ニュースレター No.2072016年11月26日発行 (発行部数:1390部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:ドイツと欧州の森林保全意識とその源流(2016/11/27)
2. 木材資源利用の現状と課題―発電用の急増動向を踏まえてー林業経済学会秋の大会から(2016/11/27)
4. ー『林業経済』誌編集後記(2016/11/27))
5. トランプ選挙と森林のガバナンスー勉強部屋ニュース207号編集ばなし(2016/11/27)

フロントページ:ドイツと欧州の森林意識とその背景(2016/11/27)
 

林業経済研究所の前任所長山縣光明氏が上智大学で、「ドイツの自然保護の思想的潮流を求めて」という講演をするというので、聞きに行いきました。

11月17日シンポジウムドイツの環境意識の背景を探る

(ドイツにおける森林意識の源流)

「環境保全には、劣悪な都市の生活環境からの保全・改善と、貴重は動植物の保全、美しい景観を護という二つの側面(源流)があり、それが、現在の持続性(ドイツ語ではNachhaltigkeitというのだそうです)につながる」

リューネブルガーハイデの風景

このロジックを、ロマン主義などのたくさんの文学作品によりそいながら、解説、という質の高い講義でした。

といっても、あっという間のことだったのでよくわからないところがたくさんありましたが、これは上智大学にくればもっとよくわかるよ、という巧みな情報戦略かも。

以下にレジメを置きます。

 1.はじめに―自然保護?
 源流?/流れを育む大切な土壌/何を保護するのか?/保護するとはどのようなことか?

2.自然保護・環境保全における持続性という思想(理念)の源流
(1)現代の自然保護・環境保全と「持続性」の思想
(2)森から生まれた持続性の思想
  塩と森―ライヘンハル:永遠の森の思想/ザクセン国鉱山総監督カルロヴィッツと持続性原則/ドイツの森を救った持続性の思想
(3)ある林政学者の嘆き―持続性原則に基づく森林管理のジレンマ
  リューネブルガー・ハイデの自然の生々流転/ルドルフの告発⇔美学の追求したもの/郷土保護運動―いわゆる里山・里地の自然(=身の回りにある自然)を守る意識へ/ハイデの自然/残されることとなったリューネブルガー/森を巡る一般市民と専門家との意識のかい離

3.自然や森への愛と憧憬―醸成される市民の自然保護意識―いわゆる里山・里地の自然(=身の回りにある自然)を守る意識へ
(1)山、森、水に見る自然観の変遷
  アルプスや湿原・原野を人はどう見たか(ドイツ語圏の例、日本の例)/中世における鉱山と水への恐怖―環境破壊への初期の恐れと反省/山に入る『ルーネンベルク』の主人公―変化する山や森に対する思い
(2)ルートヴィヒ・ティークと自然や森への愛情を育んだドイツロマン主義
憧憬、自然との連帯感、さすらう楽しみ等々―ロマン主義のトポス/『フランツ・シュテルンバルトの遍歴』にみるロマン主義と自然・森へのあこがれ/『金髪のエックベルト』:少女ベルタの感懐と鳥の歌うリート/多くの人々が口ずさむWaldeinsamkeitという詩的表現/ティークそしてアイヘンドルフらの功績   

4.現代―統合される二つの自然保護の系譜、欠如?するもの
  「役に立つ」(経済的価値:外部経済的便益も含めて:目的論的保護)から保護する⇒⇒ 役に立たなくても保護する/基底にあるのは愛、連帯感(共感・共苦・思いやり)/・便益論的、目的論的自然保護⇔倫理的自然保護⇔他者に対する本源的な心の動き(愛、共感、思いやり)に根差す自然保護

詳しくは、当日配布された参照すべき文献のデータを、本人からいただいたのでこちらを参照ください。
ドイツ自然保護の思想的源流 201611山縣講演レジュメ 1110  同配布資料

16世紀から「森への思いやりという心の持ち方(Waldgesinnung)」が製塩業などの木材エネルギーの持続可能性などを背景として生まれ、19世紀にはロマン主義文学とともに「森への愛情」が花開く、といったストーリーなのです(だと思います)が、気になったのが他の欧州はどうだったのか?みんながそんな意識をどれほそ共有していたのか?という点です。というのも・・・

(「チャタレー夫人・・・」による19世紀英国の森林意識)

これには、小学校のクラス会で聞いた、「チャタレー夫人の恋人」(D.H.ローレンス)というイギリス文学作品の中身との関係でした(突然妖艶な作品名が出てきて申し訳ありません)。小学校の同級生であるT君が東洋大学文学部でこの作品を研究していて、久しぶりのクラス会で講義とビデオを見るという企画だったのですが、ローレンスの作品意図は、明と暗、精神と肉体、上流階級と労働者階級,、町と森という二項対立で読み解く、との解説です。その二項対立の一つに「町と森」というのがあるがの気になった点でした。

(ご存知の通り)貴族の夫人(コニー)と使用人(メラーズ)とのラブストーリーなのですが、「その使用人を森番としたところがローレンスの重要なポイントなのだなー」などと。産業革命をけん引する明るい英国の町、の対岸にある暗い森。これが強調されるほど、最後の森番と貴族の夫人が二人でカナダに向かう結末が、劇的になるという趣向なのだと理解していました。

チャタレー家が炭鉱を経営する事業者であることも印象的で、エネルギー源としての森林の管理という側面が全く失われた瞬間に、暗い森になったのではないか。

いずれにしても、森林にいろいろな面で日が当たりつつある(面がある)日本の現代、それに至る過程の市民の心象にある森林像が、どんな道筋で何をきっかけに変化してきたのか、いないのか、海外の事例など、興味深くこの勉強部屋でも追いかけていきたいですね。

(キリスト教と自然破壊?)

講演会で山縣講演をめぐて議論があったのが、標記のキリスト教徒が人間と自然との間の不適切な関係の源流を形成しているのでないか、という点。(キリスト教にかけられた“嫌疑”

「神は彼らを祝福して言われた。『生めよ、ふえよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ』。神はまた言われた、『わたしは全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたにあたえる。これはあなたがたの食物になるのであろう』」 (創世記の一節)

東洋と西洋の自然観の違いを面白く語るツールですが、この通説に対して、質問者に答える形で講演者の反論があありました。これについても、今後の課題とします。

山縣さん、T君よろしく。

junkan7-1(origineroforest)


木材資源利用の現状と課題―発電用の急増動向を踏まえてー林業経済学会秋の大会から(2016/11/27)

11月11-14日島根大学で林業経済学会2016年秋季大会があり、ばたばたと一泊二日で出席してきました。

林業経済誌の読者を集う、ビジネスとしても重要なイベントですが、一番の目当ては二日目のテーマ別セッション「木材資源利用の現状と課題―発電用の急増動向を踏まえてー」でした。プログラムは以下のとおり。

久保山 裕史(森林総研)・他   木質バイオマス発電における熱電併給事業の経済性評価  要旨  熱電併給の木質バイオマス発電事業採算性評価ツールを開発
 古俣 寛隆(北林試研)・他  FIT導入21年目以降の木質バイオマス発電事業に関する一考察 -将来の調達価格などの変動が与える影響-  要旨  固定価格終了後のFITバイオマス発電事業のシミュレーション、大変厳しい結果
 風 聡一郎(金沢大学)・他  温浴施設における薪ボイラーの導入実態  要旨
+報告資料
全国3自治体の導入事例、
 根本 和宜(国環研)・他  家庭向け木質バイオマス燃料の流通構造と課題  要旨  インターネットモニターによる調査
 福田 淳(林野庁)  木質バイオマスのエネルギー利用に関する最新の動向について  要旨
+報告資料
 新たに始めた政府木質バイオマス発電所利用量年次調査第一報
 都築 伸行(森林総研)・他  北陸地方における県森連による広域集材の実態と木質バイオマス発電プラントの設立に伴う木材需給の変化  要旨  地域的に拡大する木材需給を県森連という主体が担えるか
 横田 康裕(森林総研)  木質バイオマス発電のための原燃料の安定供給体制の構築  要旨  川下が主導する供給ネットワークの管理、信頼性の拡大が課題
 吉田 美佳(筑波大)  燃料用木質チップのサプライチェーンマネジメント形態と利害関係者の役割  要旨  海外のサプライチェーンと国内の零細チェーンの比較が必要か
 相川 高信(自然エネ研)  木質バイオマス発電の需給調整を巡る政府間関係の整理と分析  要旨  自治体主導の縦割り解消ができるか

