ニュースレター No.099 2007年11月11日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:「森林炭素資金」バリ会合を前にした国政政治の動き(2007/11/11)
2 違法伐採対策推進国際セミナー2007Uin横浜(2007/11/11)
3 2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討(2007/11/11)

フロントページ:「森林炭素資金」、バリ会合を前にした国際政治の動き(2007/11/11)

10月12日に開催された世界銀行と国際通貨基金(IMF)の合同開発委員会で、日本国政府は途上国の森林減少を防ぐために世銀が今年12月に設立する「森林炭素パートナーシップ基金」(Forest Carbon Partnership Facility )に対し、最大1000万ドル(約11億円)を拠出する考えを表明しました。
林野庁プレスリリース

 同基金は世界銀行が12月の気候変動枠組み条約第13回締約国会合で設立提案するもので、、将来のより大きな資金を想定しながら、当面、以下のような、1億ドルの準備基金、2億ドルの炭素基金で出発することとなっています。(世界銀行の当該該ホームページ) 


準備基金:基金は20の関心を占めす途上国に対して、森林資源の蓄積および森林からの排出に関する信頼出来る推定行うための支援と、過去の排出傾向を基礎とした将来のシナリオを決定するための支援を行う。
準備基金は、森林減少・劣化に起因する排出の削減削減(REED)のコスト推計と、各国の優先順位と障害を考慮しつつREEDの戦略を樹立の支援を行う。

世銀The Proposed Forest Carbon Partnership Facility
- Presentation (English)
より

炭素基金:少数の国を選び、削減の補償システムに基づき、森林減少・劣化に起因する排出の削減(REED)の推進計画を実施し評価を行う。実施国は@削減の責任者の特定と適切なモニタリングの能力、A信頼出来る参照シナリオと、削減シナリオを作成することにより、参照シナリオを越える削減に対して資金提供を受ける。これらの支払いの仕組みは、気候変動枠組み条約において現在行われている議論の基づき、森林減少の原因に対処する形で実施される。炭素資金では、測定可能で検証可能な排出削減を達成した国にのみ資金提供される。




世銀森林炭素パートナーシップサイト
(英文)
コンセプトペーパー(英文)

地球サミットの準備会合で法的拘束力のある森林条約が議論されてから20年近くたちますが、森林減少を食い止める膨大な資金をどう調達するかのめどが立たないことが、途上国を含む法的枠組みの障害になって来たといえます。

森林関係者としての悲願ともいえる、この資金調達の仕組みが、気候変動条約という枠組みで生み出すことがでいるかどうか、大変関心のあるところです。ただし上記の図はこの問題がそう易々と達成出来る課題でないことを物語っています。

バリ会合の大きな焦点になるでしょう。

kokusai2-19<FCPR0711>

違法伐採対策推進国際セミナー2007Uin横浜(2007/11/11)

違法伐採総合対策推進事業の一番のイベントである、12月3−4日に開催される国際セミナーの参加登録が開始されています。
こちらからどうそ

日本の違法伐採問題の取組を世界に発信する試みで、今回は欧州、米国、カナダ、インドネシア、マレーシアなどの輸出国の専門家のプレゼンテーションやディスカッション、日本のグリーン調達をささえる住宅産業などのプレゼンテーションを踏まえて、横浜ステートメントが発表される予定です。
プログラムはこちらから


2007年2月第一回国際セミナー参加者


boueki4-32<yokohamasemi>

2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討(2007/11/11)

本年の2月に国立環境研究所は「2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討」という報告書を発表しました。「京都では京都メカニズムや森林吸収のような融通策が提案されましたが、今後の枠組みをじっくり検討するために、自分たちはどれだけの削減ポテンシャルが自国であるのかの見極めをしておく必要があるの」というのが背景だそうです。

国環研プレスリリース

森林吸収源が京都議定書の中で位置づけられたのは、緊急避難・暫定的な事情にあったことは森林関係者としても良く理解しておく必要があると思います。

将来の持続可能な社会(最近は低炭素社会というのが流行だそうですが)の中で森林がどんな役割をはたすのか?じっくり考えてみる必要があると思います。

60名の研究者による総合的なプロジェクトだったそうですが、残念ながら報告書の中に森林という言葉は一言もありません。森林の専門家は入っていたのかどうかはわかりませんが、温暖化問題を長期ビジョンで考えた場合、途上国における森林減少の回復といったわかりやすいコンセプトに比べて、日本の様に今後森林がどんどん成熟していき、吸収ポテンシャルが下がっていくことが予想される場合、吸収源としての森林の管理、あるいは吸収源としての木質材料の役割など具体的なシナリオを提示し切れていないということではないかと思います。

この報告書興味深いのは、シナリオA(ドラえもん型)(活発な、回転の速い、技術志向の社会)、シナリオB(サツキとメイ型)(ゆったりでややスローな、自然志向の社会である)という2つのシナリオを用意している点です。2つのシナリオの比較、どんな政策手段が必要なのかなど、今後の議論の題材を提供するおもしろい研究結果だと思います。

どちらのシナリオも技術的には達成可能(技術的ポテンシャルの存在)であるとしていますが、いずれにしても技術開発の体制や産業構造のドラスティックな変化が速やかに始まることを前提にしているものです。

数パーセントの環境税導入もコンセンサスがえられないような現状が続く限りポテンシャルを実現するハードルが高まってくることなると思います。


kokusai2-20<50sinario>

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

■いいねボタン