方をどう構築しようと、この雑誌の内容と普及のあり方、につきる。読者の皆さんのご意見をお聞きしながら、一歩一歩進んでいきたいので、よろしくお願いしたい。
本号の総説論文は「FPIC(事前の自由な意志による十分な情報を得た上での合意)をめぐる論点とその森林分野での対応」。天然資源管理や地域開発のプロジェクト実施上の過程で生まれた先住民を含む弱者への配慮と住民の智恵の活用の二面をもった国際的なコンセンサスの展開過程を解説している。このテーマに関連して、我が国では、森林認証制度の日本の基準作りの中で北海道と奄美・琉球列島の森林管理のリスクが議論されているが、グローバルな議論が日本の森林管理のガバナンスの現実にどう反映するのか。また、日本が取り組んできた同種のテーマが、国際的な議論の中で、どう貢献するべきなのか。話題は尽きないテーマである。

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