ニュースレター No.070 2004年6月19日発行 (発行部数:1200部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:ウッドマイルズ研究会の二年間が切り開いたもの(2005/6/19)
2 地球規模の森林の管理の展望:林業経済学会の分科会のお誘い(2005/6/19)
3. 建築物ウッドマイルズ関連指標算出マニュアルの公表(2005/6/19)
4. 国連森林フォーラム第五回会合の結果(2005/6/19)

フロントページ:ウッドマイルズ研究会の二年間が切り拓いたもの(2005/6/19)

6月11日ウッドマイルズ研究会の総会が京都市内で開かれ、ウッドマイルズセミナーin京都が併催されました。

03年6月に発足したウッドマイルズ研究会は、誕生以来ちょうど二年たちましたが、総会やセミナーは、その2年間を振り返える機会となりました。

(研究会の三つの事業)

ウッドマイルズ研究会は、@ウッドマイルズ関連指標およびツールの開発、Aウッドマイルズの普及およびネットワークの形成、B関連する情報の収集および研究、を事業の柱としています。

図はセミナーで私が紹介した研究会の三つに事業の二年間の足取りです。

@のウッドマイルズをはかる指標の作成については、総会の場で二年がかりで作成してきた、ウッドマイルズ関連指標作成マニュアルの正式版を公開することしました。この件については別稿で紹介しますが、ウッドマイルズを使った評価事例が積み重なり、議論が広がる共通の土台ができたことになります。

そして、研究会活動の中心となる「普及およびネットワーク」について、セミナー参加者のからは、「ウッドマイルズの持っているパワーにくらべて、まだまだ会議室内で議論している段階で物足りない」という意見が聞かれました。

(ウッドマイルズ普及の主役)

ウッドマイルズの普及は木材の流通を同じで、川上からのプッシュと、川下からのプル、という面があり、それに応じた二つの主役がいると思います。

((第一の主役は地方自治体や地域材関係者))

第一の主役が、地域材の利用を推進しようという地方行政や森林木材関係者です。今年の森林林業白書では「森林をつくる」から「森林をいかす」の時代になっているということを主張していますが、各県で県産材の普及という取り組みがなされ、土木建築も含めた地方行政の調達の仕組みを活かして木材の利用を推進しようという動きが広がっています。

どれが都道府県産材であるか購入者に知ってもらう認証制度を、実施ないし検討中の都道府県は37に及びます(「都道府県の地域材認証制度の取り組み」(現代林業7月号:全国林業改良普及協会)pdfファイル参照)

そのような地域材利用推進の取り組みを支援する重要なツールとしてウッドマイルズの役割は大きいものがあります。

04年度から京都府で始まった「ウッドマイルズCO2認証制度」(現代林業7月号pdfファイル参照)は、研究会が当初思いもよらなかった展開ですし、昨年実施した都道府県職員を対象とした地域材セミナーも大勢の参加を得ました。

今年も地域材セミナーを7月21ー22日京都市内において予定しています。また、地域材利用のシンボルとなる公共建築の評価の取り組みを行うこととしています。

((第二の主役は環境にこだわる建築関係者))

ウッドマイルズを普及する第二の主役は、環境負荷の少ない建築を目指す建築設計者・需要者です。

今年の9月サステイナブル建築世界大会(SB05tokyo)という東京で開催される学会に世界中から1000名を超す関係者が集まります。また、緑の建築基準が様々な国で作られ我が国でもCASBEEが広がりつつあります。このように、建築物の環境負荷を軽減してゆくための実践的学術的な取り組みは、広がりと深まりを示しています。

研究会の発足以来建築関係のマスコミがウッドマイルズを追いかけて報道して頂いたように、ウッドマイルズはそのような建築関係者の手によって広がってゆく可能性をもっています。

研究会ではそのような住宅メーカー設計者と連携をとるため、関係者が自ら手がけた建築物をウッドマイルズの指標を使って評価してその結果を解説するウッドマイルズレポートを作成するという事業に取り組んでいます。

また、SB05tokyoでは「木材の輸送過程の消費エネルギーとウッドマイルズ:建築物の評価におけるウッドマイルズ指標の可能性」という報告をすることとなっています。

(終わりに)


ウッドマイルズの普及を担う二つの主役について今年度の事業計画などにふれながら、説明してきましたが、いよいよ普及段階に入るウッドマイルズ研究会にたくさんの方の入会をお待ちしています。

(関係資料)
ウッドマイルズ研究会総会の結果についてプレスリリース資料
ウッドマイルズ研究会地域材セミナーの案内(案)


地球規模の森林の管理の展望:林業経済学会秋季大会分科会のお誘い(2005/6/19)

林業経済学会今年の秋季大会は 11月11日から13日に愛媛大学で開催されることとなっています。

大会運営委員会委員長の泉英二教授のすすめもあり、「地球規模での持続可能な森林管理への課題」という分科会を、愛媛大学の岩本さんと一緒にコーディネートすることとなりました。

違法伐採問題などが国際政治の課題に取り上げられる状況の中で、木材の大量輸入国で世界の森林に影響を与える立場にある日本の中で「地球規模の森林の管理」について議論が発展することは、実践的にも学術的にも重要な課題になっていると思います。

以下が、分科会の概要です。多くの皆さんのご参加を期待します。
テーマ2:地球規模での持続可能な森林管理への課題

趣旨:92年の地球サミットに契機に熱帯林を含む地球規模での全ての森林の持続可能な管理が課題となり、国連を中心とした累次のフォローアップ会合で議論が進められてきた。

この間、モントリオールプロセスなど技術基準を開発する取組み、民間ベースの森林認証制度の展開、地域的な官民の連携の取組、G8を中心とした違法伐採問題への取組み、ITTOにおける2000年目標の追求など、様々な角度から、国を超えた持続可能な森林経営を追求する取組が行われてきた。また、気候変動枠組み条約や生物多様性条約など先行する国際環境条約なのかで、森林の管理に関する規定が重要な位置づけを与えられてきており、持続可能な森林管理の枠組みに影響を与える可能性を示している。

 現時点では、これらの取組にもかかわらず、地球規模での持続可能な森林管理の枠組みを実現する具体的な展望を持ち得ないでいるが、この間の取組は、森林問題が地球環境問題の課題としての認識を定着させ、我が国の森林管理にとっても国際的な視野をもたらすものであった。

 今年の5月にはUNFF会合で国際的な枠組みの評価についての議論が行われるという、節目にあたって、現時点で日本国内外の持続可能な森林管理を追求する取組をレビューし、@地球規模の持続可能な森林管理を実現するためのプロセスを解明するとともに、Aこれらの取組が、我が国の森林管理の政策と実際に与えるインパクトを明らかにすることとする。具体的項目は以下の通りである。

(1) 森林原則声明のフォローアップのレビュー

 森林原則声明の国連の場でのフォローアップについては、今年の5月に開催予定のUNFF会合で条約問題が議論されて、一定の区切りができるので、この時点でモントリオールプロセス、モデルフォレスト、AFPなど我が国の取組も含めたレビューを行う。

(2) 林産物貿易と違法伐採問題

 6月のG8の会議で違法伐採問題に焦点が当たり、今後国際政治の舞台でも議論が展開されることとなると同時に、関連して貿易と林産物問題についての議論が進展している(FAOの機関誌での特集、島本論文に対する反響)。これらの過程を分析し、現時点で林産物輸入大国日本が貿易を通して輸入国の森林管理に影響を与える可能性を探る。

(3) 国際環境条約と持続可能な森林管理

 気候変動枠組み条約、生物多様性条約、ワシントン条約などの現行の国際環境条約の中で、森林管理の関係ある規定が実施に移されており、これらの動きが、持続可能な森林管理を実現するうえでいかなる位置づけにあるかを探る。

(4) 森林認証と持続可能な森林管理

 民間ベースで進められている森林認証の動きの意義と限界を明らかにし、官民揚げて地球規模の持続可能な森林管理の枠組み実現へのプロセスの中での位置づけを明らかにする。

コーディネーター: 藤原敬(全木連)、岩本純一(愛媛大)

大会まで小HPで内容のフォローアップをしてゆきます。



建築物ウッドマイルズ関連指標算出マニュアルの公表(2005/6/19)

ウッドマイルズ研究会の目的には「木材の産地から消費地までの距離(ウッドマイルズ)に関する指標の開発」とかかれていますが、このたび開催された研究会の第二回総会で、その正式版が公表されました。

ウッドマイルズによる建築物の評価事例が積み重ねられる基盤ができたことになります。
研究会が発表した、「建築物ウッドマイルズ関連指標算出マニュアルVer.2005の公表にあたって」を掲載します。

また、マニュアル本文をこちらからダウンロードできます。
マニュアルを使う技術者を養成するための講習会が計画されています。(詳細はウッドマイルズ研究会までどうぞ

「建築物ウッドマイルズ関連指標算出マニュアルVer.2005」の公表にあたって

ウッドマイルズ研究会は、「木材の産地から消費地までの距離(ウッドマイルズ)に関する指標の開発と普及を行うこと」(会則第2条)という目的をかかげていますが、誰でもウッドマイルズ関連指標を算出できるような環境を整えるため、発足直後の03 年9 月に「住宅ウッドマイルズ関連指標算出マニュアルVer.2003(日本版暫定案)」を発表しました。

また、その後、より信頼性のある公平なマニュアルづくりを目指すため「ウッドマイルズ関連指標およびツールの更新規程」を策定し、技術委員会の審議やパブリックコメントなどの過程を経るなどの手続きを定めました。今回、いろいろなご意見をふまえ、その手続きに従った最初のマニュアル「建築物ウッドマイルズ関連指標算出マニュアルVer.2005」の作成が完了し、公開に至りました。

「住宅ウッドマイルズ関連指標算出マニュアルVer.2003(日本版暫定案)」以降の改訂の概要については、以下のとおりです。

@ 住宅ウッドマイルズから建築物ウッドマイルズへ
地域材による住宅の推進ツールとして生まれた「住宅ウッドマイルズ」は、ウッドマイルズの概念の普及と同時に、その需要は学校や駅舎といった住宅以外の建築物や、ダムや治山工事へと広がりつつあります。そのような状況に対応するため、マニュアルの対象を住宅から建築物へ拡大し、表題を変更するとともに、関連規定を改定しました。

A「ウッドマイルズ関連指標およびツールの更新規定」策定の関連
より信頼性のある公平なマニュアルづくりを目指すため、「ウッドマイルズ関連指標およびツールの更新規定」を策定しました。公表されるマニュアルの改訂にあたっては、一定の順序を踏むことを定めたものです。今後は、この規定に基づき、運営委員会、技術委員会、パブリックコメントという審査手順を経て、マニュアル改訂が行われます。策定手続きがこの規定に基づきなされることを記述しました。

B「ウッドマイルズ関連指標算出技術者の認定規程」策定の関連
ウッドマイルズ関連指標算出マニュアルによって導き出される指標について、正確かつ平等に評価を行うため、研究会の講習により一定の算出技術を取得した方に対して認定を行う「ウッドマイルズ関連指標算出技術者の認定規程」を策定しました。認定者によるウッドマイルズ関連指標の算出結果は、研究会が認定した数値として公表されますが、マニュアル解釈に際し、その公表結果を参照するなど、関連の記述をしました。

C「流通把握度」の整理
ウッドマイルズ関連指標の算出にあたって、木材流通のあいまいな把握に正確性を求めるべく、正確に把握している部分と、あいまいな部分とを明確に分け、その割合により一つの評価を与える「流通把握度」を規定しています。旧マニュアルでは、この割合の把握を、木材の量(材積)とウッドマイレージ(材積×輸送距離)の2 種によって区別していましたが、ウッドマイルズ算出において、木材の量のみの把握度は不必要であるという見解のもと、ウッドマイレージによる把握度のみにすることに整理しました。

D輸入材輸送距離暫定データ(別表1)の見直し
算出に暫定的に用いることができる輸入材輸送距離暫定データについて、研究会の調査研究の成果を踏まえ、ロシア材の原木輸入距離についての見直しを行いました。

E排出CO2原単位(別表2)の見直し
算出に用いる排出CO2 原単位(別表2)については、まだ研究途上であることから、今後もマニュアル改訂の主軸になることと予測されます。今回の改訂では、既往データの収集により、特に船舶輸送におけるCO2 排出量の原単位を、旧マニュアルの一律0.0212 s/m3・qから、内航船は0.02116 s/m3・q、外航バルク船(輸入丸太)の場合は0.00508s/m3・q、外航コンテナ船(輸入製品)の場合は0.01095 s/m3・q、へ細分化することに至りました。

F製品の歩留まり(別表3)の見直し
算出に用いる各製品の歩留まり(別表3)について、旧マニュアルではあいまいであった、合板の歩留まりについて、農林水産省のデータからより明確なものへ見直し、また同出典により、製材の歩留まりについても改訂しました。

今回発表する「建築物ウッドマイルズ関連指標算出マニュアルVer.2005」が、「建築物に使用される木材の輸送距離を短縮し、輸送エネルギーの削減や地域材利用の活性化」を願う多くの方々に利用され、皆様の活動の推進ツールとして、その力を発揮してくれることと期待しております。

今後とも、より信頼性のある、より現実的・機能的なマニュアルづくりを行っていくためには、認定技術者制度の発展や、評価事例の蓄積をはかってゆきますので、様々なご意見をお寄せ頂くようにお願いいたします。

2005 年6 月11 日
ウッドマイルズ研究会



国連森林フォーラム(UNFF)第五回会合の結果(2005/5/14)

5月16日(月)から27日(金)まで、国連本部(ニューヨーク)において、国連森林フォーラム第5回会合(UNFF5)が開催され、国連加盟国100カ国以上が参加したほか、森林に関連する多数の国際機関・条約事務局、NGO・産業界・先住民社会等からの参加がありました。

今次会合の目的は、国連森林フォーラム(UNFF)のこれまでの実効性を総括・評価した上で、法的拘束力のある枠組(森林条約)を含む森林に関する今後の国際的枠組のあり方について取りまとめる、という課題をもって開催されましたが、具体的な合意をえることはできませんでした。

ただ、「森林減少ペースの反転や、保護地域面積の倍増、持続可能な森林からの木材の流通促進など、具体的な目標を絞って議論を進める方向では一致し」(暫定合意)、来年2月13日から26日まで開催されるUNFF6で合意を目指すことを決めたました。

資料
林野庁の関連するプレスリリース(6/1)
国連森林フォーラムの背景(英文UNFFホームページより)
アースネゴシエーションレポートのUNFF5報道
UNFF5についてのNGOの声明

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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