要旨全体の一括ダウンロードはこちらから→テーマ別セッション1>>PDF形式 1.2MB
林業経済学会ウェブサイト

現場の丹念な調査に基づく熱電併給、需給安定など重要な政策課題に関する情報、行政の連携性への問題提起など、重要な報告が並んでいます。

来年に論文がオープンになるので、それまで報告データの開示が難しい方が多いので、少しお待ちを。

環境特性に応じて買い取り価格を規定するFITで、決定的に重要なサプライチェーンの信頼性という課題に迫る論考がなかったのは少し残念です。

「発電用の急増動向を踏まえて」と需給問題に特化する課題設定だったからなのかもしれませんが、「木材資源利用の現状と課題」というテーマでは生産者と消費者をつなぐ意味で木質原料の環境性能は欠かせない視点です。

3月の森林学会で次があるようなので期待しましょう。

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木の時代ー『林業経済』誌編集後記(2016年10月号)(2016/11/27)
1948年以来、林業経済分野の専門誌として毎月発刊をつづけている 『林業経済』誌)の編集後記を執筆しています。

編集委員会の了解を得て、このページに転載することとします。

学会と業界、官界、市民との間と架け橋になれるかどうか、大切な役割です。

少しでも、『林業経済』誌の認知度が広がる(なかで、購読者が増える)ことを願っています。(ご購入はこちらから

 目次 編集後記 
2016年10月号
<やまがら>真田昌幸と戦国期の山林保護思想...........村野八兵衛
 
論文
 近代材木商同業組合の成立と機能
  ─準則組合西川材木商組合を事例として─...............丸山 美季
書評
 岩田基嗣著『改訂版 異説 多摩川上流水源地の歴史』
  .........................................根津 基和
国際会議の紹介
 第23回FAO林業委員会の概要......................................増山 寿政 

「木材が最先端な材となったいま、世界の建築家は、サステナブルな木造建築で競い合っている」(隈研吾「21世紀はなぜ『木の時代』なのか」)前回の東京オリンピックにちなんだ体育の日には、マスコミが「世界中の目が集まるイベントでどのようなレガシーを作れるのか」という情報発信をしている。オリンピック憲章には「オリンピック競技大会の有益な遺産(レガシー)を、開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する」という一節があるそうだが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが「木の時代」の始まりを告げるイベントになるのかどうか。林業経済誌がグローバルの視野にたって議論すべきことだろう。

本号の内容は論文と書評、国際会議の紹介である。
論文「近代材木商同業組合の成立と機能―準則組合西川材木商組合を事例として」。市場経済の中で業界団体の果たすべき役割はなにかは、常に気になるところだが、秩父から東京への商品輸送を荒川での流送にたよる木材業者が、沿岸住民との紛争事案に対応するために形成した西川材木商組合。法令や社会インフラ整備が形成される以前の時代の同業者組合の背景・原点がわかる。

書評「改訂版異説多摩川上流水源地の歴史」は東京都の水源地管理の歴史だが、東京都の公式の見解に対する、異説。指摘する一つ一つの真偽は不明だが、行政の情報発信に潜在するリスクの可能性に思いをするのは大切なことだろう。
国際会議情報、FAO林業委員会。森林行政機関のグローバルなつながりの中で重要な会議の記録。政策の評価でグローバルな視点が不可欠な中で、大切な情報のわりに、ネット上でも十分な日本語の情報発信がされていないことを気にしていたこところ。
本号もよろしく。

roomfj <ringyoukeizaishi/hensyukoukin>


 トランプ選挙と森林のガバナンスー勉強部屋ニュース206号編集ばなし(2016/9/22)

思いかけない大統領選挙結果によって株価が上がった銘柄、下がった銘柄が話題になっています。それではと、森林に関係するウェアハウザーの株価を見てみると、上げ組のようです。

トランプ政権の出現にはグローバル化のリスクをこうむる人たちの不満の表れなのだそうです。

「市場のグローバル化のネガティブな面を、ガバナンスのグローバル化によってカバーしていかなければならない。」「地球温暖化問題のような対策は大国の抜け駆けがあると困難に陥る。今まで積み上げてきた、ガバナンスのグローバル化の枠組みを守す必要がある。」大統領選挙の直後に開催されたAPECリマ会合、気候変動枠組み条約モロッコCOP22が選挙の結果を念頭において発信したメッセージです。

相続税や所得税など引き下げ、エネルギー規制の撤廃などを,かかげるトランプ政権にとっては、グローバル視野に立った環境問題などは不得意な分野だあと言わざるを得ませんが、根気のいる作業が始まるのでしょう。

勉強部屋も、森林ガバナンスのグローバル化にすこしでも貢献できればと思います。

konosaito<hensyukouki>


最後までお読みいただきありがとうございました。

持続可能な森林フォーラム 藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp