ニュースレター No.198 2016年2月20日発行 (発行部数:1390部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信してます。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:固体バイオマスの持続可能性の課題(2016/2/21)
2.  『林業経済』誌編集後記(2016/2/21)

フロントページ:固体バイオマスの持続可能性の課題(2016/2/21)

森のエネルギー研究所HPより

昨年の12月15日、バイオマス産業社会ネットワークが主催する「固体バイオマスの持続可能性確保に関する調査研究・啓発活動」キックオフセミナーに出席しました。

三井物産環境基金2015年度助成「固体バイオマス持続可能性確保に関する調査研究・啓発活動」というプロジェクトに参画することとなり、その初めての公開イベントでした。

「活動の概要と固体バイオマスの持続可能性をめぐる概況」 NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事長 泊みゆき

関心事項は、今後大きな問題となってくる、再生可能エネルギー電力買い取り制度(FIT)で輸入される木質バイオマスの取り扱い。長期エネルギー見通しでは400万KWの一般木質バイオマス・農産物残渣などがいるとされ、全部木質バイオマスだとすると8000万m3、半分でも4000万m3。大半が輸入材に依存せざるを得ない状況です。

発電用木質バイオマス証明ガイドライン―輸入材の運用状況と課題(2015/8/22)

本当に持続可能に提供できるのか?といったあたりが関心事項で、固体バイオマスの持続可能性基準の制定を視野に入れたプロジェクトです。

(液体バイオマス燃料の持続可能性基準)

日本でも液体バイオマス燃料(エタノール)の持続可能性基準が2011年から施行されています。
概要は以下の通りです

  非化石エネルギー源の利用に関する石油精製業者の判断の基準(平成22 年経済産業省告示第242 号)エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律関係条文集(64-74ページ)

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律第5条第1項に基づき、非化石エネルギー源の利用に関する石油精製業者の判断の基準となるべき事項を次のとおり定める。
(中略)

2.GHG 排出量の算定及び削減の基準について
石油精製業者は、バイオエタノールについて、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment。以下「LCA」という。)での温室効果ガス(Green House Gas。以下「GHG」という。)の排出量(以下「LCA でのGHG排出量」という。)を評価し、バイオエタノールのうち、(3)のGHG 排出量削減基準を満たすものを利用するよう努めなければならない

GHG 排出量削減基準は以下のとおりとする。
①バイオエタノールの利用に当たっては、LCA でのGHG 排出量が揮発油のLCA でのGHG 排出量(81.7gCO2eq/MJ)に比較して50%未満であるものとすること。(以下略)

3.食料競合及び生物多様性への対応について
(1)石油精製業者は、バイオエタノールの調達を行う際には、調達するバイオエタノールの原料の需給が食料価格に与える影響を回避できるよう十分に配慮するとともに、災害や異常気象等によりバイオエタノールの原料の生産量の著しい減少が懸念される場合等は、バイオエタノールの原料の生産量等、国が必要とする情報を国に提供することとする。
(2)石油精製業者は、バイオエタノールの調達を行う際には、調達するバイオエタノールの生産による原料生産国の生態系への影響を回避するため、原料生産国の国内法を遵守してバイオエタノール又はバイオエタノールの原料の生産を行っている事業者から調達を行うよう十分に配慮するとともに、バイオエタノールの原料の生産地域における生物多様性が著しく損なわれることが懸念される場合等は、当該生産地域における生態系の状況等、国が必要とする情報を国に提供することとする。

自動車の燃料を製造する石油精製業者は、一定割合を非化石エネルギー源を利用するよう義務づけられていますが、そこに利用される液体バイオマスエネルギーについて、原料収穫加工の過程のエネルギーを発熱量の半分以下にする、また、耕作地の食糧生産との競合、生物多様性へ配慮するというものです。

関連資料:バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会中間取りまとめ概要

(海外の木質バイオマスの環境基準)

イギリス・オランダでは(間接的土地利用転換を含む)固体バイオマスの持続可能性基準が導入されています。

2015年から導入された英国の基準の概要は以下の通りです。

 New biomass sustainability requirements for the Renewable Heat Incentive
再生可能熱インセンティブのための新しいバイオマスの持続可能性の要件

「再生可能熱インセンティブ(RHI)」のための新しい持続可能性基準は、このバイオマスが政府の助成をに関する炭素計画・環境目標に合致しことを示している。この新しい基準は、国内外のRHI参加者、すなわちバイオマス燃料の生産者・販売者に影響を与えることになる。

<新しい基準>
1.RHIの参加者が使用するバイオマス燃料は、ライフサイクルGHG排出が1MJあたり34.8グラムであるか、EU化石燃料平均値に対する60%のGHG削減を満たすものである必要がある。
2.土地基準:he criteria are outlined in the UK Timber Standard for Heat and Electricity:(熱および電気のための英国木材規格FSC/PEFCないし同等の独自の基準をたすことが規定されている)を満たすこと。

(日本の固体バイオマスの基準の将来)

上記のように、バイオマスの環境基準は、①製造や消費過程のエネルギーなどLCA関係の基準と、②原料生産にかかる土地などに関するの基準の二つからなっていいます。

現在日本の発電用木質バイオマスの証明のためのガイドラインでは、FIT価格に関連して、国内の民有林では森林経営計画だとか、保安林でなどで正規に伐採されたものを要求し(間伐材等由来のバイオマス)、輸入材では合法性証明を要求されます(一般木質バイオマス)。いわば土地の基準だといえます。

今後国際マーケットの中での競合で国際的な基準の構築などが視野に入ってくるはずです。

土地基準やLCA関係の基準などがどのように構築されるのか、興味深いです。

関連資料
相川高信:持続可能なバイオマス利用のための3原則20120417
三菱UFJ リサーチ&コンサルティング、信州大学経営大学院:日本におけるバイオマスの持続可能な利用促進のための原理原則201201
NPO法人バイオマス産業社会ネットワークなど、提言:日本におけるバイオマスの持続可能な利用促進のための原理・原則201203

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『林業経済』誌編集後記(2016年1月号)

1948年以来、林業経済分野の専門誌として毎月発刊をつづけている 『林業経済』誌の編集後記を執筆しています。

編集委員会の了解を得て、このページに転載することとします。

学会と業界、官界、市民との間と架け橋になれるかどうか、大切な役割です。

少しでも、『林業経済』誌の認知度が広がる(なかで、購読者が増える)ことを願っています。

 目次 編集後記 
2016年1月号
<やまがら>国際会議の進め方(ボヤンスコハンチェ・メラック)
新年のご挨拶( 箕輪光博)
2015 年国土緑化推進機構助成シンポジウーWood Job ルネサンスへの道─若者を山村、林業へ─
開催にあたって(土屋俊幸)
第1 報告 西粟倉村百年の森林構想と起業家的人材の発掘・育成(牧大介)
第2 報告 山村で「働くこと」の意味─緑の雇用と各種研修の取り組みから─(奥山洋一郎)
第3 報告 山とつながる暮らしをめざして ─「緑のふるさと協力隊」の若者たち─(金井久美子)
第4 報告 Wood.Job.3 年目の現場経験から(齋藤 朱里)
書評 餅田治之・遠藤日雄編著『林業構造問題研究』(三木敦朗)
 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場が、「日本の伝統的な木構造を現代の技術で甦らせ、世界に向けて発信する」(隈研吾建築都市設計事務所等共同企業体案技術提案書)とした「木と緑のスタジアム」となることが公表された。世界中の人が注目する日本のイベントの中心舞台が「木材を使った大規模建築物」となったことは、行政関係者、林業・木材業界、学会など関係者が長年かけた願いと、取組の結果であり、素直に喜びたい。と同時に、次の世代の主役としての循環可能な木材を供給する林業や木材産業の全プロセスが注目を浴びる機会でもある。オリンピック運動が積み上げてきた、環境と木材を橋渡しするトレーサビリティの仕組みなど、真正面から取り組んでいく必要があるのだろう。グローバルとローカルの関係、業界のロジックと環境サイドのロジックの関係など、本誌のフィールドの新たな課題は、業界関係者だけでなく、本誌および、読者・関係者の皆さん方の課題でもある。新たな年に新たな課題。しっかり受け止めていきたい。

本号の主たる内容は、昨年10月に本研究所が主催した、シンポジウム、「Wood Jobルネサンスへの道、若者を山村、林業へ」の詳しい記録である。「山村の若者離れ」の流れは近年変化が現れているが、まだ過渡期であり、「10年の壁」といわれる状況が立ちはだかっている。明快な視野が広がっているとはいいにくいこの状況に、このシンポジウムはいくつかの積極的な事例をもとに積極的に切り込んでおり、是非一読をお願いしたい。

当研究所フォロー研究員2名の編になる近著「林業構造問題研究」の書評。長い蓄積のある林業構造論研究がグローバル化時代の現時点の政策評価のプロセスに有効に機能するか、興味深い視点を提示している。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

持続可能な森林フォーラム 藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp