ニュースレター No.1222009年10月24日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:鳩山イニシアティブ下の気候変動枠組み条約と森林(2009/10/24)
2 オフセット・クレジット(J-VER)の中の推奨例リスト更新(2009/10/24)
3 ウッドマイルズ研究会京都セミナー開催(2009/10/24)
4 地球温暖化防止と森林の役割(国民森林会議から(2009/10/24)

フロントページ:鳩山イニシアティブ下の気候変動枠組み条約と森林(2009/10/24)

就任早々の鳩山総理が9月22日国連気候変動首脳会合で行った演説の中で「(温暖化ガスの排出削減)中期目標についても、1990年比で言えば2020年までに25%削減をめざす」との発言(外務省HP)が反響を呼んでいますが、新しい目標は森林吸収源対策にどんな影響をもたらすでしょうか。

もともと、「2020年までに1990年比25%の温室効果ガス排出量削減」は民主党の政策公約集の中に掲げられていたものですが、「25%削減目標には、排出量取引など海外からの排出枠購入や森林吸収の分も含むもの」と,、トヨタ労組の元幹部である直嶋経済産業大臣が解説しています(直嶋経済産業大臣記者会見)。

麻生総理が6月に発表した中期目標は「2005年比15%削減を目標とすることを決断」ですので90年比にすれば8%削減となりますが、「国内排出量削減いわゆる真水の目標」です。外国から排出権を買ってくる分や、森林吸収源を加算する分については除外されてます。

京都議定書では海外との取引、森林吸収源分で5.4%分が見込まれていますが、今後この分がどの程度になるのかが問題です。

後述するように日本の森林全体の温室効果ガス吸収量は今後徐々に少なくなっていく見通しです。今後決まるカウントの仕方によっては(森林吸収源の算定ルール)どんな数値になるか、予断を許しません。

京都議定書の時に6%削減が最初に決まって、あとで吸収源の大きさが決まったので、吸収源が大きくなると真水(排出量の削減目標)が少なくなるという問題点があり、一部の人たちから吸収量の取扱悪玉論となったのですが、今回も残念ながら同様の構図になりそうです。

(バンコク特別作業部会)

そういう中、9月28 日から10月9 日に、バンコクでCOP15に向けての気候変動枠組条約の2013年以降の次期枠組みに関する、二つの特別作業部会が開催されました。

林野庁:気候変動枠組条約次期枠組みに関する特別作業部会の開催結果について
外務省:国連気候変動枠組条約交渉バンコク会合(概要)

京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する第9回特別作業部会(AWG-KP9)では、@森林吸収量の算定ルール(比較対照するレベルの問題下図参照)、A伐採木材の吸収源としての評価の仕方が重要ななところです。

林野庁作成「森林分野における国際情勢説明会」090716

森林吸収源の算定ルールは、左図のように何と比較して人為的な吸収源の評価をするかという大きな問題が選択肢として残されてています。

この点について、「我が国からは、1990年以降の森林吸収量の推移についてデータ提供するとともに、次期約束期間においては森林の高齢化により減少傾向が見込まれることについて情報提供しました」とされています。

日本が事務局に提出した文書(英文)はこちらに掲載されています

日本の森林全体の温暖化ガス吸収量は微減傾向だが、管理された森林からの吸収量は増加する、のだそうです。

また、伐採木材のについては、輸出材、輸入材の取扱をめぐって、選択肢が残っているかたちになっています。いずれにしても、吸収源に計算されている森林から生産された木材のみが算定されることになるので、そのストックを正確に把握するためにはなんならのトレーサビリティが必要です。

議論の詳細は、条約事務局のホームページに掲載されている、各作業部会で議長が提示しているコペンハーゲンの合意文書の草案に反映されています。

森林吸収源や伐採木材についての取扱が議論される「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する第9回特別作業部会(AWG-KP9)」についての森林に関する部分の文書は「土地利用、土地利用の変化及び林業(LULUCF)の取扱のための定義、に関する交渉の大枠、規則、ガイドラインの扱い方に関する選択肢と提案」に関する協同議長による非公式文書Non-paper by the co-facilitators of the spin-off group Options and proposals on how to address definitions, modalities, rules and guidelines for the treatment of land use, land-use change and forestryです。

もう一つの「条約の下での長期協力行動のための第7回特別作業部会(AWG-LCA7)」という特別委員会では、REDD(森林の減少・劣化による温室効果ガス排出の抑制が議論されています。

この辺のところはFOEジャパンが日本語の解説をしています。

朝日新聞の解説記事「市場の力」で森林を守る「REDD」

kokusai2-33<hatoforest>


オフセット・クレジット(J-VER)の中の推奨例更新(2009/10/24)

カーボンオフセットは、市民、企業、NPO/NGO、自治体などが、自らの温室効果ガスの排出量の、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)を購入するなどでその排出量部を埋め合わせること(環境省:我が国におけるカーボンオフセットのあり方について参照)で、クレジットの認定手続きに推奨例(ポジティブリスト)が示されていますが、9月9日の認証運営委員会でそのリストに、@化石燃料から木質ペレットへのボイラー燃料代替、A木質ペレットストーブが追加されました。(環境省報道発表資料9/9)。

気候変動対策認証センターのHP(http://www.4cj.org/jver/index.html)に資料が掲載されています。

現在掲載されているリストは以下の通りです。

  • 排出削減系ポジティブリスト・方法論
更新日 ポジティブリスト
()は方法論
プロジェクト種類
2009/09/09 E001(JEAM001)
【旧0001】
化石燃料から未利用の木質バイオマスへのボイラー燃料代替
2009/09/09 E002(JEAM002) 化石燃料から木質ペレットへのボイラー燃料代替
2009/09/09 E003(JEAM003) 木質ペレットストーブの使用
2009/09/09 E004(JEAM004) 廃食用油由来バイオディーゼル燃料の車両における利用
  • 森林吸収系ポジティブリスト・方法論
更新日 ポジティブリスト
()は方法論
プロジェクト種類
2009/09/09 R001(JRAM001)
【旧0002-1】
森林経営活動によるCO2吸収量の増大(間伐促進型プロジェクト)
2009/09/09 R002(JRAM002)
【旧0002-2】
森林経営活動によるCO2吸収量の増大(持続可能な森林経営促進型プロジェクト)
2009/09/09 R003(JRAM003)
【旧0003】
植林活動によるCO2吸収量の増大

木質ペレットへのボイラー燃料代替の基準は以下のとおりです

適格性基準
条件1:ボイラーにおける木質バイオマスの新規利用により、化石燃料が削減されること。
条件2:使用される木質バイオマスは、日本国内で産出された未利用の木質バイオマス(林地残材(未搬出間伐材、枝葉等)、間伐材、製材端材等)であること1。 ※ 建築廃材は対象外。未利用の木質バイオマスを加工して木質ペレットを製造する場合は対象外(ポジティブリストE002を参照)

条件3:プロジェクトの採算性がない、又は他の選択肢と比べて採算性が低いこと。例えば、以下の条件のいずれかを満たすこと。
(1) @木質バイオマス利用経費 > A化石燃料利用経費2
(2) 投資回収年数が3年以上
(3) @木質バイオマス販売単価 < A木質バイオマス製造単価

排出量取引のクレジットに比べて、木質バイオマスの由来に関して、国産であり未利用であったことの証明など厳しい条件がつけらています。もちろん他の条件のものがだめだといっているのではなく、今回の推奨例にはのらないというだけですが。

関連してオフセット・クレジット(J-VER)の中の森林・バイオマス進捗状況090613)を改訂しました。

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ウッドマイルズ研究会京都セミナー開催(2009/10/24)

9月15日「ウッドマイルズセミナー2009〜「環境」と「品質」の総合力による地域材普及戦略を考える」が開催されました。

地域材のウッドマイルズを行政が認証する仕組みをくみを作ってきた京都府で、毎年開催してきた秋のセミナーで、本年で5度目になります。

9/15(火)13:00〜17:00
【第T部:地域材に求められる品質、普及戦略を学ぶ】
『地域材に求められる品質』
槌本敬大/国土交通省国土技術政策総合研究所総合技術政策研究センター評価システム研究室長
『木材を取り巻く環境指標、環境政策の動向』
滝口泰弘/ウッドマイルズ研究会事務局長
『地域材の普及戦略』
野池政宏/住まいと環境社代表
9/16(水)9:00〜12:00
【第U部:各地の取組から、現状の課題や可能性を探る】
『京都府の取組』
柴田繁/京都府農林水産部林務課主査、堀井誠史/京都府産木材認証制度運営協議会会長
『新潟県の取組』
二野宮雅宏/新潟県農林水産部林政課参事、重川隆志/(株)重川材木店取締役
【第V部:意見交換会】
(特別ゲスト)池渕雅和/林野庁林政部木材利用課長

ウッドマイルズ研究会のHPに丁寧な報告が掲載されています。

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地球温暖化防止と森林の役割(国民森林会議から(2009/10/24)

持続可能な森林管理についての研究蓄積を活かした政策提言を続けている国民森林会議の代表をされている只木良也先生(名古屋大学名誉教授)から、表記の論文と以下の説明文をお送り頂きました。

森林の炭素吸収機能と固定機能の二つを分けて考え、若齢から高齢の森林群を適正に配置して、バランスよく両立させることが重要という主張です。重要な視点だと思います。

さらに、来年の日本における生物多様性条約の締約国会合に向けた具体的な提案を期待します。

 昨年度の提言書「地球温暖化防止と森林の役割」について、八月二七日島田泰助林野庁長官、小林正明環境省大臣官房審議官に説明した。当日は只木会長、藤森提言委員長、山田事務局長らが出席、林野庁は古久保職員・厚生課長、環境省は平之山環境影響評価課長が同席した。

 只木会長は、この問題に関する社会一般の理解は不十分で、また誤りもあるので、正確な知識を提示しておくことこそ大切と考え、この提言書とした、と前置きして、提言のあらましを次のように説明し、藤森提言委員長が補足説明した後懇談した。(提言は本会会誌「国民と森林」第109号に掲載)

森林・木材による温暖化防止策として次ぎの四つが重要点である。
@ 森林生態系の炭素貯蔵量増加・維持。 A 炭素吸収速度増加。 B 木材利用で製造過程のエネルギー減・炭素貯留。C木質エネルギー利用、カーボン.ニュートラル。
すなわち、非循環の化石燃料から循環型の森林・木材システムへの転換。地産地消によって輸送エネルギー削減にも貢献する。

森林は吸収した二酸化炭素を蓄積することによって、水土保全・環境保全などさまざまな機能を提供するが、物質生産機能(炭素吸収)と環境保全機能(炭素貯留)は、一つの森林では両立しない。若齢から高齢の森林群を適正に配置して、バランスよく両立させることが重要である。しかし現在は、炭素の吸収にのみ関心が払われる傾向がみられ、炭素の吸収量が少なくなった高齢林や天然林を軽視する危険性もある。高蓄積の森林をうまく活用する長伐期林業を指向すべきではないかというのが、この提言の概要である。

 近年問題視される「間伐手遅れ」問題は、森林の不健全化による将来の各種機能低下に対する懸念に基づいている。間伐によって林分葉量は減るので、間伐は直接二酸化炭素吸収量を増やすものではなく、むしろ一時的に減少させる。したがって、諸機能の持続性という長期的視点からのプラス効果が大切ということを十分に説明しなければならない。

我が国は木材自給率2割程度、8割は他国で炭素を吸収した木材を、輸送エネルギーを消費して輸入し、国内で炭素をはき出させている。森林国の日本にとって、これほど不合理なことはない。木材の自給率を高めることは、二酸化炭素削減のうえでも重要な課題である。

欧州で始まった「カーボンオフセット」は、やむなく排出した二酸化炭素を、それに見合った活動や投資で相殺(オフセット)することである。 活動・投資先の一つとして森林整備もあるが、この方式が普及すれば、金銭での安易な解決法とされたり、金融関連のマネーゲーム化する危険がある。また将来、諸事情変化して、分収育林の前例のような、森林側が誹謗される事態を招かぬよう警戒すべきである。

 藤森委員長は、若齢林から高齢林までの森林の発達段階における構造の変化を説明した。その中で@木材生産を重視して人工林を作り純生産速度、吸収速度を高めること、A天然林を流域全体として適当に配置する、B人工林の管理は長伐期化することの重要性などを指摘し、「森林の多面的機能を求めていけば地球温暖化に役立つ」と結んだ。

 島田林野庁長官は、「お話はその通りだと思いますので、異論を差し挟む余地はありません。皆様のご意見を伺いながら、森林・林業施策を進めていきたい」と述べた。

 小林審議官は「森林は百年単位で見ていかなければならないことがよくわかりました。地球温暖化対策も長期展望に立つ点で森林と同じです。地球環境担当者に森林の問題をよく勉強するように伝えます。引き続き助言をいただければありがたい」と述べた。

kokunai6-20<kokuminsinrin2009>


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp