ニュースレター No.1152009年3月21日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:商品の環境貢献・環境負荷の定量的評価手法と木材(2009/3/22)
2 日本林業経営者協会の二酸化炭素吸収・生物多様性認証(2009/3/22)
3 米国の違法伐採対策法レーシー法の執行状況(2009/3/17)
4 J-VER制度における森林管理プロジェクトによる森林吸収クレジットの認証基準(2009/3/22)

フロントページ:商品の環境貢献・環境負荷の定量的評価手法と木材(2009/3/22)

既報のように林野庁が設置した「木材利用に係る環境貢献度の「見える化」検討会」(以下「木材利用検討会」)が4回の検討会を重ね、このたび「木材利用に係る環境貢献度の定量的評価手法について(中間とりまとめ)」との報告をまとめました。(検討会の経緯

また、上記の検討の基となったカーボンフットプリント(以下CFP)についても、経済産業省の「CO2排出量の算定・表示・評価に関するルール検討会」が制度の背景・目的やCO2排出量の算定・表示方法等を内容とする「カーボンフットプリント制度の在り方(指針)」及び「商品種別算定基準(PCR)策定基準」を公表しました。(3月3日経産省プレスリリース

ちなみに、農林水産省でも1月に農林水産分野における省CO 効果の 表示の指針 中間とりまとめを公表し指針作業をしています。

(木材利用に係る環境貢献度の「見える化」検討会ー木材の特性)

木材利用検討会のとりまとめは、(日本の)木材の環境特性として、@省エネ資材、A炭素の貯蔵、B森林整備への貢献、の三つの面を取り上げて定量的な指標で表そうというもので(@がカーボンフットプリントCFPにあたるものです)、三つの指標の作成の基本的な考え方と、具体的な評価方法、表示方法の概要を明らかにしています。そして、今後の進め方として、21年度はマニュアルとガイドラインの作成、22年度は普及への取組というスケジュールが示されています。

私も検討会の一員として参加しましたが、ウッドマイルズなどで取り組んできた木材に関する環境指標を、林野庁という公的な機関の認知の下に木材に関する他の環境指標と組み合わせるという、大きな枠組みの中で作業で、興味深いものがありました。

また、他の資材資材との比較、消費者への普及という点から考えると、CFPという政府全体の低炭素社会への行動計画に基づく「環境負荷の見える化」という、さらに大きな作業の一環であるということが極めて重要な点です。

木材利用検討会とりまとめと、CFP指針を比べると、心配だった木材を燃焼させたエネルギー利用のカーボンニュートラルとしての評価など多くの点で共通の認識にたっていますが、CFPがエコプロ展などで一度試行を経験しているため、表示の取扱方の様々な可能性に言及しており、木材の方も第二年目で具体的な数値事例に基づき、表示方法の検討が具体的に進むことを期待します。

今後、合法木材や森林認証材といった環境指標の先行事例との連携や、都道府県産材などを進める地方行政との連携など、多くの関係者の参画を図っていくことが重要な点だと思います。

kokunai4-15<mierukekka>


日本林業経営者協会の二酸化炭素吸収・生物多様性認証(2009/3/22)

林業経営者の立場で政策提言をしている日本林業経営者協会は、森林認証を取得した森と森林法に基づく森林施業計画認定森林を対象に、個々の森林の「CO2吸収量と生物多様性保全レベル」を第三者専門機関が調査し、生物多様性の保全レベルが一定水準に達した森林におけるCO2吸収量を購入される人に認定証を発行する制度をたちあげました。

●「森林のCO2吸収量と生物多様性レベルの認定」   (略称:「フォレストック認定」)

会員と学識経験者で構成される森林吸収源検討会が作成した、「森づくりにおける森林吸収源・生物多様性等評価基準」が公表されており、この基準にもとづいて生物多様性の指数が50以上のものだけを認定するとしています。

森林所有者の団体が会員の森林の二酸化炭素の吸収機能を計測し、排出型企業にカーボンオフセットの枠組みなどで販売しようという、手前みそなところもある(?)仕掛けですが、地球環境問題に関した森林の吸収源としての評価をする場合、生物多様性も含めた持続可能な森林というもう一つの視点を忘れずに評価しようという重要な問題提起となっています。

それぞれの森林の生物多様性を図る仕組みは興味深い提案です。個々の評価基準の中身について、今後の認定過程の中で結果が公表され、多くの関係者によって議論されることを期待します。

kokunai4-14<rinkeikyo>


米国の違法伐採対策法レーシー法の執行状況(2009/3/17)

米国違法伐採問題に対処するための水際対策であるレーシー法の改正が2008年12月に施行されました。

法律本文こちらから http://www.govtrack.us/congress/bill.xpd?bill=h110-2419

木材木材製品を米国に輸出するに当たって、輸出申告に当たって品名・価格・数量などとともに木材が伐採された産地国と木材の樹種を申告させる、というのが法律の内容です。(申告様式はこちら

4月から順次対象を拡大しながら実施しようということのようで、現在段階実施に関する意見募集が始まっています。(レイシー法に関する告示(4月6日締め切り))

この間の経緯を整理します

2007年 3月13日 下院にて「違法伐採対処法案:Combat Illegal Logging Act of 2007(H.R.1497)」提案
8月1日 上院にて「合法木材保護法案:Legal Timber Protection Act(S.1930)」が提案
11月7日 下院(天然資源委員会)にて、上院の法案(S.1930)との整合等が図られたH.R.1497の修正案が可決
12月14日 上院にて「農業法案:Farm, Nutrition, and Bioenergy Act of 2007(H.R.2419)」(下院を通過し上院で審議されていたもの)にS.1930の内容を付加した修正案が可決。
2008年 5月14日 両院による調整を了し可決
5月21日 大統領が拒否権を行使(レーシー法関連条文とは関係ない論点)
5月22日 再可決により成立
10月 8日 政府(米国農務省(USDA)動植物検疫局(APHIS))がレイシー法に関する告示を官報に発表。パブコメ受付期限は12月8日。(申告内容及び実施スケジュール)
12月15日 施行
2009年 2月3日 政府(米国農務省(USDA)動植物検疫局(APHIS))がレイシー法に関する告示を官報に発表(段階的実施に関するスケジュール改訂)
4月6日 パブコメ受付期限

施行後のスケジュール(今回の告示による)

Tフェーズ
20093月まで
Uフェーズ
2009年4月から9月
Vフェーズ
2009年10月から翌3月
Wフェーズ
2010年4月から9月
12月15日以降ウェブ上で申告書様式公開
国内外での広報活動
44類(木材・木材製品)
4401燃料材
4403丸太
4404棒・杭
4406枕木
4407製材
4408単板
4409加工木材
4417工具の柄
4418建具
44類(木材・木材製品)
4402木炭
4405木毛
4410削片版
4411繊維板
4412合板
4413改良木材
4414木枠
4415木箱
4416たる・おけ
4419台所用品
4420小像、寄木
47木材パルプ
4701機械木材パルプ
4712化学熔解パルプ
4703亜硫酸パルプ(サルファイトパルプ)
4704亜硫酸パルプ(サルファイトパルプ)
4705機械的および科学的パルプ工程の組み合わせにより製造した木材パルプ 
44+4421
48類紙・紙製品
4801新聞紙
4802印刷用紙及び筆記用紙
4803トイレットペーパー、化粧用ティッシュ
4804クラフト紙及びクラフト板紙
4805その他の紙及び板紙
4806硫酸紙、耐脂紙、トレーシングペーパー、グラシン紙その他の透明又は半透明の光沢紙
4807接着剤を使用して張り合わせた紙及び板紙
4808コルゲート加工紙など
4809カーボン紙その他
4810コート紙
4811
94類家具その他
840169木製フレーム腰掛け
940330木製オフィス家具
940340木製台所家具
940350木製寝具
940360その他木製家具
94039070木製家具部品

品目によっては木質材料の収穫箇所を国単位としてでも特定するのは困難な伴う場合があると思います。(不明な場合は可能性のある国を列記すること If the country of harvest varies, and is unknown, enter all countries from which the plant material in the product may have been harvested.)

この収穫された場所を記載するといいうことが、違法伐採対策という目的にどのような役割を果たすのか興味深いところです。

また、原産地国と樹種を表示することを求めた日本の木材表示推進協議会の着眼したことと一致しています。

boueki4-38<LaceyACT2>


オフセット・クレジット(J-VER)制度における森林管理プロジェクトによる森林吸収クレジットの認証基準(2009/3/22)

「市民、企業、NPO/NGO、自治体などが、自らの温室効果ガスの排出量の、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(以下「クレジット」という)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせること」と定義される(我が国におけるカーボンオフセットのあり方について)カーボンオフセットには信頼出来るクレジットの集積が必要です。

そのガイドラインとなるのがプロジェクトのひな形ポジティブリストですが、今回新たに以下の3件の森林関係のプロジェクトがそのリストに加わりました。(林野庁プレスリリース「オフセット・クレジット(J-VER)制度における森林管理プロジェクトによる森林吸収クレジットの認証基準の公表について」

概要は以下の通りです

(1)対象となるプロジェクト
@ 森林経営プロジェクト
・森林法第5条又は第7条の2の対象森林。
・森林施業計画の認定又は森林認証(FSC、SGEC)等により持続的な森林管理を確保。
@)間伐促進型プロジェクト
・2007年度以降に間伐を実施した面積に応じてクレジット発行。対象地で行われる施業は森林計画に適合している必要がある。
・対象地で主伐・土地転用を行うとクレジットは発行されない。
A)持続可能な森林経営促進型プロジェクト
・1990年度以降に間伐・主伐・植栽を実施した面積に応じてクレジット発行。対象地で行われる施業は森林計画に適合している必要がある。
・対象林分で行った主伐については伐採量に応じて排出とみなす。
・対象地で土地転用を行うとクレジットは発行されない。
A 植林プロジェクト
・2008年4月1日時点で森林法第5条・第7条の2の対象森林でなく、かつ森林の定義を満たさないこと。
・森林法第5条・第7条の2の対象森林に編入されるための措置を講じていること。
・2008年度以降に植林された面積に応じてクレジット発行。

(2)永続性の確保のための措置
・発行されるクレジットの3%をバッファーとして制度管理者側で管理し、当該クレジットのうちの一定量を事務局が毎年無効化することにより、自然撹乱及び土地転用等に伴うCO2吸収効果消失分を補填する。
・土地転用や不適切な主伐により吸収量が失われた場合は、別途定める約款に基づき措置を講じる。
・永続性の確保のための措置については、本制度の事務局を務める気候変動対策認証センターがクレジット発行対象期間終了後10年間継続して行うものとする。

(3)吸収量の算定方式
・京都議定書との整合性の確保のため、グロス−ネット計上方式(※)を採用。
※プロジェクトが実施されなかった場合の吸収量との差分をCO2年間吸収量とするベースライン&クレジット方式とは異なり、施業を行った対象地でのCO2吸収量を計上する方式。

ボイラー転換と並んで4つのプロジェクトのうちの3つが森林関係となっています。
オフセット・クレジット(J-VER)制度におけるポジティブリスト 平成21年3月10日改訂より

No.  区分 プロジェクト
0001  エネルギー分野 化石燃料から未利用林地残材へのボイラー燃料代替
0002-1  吸収源  森林経営活動によるCO2吸収量の増大(間伐促進型プロジェクト)
0002-2  吸収源   同上(持続可能な森林経営促進型プロジェクト)
0003   吸収源  植林活動によるCO2吸収量の増大

森林の管理を森林関係者外部の人と議論するのは、木材の販売、水源や国土の保全、野生生物の保全など、いろんなケースがいままでもありますが、今回は今までとちがって「二酸化炭素排出型の企業関係者」と新たな対価を求める形で議論がすすむことになり、一挙に対象者の枠がひろがるとことなります。

持続可能性の検証など議論の水準がステップアップするきっかけになることを期待します。

kokunai4-16(JVERforest)


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp