持続可能な森林経営の実現のための政策手段に関する勉強部屋
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ニュースレター 016
2001年1月11

このレターは、表記HPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。情報提供していただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで勝手に考えている方に配信しています。表記HPも併せてご覧下さい。御意見をいただければ幸いです。  藤原


目次

フロントページ:新世紀にあたり循環社会再考
「近くの山の木で家をつくる運動」意見広告とホームページ
林産物貿易の資料セーフガード資料集WTO環境と貿易ゲートウェイNGOの林産物貿易報告書
次号以降予告


フロントページ:新世紀に当たり循環社会再考

新年、新世紀明けましておめでとうございます
このサイトも足かけ3年になろうとしています。ご理解ご支援を頂き有り難うございます。

20世紀の大量消費社会からいかに早く決別してあらたな循環社会への転換をはかるかということが21世紀の課題となっているというのは、小サイトのバックボーンとなるテーマです。世紀の変わり目の冬休みに、関連する2冊の本を読み、循環社会について考え直してみました。

 リサイクル幻想

20世紀の最後の年に、グリーン購入法や循環型社会形成推進基本法などが成立し大量消費社会から決別する、大きな流れを感じます。ただ、心配なのは、循環型社会形成基本法の循環型社会の定義にみるように、循環型社会が資源のリサイクル問題に矮小化されている点です。現在取り組まれているリサイクルについて、鋭い批判が芝浦工業大学武田武彦教授(「リサイクル幻想」(文春文庫)2000年)によってなされています。ペットボトルを再生すると石油から作るのの4倍の資源がいる、という指摘です。小生も名古屋市民としてわが国で最先端をゆく分別収集に取り組んでいますが、それ自体は市民社会が成熟してゆく過程としてあまり悪口は言いたくはありません。しかし、グリーン購入法の基本計画の議論のように、「どの資材が化石燃料を節約できるか」という、最も重要な点になると、「話が大きくなりすぎて議論が収束せず、法律の施行自体ができなるから、とりあえず、リサイクルからやりましょう」(環境庁担当者の意見)、という政策当事者の問題意識では、本当の意味での循環社会に挑戦する気構えがあるのか疑問になります。現在の循環型社会論に重要な視点が欠けているということを示してくれる本でした。(その他、化石資源を遺産型資源、森林のような太陽エネルギーによって補填される資源を月給型資源とネーミングしているところなど面白いところです。)

 「限界を超えて」

大きな意味での循環社会論を見通す意味で、少し古い本ですが「限界を超えて」(Beyond the Limits(メドウズ他、ダイヤモンド社)を読んでみました(京都大学内藤教授の推薦によるもの)。現在の大量消費社会に対する警鐘の先駆けとなったローマクラブの「成長の限界」の著者のグループが20年後の92年に出した本です。(結構話題となって本ですから、たくさんの関連サイトがありますが、広がりのある面白いサイトを紹介します。)この本の中で、持続可能社会の条件として、@再生可能な資源の消費ペースはその生成ペースを上回らないこと、A再生不能な資源の消費ペースはそれに変わりうる持続可能な再生可能資源が開発されるペースを上回ってはならないこと、B汚染の排出量は、環境の吸収能力を上回ってはならないこと、の三つを上げています。
@は92年の地球サミット以降盛んに議論されていている持続可能な森林経営の中心的な概念で解りやすい課題です。また、Bは、木材を生産する際の環境へのインパクトを汚染の排出量とすれば、その吸収の範囲内での循環という、持続可能な森林生態系の管理の基本と関係する問題です。これも、持続可能な森林経営の重要な側面です。さて、問題のAですが、こう書かれると誰も否定しようがないが、誰もがこのように立論するのを躊躇するほど難問です。私たち自身のライフスタイルの変更や、本書が指摘するように現在の社会経済システムの構造変革なしには達成できない問題なのかもしれません。上記のリサイクル関連法などが避けている問題点です。ただし、小サイトでもとり上げている、木材のライフサイクルエネルギー、バイオマスエネルギーなどの問題などは、「再生不能資源に代わりうる持続可能な再生資源の開発」に関係する、この課題の一部を担うテーマであることは間違えないと思います。

 小サイトも循環社会を展望した大きなビジョンを踏まえながら、その中のほんの一部のテーマについてですが、少しずつ蓄積を積み重ね、発展性のあるサイトにしてゆきたいと思いますので、今年もよろしくお願いいたします。

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「近くの山の木で家をつくる運動」意見広告とホームページ

元旦の朝日新聞の第三特集の見開きページに「近くの山の木で家をつくる運動」の意見広告がのりました。全部で2271名の連名広告です。

・・・
山の荒廃をストップさせ、木の文化を蘇(よみがえ)らせるには、何を、どうしたらいいのでしょうか?
まず我々は、連鎖する自然と地域の営みの中に生きて在ることを知りたい。次に我々は、近くの山の木で家をつくる、という考え方を取り戻したい。山と町、川上と川下、生産者と消費者が面と向き合って話し込めば、お互いの置かれた現実がよくみえてきます。
・・・
こういうメッセージが、建築設計家や消費者のイニシアティブで発信されているところが新鮮です。愛知や岐阜の木材関係者の新年会の挨拶で紹介しました。朝日新聞を読んでない人がけっこう多いと言うことに気がつきました。また、当然呼びかけの中に入って当然という方がずいぶん抜けています。一ヶ月という短期間の取り組みだったのでしょうがないのでしょうが、すこし本腰をいれて続編にアプローチしたらどうでしょう。
コピーの内容は、元旦にオープンした緑の列島ネットワークのサイトに掲載されています。
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林産物貿易の話題

(1)林産物のセーフガード
林産物の輸入に関するセーフガードの適用について、議論が高まっています。小生の知り合いのある他官庁の特殊関税(相殺関税やダンピング関税などをそう言うことがあるようです)の専門家が、「日本が一度もセーフガードを発動したことがないのは、他の先進国の目から見ると異様である。何かやましいことがあるから権利を行使できないのでないかと思われている。」といっていました。普通の手続きで、淡々とやるということ必要だと思います。

セーフガードについての資料集
セーフガードとは

関係条約、関係法令集(一部工事中)
セーフガードに関する国内法令と、根拠となるWTO条約の関係をリンクでわかりやすくしたファイルです。
(条約テキストは中条さんのWTO条約集のホームページから本人の承諾を得て使用しています。条約と国内法のリンクについては特殊関税研究会編「特殊関税コメンタール」(日本関税協会発行)を参考にしています。)

各国のセーフガード発動状況
99年ガットセーフガード委員会の作成による各国のセーフガード調査実施、発動状況一覧表。95年以降だけで7カ国12件の発動実績。
セーフガードについての解説記事一歩進んでいる野菜の調査状況についての業界紙報道
WTOセーフガードのページへジャンプ
(2)環境と林産物貿易問題の文献
さて、当面のセーフガード問題と離れて、林産物の貿易問題は大きな目で見ると、環境と貿易問題との関係をしっかり議論しておかなければならないと思います。環境と貿易問題の議論の発信源は各国政府系のWTO、OECD、もう一つは環境NGO団体です。
WTOについては、1970年以来30年にわたる議論の蓄積があり、その議論の概要は、WTOサイトの中に「WTOホームページの環境と貿易の文献ー環境と貿易のゲートウェイ」(Trede-and-environment material on the WTO website - WTO/environment gateway)という解説付きのサイトで概観できるようになっています。入門編、歴史、WTOで議論した課題、環境貿易委員会文献集、紛争処理、質問箱、主な文献となっていて、初心者向けの概要書から、1999年に事務局が作成した詳細な特別報告書のダウンロードに到るまで、が掲載されている、大変便利なサイトです。事務局の了解を得て、一部和訳して掲載します。
WTOサイトTrede-and-environment material on the WTO website - WTO/environment gatewayへのリンクはこちら
和訳はWTOホームページの環境と貿易の文献ー環境と貿易のゲートウェイこちら
また、NGOの議論はその場の政治状況に機敏に対応することに精力が費やされ、ポイントをついている面があるものの、体系的に展開した文献がweb上ではあまり見あたりません(違いますか?ガット自由貿易に関するNGOサイドからの批判は環境問題だけでなく南北間格差、国内での社会的不平等の拡大といった幅広いものですが市販されている書籍リストは市民フォーラム2001というサイトにありました)。そのような中で、1999年の年末WTOのシアトル閣僚会議を前にして、環境NGOの大御所であるWorld Resourece Institute (世界資源研究所)がまとめた、「樹木の貿易―林産物貿易自由化の陰と光」と題した報告書がまとまっていると思いますます。WTOの次のラウンドでの議論を視野に入れて輸出国側から提起されている「林産物貿易の関税撤廃」などの自由化提案に対して「森林の脅威になり森林保護の障害となる可能性のある貿易自由化は、森林保護についての政策が並行して実施されるまで、これ以上推進すべきでない」との主張です。その他に森林政策の国際化という観点からの提案がなされており大変参考になります。要旨と目次を和訳しました。原資料の掲載サイトのリンクとあわせて掲載します。

World resource Insititute , Tree trade: Liberalization of international commerce in forest products: Risks and opportunities.
概要と目次和訳

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森林条約資料集
檮原森林組合認証資料

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中部森林管理局名古屋分局 藤原敬 
郵便番号(個別) 456-8620
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