ニュースレター No.106 2008年6月15日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:「ひむか維森の会」の伐採搬出ガイドライン(2008/6/15)
2 第10回木質構造国際会議(WCTE2008 )のウッドマイルズ研究会(2008/6/15)
3 九州の森林づくりに関する共同宣言(2008/6/15)
4. G8サミットに向けたGoho-wood円卓会議の開催など(2008/6/15)

フロントページ:「ひむか維森の会」の伐採搬出ガイドライン(2008/6/15)


宮崎の素材生産業者が中心になって作っている「NPO法人ひむか維森の会」が、この度、「責任ある素材生産業のための行動規範」と「伐採搬出ガイドライン」を作成し公表しました。

21世紀の宮崎県において、県民が安心して過ごせる地域社会を実現するためには、環境保護を地域全体で支える仕組みを、当事者を中心に地域住民の参加により作りあげていかなければなりません。
本県においては、戦後造林されたスギの主伐が拡大し、林業県として発展の時を迎えようとしている一方、伐採跡地の荒廃や再造林放棄の問題が広がり、山が荒れることへの地域住民、県民の不安が高まっています。そこで、弊会では、環境に配慮した素材生産が行われるための仕組み作りに取り組んでおり、その第一段階として、本ガイドラインを策定した次第です。 (ひむか維森の会HPより 本文はこのページからダウンロードしてください

「木材生産と森林保全の両立という課題に真摯に取組み、その技術力によって社会に貢献しなければならない」(行動規範前文より)という高らかな宣言、感動します。

また、伐採搬出ガイドラインは、「伐採更新計画の策定」から始まるA伐採契約準備、林地保全の配慮したB路網土場開設、C伐採・造材・集運材、D更新後始末の4部構成となっており、真摯に考え抜かれたものになっていると思います。

世界中で森林の持続可能な経営や、森林の合法性を担保するためのガバナンスの強化が議論されていますが、国産材に日が当たってきた現在、そのことは日本にとっても重要な課題となっています。そして、この課題は、どんなに行政が力を込めて法令とその執行のための体制を整備しようと、環境資源である森林から商品を生産する最先端の広大な現場を掌握している素材生産者自身の倫理観と責任感に最後のところを依存しているのが、林業の宿命です。

戦後の広大な人工林の次の世代への再生産という課題に最前線で直面している南九州の林業地で、発せられた宣言の意義をいくら強調しても強調しすぎることはないでしょう。

多くの方がこの文書に目を通されることをお勧めします。

国民・市民に対するする宣言は、当然その実施結果を厳しく監視される重い課題を背負うことになるわけで、市民と山の生産者の新たな共同の発展を心から願うものです。

kokunai<himukaGL>


第10回木質構造国際会議(WCTE2008 )のウッドマイルズ研究会(2008/6/15)

6月2日から8日まで宮崎市内で第10回木質構造国際会議(WCTE2008 )が開催され、ウッドマイルズ研究会からも「ウッドマイルズ研究会活動の教訓」と題して発表しました。

37カ国から500名が参加したこの会議は、2年に一回世界各国で持ち回りで開催されている「木質構造に係わる最新の技術・研究・設計手法などに関する発表や情報交換を行う世界最大の会議」です。

発表は、藤原と、滝口事務局長、研究会会員で熊本で活動されている松下さん、北海道下川町の相馬さんの四人の共同で執筆されています。

@ウッドマイルズ研究会設立の背景、Aウッドマイルズ研究会の活動1(大型木造ドームのウッドマイルズ)、B同2(ウッドマイルズレポート)、C結論と検討という四つからなっています。

プロシーディングのフルテキストはこちら プレゼンテーションの画面はこちら

以下、発表概要

Learning from the activities of Woodmles Forum
ウッドマイルズ研究会の活動の教訓

1 ウッドマイルズ研究会設立の背景
日本の輸入木材の産地からの輸送距離が他の輸入国に比べて遠距離であり、木材輸送距離過程の二酸化炭素排出量が生産過程の数倍になるケースがあることなどを説明

2 研究会の活動紹介(木の花ドームのウッドマイルズ分析)

研究会活動の紹介として、ご当地宮崎の木の花ドームに関するSB05での発表を紹介。

宮崎市内の木の花ドームの構造用集成材は耳川流域のスギを当該流域で製造し宮崎市内まで133km輸送している。出雲ドームの場合はオレゴン州のラジアータパインの構造用集成材でできていいて9272kmの輸送距離。木の花ドームの構造用集成材を輸送する段階で発生する二酸化炭素は37トンでそれをオレゴンから運ぶと、340トンとなり、その二酸化炭素を同じ面積のスギ林で吸収させると100年くらいかかる。

3 ウッドマイルズレポート活動

近くの山の木の家を売り物にしている住宅メーカー、工務店をサポートするためのウッドマイルズレポート活動を紹介。

熊本のS住拓のレポートのサマリーを紹介。普通の家と九州材にこだわるS住拓の木材の輸送過程の二酸化炭素排出量を比べると4342kgとなる。これを、@直径1メートルの風船4342個分、Aスギの木314本が分が吸収する二酸化炭素の量、Bガソリン1888リットルを燃焼させた時に放出される二酸化炭素排出量、C京都議定書第一約束期間における家庭部門必要削減量(年間)の○年分、Dクールアース50(50年までに排出亮を半減)を軽くクリアなどと説明

その説明のわかりやすさを、アンケートで聞いてみると、ガソリンがダントツに分かりやすい。

4 ウッドマイルズ活動のこれから

ウッドマイルズは下の図のトータルな建築物のLCAからすると、ホンの一部に着目した、指標に過ぎない。それなのに、それなりのインパクトが加えられたのは、第一に、シンプルな分かりやすい数字(ウッドマイレージCO2)が提示出来たこと、第二に、木材自体に再生可能、ローインパクトなところに興味が集まりつつあること、第三に、大量消費財を消費者が選ぶときに誰が何時どこで製造したかなど全くわからないで選択しているが、それに対してウッドマイルズは、生産者のところまでさかのぼる魅力がある。

これから、木材の由来に基づき環境負荷を評価する森林認証や合法性証明、フェアウッドキャンペーンなどとの連携、さらには、建築物をトータルに評価するCASBEE建築物環境性能総合評価システムなどとの連携した活動が重要である。



同じ会場ではLCAの発表があったのですが、その中でもウッドマイレージはどう反映されるのか、といった議論がされていて、印象的でした。

kokunai10-1<KMLozawa>


九州の森林づくりに関する共同宣言(2008/6/15)

5月22日に鹿児島で開催された第131回九州地方知事会で標記の共同宣言が発表されました。
06年から検討を行いワーキンググループで議論を重ねてきた結果だそうです。

以下が柱立てです。
(1)多面的機能の発揮のための森林整備の促進
(2)九州材の利用促進
(3)森林環境教育の推進
(4)九州森林の日の創設

全文は九州森林管理局HPよりpdfファイル

政府でも道州制が検討されているようですが、森林の管理の課題は確かに都道府県では狭すぎるので、九州地区というのが収まりがよいかもしれません。

kokunai<kyusyumori>

G8サミットに向けたGoho-wood円卓会議の開催など(2008/6/15)

違法伐採総合対策推進事業は3年目を迎えましたが、違法伐採問題をリードしてきたG8サミット北海道洞爺湖会合が目前となっており、6月27日に、標記の円卓会議を「地球環境国際議員連盟(GLOBE International)と語る合法木材供給システムの将来」という副題のもとに行うことになりました。

日本の違法伐採の取組Goho-woodを、「サプライチェーンを使った販売証明書の連鎖」、「ハイリスク・ローリスクを問わない内外無差別取組」というように、国際的な文脈の中でしっかりとらえ直し情報発信をすると共に、率直な意見交換をしようというものです。
詳細はこちらから

また、今年の違法伐採総合対策事業は最終年で、「@需要者に対するPRを展開し合法木材を実需に結びつけると共に、Aそれに応え、信頼性のある合法木材製品の安定的供給体制づくりをし、これらをあわせて、自立的な合法木材ビジネスの展望を明らかにする年である。」(平成20年度違法伐採総合対策推進事業の進め方についてという位置づけです。

さらに、ガイドラインを基本に立ち返って議論し直す、証明方法検討部会も具体的な動き出しとなります。

今後、小HPでもフォローしてゆきますので、よろしく

boueki<gohoRT>

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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