ニュースレター No.2242018年4月22日発行 (発行部数:1420部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそって月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:求められる木の建築・活動とはー第13回木の建築賞公表(2018/4/22)
2. 花粉の季節ー無花粉スギの開発考(2018/4/22)
3. クリーンウッド法事業者登録最新の情報(2018/4/22)
4. 霞ヶ関村のローカルな課題ー勉強部屋ニュース224号編集ばなし(2018/4/22)

フロントページ:いま、求められる木の建築・活動とはー第13回木の建築賞公表(2018/4/22)
第13回木の建築大賞
香美町立村岡小学校・村岡幼稚園

第13回木の建築賞の発表がありました。

第13回 木の建築賞 結果発表(木の建築フォーラム
◆ NPO木の建築46号

森林と利用先である建築物との間をつなぐ建築係者が、「地域の文化や風土が表現され、木の建築文化と芸術の振興に寄与」した上で「木材を主として用い、森林の保全、林業、木材産業の振興に寄与していること」(選考基準より)という課題に取り組む、歴史のある建築賞です。

建築賞ではめずらしい作品と活動を両方評価するというこの賞の、活動面の担当の選考委員をしていることもあり、自分が評価に参加してた事例を中心に紹介します。

(木の建築大賞:香美町立村上小学校・村岡幼稚園)

今年の大賞は、香美町立村岡小学校・村岡幼稚園。今井信博(株式会社現代計画研究所)
関連サイト【公共木造施設】~香美町立村岡小学校、幼稚園地域材で建築完成!!~

兵庫県北部但馬地域、山間部の小学校の、大規模改修と特別教室・幼稚園の木造による改築です。

廊下と教室の間の木材に囲まれた小空間。楽しいそうですね。

活動面でのポイントは、設計段階から施工段階まで地元の木材を使う中心となった木材コーデネーターの役割だとされています。

木造による改修工事に木材コーディネーターを起用して、その木材利用計画に基づいて設計を進めることで、地域の木材を活かした設計が無理なく実現されている。 ・・・
木材コーディネーターの役割と設計者との共同の仕組みも、画期的な試みとして注目に値する。
(講評より)

(木材コーディネーターの役割とは)

木材コーディネーターをつとめた、NPO法人サウンドウッズがこのプロジェクトの説明用に作成した、図は以下の通りです。資料室「地域の公共建築を地域の木材でつくるー木の学校」村岡小学校改築工事」参照。

建築会社が施工過程で市場に流通している木材を購入して建築するのでなく、地元の町内の木で創る作業を効率的に行うための仕事です。

 
 

さらに興味のある方は、資料室安田哲也(NPO 法人サウンドウッズ代表理事)「木づかい社会の定着のための突破口~木材コーディネーターは誰に何を伝えなければならないのか~」(森林技術誌 No.905 2017.8掲載)(掲載許可をいただきましたありがとうございます)を是非お読み下さい。

(木の活動賞、メンバーズチョイス賞、かしも木匠塾)

 かしも木匠塾2017年開校式

木の活動分野の大賞にあたる「木の活動賞」は、かしも木匠塾、中島大地((株)中島工務店)
関連サイト・加子母木匠塾

22年前から、森林や林業と深い関わりを加子母村(現在中津川市加子母)に、全国から大学生たちが集まり(2017年は今年は8 大学288 人!)、木造建築実習に取り組む夏の合宿です。

毎年学生たちが決めたテーマに基づき、公共の建物や学校遊具、バス停、公園のベンチなどを、地元の工務店の指導のもと製作。「大学での勉強だけでは習得する機会のない日本の伝統的な木造建築の技法を体感できるの」というわけです。

1995年から2017年までの卒業生は4000人 だそうです。

資料室かしも木匠塾活動シートを参照ください

かしも木匠塾(金沢工業大学) (@kashimokodai) | Twitter
東洋大学かしも木匠塾 (@toyo_mokumoku) | Twitter
立命館かしも木匠塾 - Home | Facebook
 OB・OG のネットワークを活用して次のステップへ

加子母の記憶を心に刻んだOB・OG が全国に広がっている――これが、22 年に亘ってかしも木匠塾を継続開催してきた最大の成果である。加子母は「森林・木材・木造建築」を基幹産業としてきた地域だ。加子母の住民や工務店にとって未来の建築を担う学生たちを受け入れてきた経験は、自らの生業を見つめ直すきっかけとなってきた。学生たちにとっては、大学ではできない貴重な体験が建築を志す上での羅針盤となり、建築実務における糧となってきた。かしも木匠塾は、設立当初の目的を着実に達成してきたのだ。
初期に参加したOB・OG がそれぞれのフィールドで一人前になってきた今、木匠塾の次のステップとして彼らとの連携も考えていきたい。加子母に縁も持ちながらもより幅広い分野の知識と経験を持つ彼らの力が加われば、地域に根差しつつ、さらに多様な活動ができるに違いない。木匠塾でつながった人たちがその力を持ち寄って次の世代を育てていく。それはきっと、木造建築と木材産業を支えていく礎のひとつになるだろう。

資料室かしも木匠塾活動シートより

楽しみです。

(木の建築賞、しそうの杉の家)

 

私が現地審査に加わったプロジェクト。しそう杉の家ー播磨地域における里山の循環型住居システムー(三渡真介、(株)山弘)です。
関連サイトヤマヒロ

近くの山の木は運動はしっかり定着しているようですが、サプライチェーンをすべて自分の会社にして、近くの山の木の良さをすべて、くみ上げる、究極のすがたかもしれません。

資料室しそう杉の家活動シートを参照ください

 「しそう杉の家」は、手の入らなくなった里山の杉と山木を用いることで、里山の環境を再評価し、基幹産業の林業を再興させるための里山循環型の住居システムです。このような地域の文脈性から生まれた建築は、地域に生きるもの同士がつながり、現代社会に適応した新しい農村民家のあり方として魅力的な農の風景を描いていくと考えています。

資料室しそう杉の家活動シートより

以下私の講評です。

兵庫県西部の一級河川揖保川上流の宍粟市。シソウ杉の産地として再び豊かな森林資源をベースにした活性化を図る課題を抱えている。ここに所在する工務店と山林会社が一体となって、森林の作業から家造りまでを一貫して実施する体制を構築し、姫路市など下流域の都市地域に、播磨地域の里山循環型住宅システムとして訴求し、数十棟の新築・改築に取り組んでいる。

「近くの山の木の家」の運動は、20年ばかりの歴史をもって広がり、決して主流にはなっていないが、しっかりした流れとなっている。その取り組みをリードする好事例として参考にしてほしいプロジェクトである。

履歴がわかる,90パーセントが同じ流域の木、庭には山の生態系の復元、上下の流域という関係性がわかりやすい。

一貫した生産体制であることを活かして、木の様々な部材を活用した歩留まりの向上、自然乾燥・低温乾燥といった一時的なコストリスクをかぶった技術改善への取り組みなど、サプライチェーンを一体化した体制を武器に技術的な成果をあげている。

もう一歩、水源である揖保川上流の木で家、といったコンセプトをしっかり持って市民に体系的に訴求し、その蓄積を他の地域にも広げてほしい。 

(木の建築賞で気になった点ーローカルな活動のグローバルな意義)

入選作品の内、大賞と私が関与した活動系のプロジェクトについて紹介しました。地域の中のつながりなどがよくわかる、素晴らしいプロジェクトです。

が、少し気になったのは,ローカルはいいのですが、グローバルな視点はどうなのか?特に、この時期に行われた審査過程でクリーンウッドの話が出てこなかったことです。(ウッドマイルズフォーラムの責任でもあるかな?)

ローカルに手間をかけることの重要な意味の一つが、グローバルに議論されているトレーサビリティにつながる大切な要素の一つであるという視点が是非、議論されるべきだと思いました。来年は審査基準の中にでも入れてほしいですね。

kokunai3-57<13kinokentikusyo>


花粉の季節ー無花粉スギの開発考(2018/4/22)

   

無花粉スギの研究最前線(森林総合研究所、季刊森林総研No40)

特集花粉発生源対策ー花粉症がなくなる春は近い?(日本森林技術協会、森林技術N0.913 2018年4月号)

森林技術者、森林研究者が自分たちの持っている情報を対外的に発信する重要な媒体である二つの雑誌が、花粉症対策・無花粉スギの開発などについて特集を組んでいます。

都会の人々の多くが花粉症に悩む季節。なぜこんなに悩まなければならないのか?スギ花粉をこんなにまき散らしている責任者は誰だ。・・・

(花粉の発生源対策)

ということで、林野庁の担当者も①伐って利用し、②植え替え、③出させない「スギ花粉症発生源対策」を説明します(森林技術、論壇中村隆史「花粉症発生源対策の推進に向けて」)。

資料室に花粉症に関する関係省庁担当者連絡会議設置要綱(文部科学省、厚生労働省、農林水産省、気象庁、環境省)と、スギ花粉発生源対策推進方針(4月1日)をおいておきます。

過去の反省をふまえて、総動員で花粉のないスギの開発と植え替え。

社会問題となっている花粉症問題について、その対策のうち、発生源対策を担当する立場にある森林技術者の技術的アプローチが、こうなるのは不自然ではない、とは思います。

が・・・

(社会問題化した背景は)

それはそれとして、一体なぜ花粉症がこんな社会問題になるように蔓延してきたのか、ということについての,共通の認識をもっていないと、また、変な方向に行くような気がします。

「東京都内のサラリーマンを対象とした大規模な疫学調査の結果では, 1962年には花粉症は皆無であったのが, 1997年にはスギ花粉症の有病率は33.8%まで上昇したと報告されている」のだそうです(朝倉光司、アレルギー性鼻炎の地域特性)。

その論文では、1. 花粉飛散数と地域特性(有病率は花粉の量と相関があり、都市が農村に比較して有病率が高い)、2. 住環境の影響(集合住宅住人は戸建て住人より有病率が高い)、3. 大気汚染と花粉症(同じ花粉量では国道沿いが、他の地域より有病率が高い)、などの研究結果が紹介されています。

花粉症はスギの花粉が直接発病のきっかけになっているのは間違えないが、それが社会問題化した背景は、人間社会・生活の構造的変化である」と、いえるのではないでしょうか。

(無花粉スギの開発の行き先は)

自分たちの都合で、社会問題化した問題の対策として、「スギの無花粉化」という、植物種の存続に関わるような遺伝的情報の拡大を図ることが、本当に正しいことなのか?

森林技術者・研究者のしっかりした議論が必要だと思います。

kokunai6-47<mukafunsugi>


クリーンウッド法登録事業者の現在数(2018/4/22)

「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(通称「クリーンウッド法」)」に基づき、 木材関連事業者であってその取り扱う木材等について合法伐採木材等の利用を確保するための措置を適切かつ確実に講ずる方は「登録実施機関」による登録を受けることができます。

現時点(2018年4月20日)のクリーンウッド法木材関連事業者登録数は以下の通りです。

登録実施機関 1月15日 2月15日 3月15日 4月15日 4月20日
一般財団法人日本ガス機器検査協会 2 3 3 32 33
内業界団体一括申請 27 27
一般社団法人日本森林技術協会 2 4 6 7 7
公益財団法人日本合板検査会 2 5 16 26 37
公益財団法人日本住宅・木材技術センター 2 3
一般財団法人建材試験センター 2 2
合計 6 12 25 69 82
2018年4月20日現在登録実施機関のウェブサイトによる(持続可能な森林フォーラム作成)
http://www.jia-page.or.jp/environment/cleanwood/directory/index.html
http://www.jafta.or.jp/contents/cw/10_list_detail.html
http://www.jpic-ew.net/work/document/registrar.pdf
http://www.howtec.or.jp/relays/download/?file=/files/libs/2004/201804171505412789.pdf
https://www.jtccm.or.jp/biz/ninsho/tabid/688/Default.aspx

boueki4-70<CWkazu201804>


 霞ヶ関村のローカルな課題?ー勉強部屋ニュース224号編集ばなし(2018/4/22)

国有財産の価格設定、公文書書き換え、財務省の失態理由がトップの政治家への忖度、というわかりやすいストーリーなので、わかりやすい決着に向かうかな・・というときに、役人トップのセクハラ。

国会審議が止まりそうで、とりあえず、審議中の森林経営管理法の行方が気になります。役人のセクハラ問題など、霞ヶ関の大掃除などといっても、日本国霞ヶ関村のローカルな課題であり、次世代の循環社会を視野に入れた、森林経営管理法とどっちが大切なのか!などというと混乱しそうなので、「どちらも大切です」とします。

建築関係者と山づくりの関係、無花粉スギ、循環社会に関係あるトピックスです。作成過程で、何人かの読者の方と、話をさせていただきました。ありがとうございました。

今後、読者の皆さんとのコミュニケーションをできるような勉強部屋ページの改訂版も視野にいれています。ページデザインも少しフレキシブルになるように、スマホに対応できるようになどなど・・・。皆様のご意見もお待ちしています。

次号以降の予告、森林環境譲与税の施策事例集、新たな森林経営管理法を巡る国会議論、林業経済研究所70周年記念出版、東京オリパラ調達方針の検討進む 、森林環境税の海外発信

konosaito<hensyukouki>


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp