ニュースレター No.156 2012年8月18日発行 (発行部数:1224部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:日本の森林の今を学ぶ:ウッドマイルズフォーラム2012から(2012/8/18)
2. 「持続可能な開発目標」と森林(2012/8/18)
3. 京都のモデルフォレスト運動とモデルフォレストネットワーク(2012/8/18)
4. 発電用バイオマス証明のガイドライン(2012/8/18)

フロントページ:「日本の森林の今を学ぶ:ウッドマイルズフォーラム2012から(2012/8/18)

(10年目を迎えるウッドマイルズ)

私も設立時から関わってきたウッドマイルズ研究会の総会が7月21日東京の新木場で開かれました。来年で10周年になります。

木材の消費者と生産者の距離に関する指標を、木材の環境負荷の一つとして見える化しようという取組みは、それ自体が、先進的な問題提起を含んでいたし、また、建築関係者が今の森林や林業に関心をもってもらう運動論としても貴重な役割を果たしてきたと思います。

幅広い問題提起を含んでいるだけに、どこに向かって次のステップを踏み出していくのか。「もう研究会ではなく普及の段階なので新しいステップを踏み出すべき」など、会としては検討を深める重要な時期にきていると、藤本会長も指摘されていました。

今後一年間検討をして、来年の10周年には再出発のビジョンを皆で確認できるようにしたいです。皆さんよろしくお願いします。

(日本の森林の今を学ぶ)

昨日のウッドマイルズ研究会の総会のあと、午後は「ウッドマイルズフォーラム2012日本の森林の今を学ぶ」が開催されました。会員の建築関係の方から出された「建築というビジネスのサイドから山作りに貢献しようと長いことやってきたが、今日本の森林はどうなっているの?」という問題意識に応えたものです。

ゲストの報告者は、静岡の金原明善を創始者とする金原治山治水財団理事長金原利幸さん、高知の、NPO法人土佐の森・救援隊事務局長中嶋健造さん、大分の株式会社トライウッド木川研史さん、の三人に、コメンテーターが、大日本山林会の箕輪光博会長、日本木質ペレット協会熊崎会長、林野庁小坂善太郎首席森林計画官、ウッドマイルズ研究会藤本昌也会長、それに藤原、コーディネーターは三澤文子さんというメンバーでした。

日本の森林林業の一番の根の深い問題は、伐採時期を次々の迎えつつある日本の森林資源が市場(製材所の資材置き場や市売り市場)まで出てくるまでに大変なコストがかかり、一番近い日本の木材建築部材の市場の中ですら、(間伐の補助金などがないと)海外の製品と勝負にならない、という現実です。

そのためには、①品質や再生産過程の信頼を確保しつつ、真っ向勝負でコストを引き下げる努力を徹底的にすることと、②環境問題や顔の見える関係などを通じて国産材や地域材のマーケットを輸入一般材と切り離して確立すること、という二つのアプローチがありますが、多分そのどちらも必要なのでしょう。

今回の三人の報告は、その二つの面でまだまだやることがたくさんある、ということでした。
金原さんの造林から(!!)丸太の生産までのコストを10000円/m3という具体的な提案、中嶋さんの「丸太の生産ゆこう過程を請負化しない副業型自伐林家」でコストも含めた基本的な問題のかなりの部分は解決するという話、木川さんの山林所有者から施主までの対話型合意形成のやり方、どれも説得力のある話でした。

国産材の丸太市場が大混乱しているさなかの開催だったので、少し心配していましたが、どの報告も力強いものでした。

概要はウッドマイルズ研究会のこちらに掲載されています

energy2-63<WMF2012>


「持続可能な開発目標」と森林(2012/8/18)

リオ+20の中で、2015年までのミレニアム開発目標MDGsの後を受けて持続可能な開発目標(SDGs)を作成することが決まりましたが、この作成作業の中で森林に関する目標がどう取り扱われるかが、注目点です。

(ミレニアム開発目標の背景)

先輩にあたるミレニアム開発目標について見ておきましょう。

1980年代に主流だった市場に基礎をおく途上国の開発計画が貧困拡大などの社会問題を生み出した反省にたち、90年代に貧困の撲滅などの議論が進み、その成果と、2000年9月の国連ミレニアムサミットでの国連ミレニアム宣言の二つを統合し、2015年までの目標としてミレニアム開発目標MDGsが策定されました。

この辺は外務省にわかりやすい解説ページがあります
国連のMDGsページ(英語)

それが途上国の開発目標として一定の成果を上げてきたので、さらに枠組みを広げて先進国を含めた2015年を出発点とした持続可能な開発も目標を策定しようというものです。

(ミレニアム開発目標の内容と森林)




ミレニアム開発目標は8つの目標(ゴール)、21のターゲット、60の指標からできています(MDGsの一覧表はこちら)。

骨子となる目標は、①極度の貧困と飢餓の撲滅、②初等教育の完全普及の達成、③ジェンダー平等推進と女性の地位向上、④乳幼児死亡率の削減、⑤妊産婦の健康の改善、⑥HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止、⑦環境の持続可能性確保、⑧開発のためのグローバルなパートナーシップの推進の八つです。

上記にような背景から途上国で緊急に達成すべき社会問題の克服という課題が並んでいます。

その中で森林にかかるものは7の目標:環境の持続可能性確保でそのターゲットと指標は以下のようになっています。

目標 ターゲット 指標
Goal7
環境の持続可能性確保
Ensure environmental
sustainability
ターゲット7.A:持続可能な開発の原則を国家政策及びプログラムに反映させ、環境資源の損失を減少させる。


ターゲット7.B:生物多様性の損失を2010年までに確実に減少させ、その後も継続的に減少させ続ける。
7.1 森林面積の割合
7.2 二酸化炭素の総排出量、一人当たり排出量、GDP1ドル(購買力平価)当たり排出量
7.3 オゾン層破壊物質の消費量
7.4 安全な生態系限界内での漁獲資源の割合
7.5 再生可能水資源総量の割合
7.6 保護対象となっている陸域と海域の割合
7.7 絶滅危機に瀕する生物の割合
ターゲット7.C:2015年までに、安全な飲料水及び衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減する。 7.8 改良飲料水源を継続して利用できる人口の割合
7.9 改良衛生施設を利用できる人口の割合
ターゲット7.D:2020年までに、少なくとも1億人のスラム居住者の生活を改善する。 7.10 スラムに居住する都市人口の割合

(MDGsの評価)

外務消のサイトにMDGsの達成状概要が掲載されちます。地域ごとに主要な指標ごとの達成状況の評価がされています。毎年公表されている国連ミレニアム開発目標報告(2011英語版(PDF)2010日本語版(PDF))などによりものです。

UNDPが作成しているMDGMoniterというサイトでは、さらに詳しい国ごとに8つに目標がそれぞれ達成しているかどうか、掲載されています。(国ごとの評価ページ

(図)MDGsの達成状況


外務省関係ページよりhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs/about.html#report

もっとも進展なしの地域が多いのが森林破壊防止の項目です。

このように、MDGsは、複数の分野を包括した数値目標の設定、達成期限を明確にし、透明性のある評価システム、これにむけて基金の設立など具体的な動きになっていることが評価されたものです。

2012 年6 月1~2 日 ポストMDGs ワークショップBackground Paper、地球システム制約下のポストMDGs 策定へ向けた動向-持続可能性目標(Sustainability Goals)へ向けて-
が参考になります

ポストMDGsに関する提言
1. グローバルなベンチマークを設定し、トップダウンではなく、ボトムアップで各国の状況に即した現実的で明確な目標の設定。
2. 行為主体間の連携や役割の強化、特に指標の設定の際にはローカルレベルの声をグローバルレベルに反映させるような仕組みの強化。また、その際の途上国の声を反映させる仕組みの構築。
3. 気候変動問題や人権問題などの、重要課題も含めたユニバーサルな目標設定。現行のMDGsの枠組みでは、気候変動、エネルギー安全保障、生物多様性の喪失、防災及びレジリエンス(対応力)の強化といった課題に十分対応できていない。
4. 中間目標(intermediate)目標を定め、目標達成の基準を明確化
Poku et al. 2011; Moss 2010;Verdenmortele2011; Guardian2010

(「持続可能な開発目標」の提案)

これらを受けて、さらに枠組みを広げて、先進国を含めた2015年を出発点とした、「持続可能な開発も目標」を策定しようという考えが、コロンビア政府グアテマラ政府の両政府から提案されました

その後、ペルー政府も含めた3カ国提案(2011年11月)となり、リオ+20の準備会合の中で、具体的な議論がされてきたものです。二つの提案の中で目標に当たる項目は、表の通りです。

2国提案 3カ国提案
Combating Poverty
Changing Consumption Patterns
Promoting Sustainable Human Settlement Development
Biodiversity and Forests
Oceans
Water Resources
Advancing Food Security
Energy, including from renewable sources
Food security
Energy access, including with renewable sources
Oceans, including fisheries
Sustainable human settlements (cities)
Water, integrated management

成果文書にもあるように、「できるだけシンプルに少数の指標をつかって」という議論があり、最初の提案にあった森林が、3カ国提案ではなくなっています。

今後国際政治の主流となりそうなこの開発目標の中に、森林の目標を具体的に設定できるのか、持続可能な森林の面積など定義が不明確なままに森林分野の目標に掲げられている事項が、この枠組みの中で記載できるのか。森林の持っている経済、社会、環境にすべてにわたっているトータルなサービルをバランスよく記載することができるのか。今後の国際政治の中で森林の管理が優先順位を上げていく上で重要な課題と思います。

既存の持続可能性指標や森林力指数などの研究成果の結集が必要だと思います。

(作業パネルメンバー)

リオでは秋の国連総会までに作業パネルを設置し、来演の国連総会に検討結果を報告するとしています。

そのメンバーが8月上旬発表されました(ポスト2015年開発目標に関するハイレベルパネルへの菅前内閣総理大臣の参加)。与党の森林林業調査会の会長をつとめる管前総理が国際的な場でどのような役割を果たすのか注目です。

kokusai4-1<SDGssinrin>


京都のモデルフォレスト運動と国際モデルフォレストネットワーク(2012/8/18)

リオ+20の準備過程で、世界中から環境と開発の問題に関する関係者が4万人もあつまる会合への出席予定の話をしていると、関係者から注文がつきました。

その一つが、京都モデルフォレストの関係者で、世界中から集まるモデルフォレストネットワークの関係者と情報交換の機会を持ってほしいというものでした。

背景説明をします。

(国際モデルフォレストネットワーク)

国際モデルフォレストネットワークIMFNは92年の地球ミットを契機に、カナダが持続可能な森林経営のモデルを作ろうと始めたもので、「地方のニーズと地球規模の懸念に配慮し、環境と社会経済的な課題を考慮して、持続可能な森林資源の管理をする(我々のビジョン)」としています。

はじめはカナダ国内に作り始めたネットワークですが、次のステップとして世界中に展開するため、国際的なネットワークを作ってきたものです。

世界中で24カ国、59地域の事業が参画していますが、日本でも京都府が主導して実施している京都モデルフォレストが2008年から参画しています。

(京都モデルフォレスト運動)

京都モデルフォレスト運動は、京都モデルフォレスト協議会を実施主体として、府民、府内の企業の森づくこ参加を促し、里山の再生や、府産木材の利用推進などを図っていくもので、各地で同種の活動が行われていると思いますが、企業の参加の規模など取り組みの広がりはすばらしいものです。
京都モデルフォレスト協会のページ広がる!企業参加の森づくり

またなんといっても、地方のローカルな運動が、グローバルなネットワークと直接つながっている大変興味深い取り組みです。

(リオでの会合)
左の写真は、リオの会場でカナダケベック州、ラクサンジャンモデルフォレストの関係者、アフリカモデルフォレストネットワーク関係者の三人と話をしたときの写真です。

左から順番に
○藤原

○Serge Harvey Director General
Agence de development des communaotes foerstieres ilnu et jeannoise
森林共同体開発協会理事長
カナダケベック州、ラクサンジャンモデルフォレスト

○Melie Mnnerat Coordonnatrice Reseau African de Forets Modelse アフリカモデルフォレストネットワーク

○Colette Robertson, 同 President 会長
カナダケベック州、ラクサンジャンモデルフォレスト

英文の京都モデルフォレストの紹介文を渡して説明しましたが、やはり興味をもったのは京都モデルフォレストの関係企業リストの広がりです。

カナダとアフリカのモデルフォレストの間で右の写真のボールペンの素材を木質プラスチックで作成するプロジェクトをしているとしていましたが、モデルフォレスト通しで木質資材の原料をつかったプロジェクトがアジア同士の中でもできる可能性があります。

京都のモデルフォレストの企業リストが単に京都の森林のみならず国際モデルフォレストネットワークを通じて新たなビジネスの展開の可能性があるのかどうか、いろいろ楽しみです。

kokusai0-8-9<rio+kyotoMFN>



発電用木質バイオマスの証明のためのガイドライン(2012/8/18)

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八が7月から施行されるに当たり、認定された事業者が発電した電力を電力会社が買い取る価格が決められましたが(経産省告示第139号)、バイオマスについては未利用木材、一般木材、リサイクル木材と三種類に価格設定がされました。

①未利用バイオマス(間伐材等由来の木質バイオマス)、②一般木材等バイオマス、③リサイクル木材バイオマスの三通りで、価格が33.6円/kWh、25.2円同、13.65円同となってるため、バイオマス発電事業者は自分の発電原料となるバイオマスが、ここに定義されたどのバイオマスかということを証明しないと、すくなくとも、①②の料金では販売できなくなります。

水力 バイオ
マス
メタン発酵
ガス化発電
未利用木材
燃焼発電
(※1)
一般木材等
燃焼発電
(※2)
廃棄物
(木質以外)
燃焼発電
(※3)
リサイクル
木材燃焼発電
(※4)
調達価格 40.95円 33.6円 25.2円 17.85円 13.65円
調達期間 20年間 20年間 20年間 20年間 20年間
(※1)間伐材や主伐材であって、後述する設備認定において未利用であることが確認できたものに由来するバイオマス(間伐材等由来の木質バイオマ)を燃焼させる発電
(※2)未利用木材及びリサイクル木材以外の木材(製材端材や輸入木材)並びにパーム椰子殻、稲わら・もみ殻に由来するバイオマス(一般木質バイオマス)を燃焼させる発電
(※3)一般廃棄物、下水汚泥、食品廃棄物、RDF、RPF、黒液等の廃棄物由来のバイオマスを燃焼させる発電
(※4)建設廃材に由来するバイオマスを燃焼させる発電

資源エネルギー庁「なっとく再生可能エネルギーより」
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/kakaku.html
そのために林野庁では、発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドラインを公表しました。

概要は以下の通りです。

(三種類にバイオマスの定義)
上記の三つの分類のバイオマスを以下のように定義しています
間伐材等由来の木質バイオマ ①間伐材、
②①以外の方法により次のいずれかの森林(伐採後の土地が引き続き森林であるものに限る。)から、森林に関する法令に基づき適切に設定された施業規範等に従い、伐採、生産される木材をいう。
ア森林経営計画対象森林、イ保安林、ウ国有林
一般木質バイオマス ① 製材等残材
木材の加工時等に発生する、端材、おがくず、樹皮等の残材
② その他由来の証明が可能な木材
製材等残材以外の木材であって、由来の証明が可能なもの
建設資材廃棄物 上記以外のもの

(証明方法)

「間伐材等由来の木質バイオマス及び一般木質バイオマスの証明は、当該バイオマスの「取扱者」が、次の流通工程の関係事業者に対して、その納入する木質バイオマスが間伐材等由来の木質バイオマス又は一般木質バイオマスであることが証明されたものであり、かつ、分別管理されていることを証明する書類(証明書)を交付することとし、それぞれの納入ごとに証明書の交付を繰り返すことにより行うこととする。」とされ、合法木材の業界団体認定事業者の連鎖と同様の方法を想定しています。

伐採時点の証明に当たっては、上記が確認できる許可書などのコピーや許可の過程がわかる情報が記載された証明書が必要となり、その後の流通加工過程では、分別管理がされたものであるむねの証明書が必要となります。

証明書には「当該取扱者が団体等の評価・認定を受けていることを特定できる情報(認定番号等)を記載することとする。」としています。

未だ、バイオマス発電として認定された事業者はなく、証明書の連鎖が必要なのはこれからですが、都道府県木連などの認定システムの導入が図られと思います。

(環境性能の表示のためのシステムとしての業界団体認定方式)

業界団体認定事業者による証明書の連鎖により需要者に川上の環境情報を提供する仕組みは2006年の木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン に端を発していますが、その後間伐材チップの確認のためのガイドライン、今回の発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドラインに受け継がれ、一定の環境性能を対外的に証明するためのシステムとして定着してきています。

木材の生産から消費者へのビジネスチェーンは、原料生産の現場が国内国外の各地にわたること(鉄やアルミニウムその他金属エネルギーで国内に原料供給の現場があるものはきわめてまれ)、加工プロセスが比較的簡素でも対応ができ各地に分散する可能性があることなどを背景に、きわめて複雑なネットワークになるため、それを全てカバーするには業界団体のような緩やかなネットワークの利用が不可欠であり、グローバルなシステムとしても先進的なシステムであると考えます。

これらのシステムの信頼性を担保する透明性や、自己検証性などのシステムの内在化について、議論が進むことを願います。


energy1-14<FITbioGL>



最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp