IPCC1.5度特別報告書と森林(2018/12/22

パリ条約のCOPで作成を要請されていた「1.5℃特別報告書(*)」が10月に仁川(韓国)で開催された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第48回総会で公表されました。

正式名称は『1.5°Cの地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化、持続可能な開発及び貧困撲滅への努力の文脈における、工業化以前の水準から1.5°Cの地球温暖化による影響及び関連する地球全体での温室効果ガス(GHG)排出経路に関する IPCC 特別報告書』

本文と政策決定者むけ要約SPM(どちらも英文)がIPCCのウェブサイトに掲載されています
また、政策決定者向け要約の概要日本語版が、環境省のサイトに掲載されています。

政策決定者向け要約SPMの柱建ては以下の通りです。

セクションA: 1.5℃の地球温暖化の理解
セクションB:予測される気候変動、潜在的な影響及び関連するリスク
セクションC: 1.5℃の地球温暖化に整合する排出経路とシステムの移行
セクションD: 持続可能な開発及び貧困撲滅への努力の文脈における世界的な対応の強化

(1.5度C[no地球温暖化とは)

下の図がSPMのセクションAに掲載されています。図1のようにこのままいったら50年までに1.5度になる。2100年までに1.5度にするには図2のよう劇的な排出削減をはからなければならないようです

 
図1過去の気温上昇、今後の対策に「応じた気温上昇  図2定型化された世界全体の年CO2排出量

(森林は?)

また、セッションBでは2度上昇と1.5度上昇の比較などが記載され、1.5度では珊瑚礁が70-90%失われるが、2度では99パーセント以上失われる、といった記述されています。今回の報告書の重要な内容なのでしょうが、森林の役割がを見ていく場合、セションCが大切そうです。

SPMセッションCの森林に関係ありそうな部分を訳しておきました。

     
C2.5  Transitions in global and regional land use are found in all pathways limiting global warming to 1.5°C with no or limited overshoot, but their scale depends on the pursued mitigation portfolio.
Model pathways that limit global warming to 1.5°C with no or limited overshoot project the conversion of 0.5–8 million km2 of pasture and 0–5 million km2 of non-pasture agricultural land for food and feed crops into 1–7 million km2 for energy crops and a 1 million km2 reduction to 10 million km2 increase in forests by 2050 relative to 2010 (medium confidence). 16 Land use transitions of similar magnitude can be observed in modelled 2°C pathways (medium confidence). Such large transitions pose profound challenges for sustainable management of the various demands on land for human settlements, food, livestock feed, fibre, bioenergy, carbon storage, biodiversity and other ecosystem services (high confidence). Mitigation options limiting the demand for land include sustainable intensification of land use practices, ecosystem restoration and changes towards less resource-intensive diets (high confidence). The implementation of land-based mitigation options would require overcoming socio-economic, institutional, technological, financing and environmental barriers that differ across regions (high confidence). {2.4.4, Figure 2.24, 4.3.2, 4.5.2, Cross-Chapter Box 7 in Chapter 3} 
地球規模での土地利用の変化は、地球温暖化を1.5℃に制限するすべての経路に見られるが、その規模は、追求される緩和の方法に依存する。地球温暖化を1.5℃に制限し、オーバーシュートが少ないモデルの排出量経路は、牧草地50万〜800万km2と食べ物と飼料作物の0-500万km2の非牧草農地を転換して、1〜700万km2のエネルギー作物用の農地に造成し、 2010年と比較して2050年までに100万km2の森林減少あるいは1000万km2の森林造成が見込まれている(中程度の信頼感)。
同様の大きさの土地利用遷移は、モデル化された2℃の経路で観測される(中程度の信頼度)。
このような大きな移行は、人間の居留地、食糧、家畜飼料、繊維、バイオエネルギー、炭素貯蔵、生物多様性、その他の生態系サービスのための土地に対する様々な需要の持続可能な管理に深刻な課題を引き起こす(高い信頼性)。
緩和オプションの土地への圧力を少なくするにはには、土地利用の慣行の持続可能な強化、生態系の復旧、資源集約的ではないダイエットへの変化が含まれる(高い信頼度)。
地による緩和オプションの実施には、地域間で異なる社会経済的、制度的、技術的、資金調達的、環境的障壁を克服する必要がある(高い信頼性)。
{2.4.4、図2.24,4.3.2,4.5.2、第3章のクロスチャプター 
 C3.1  Existing and potential CDR measures include afforestation and reforestation, land restoration and soil carbon sequestration, BECCS, direct air carbon capture and storage (DACCS), enhanced weathering and ocean alkalinization. These differ widely in terms of maturity, potentials, costs, risks, co-benefits and trade-offs (high confidence). To date, only a few published pathways include CDR measures other than afforestation and BECCS. {2.3.4, 3.6.2, 4.3.2, 4.3.7}  既存および潜在的な措置には、植林および再植林、土地の再生および土壌の炭素隔離、BECCS、直接的な炭素捕獲および貯蔵(DACCS)、強化された風化および海洋のアルカリ化が含まれる。 これらは、成熟度、潜在的可能性、コスト、リスク、コベネフィットとトレードオフ(高い信頼性)の点で大きく異なる。現在のところ公表された報告書で、植林とBECCS以外のCDR対策が含まれているものは数少ない。 {2.3.4,3.6.2,4.3.2,4.3.7}
 C3.2   In pathways limiting global warming to 1.5°C with limited or no overshoot, BECCS deployment is projected to range from 0–1, 0–8, and 0–16 GtCO2 yr-1 in 2030, 2050, and 2100, respectively, while agriculture, forestry and land-use (AFOLU) related CDR measures are projected to remove 0–5, 1–11, and 1–5 GtCO2 yr-1 in these years (medium confidence). The upper end of these deployment ranges by mid-century exceeds the BECCS potential of up to 5 GtCO2 yr-1 and afforestation potential of up to 3.6 GtCO2 yr-1 assessed based on recent literature (medium confidence). Some pathways avoid BECCS deployment completely through demand-side measures and greater reliance on AFOLU-related CDR measures (medium confidence). The use of bioenergy can be as high or even higher when BECCS is excluded compared to when it is included due to its potential for replacing fossil fuels across sectors (high confidence). (Figure SPM.3b) {2.3.3, 2.3.4, 2.4.2, 3.6.2, 4.3.1, 4.2.3, 4.3.2, 4.3.7, 4.4.3, Table 2.4}  オーバーシュートが制限された状態での地球温暖化を1.5℃に制限する経路では、2030年、2050年、2100年にBECCSはそれぞれ0-10億tCO2/年,0-80億tCO2/年、0-160億tCO2/年の幅で導入されると予測され、農業、林業および土地利用(AFOLU)に関連するCDR手法により、これらの年に0-50億tCO2/年,10-110億tCO2/年、および10-50億tCO2/年を除去すると予想される(中程度の信頼度)。 今世紀紀半ばまでのこれらの展開範囲の上端は、最近の文献に基づいて評価された可能性の上限値をBECCSでは50億tCO2/年超過し、植林では36億tCO2/年超過している中程度の信頼度)。一部の経路は、需要側の措置とAFOLU関連のCDR措置へのより大きな依存によってBECCSの展開を完全に回避している(中程度の信頼)。バイオエネルギーの利用は、セクター間で化石燃料を置き換える可能性があるため、BECCSが含まれている場合と比較してBECCSが除外されている場合には、増加することとなる(高い信頼度)。 (図SPM.3b){2.3.3,2.3.4,2.4.2,3.6.2,4.3.1,4.2.3,4.3.2,4.3.7,4.4.3、表2.4}

1.5度におさえるために、排出サイドから規制をかけていくことの難しさが、土地利用などの吸収問題に難題を突きつけているという図柄でしょうか?

石内修:IPCC1.5度C特別報告書のポイント(森林技術誌12月号収録)、甲斐沼美紀子:脱炭素社会の実現に向けて(グローバルネット誌12月号特集脱炭素社会の実現に向けた社会づくりとはー1.5度特別報告書を受けて考える収録)を参考にさせていただきました。

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