ニュースレター No.2062016年10月29日発行 (発行部数:1390部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:ウッドマイルズの新たな情報発信ーウッドマイルズ関連指標プログラムの改定(2016/10/22)
2. シンポジウム「固体バイオマスの持続可能性確保へ向けて~英国の事例と日本の課題~」(2016/10/22)
3. 私たちの生活と森林(母校の小学校特別授業5回目)(2016/10/22)
4. 固体バイオマスの環境基準ー『林業経済』誌編集後記(2016/10/22)
5. グリーンウッド法の行方ー勉強部屋ニュース205号編集ばなし(2016/10/22)

フロントページ:ウッドマイルズの新たな情報発信ーウッドマイルズ関連指標プログラムの改定(2016/10/22)
 
 

ウッドマイルズフォーラムでは、木材の木材の輸送距離に関する環境負荷に関する、ウッドマイルズ、ウッドマイレージ、ウッドマイレージCO2(総量、平均)、流通把握度をウッドマイルズ関連指標算出を提唱し、会員向けにそれぞれの住宅を対象としたウッドマイルズ関連指標プログラムを提供してきましたが、このたびこれを、改定しました。

ウッドマイルズ関連指標算出プログラムVer.2016-01公開しました!こちらからどうぞ

会員以外の方にも改定の根拠データ等については、ウッドマイルズ研究ノート(その21)(滝口泰弘)、改定木材調達チェックブックで関連情報が提供されています。

上記の5つ指標のほかに、⑥森林の持続可能性 (%)、⑦木材の乾燥CO2 削減率 (%)、⑧木材の炭素固定 (t-CO2)が計算されます。

 <ウッドマイルズ関連指標>
①ウッドマイルズ (㎞)
使用された木材が、森林から算出拠点まで運ばれた距離
(1m3 あたりの平均距離)
②ウッドマイレージ (m3・㎞)
使用された木材に、ウッドマイルズを掛け合わせたもの
③ウッドマイルズCO2 (㎏-CO2)
使用された木材を、森林から算出拠点まで運ぶために必要なエネルギー消費によって排出される二酸化炭素の量(1m3 あたりの平均排出量)
④ウッドマイレージCO2 (㎏-CO2)
使用された木材を、森林から算出拠点まで運ぶために必要なエネルギー消費によって排出される二酸化炭素の量(総量)
⑤流通把握度 (%)
使用された木材が、森林から算出拠点まで運ばれる際の輸送経路について、確実に把握している輸送経路の割合(木材のトレーサビリティの把握の度合い)

<木材利用環境貢献度 総合評価>
上記のウッドマイルズ関連指標+
⑥森林の持続可能性 (%)
使用された木材について、産地(森林)の持続可能性が確認できた割合
⑦木材の乾燥CO2 削減率 (%)
使用された木材について、乾燥過程におけるエネルギー消費によって排出される二酸化炭素の削減率
⑧木材の炭素固定 (t-CO2)
使用された木材に固定されている炭素の量(二酸化炭素換算)

例えば、東京近郊に建てた住宅について部材を調べてみると・・・


住宅の部材が上記の履歴をもっていたとします。・

といった計算結果が提示されます。

(輸送CO2削減率)

ウッドマイルズフォーラムでは、日本使われる木材についてウッドマイレージCO2の平均値を割り出しています(全国平均値は研究の進捗状況に応じて随時改定されます)。この値と算出結果を比較して、ウッドマイレージCO2削減率を評価します。(普段日本で使われる木材のウッドマイレージCO2は8年前の平均値から下がっています(国産材化の見える化!!。この点については追って掲載ます)

(乾燥CO2削減率)

木材乾燥に使用される化石燃料の平均値と実際の使用量の差異を評価すべきですが、現状では、まだ化石燃料の信頼できる平均値が導き出されていませんので、本チェックブックでは、乾燥工程において、全て化石燃料による人工乾燥で行った場合と、実際に実施した乾燥工程で使用された化石燃料の差異から、木材乾燥における化石燃料削減量を割り出し、評価することとしています。利用するバイオマスの環境基準なども考慮する必要がありますね。

炭素固定期間などまだ、整理しきれていない面もありますが、住宅建設に取り組む関係者に木材の環境情報を幅広く提供するツールとして活用が期待できます。

こちらからどうぞ

enaergy2-72(woodmilesprgnew)

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 シンポジウム「固体バイオマスの持続可能性確保へ向けて~英国の事例と日本の課題~」 (2016/10/22)

9月12日NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)一般財団法人地球・人間環境フォーラム、 国際環境NGO FoE Japan主催の標記シンポジウムが開催されました

英国のバイオマスエネルギー推進の担当者の報告を踏まえた議論で、わたくしも「木質バイオマストレーサビリティと環境的基準-日本の運用と欧州-」と題する報告をさせてもらいましたが、英国の専門家と直接意見交換をする大変貴重な機会でした。

 プログラム  
  「英国の固体バイオマス持続可能性基準とその運用状況について」
  Jasmine Killen氏(英国OFGEM 燃料と持続性環境シニアマネージャー) 
 英語 
 和訳 
    「日本のFIT制度の現状と課題」
  吉野欣臣氏(経済産業省新エネルギー課課長補佐
 資料
    「木質バイオマストレーサビリティと環境的基準-日本の運用と欧州-」
  藤原敬氏(林業経済研究所所長) 
 資料
    「日本の木材チップ輸入の現状」 
  上河潔氏(日本製紙連合会常務理事)
 資料(抜粋版
  (全文
   パネルディスカッション「固体バイオマスの持続可能性確保へ向けて」
  パネリスト Jasmine Killen氏、吉野欣臣氏、藤原敬氏、上河潔氏
  司会 泊みゆき(NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事長)
 資料
 資料のリンク先はNPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)です
写真は国際環境NGO FoE Japanからいただきました
 

(欧州の基準と日本の基準)

環境経済政策学会報告の準備過程で作成し、このサイトでの紹介した(固体木質バイオマスエネルギーの 需給動向と 環境基準の展開の可能性ー環境経済政策学会報告)上の図、気に入ってこのセミナーでも紹介し、英国lの担当者とも議論しました。

この図がわかりづらいという声が多いので、補足説明します。

欧州の中でも英国とオランダが固体バイオマスの普及システムとその環境基準導入に先進的な取り組みをしています。

 英国  Department of Energy & climate change,UK (2014), “Woodfuel Advice Note”(2014)  和訳
(落合麻里訳)
 オランダ  Netherlands Enterprise Agency
SDE+ sustainability requirements for co-firing and large scale heat production

英国は、差額調整契約(Contracts for Difference:CfD)の下で補助、再生可能エネルギー購入義務(Renewables Obligation:RO) 及び国内・国外の再生可能熱インセンティブ(Renewable Heat Incentive:RHI) の下でのインセンティブなどの政策的な木質バイオマス普及をしていますが、そのため対象となる木質バイオマスに環境基準が要求されます。(今回のゲストはそのうち、日本の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下「FIT」)に対応するROを担当する方です。)

土地基準(由来森林の持続可能性とサプライチェーンの管理からなる)と燃料製造輸送過程の温室効果ガス基準からなっています。

(由来の基準)

日本のFITが要求している発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドラインは、環境基準とは銘打っていませんが(それ自体少し問題かもしれません)、英国の基準に当てはめれば、土地基準だということができます。

英国の土地基準の由来基準は、最低7割が持続可能性あと3割は合法を要求しています。

日本のFIT制度が高い価格を保証している木質バイオマスは「間伐材等由来の木質バイオマス」と「一般木質バイオマス」の二つのカテゴリーですがで、優遇措置がとられる「間伐材等」は、ガイドラインによると、国有林、保安林、森林経営計画の対象森林となっており持続可能性を念頭において規定されているものしょう。森林経営計画の認定基準と英国が要求する持続可能性基準との間がどんな関係になっているかなど、今後議論が必要です。

(サプライチェーンの基準)

土地基準のうちのサプライチェーンの管理について、日本のガイドラインは業界団体に認定された事業者のサプライチェーン管理を要求しています。

英国では、基本的には森林認証のCoCなど第三者によるチェックをされた事業者のサプライチェーンを求めますが、すべてそれを求めることは難しいので、業界団体認定事業者というツールのない、英国が、その代わりに使うのが低リスク地域を規定して、その中でのサプライチェーン管理を省くこと、輸入業者に自社の責任で可能な限りのサプライチェーン管理を要求すること(デユーデレジェンスDDL)の二つです

他の原料製品とくらべても網の目の細かいサプライチェーン管理を、第三者がすべてチェックするのには限界があります。

低リスク地域の決定について、英国のガイドラインは事業者に証明を任せる、としています。同じ地域から調達する別の事業者は一から証明しなければならない。DDSの持つ矛盾です。「低リスク情報は共有することが重要なのではないか」、英国のJasmine Killenもこれには同意しました。

もう一つ、Jasmine Killenに話したのは、「低リスクであっても、最低限業界団体認定のようなサプライチェーン管理が必要なのでないか。」

これも、どれだけ通じたかどうかわかりませんが、わかったと言っていました。

(今後の課題)

日本のガイドラインで要求されていない製造輸送過程の温室効果ガスを一定以内に抑えるとするGHG基準(液体バイオマス燃料の基準には組み入れられている)は、今後日本でも真剣に検討が必要でしょう。

消費国の基準が共有されて、いいところ学びあうことが重要です。そういう意味でも、日本のガイドラインが英訳されて、ウェブ上に公開される必要がありますね。これは勉強部屋で準備しています。少々お待ちください

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 私たちの生活と森林(母校の小学校特別授業5回目)(2016/10/22)

母校である新宿区立牛込仲之小学校6年生が伊那市にある新宿の森などに移動教室に行ってくるのを前に、「私たちの生活と森林」というタイトルで「特別授業」をさせてもらうのが恒例になっています。

ことしも、お願いして9月上旬に母校にいってきました。

1 水道の蛇口からいつでも水が出る理由
2 人と地球に優しい森林が育てた宝物ー木材
3 伊那市ますみが丘新宿の森について

といういつものプログラムに、2部は、政府公報番組のウェブ上で配信されている徳光&木佐の知りたいニッポン!~木づかい『森を育てるエコ活動』20分のビデオを見てもらいました。

都会の子供が、伊那谷の方々とどのような、コミュニケーションをはじめるのか、興味深いところです。長野の森林がどんな役割をしているのか、ポイントだと思います。

 

うまく伝わったかな。
東京オリンピック・パラリンピックと木の時代、これからも、いろいろなわかりやすそうなテーマがありそうせすね。がんばろっと、。

junkan4-5(ushinaka201609)

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固体バイオマスの環境基準ー『林業経済』誌編集後記(2016年9月号)(2016/9/22)
1948年以来、林業経済分野の専門誌として毎月発刊をつづけている 『林業経済』誌)の編集後記を執筆しています。

編集委員会の了解を得て、このページに転載することとします。

学会と業界、官界、市民との間と架け橋になれるかどうか、大切な役割です。

少しでも、『林業経済』誌の認知度が広がる(なかで、購読者が増える)ことを願っています。(ご購入はこちらから

 目次 編集後記 
2016年9月号
<やまがら>一冊の綴りから...Let it be ? i
 
特集 森林・林業基本計画の「変更」をめぐって
 森林・林業基本計画の変更について......上  練三
論説
 平成28年森林・林業基本計画と森林・林業基本法についての
  いくつかの考察.............柿澤 宏昭
論説
 計画の意義、目標、検証から考える森林・林業基本計画
  .............當山 啓介
論説
 新「森林・林業基本計画」をどう理解し、評価するのか
  ................泉  英二 
英国の「固体バイオマスの環境基準」について政策担当者から話を聞く機会があった。日本では固定価格買取り制度により需要が拡大する将来の発電用木質バイオマス燃料が、相当量の輸入燃料に依存する見通しであり、英国でも発電用バイオマス燃料の輸入が拡大している。木質バイオマス燃料の市場がグローバル化しつつある。環境的要素で各国が支援している木質バイオマスのような製品市場がグローバル化すると、それに応じて「環境基準のグローバル化」が重要な課題となってくる。
英国の再生可能エネルギーによる電力を支援、助成の条件に「固定バイオマスの環境基準」が運用されており、土地の基準・温室効果ガス排出基準からなっている。日本の発電用木質バイオマスの供給ガイドラインに基づく証明制度は上記のカテゴリーの土地の基準であり、燃料のライフサイクルでの環境負荷を示す温室効果ガス排出基準はない。他方英国の土地基準には、日本のガイドラインが提唱するような、業界団体による認定をうけた事業者による証明書の連鎖といった基盤がないため、低リスク地域を規定してサプライチェーンの管理を省くような仕組みをとっている。木質バイオマスの主役化のために、環境基準の議論のグローバルな共有化が必要であり、この分野でも産学官の協力が大切だと感じた。
さて、本号の内容は5月に策定された、「森林・林業基本計画」のをめぐる4つの論説である。上練三(林野庁研究普及課長)、柿澤宏昭(北海道大学教授)、當山啓介(東京大学助教)、泉英二(愛媛大学名誉教授)
5年に一度の「森林林業施策の基本方針」改定について、策定過程の中心者の解説と、長年フォローしてきたアカデミアの論客による評論である。林業の成長産業化を進めて成熟化する森林の次世代の森林をどう作るのかという重要なタイミングでの今回の計画だが、林業施策に比べて多面的機能に関する政策が見えにくいとの共通した指摘となっている。策定過程で突っ込んだ議論ができないものか、国民参加型計画の課題でもあるだろう。

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 グリーンウッド法の行方ー勉強部屋ニュース206号編集ばなし(2016/9/22)

最近、特に木材の輸入業者のかたから、グリーンウッド法の見通しを聞かれる機会があります。今年の5月に成立し、来年の5月に施行されるちょうど、中間点になっています。

特に輸入業界の方は、今のままの供給先と付き合っていてよいのか、別のルーツを開拓しないとだめなのか、来年の5月の施行をにらんで結構重要なビジネス上の判断をする時期にきているようです。

林野庁のガイドラインによる業界団体によって認定された事業者によるサプライチェーンの管理という仕組みは引き続きその役割を続けるようですが、輸入業者には供給者からの一枚の証明書だけでなく、自分でサプライチェーンのリスクの評価を求められるのではないか。

欧米の法令で基準となってきたデューデレジェンスDDSと日本のソフトなサプライチェーンの管理がタイアップしてどのような提案がされるのか、注目されます。

木材の環境情報を取り扱い。ウッドマイルズ、固体バイオマスの環境情報、今月の話題も関連情報です。

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

持続可能な森林フォーラム 藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

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