ニュースレター No.105 2008年5月17日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:京都のモデルフォレスト運動の可能性(2008/5/17)
2 ITTO「気候変動と熱帯林の持続可能な経営に関する国際専門家会議」(2008/5/17)
3 日本森林学会2008年大会報告から続き(2008/5/17)

フロントページ:京都のモデルフォレスト運動の可能性(2008/5/17)
京都府が市民と共に取り組んでいるモデルフォレスト運動についてその中心で活動している小澤普照さんから話しを聞く機会がありました。Japan's Forest Policy Forum

モデルフォレストは92年の地球サミットで持続可能な森林経営の実験としてカナダが提案したもので、住民参加や地域での経験の共有といったプロセスを重視する取組です。カナダモデルフォレストネットワークHP

もともとカナダの森林政策は州の主導で行われていますが、持続可能な森林の管理という大きな課題に向けて、連邦政府が主導してモデルケースを広げていこうという思惑が絡んでいるとは思います。カナダはモントリオールプロセスなど持続可能な森林管理の理念について国際的な議論をリードしてきましたが、持続可能な森林管理の政策の具体化についての国際的な展開の一部として、国際的なネットワークへの呼びかけが行われてきました。

現在では20カ国近くに30以上のモデルフォレストが登録されています。
国際モデルフォレストネットワークHP

小澤さんは92年の地球サミットには林野庁長官で日本政府の代表として参加された時からこの取組に関心をも持ち、日本での取組の具体化の構想を持っておられましたが、長い紆余曲折を経て、京都知事や経済界、宗教関係者など一緒になって京都府内の森林を対象にとしたモデルフォレストの取組みがすすみ、3月に国際ネットワークに正式に加わることになったそうです。

取組の概要は京都モデルフォレスト協会のページからどうぞ。

京都議定書の発信地としての京都が、ウッドマイルズや、モデルフォレストなど地球環境時代を視野に入れたローカルな森林の運動に、次々と先進的に取り組まれていることに敬意を表します。

kokunai10-1<KMLozawa>


ITTO「気候変動と熱帯林の持続可能な経営に関する国際専門家会議」(2008/5/17)

4月30日から5月2日の間、国際熱帯木材機関主催による世界の森林の減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出抑制など、気候変動における熱帯林の持続可能な経営の役割に関する国際専門家会議が行われました。
林野庁プレスリリース

気候変動枠組み条約UNFCCCの大きな政治的な動きの中で、地球サミットでも実現しなかった、熱帯林の管理についての国際的な共同行動が実現するのかどうか。森林の幅広い機能の中で温暖化ガスの吸収源の問題はごく一部なので、舞台がUNFCCCだということはちょっと変なのですが、森林条約がうまくできなかったのですから背に腹は替えられないというところでしょうか。

今後の議論が注目されるところです。

報告された資料がしっかりとITTOサイトに掲載されています
また、討議の結論としてITTO理事会への提言が掲載されています。まだ、案の段階の様ですが、ITTOに対する提言の部分を仮訳してみました。

ITTO「気候変動と熱帯林の持続可能な経営に関する国際専門家会議」
TIITOに対する提言

1 加盟国に緩和と適応のための森林分野の人材養成を支援する
2 熱帯地域の持続可能な森林に対する気候変動の影響について検討する
3 国の森林調査の中で、炭素の貯蔵、二酸化炭素の排出に関するモニタリングの評価についての支援を行う
4 加盟国の森林政策の枠組みが気候変動を考慮に入れ、国の適応政策の中に森林問題を取り込むことを支援する
5 REDDなどのパイロットプロジェクトの形成支援と資金援助の検討
6 熱帯林における緩和と適応に関するガイドライン、森林計画における炭素の考慮に関するガイドラインなどを開発しITTOの基準指標を近年の動きに応じて改定
7 気候変動の影響に脆弱な森林タイプの森林管理に関する情報提供
8 森林に関する緩和と適応に関する資金提供があった場合の地域住民の恩恵に関する支援
9 地域を母体とした企業の振興を引き続き支援
10 植林CDMとCDM組織の手続きの改良を支援する
11 2012年以降のUNFCCCの気候変動交渉にいて森林保全の概念を導入する可能性の検討
12 熱帯木材の伐採後の保存をアカウントする手法の検討
13 権利に基づくREDDへの取組、森林における炭素の増加に関する優良事例発掘
14 環境に優しい方法で建築における木材利用の推進、木材エネルギーの利用推進に関する施策の構築と実施を、政府、民間、関係者に要請
15 森林の代替機能に関する研究の委託
16 食糧生産との整合性、環境の保全を考慮した代替的木質バイオ燃料用植林のガイドラインの作成への貢献
17 REDDと貯蔵庫の拡大について利用者の使いやすい様式の作成について他の関連機関との連携
18 REDD、森林の貯蔵庫の拡大及び環境サービスへの支払いが森林住民に裨益する作業を他の機関と連携して実施
19 森林のよき管理、公平・住民参加・人権・貧困の減少の原則の確立
20 UNFCCCの討議過程における、熱帯林と持続可能な森林管理の情報提供
21 気候変動に対する緩和と適応の資金への手法の検討


boueki3-9<ittoREDD>

日本森林学会2008年大会報告から続き(2008/4/12)

日本森林学会の120回大会が東京農工大学の発表のリストを前号に載せましたが、ある方から、ポスターセッションの報告が抜けているとのご注意がありました。失礼しました。

前回のリストとあわせたものを掲載します。


森林学会の報告全体はこちらから

口頭発表
「東アジア共同体」の形成と森林資源管理―アジア森林パートナーシップを事例に― 藤原敬大(九大院生資環) 要旨 アジアパートナーシップという難しい課題を東アジア共同体というコンセプトで
森林減少による二酸化炭素排出削減(REDD)制度の検討 井上真(東京大学) 要旨 森林の国際レジーム戦略のの本丸に真っ正面から挑戦
森林認証制度の新たな可能性−チリにおける薪認証制度を通して− 福島空(東大院農) 要旨 森林認証のネックになっている、途上国の小規模所有者へのアプローチ
自由貿易下の森林環境政策に関する空間均衡分析 持田亮(九州大学博士後期課程) 要旨 林産物貿易の世界モデルが地球森林環境基金の総額や配分額方式の決定に寄与できるのではないか
フィンランドにおける林業税制改革 山本伸幸(森林総研) 要旨 世界の森林政策をリードするフィンランドの政策について2つの報告
ヨーロッパにおける国家森林プログラム推進の現状ーチェコとフィンランドの事例比較からー 大田伊久雄(愛媛大農) 要旨
ポスター発表
フィンランド林業を支える社会システム 相川 高信 要旨 提案型集約化施業についてのフィンランドの先進事例の検討
FSC森林認証の展開と森林管理への影響について 坂本 朋美 要旨 FSC森林認証取得者への聞き取り調査などによる好意的な評価
森林認証と森林組合の製品流通構造の変化について
―FSC-CoC認証取得の5森林組合を事例として―
三浦 きさと 要旨 FSC森林認証取得が販売促進になったかどうかの検証
倫理的マーケティングにおける森林認証への障壁 芝 正己 要旨 欧州の調査による、森林認証普及への課題提案

gakkai<sinrin2008-2>


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp