これからの地域は何を目指すべきか-森林・木材・建築を中心にーウッドマイルズフォーラム2017(2017/8/20)

一般社団法人ウッドマイルズフォーラムが、年に一回のウッドマイルズフォーラムというイベントを開催して10年たちましたが、今年のウッドマイルズフォーラム2017年は、群馬県の上野村をベースに活動している哲学者の内山節さんの標記の基調講演をいただきました。

ウッドマイルズ木材の輸送距離の環境負荷という形で、地域材や木材の話を議論してきたフォーラムにとって、今後の方向性を一から考えてみる機会にしよとの企画でした。

ネット社会でどんどんグローバル化していく情報と経済。その中で失われてきたものを取り戻すには何が必要なのか?

重要な問題提起を含む話でした。

話の骨子は、以下の通りです。

 これからの「地域」をどのように考えるべきか

1 . はじめに
 -いま起こっていること
  ... 間伐材と林家の危機
  ... 森林面積の拡大と動物問題
2 地域と持続性
 -持続可能な労働体系をいかにつくるか
3. 私の村、群馬県上野村について
 -森林整備、製材、木工生産、ペレット生産、木質系バイオマス発電、茸生産、観光資源
 -どのような地域労働体系をつくれば上野村は持続できるか・・経済から労働体系へ
 -これからの地域づくりと伝統回帰
4. 伝統的な社会とは何か
 -自然と生者と死者の社会
 -生きる世界の諸要素(労働、経済、生活、地域、文化、土着的な信仰など)が分離せずに一体化している世界
 -近代社会ではそれらの諸要素がバラバラになり、経済が肥大化、暴走して他の諸要素を破壊するようになった
5 改めて地域とは何かを問う
 -関係の網という視点から
 -多層的な関係の網、一体的な関係の網
 -関係に加わってくる外部の人々
6 まとめに代えて
 -地域と結んだ建築のあり方を考える

経済がグローバル化しているので、森林管理の在り方がグローバル化していないのが問題ーというのが勉強部屋の一つのスタンスですが、一時的なグローバル化に目を奪われて大切なものを失っているのでないか?という問題を投げかけられました。

ウッドマイルズフォーラムのウェブサイトから、講演とディスカッションの両方をまとめたわかりやすい概要が掲載されています。ご関心のある方は、こちらをどうぞ↓。

ウッドマイルズフォーラム2017「これからの地域は何を目指すべきか〜森林・木材・建築を中心に」(開催概要報告)

((藤原のメモ帳から))

(上野村のこと)

ご自身が生活している上野村(群馬県)は、明治以降一度も町村合併がされず、江戸時代の人口が1000人で現在は1300人。持続可能な社会が形成され、中学生に将来どこに住みたいか聞くと、全員が上野村という。

こんな社会をつくってきた、という、具体的な、江戸時代から現在までの人と自然の関係性について、大きな話でした。

(日本の伝統的社会となどんな社会だったのか)

地域社会と外部の人がわかりやすい労働体系をベースとした人間関係、これが伝統的な地域関係の基本で、経済のグローバル化、高度経済成長、都市化がそれぞれの要素をばらばらに分解し、打ち壊してきた。伝統への回帰が一つのポイント

(どんな道筋なのか、地域とつながる建築)

伝統回帰の道筋、安定した関係ができるための、特に大都市では時間的な蓄積が必要。流入を止めなくては。地域社会ができていないところで、本当の都市のデザインができるのか、建築デザインをされている方々に問いたい。

建築物だけでデザインを考えるのではなく、仕事と生活の形、近所へ開放された土間、近所の子供が遊んでいる庭なども一体で考えるべき。コミュニティーのないところで自分の家だけをいかに工夫しても限界があり、問題提起を続け、問題意識の高い依頼者と一緒に考え続けるしかない。

(農山村と都市の関係)

農山村は都市のために収奪されてきたが、今後は農山村が成立することで都市も成立するという農山村自体が生きていくための糧を見出していかなければならない。上野村のような地域循環の考えは、これから注目。

(自治体によるまちづくり)

公共側のみでは難しく民間は儲かることしかやらないが、事業まではやらないコンサルティング主の民間のまちづくり会社は力になる。コーポラティブというやり方もある。

以上の通り、明治以降の近代化の流れに対する疑問、生きている人間のコミュニケーションを徹底的に突き詰めてきた欧州にたいして、死者と自然と人間のコミュニケーションを視野にいれてきた日本社会、など、少し立ち止まっていろいろ考えなければならない問題提起をいただきました。

木材の流通がグローバル化し、違法伐採問題など森林の管理の仕組みもグローバル化しようという方向がありますが、、最低限のところはそれで押さえられるとしても、本当にローカルな森林管理の仕組みが関係者の議論の中で合意されるような仕組みが必要だ、ということが指摘されているのでしょうか。

energy2-73<WMF2017>