ニュースレター No.050 2003年10月14日発行 (発行部数:980部)

 

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:国土交通省の自立循環型住宅プロジェクトとウッドマイルズ(2003/10/14)
2. ポスト京都議定書の吸収源対策に向けてー秋の学会報告から(2003/10/14)
3. 日本林業経営者協会の吸収源政策提言(2003/10/14)
4. 環境経済政策学会の2003年大会報告コレクション(2003/10/14)
5. 我が国におけるFSC森林認証の最近の進展(2003/10/14)
6. 勉強部屋へのリンクサイト集(2003/10/14)

1. 国土交通省の自立循環型住宅プロジェクトとウッドマイルズ(2003/10/14)

9月29日国土交通省の関係研究機関が中心となって実施している、自立循環型住宅開発委員会、LCA評価手法開発委員会という会合で、「ウッドマイルズと地場産木材利用の評価」と題して話をする機会がありました。

「エネルギー・資源の自立循環型住宅・都市基盤整備支援システムの開発」というのが、プロジェクトのフルタイトルです。我が国の二酸化炭素排出量の約4割が建築物の建築や運用によって生じているのだそうですが、2002年から4年間の計画期間中に省エネルギー率50%以上を達成する普及型の住宅設計手法などを開発する、ということを目的にしているものです。(研究趣意書
プロジェクトはA自立循環型住宅のための要素技術開発、B省エネルギー性能に関する実証研究、C自立循環型住宅の設計建設支援システム開発、D自立循環型住宅の普及推進の四つの課題群と18の課題という大きな構えなのですが、今回の報告の場はCの中のLCA(ライフサイクルアセスメント)評価手法の開発という委員会(小玉祐一郎座長による研究開発方針案)でした。

この十年ぐらい二酸化炭素の発生を一元的な指標とした建築物のライフサイクルアセスメントの蓄積があるようです(建築学会のLCA指針小委員会の成果)が、なかなかそれが海外のように(米国LEED英国BREEAM)普及してゆかないというのがなやみとようです。

小玉座長は「自立循環型住宅にはさまざまなアプローチがありますが、地場産の木材の活用は自立循環型住宅の欠かせない条件のひとつ。地場産材の活用を促進するためには、LCA評価においてもその導入効果をしっかり評価されるべきである」とウッドマイルズについての期待をされています。

プレゼンテーションのスライド


2. ポスト京都議定書の吸収源対策にむけてー秋の学会から(2003/10/14)

京都議定書では森林の吸収源としての機能を、森林に蓄積されたCO2の量で量るということにしています。この方法(IPCC暫定法)によると、木材が森林から伐採されて林外に搬出された段階で排出にカウントされることになりますが、収穫されてからも二酸化炭素を固定する木材製品を吸収源として評価する、という作業が将来の取り決めをにらんで行われています。

1998年にセネガルで行われた、IPCC,OECD,IEAの「森林伐採および木材製品から排出される二酸化炭素の順は移出量の推計に関する評価手法」Evaluating Approaches for Estimating Net Emissions of CO2 from Forest Harvesting and Wood Products.という会議で、現在のIPCCの暫定法という以外に、大気フロー法、蓄積変化法、生産法の三つが提起されています。(報告書英文

国内での議論があまり進んでいないのですが、先般行われた環境経済政策学会で国立環境研究所橋本征二さんによる「温室効果ガスインベントリーにおける異なる木製品の炭素勘定方法の政策インプリケーション」と題する報告がありました。
それぞれの、手法を比較する場合、実施可能性、正確性などが基本となりますが、今回の報告は森林政策などにどう影響するかという面に焦点をあてた、分析結果です。(報告概要

この問題の議論がさらに進むことが必要だと思い、私なりの理解で、4つの案についての説明図を作成してました。左側の図で、A国の森林木製品による二酸化炭素吸収量は濃くいろ塗りをした固定量から、同排出量を引いた数値で表させるようにしています。参考にしてください。(作成に当たり、橋本征二さん、森林総研の外崎真理夫さんにアドバイスをいただきました。どうもありがとうございました。
パワーポイントによる原図はこちらから。

A国の森林木製品による炭素吸収量を
IPCC暫定法

森林の中だけの固定(光合成による純吸収量)ー排出(分解と伐採量)で計算される蓄積増を吸収量とカウントする。

問題点
伐採即排出量となる。
木材の中で固定される二酸化炭素の増加分(化石資源からの排出量の2%程度増加していると推定されている)を考慮していない。
大気フロー法

森林が固定した量から分解したものを差し引きさらに、木材の分解、消却を差し引く(輸入材の分解焼却も当該国の排出量とカウントされる)計算される蓄積増が吸収量とカウントされる。

暫定法との相違
暫定法+国産材供給量ー国産材分解焼却量ー輸入材の分解焼却量

問題点:木材を自国で使わずに輸出する国にメリットが付与される。
蓄積変化法

森林および、木材製品によって固定されたものから、森林および、木製品によって排出されたものを差し引いて計算される蓄積増を吸収量としてカウント。

暫定法との相違
暫定法+国産材供給量+輸入材供給量ー国産材分解焼却量ー輸入材分解焼却量

問題点:大量に木材を輸入しストックする国がメリットを得るシステム。
生産法

森林に固定された量から森林で分解されたものを差し引き、国産材の分解焼却量、輸出材の分解焼却量を差し引く

暫定法との相違
暫定法+国産材供給量ー国産材の分解焼失量(輸出されたものも含む)


問題点:輸出された国産材については輸出先まで追跡し焼失分解時点を把握する必要があり実行上難点がある

3.日本林業経営者協会の吸収源政策提言(2003/10/14)

10月2日社団法人日本林業経営者協会の「持続的林業のための経営講座」という場でウッドマイルズについての話をする機会をつくっていただき、全国で活発に活動している林業経営者と懇談をすることができました。

「林業経営」を本業とする方々の集まりですからあまり気勢が上がらないと思われるかもしれませんが、最近積極的な政策提言を次々とされています。

その一つが、「温暖化ガス吸収源としての森林機能増進方策に関する政策提言」(2003/6)です。

気候変動枠組み条約自体が、排出権取引など市場機構を通じて効率的な政策達成の手法を取り入れようとしていますが、国内の吸収源対策の効率化を図ろうという構想です。

具体的には、吸収源としての森林を管理するための「吸収源確保推進管理機構」の創設、地域材利用促進グリーン税制の導入などの提案をしています。

細部はいろいろ議論があると思いますが、吸収源対策についての関心が経済界も含めて急速な広がりを示しており、排出権取引の方は国際的国内的にな様々な制度が模索されている状況になっています。

吸収源と排出権のセットになった管理が必要というのは、提言も指摘しているところですが、第二約束期間以降の総合的な取り組みをにらんで、吸収権の管理方法についても議論を始める時期ではないかと思います。是非一読をおすすめします。



4. 環境経済政策学会2003年大会報告コレクション(2003/10/14)

9月27−28日東京大学本郷キャンパスで、表記大会が開催されました。小生自身の報告もあり、また初めてコメンテーターの役を仰せつかったりで、結構重たい大会でした。

森林や国際制度など小サイトと関わりのありそうな報告をご本人の了解を得て、一覧表にしておきます。

演題 発表者 要旨 一口コメント
地球温暖化対策とその対策
経済効果とCO2排出の地域差についての一考察 長谷川良二(神戸大学大学院) x 日本の各地で、排出の形態に地域差
環境損害概念の多元化と地球環境保護 岡松暁子(国立環境研究所) 国同士の環境取り決めの発展方向
Web-GISの活用による住民を主人公として環境情報共有システムの実践と可能性 藤山浩(島根県中山間地域研究センター)他 x 中山間地における、市民と行政のインターネットを通じたコミュニケーション
温室効果ガスインベントリーにおける異なる木製品お炭素勘定方法の政策インプリケーション 橋本征二(国立環境研究所) x ポスト京都議定書の木材資源の吸収機能評価
地域の環境資源管理
CO2吸収機能等の適正配置:地域マネジメントシステムによる環境・地域資源管理に関する研究 杉原弘恭(日本政策投資銀行)他 GISを使って流域単位に森林管理の優先政策の順位を判定
水道の水源水質保全を巡る紛争:カナダ・大バンクーバー水道局水源林の事例について 高橋卓也(滋賀県立大学) x カナダの水源林管理を巡る政策当局と環境団体の関係
農林業と環境
森林資源に対する企業の価値意識 法人の森林制度に関する企業アンカーと調査を通じた一考察 高橋信吾(三菱総研)他 国有林の「法人の森林」制度の展開方向への示唆
「フードマイルズにみる『生活の質(生活の質及び環境への影響)』の変化 根本志保子(一橋大学大学院) 一国のフードマイルズの分析ツールの紹介と分析結果の一例
環境の経済分析
地方環境税導入のための環境評価利用ー神奈川県水源環境税を事例としてー 吉田謙太郎(筑波大学) x 水源環境税に関する、森林保全などいくつかの政策への支払い意志の定量的調査結果
国際関係と環境
国際森林管理レジーム形成と国際熱帯木材機関の役割 藤原敬(森林総研) x 将来の国際枠組みのために、野心的な「2000年目標」合意された過程の分析
ディブロマトリ・サイエンスの構築:欧州酸性雨問題の科学アセスメントを題材として 石井敦(国立環境研究所) x 外交と科学者の微妙な関係を対象とした学問分野の提案
環境権の現在的意義:資源配分における非対称性 藤堂史明(新潟大学) x 「汚染者負担」と「生産者負担」の関係如何
国際機関の有効性に関する検討:国連砂漠化会議準備から地球サミットまでの砂漠化対策の事例からのインプリケーション 真田康弘(神戸大学) 砂漠化条約を主導したUNPEが提供する情報の質の問題点
国際環境レジームにおける環境アセスメントの学習プロセス:国際捕鯨委員会を事例として 大久保彩子(東京大学) x 石井報告の事例展開
(森林より海洋の方がもっとわかっていないことが多い)

5. 我が国のおけるFSC認証の最近の進展(2003/10/14)

FSCの森林認証面積は今年に入ってから次々と新たな認証が増えています。10月初旬の段階での一覧表を掲載しておきます。

FSC本部が出しているニュースレターの最新版9月24日号(pdfファイル)が日本の認証の拡大について記事を掲載しています。「日本は傾斜地に森林があり森林の管理が大切なこと、世界中から木製品を購入している企業が多いことから、FSCの日本での進展には重要な意味がある」とのコンサルタントのコメントが載っています。

no 名称 場所 contact 面積 取得時期 認証機関 公開概要
SCS-PM-
00006
速水林業 三重県海山町 速水亨 1070 2000年
1月
SCS 英文
和文アミタkk
SW-FM/
COC-125
檮原町森林組合 高知県檮原町 中越利茂 6278 2000年
10月
Smart wood 英文smartwood
和文
SCS-
FM00037P
アサヒビール庄原林業所 広島県庄原市 秋葉さとし 2169 2001年
9月
SCS 英文
和文
SGS-FM/
COC-0824
東京農工大学 栃木県・群馬県・埼玉県 岸洋一 902 2001年
11月
SGS 英文
SGS
SA-FM/
coc-1228
宮川森林組合 三重県 鳥山昌章 1814 2003年
3月
Soil Association 和英
アミタkk
SA-FM/
coc-1227
吉田本家山林部 三重県 吉田正木 1257 2003年
3月
Soil Association 和英
アミタkk
SGS-FM/
COC-1330
東白川森林組合 岐阜県加茂郡東白川村 安江章吉 1462 2003年
3月
SGS 英文
和文
SGSJapan
SW-FM/
coc−246
山梨県県有林 山梨県 木村靖郎 143000 2003年
4月
Smart wood 英文(SMHP)
和文(山梨県HP)
SGS-FM/
COC-1045
北越製紙社有林 岩手県 三上山学 3044 2003年
5月
SGS 和文
(SGSjapan)
SA-fm/
coc-1263
尾鷲市有林 三重県 川口清 3275 2003年
6年
Soil
Association
和文
アミタkk
SW-FM/
COC-278
龍神村森林組合 和歌山県 多谷 安一 3351 2003年
8月
Smart
Wood
英文
SWHP
SGS-FM/
COC-1469
下川町森林組合 北海道 渡辺大介 2080 2003年
8月
SGS 英文
SGSHP
SA-fm/
coc-1289
岩泉町 岩手県 高橋信子 5316 2003年
8月
Smart
Wood
和文
アミタkk

資料:アミタ株式会社SGSジャパン山梨県、SW(Smartwood)


6. 勉強部屋へのリンクサイト集(2003/10/14)

小サイトのネットワークを双方向に広げようという意図で、森林と環境をキーワードとした各地のサイトに小サイトへのリンクの依頼をしてみました。30道府県約90のサイトが了解をしていただきました。

「地球環境と共生できる森林管理や経営の実現 のために森林に係わる研究者と市民の交流の場となることを、 また行政と関連業界の意見・提案の交換の場となるこを目指す」 という小サイトの理念に理解をいただき、このサイトにリンクを張っていただいているサイトのリストを掲載します。どうも有難うございます。

尚、このサイトへのリンクについてはご自由ですが、リンクを張った場合はご一報下さい。このページのリストへの掲載はご相談します。


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp