ニュースレター No.058 2004年6月13日発行 (発行部数:1050部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:プランBと森林資源の価格(2004/6/13)
2 温暖化ガス吸収源に関する調査報告3題(2004/6/13)
3.

ウッドマイルズ研究会ニュースレター「木のみち」4号(2004/6/13)

4. 「富士森林再生プロジェクト」の提案(2004/6/13)
5. 森林総研の最新発表論文「研究最前線」(2004/6/13)
6. 2000年世界森林資源評価主報告書の日本語版(2004/6/13)

フロントページ:プランBと森林資源の価格(2004/6/13)

地球白書のワールドウォッチ研究所を率いるレスターブラウンの講演が6月の上旬に数カ所でありましたが、その中の一つ、シンポジウム「自然エネルギー拡大の政策と税制」に出席しました。

「プランB」という近著に関するレスターの講演があり、引き続き京都大学経済研究所佐和教授他のコメントという進行でした。

農業経済学者らしく、世界の穀倉地帯の生産環境が急激に悪化し、中国が食糧輸入国になり国際市場にインパクトを与える兆候がある、という現在の大量消費社会(プランA)の行き着く先についての警告が導入部になっています。

それに対置するプランBは、おおざっぱに言うと、@水対策や土壌保全を柱とした農業生産環境の保全と食糧生産の増加、A風力発電を中心とした化石エネルギー代替措置による炭素排出量の半減、B途上地域の教育など社会基盤の強化による人口抑制策などの各論と、C化石資源などの生産排出による社会コスト・環境コストを反映した資源価格の再構成とそのための環境税の導入、という要素からなっています。

プランBの中で森林や林業についてのどんな扱いになっているか興味のある点です。

各論では森林については特にふれていないのですが(注1)、彼の主張の一番のポイントとなっている「環境的コストを反映する市場を構築する」という節(p313-320)では、資源の価格が適切に社会コストを反映していないという主張を裏付けるものとして、ガソリンなどの化石資源の価格とともに、木材の価格が森林価値を反映していないということが強調されます。

中国の長江の水害により中国政府が森林伐採禁止へ政策転換をする際に、中国政府が洪水を防止する機能の経済的価値と木材の価格の計量比較をして前者は後者の3倍であるという説明をしたという、経緯にふれています。p318

資源の価値をどう見るかという点が問題になりますが、そんな文脈で、我が国のような島国ではあまあり意識がされませんが、森林が大陸内部への水循環に役割を果たしていている役割が取り上げられています。アマゾンでは森林の状態であると、降水の3/4が流出せずに蒸散してさらに内陸への運ばれ降水をもたらすという循環になるが、森林が牧草になると比が逆転し乾燥に向かうという、興味深い20年前のサイエンスの記事も紹介されています。p319

この節の最後で、化石資源の価格や木材の価格に対して社会コストを反映させる、という課題がいかに重要か、石油会社エクソンの元ノルウェー副社長、オイスタン・ダーレン( Oystein Dahle, former Vice President of Exxon for Norwayand the North Sea)の指摘を引用しています。

「社会主義は、経済の真実を市場に反映させなかったために崩壊した。資本主義は、生態系の真実を市場に反映させないために崩壊するかも知れない」

As, has pointed out: “Socialism collapsed because it did not allow the market to tell the economic truth. Capitalism may collapse because it does not allow the market to tell the ecological truth."
(Dahle from discussion with author at State of the WorldConference,AspenCO22 July 2001)


Aのエネルギー代替措置の中でバイオマスエネルギーに対する記述がほとんどないのが、前々から疑問になっている点です。
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温暖化ガス吸収源に関する報告書三題(2004/6/13)

日本政策投資銀行地域資源研究センターから、二つの報告書が発表さました。
日本列島のカーボンプール:森林・森林土壌・湿地・農地土壌に関する研究」は、森林のみでなく湿原など様々な形態の土地での炭素ストックを評価したもの。
「CO2吸収機能等の適性配置:地域マネジメントシステム(RMS)による環境・地域資源管理に関する研究」は、森林の公益機能の計量評価を使って特定流域の森林管理のプライオリティを明らかにしようというもの。
こちらからhttp://www.dbj.go.jp/japanese/download/local.htmlダウンロードできます)

また、埼玉県が行った「CO2排出量・吸収源取引制度」調査・研究結果の報告(こちらからhttp://www.pref.saitama.jp/A09/BB00/kansui/home.htmlダウンロードできます)は、林業経営者協会などが提言している吸収源取引についてつっこんだ検討をしたもの。

今後の施策を考える上で参考になります。

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ウッドマイルズ研究会ニュースレター「木のみち」4号(2004/6/13)

ウッドマイルズ(R)研究会のニュースレター4号が6月の始めに配布されました。
目次は以下の通りです。配布希望の方はこちらに連絡下さい

1. 巻頭言                            古河 久純 ((社)日本林業経営者協会会長)2. 研究会ニュース
 -1 2004年度総会の報告                   坂崎 有祐
 -2 ウッドマイルズについての学会発表              藤原 敬
 -3 京都府のウッドマイレージ認証木材普及事業          白石 秀知
 -4 <木の保育園>をつくろう!                 三澤 文子
_ -5 エコマークとウッドマイルズ                 藤原 敬
 -6 霞ヶ関のウッドマイルズ                   藤原 敬
3.【連載】第4回ウッドマイルズ概論
      第四章 ウッドマイルズ研究会とその波紋         藤原 敬
4.【連載】第3回環境問答 
      『木の家は環境にやさしいか(その2)』         野池 政宏

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「富士森林再生プロジェクト」の提案(2004/6/13)

少し時間がたってしまいましたが、会員制寄稿誌「日本の森林を考える」(通巻19号2月号)に表記の論考が掲載されています。筆者は、「21世紀の森を考える会」。

私なりに論旨をまとめてみると、@現在の林業を巡る状況をポジティブに考えると、あと20年ほど現在の森林が一定の整備をされて高蓄積の人工林になって行けば、循環型の森林経営を支える基盤となることが出来る。Aその移行期を次への飛躍を準備する期間とするカギは、各地域に所有者に信頼され森林整備をリードする事業者が生まれるかどうかが握っている、の2点に集約されます。

それを実証するためのパイロットプロジェクトを日本列島の中心に位置し、日本の山々の象徴である富士山麓に立ち上げたいと呼びかけています。

いままで、林業構造改善、地域材の推進など、林業分野の大きな構想は国や都道府県など行政主導で描かれてきたものですが、経済同友会の「森林再生とバイオマスエネルギー利用促進のための21世紀グリーンプラン」をベースにしたもの。

筆者と出版社のご理解をえて、全文のpdfファイルをこちらにおきます。
同誌では最近出された最新号に特集をしています。
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森林総研の最新発表論文「研究最前線」(2004/6/13)

森林総研の研究成果を最も早い段階で速報する役割で、森林総研のHPに「研究最前線」という欄がもうけられました。

研究成果の発表は基本的には学術論文に発表という形で行われますが、このタイミングで一般向けの内容紹介のテキストとともに論文名、著者、掲載誌などが公表されます。

本日6月13日時点で掲載されている論文は以下のような論文です。
コジイの葉のつき方は木の大きさと光の当たり方で決まります
どれだけ写せばケモノの多様性が分かるのか?
森が変われば気候も変わる−相互影響モデルで再現

月に1−2回更新されます。
なお、更新は森林総研のニュースレターで連絡されるようになっています。

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2000年世界森林資源評価主報告書の日本語訳版(2004/6/13)

現在世界の森林のことを議論するときに必ず参照されるのは、FAOが出版した、The Global Forest Resources Assessment 2000 (FRA 2000) のデータですが、日本語訳が海外林業コンサルタンツ協会から出版されました。こちらに概要


熱帯林問題を地球環境問題の中心に据えるきっかけになったのは1980年時点の熱帯林の現状と動態を明らかにしたFAOの熱帯林評価報告書です。その十年後に出されたFRA1990は熱帯林減少が加速していることを示し、80年代の活動に大変厳しい評価を与えるきっかけとなるなど、大きなインパクトを与えてきました。そのシリーズの最新版が、2000年世界森林資源評価報告書です。

なお、本報告所については別途東京大学永田教授が概要部分を翻訳公開されています。(こちら

目次
第一部 世界的事項
 第1章 森林面積とその変化
 第2章 森林蓄積と木質バイオマス
 第3章 植林地
 第4章 森林外の樹木
 第5章 生物多様性
 第6章 森林の経営管理
 第7章 保全区域内の森林
 第8章 森林火災
 第9章 木材供給
 第10章 非木材産物
第二部 地域別の森林資源(省略)

第三部 プロセスと方法論
 第45章 実施の枠組みと各国の参加
 第46章 1980〜2000年の間における熱帯の森林面積の調査
 第47章 世界森林地図の作製
 第48章 林業情報システムの発展
 第四部 結論と提言
 第49章 結論
 第50章 本調査(FRA2000)の経過のレビュー
 第51章 今後の調査への勧告

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp