ニュースレター No.204 2016年8月27日発行 (発行部数:1390部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:建築関係者の木材利用への取組みー建築家協会JIA環境会議木材利用推進シリーズセミナー(2016/7/26)
2. 農業と森林の緊密な関係ーFAO第23回林業委員会開催(2016/7/26)
3.  2016世界の森林の現状(FAOの林業白書)(2016/7/26)
4. 参議院選挙ー『林業経済』誌編集後記(2016/7/26)
5. 熱帯で初めての五輪ー勉強部屋ニュース204号編集ばなし(2016/7/26)

フロントページ:建築関係者の木材利用への取組みー建築界協会JIA環境会議木材利用推進シリーズセミナー(2016/8/27)
   2010年
日本建築家協会賞
木材会館
設計者:
山梨 知彦(日建設計)
勝矢 武之(日建設計)

7月26日日本建築家協会JIA環境会議 木材利用促進セミナーVol.5「木造建築がつなぐ森林の循環」に参加して、「ウッドマイルズと木材のサプライチェーン管理」と題して話をさせていただきました。

日本建築家協会JIAは「建築の設計監理を行う建築家の団体」で「さまざまな社会貢献活動をしています」が、木材関係者のよく知るところでは、東京新木場の木材会館が2010年度に日本建築家協会賞をもらっています。

そのなかの、環境会議が木材の利用促進セミナーをシリーズで開催してきました。森林や木材の関係者が木材の利用促進の化活動をすすめる例は多いですが、建築関係者の団体の利用促進セミナーの概要は以下の通りです。

 Vol.1
2013/1/23
 環境建築の作品性と木材  坂茂(建築家・京都造形芸術大学教授)  作品づくりと社会貢献の両立を目指して/最近の木造建築作品
 平川泰彦(合板博物館副館長) 樹木の細胞が織りなす木の諸性質/福島の放射線の影響にも言及
 Vol.2
2014/2/21
 木構造の展開と環境建築デザイン  稲山 正弘(東京大学大学院木質材料学研究室教授)   流通材を用いた中大規模木造建築の構造デザイン
       
 Vol.3
2014/10/29 
マッシブホルツは次世代基幹建材になり得るか    網野 禎昭 (法政大学デザイン工学部建築学科教授)  「集住の木造 ヨーロッパの木造建築から「木と建築と社会」を考える」
 腰原 幹雄 (東京大学生産技術研究所教授)  「線材と面材 -都市木造の可能性-」
 Vol.4
2015/12/10
 木造文化と森林循環  野沢 正光 (野沢正光建築工房/JIA環境会議議長)  木造デザインのあるべき姿
 小島 孝文(林野庁木材産業課 課長) 木材を基本とした循環型社会への道
 Vol.5
2016/7/22
 木造建築がつなぐ森林の循環  小島 孝文 (林野庁木材産業課・課長)  木材活用による循環型社会への道
 藤原 敬 (ウッドマイルズフォーラム理事長・林業経済研究所長) ウッドマイルズと木材のサプライチェーン管理

木材利用促進セミナーVol.5「木造建築がつなぐ森林の循環」


基調講演1 : 小島 孝文(林野庁木材産業課 課長)
「木材活用による循環型社会への道」
基調講演2 : 藤原 敬(一般社団法人 持続可能な森林フォーラム)
「ウッドマイルズと木材のサプライチェーン管理」
パネルディスカッション (各パネリストが作品や活動のプレゼンを行い、その後会場を含めてクロストークを行う。)

山代悟 建築家 ビルディングランドスケープ共同主宰
福島加津也 建築家 福島加津也+冨永祥子建築設計事務所代表
福田彦一郎 林業家・材木店・工務店経営/とちぎ木づかいプランナー協会会長
井原良忠 彫刻家 森林アーティスト

日時 : 2016 年7 月 26 日(火)
16:00~19:00 懇親会
19:00~20:00 (CPD 認定プログラム申請中)
場所 : 新木場タワー1階大ホール (館内禁煙) 定員150 名(申し込み先着順)
参加費: 資料代1000 円 懇親会参加費:1500 円
主 催: 公益社団法人日本建築家協会(JIA)環境会議・国際交流委員会
協 賛: ジャパン建材株式会社、株式会社キーテック、秋田グルーラム株式会社、物林株式会社、株式会社宮盛、株式会社銘林

 昨年末のCOP21では、史上初のすべての国が参加する公平な温室効果ガス排出削減のための枠組みが出来て、世界各国が一斉に温室効果ガス排出削減に向けて動きだしました。今後はゼロエネルギー建築やプラスエナジー建築などの環境建築が急速に普及するだろうと予想します。しかし、たとえプラスエナジー建築であっても、建設時には多量の温室効果ガスを発生させるため、温暖化対策が短期的には温暖化を促進することになりかねません。しかし唯一木質建築だけが、建築内部に二酸化炭素を固定し、材料となる樹木の伐採後に植林された若木が二酸化炭素を吸収するという形で、地球の炭素循環にモラトリアムを作り出し、環境への負荷が少ない温暖化対策を行える特性を持っています。木材で作る環境建築は、地球環境対策の切り札と言えます。しかし木材を使えば必ず温暖化対策として有効だと言う事ではありません。日本は森林大国であるにも関わらず、林業が健全な産業として成立しておらず、認証林も僅かです。2020年の東京オリンピック・パラリンピック施設では認証材の使用が要求される事になると予想されるので、これが日本の林業の体質改善の機会になるかもしれません。今回のセミナーでは、日本の木材を軸とした循環型社会の現実を知ると共に、今なすべきことや将来の可能性について、多角的に議論したいと思います。

kokunai3-35(JIAmokuzai)


 農業と森林の緊密な関係FAO第23回林業委員会 (2016/8/27)

国連食糧農業機関FAOの林業分野の意思決定のため2年に1回開催されている23回林業委員会COFOが7月18日から23日ローマで開催されました。

公式のページ(英文)

議題は以下のとおり

1. Opening of the session
2. Adoption of the Agenda
3. Designation of the Drafting Committee
4. State of the World’s Forests 2016
5. Forests and trees and the 2030 Agenda for Sustainable Development
5.1 Forests, food security, hunger and poverty eradication: FAO’s work on the Sustainable Development Goals (SDGs) and the role of forests
5.2 Forest-related indicators, monitoring and reporting progress related to the achievement of the SDGs
6. Forests and climate change after the Paris Agreement
6.1 FAO's corporate climate change strategy and the role of forests
6.2 Funding opportunities for forests
7. Progress in implementation of the recommendations of past sessions of the Committee and
other FAO Governing Bodies

7.1 Decisions and recommendations of FAO Bodies of interest to the Committee
7.2 Voluntary Guidelines on National Forest Monitoring and Assessment
7.3 Establishment of a Working Group on Dryland Forests and Agrosilvopastoral Systems
7.4 Follow up to the Second International Conference on Nutrition
7.5 Progress in implementation of the recommendations of the 22nd Session
7.6 Statutory Bodies
8. Strategic directions
8.1 Follow up on the outcome of the XIV World Forestry Congress: Achieving the 2050
Vision for Forests and Forestry
8.2 Strengthening FAO's contribution to the International Arrangement on Forests
8.3 Hosting of the XV World Forestry Congress
9. FAO's work in forestry under the FAO Strategic Framework
10. Multi-Year Programme of Work for the Committee
11. Election of officers
12. Date and place of the next session
13. Adoption of the report
14. Closure of the session

国連森林フォーラムとか生物多様性条約、気候変動枠組み条約など国際機関で森林のことを扱う機関は少し増えてきましたが、国連食糧農業機関FAOが伝統的に森林のスタッフをたくさん抱え、主として途上国支援の見地からですが、国際的に森林の状態や行政の動向をウォッチしてきました。

その機関で2年に一回森林関係の意思決定をする場の議題のリストの情報からなにがわかるでしょうか。

今回の主要なメッセージは同時に公開された「世界の森林の現状2016」の副題となっている、「森林の農業ー土地利用の課題と期待」です。

少し詳しい内容は別ページに掲載しましたが、途上国の開発を進めるうえで重点が置かれる農業開発を進めていくうえで、森林や環境などに配慮した統合的な土地利用政策の必要性が強調されています。

4. State of the World’s Forests 2016世界の森林の現状2016(別ページへ)

地域ごとの森林面積の推移

引き続く熱帯林。転換の兆し

これらの分析の基礎には5. Forests and trees and the 2030 Agenda for Sustainable Developmentに示されたように、昨年国連で合意された2030持続可能な開発目標などが引用され、途上国の貧困対策のためのキーとなっている食糧農業開発の土地利用上の問題点を、森林サイドからしっかり問題提起をしなければならない、という点があります。

各国の政策的な優先順位の中で、すぐにはお金にならない森林の問題をどのような視点から重要性を理解してもらうか。

この点に関して、地球環境問題という視点から、森林の大切さを訴求してきた中心はFAOの運動です(勉強部屋地球上の森林の状態)が、今回の指摘は途上国の国内問題をとらえて訴求の視点を増やしてきたといえるでしょう。

プレゼンテーションデータ森林、食糧保障、飢餓と貧困の撲滅、持続可能な開発と森林の役割に関するFAO取組FORESTS, FOOD SECURITY, HUNGER AND POVERTY ERADICATION: FAO'S WORK ON THE SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS AND THE ROLE OF FORESTS

参考:前回の林業委員会COFO22についての、勉強部屋ページ持続可能な開発目標と森林の将来、FAO森林委員会での議論(2014/7/21)

chikyu4-19(COFO23)

世界の森林の現状(FAO森林白書から)(2016/8/27)

国際食糧農業機関FAOが2年に一回出版する森林白書が林業委員会に合わせ公表されました。

State of the World’s Forests 2016 Forests and agriculture: land-use challenges and opportunities6

今回の副題は「森林と農業と土地利用の課題と可能性」。
特に持続可能な開発目標2030などによる、開発計画の見える化、貧困からの離脱問題などと森林との関係をにらんだ編集となっています。

   
 熱帯林では森林の減少が大きく、農地が拡大している  森林と農地の増減、所得が増えると森林は拡大、農地は減少
   
  食糧生産と森林の拡大がうまくいっている国の教訓は
1 土地の権利を守り利用の変化を規制する効果的な制度的な枠組み
2 農業と森林のバランスの取れた政策調整
3 社会や環境保全を意識した農産物市場
4 経済の革新と成長
5 農業生産性と持続可能な森林経営への投資
6 地域住民と小規模所有者の参画
7 農業生産性の持続可能な森林経営への政策手段の活用
8 統合した土地利用の促進
   
 検討すべき課題
 各国は
土地利用の変化の効果的規制に向けた各セクター間の政策統合
バランスの取れた土地利用の戦略についての土地利用計画の作成
持続可能な農業生産持続可能な森林経営を促進する投資の増進と政策の利用
 FAOが各国を支援する点
森林、水、土壌、気候などに配慮した土地利用計画の開発
所有権の保全連携の強化による土地管理制度の強化
森林の社会的、経済的、環境的価値を確保する効果的な情報収集のモニタリング

途上国向けのメッセージではありますが、地球の持続可能な開発のための課題です。

我が国の取り土地利用計画の中での森林の位置づけなど、重要なメッセージになるのではないでしょうか。

国土形成計画平成2015年7月 

chikyu4-20(sofo2016)


参議院選挙ー『林業経済』誌編集後記(2016年7月号)(2016/7/26)
1948年以来、林業経済分野の専門誌として毎月発刊をつづけている 『林業経済』誌)の編集後記を執筆しています。

編集委員会の了解を得て、このページに転載することとします。

学会と業界、官界、市民との間と架け橋になれるかどうか、大切な役割です。

少しでも、『林業経済』誌の認知度が広がる(なかで、購読者が増える)ことを願っています。

 目次 編集後記 
2016年7月号
<やまがら>家具にまつわる「ストーリー」.Dwiのともだち i
 
特集 林業種苗生産の現状と課題(3)
論文
 需給調整が困難化する林業用苗木の生産及び流通の現局面
  .都築 伸行 
書評
 “Multi-level Forest Governance in Asia: Concepts, Challenges
  and the Way Forward”edited by Makoto Inoue and
  Ganesh P. Shivakoti..葉山アツコ
白書の紹介
 「平成27年度森林・林業白書」の作成・公表について
  ..寺村  智 
 
 平成28年度国土緑化推進機構「緑と水の森林ファンド」助成
  シンポジウムのご案内.
参議院議員選挙の結果が明らかになった。改憲勢力が2/3、与党が勝敗ラインとしていた改選議席の半数を大きく上回る、といいながら、3年前の結果に比べると一人区の野党の健闘など「揺り戻し」という要素もある。米国の大統領予備選挙、英国の国民投票など最近の先進国での国民の投票行動は、既成のシステムへの反発の風が吹き荒れているようだが、日本の有権者は、新たに投票権を獲得した若者を含めて、ほとんど風が吹かせなかったといえる。アベノミクス・地方創生、どれも「道半ば」の経済政策の推移が、今後、問われることとなるだろう。「林業経済」誌としてもしっかりフォローしてきたい。
本号の内容は論文・書評各一編づつと「白書の紹介」である。
論文「需給調整が困難化する林業用苗機生産及び流通の現局面」は特集「林業種苗生産の現状と課題」の3編目。長期の縮減から一部拡大がみられる林業用種苗の需給局面に、いままで構築された調整機能が対応できるのか。広域の需給調整、コンテナ苗などの生産要素の移行現局面の課題が把握できる論考である。是非、山林種苗業界の関係者のみならず、行政・森林資源に依拠する国産材関係者に広く読んで頂いたいものである。
書評は「Multi-level Forest Governance in Asia: Concepts, Challenges and the Way Forward(アジアにおける森林管理の多様な形態:明確な概念・挑戦、そしてその先に)仮訳」日本の研究者がリードしたアジアの多様な森林管理に関するセミナーの結果を取りまとめた英文の文献。気候・文化・歴史など多様条件下で「よそ者を排除しない開かれた地域コミュニティによる森林管理の可能性」という、明快なメッセージが発信されている。日本発・世界へ、魅力的な内容である。
白書の概要と舞台裏を紹介した「『平成27年度森林・林業白書』の作成・公表について」。編集委員でもある筆者が執筆する白書の概要と、閣議決定にいたる策定過程、来年度の内容の予告まで。サービス精神に富んだ論考を掲載していただいた。
今号も、ビジネスから行政・アカデミアまで、幅広い住民の皆さん方が読んでいただきたい論考がそろった充実した内容となっている

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 熱帯で初めてのリオ五輪ー勉強部屋ニュース204号編集ばなし(2016/6/26)

リオ五輪が始まった。体操競技で金メダルをとった瞬間には皆で拍手をする。市民が属している多様で重層的な所属団体のなかで国家というレベルの団体の重みを感じるイベントです。

森林の減少が続く熱帯地域で初のオリンピックの開会式では、出場選手全員が渡された樹木の種をポットに植え記念植樹につなげるといった演出で森林の再生への取り組みがアピールさました。

視聴者が十数億人といわれる巨大イベントで地球環境問題や森林の再生の大切さが訴求されるのは重要なことです。

オリンピック憲章には「環境問題に対し責任ある関心を持つことを奨励し支援する。またスポーツにおける持続可能な発展を奨励する。そのような観点でオリンピック競技大会が開催されることを要請する。」とあります

東京オリンピックでは国産材をつかった新国立競技場の舞台にどんなメッセージが届けられるのか楽しみです。

今回中心となったFAOの森林分野の意思決定機関である林業委員会の情報は、出席した林野庁の担当者からフォローしていただきました。

国際的枠組みに関する森林情報が途上国の支援問題になるのは仕方がないことかもしれませんが、先進国の市場がどうなるか、というトピックスがほしいですね。

konosaito<hensyukouki>


最後までお読みいただきありがとうございました。

持続可能な森林フォーラム 藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp