ポスト天然林時代雄東南アジア林業-林業経済学会2020年春季?大会シンポジウムから(2020/10/1)

9月4日林業経済学会春季大会のシンポジウムにオンライン参加しました。名古屋大学で3月に開催される予定が延期となって秋に春季大会イベントが開催されたモノ。

統一テーマはポスト天然林時代の東南アジア林業

結果は現時点で公表されていませんが、報告内容は、学会誌林業経済研究3月号Vol66No.12020に掲載されているので公開されています(下のリストのタイトルからダウンロードできます)。それをもとに概要説明します。

 タイトル  報告者  要旨
座長解題
「ポスト天然林時代」 
島本美保子
法政大学社会学部 

熱帯3地域の中でも,東南アジアは最も木材貿易のための商業伐採による影響が激しい地域であった。その結果一次林の伐採が進み,近年では人工林経営への移行がみられるようになった。

今改めて,天然林採取林業から人工林育成林業へと変化を遂げる東南アジア地域を取り上げ,人工林経営がどのように拡大したのか,その結果,資源管理・木材生産は持続的になされているのか,そして今後どのように変化していこうとしているかについで情報を共有し議論を深めることは,熱帯林の持続可能性を考える上で重要ではないか
検討に際しては,産地国内における政策(産業政策,資源政策等),産業(木材産業の発展,木材需要・木材輸出入の構造変化等),資源(天然林資源の賦存・利用状況等),および国際的な木材貿易・造林投資動向等の要因を整理した上で,人工林経営の経緯・現状を捉え直すと共に,天然林・人工林をあわせた木材資源の持続的育成および持続的な森林管理への影響について考察する。
 インドネシアにおける木材・木材製品生産の動向

同PPT
 鮫島弘光
公益財団法人地球環境戦略研究機関
 世界的に木材原料の天然林資源から人工林資源への移行が進行している。そのプロセスを理解するため,天然林コンセッションの資源が減少し,人工林コンセッション,土地転換材,住民林業からの木材生産が増大するインドネシアにおいて,国内の木材と木材製品の主要な生産地,また両者の関係がどのように変化したのかを分析した。インドネシアでは, 1990年代までは主にカリマンタン,スマトラの天然林コンセッションで木材生産が行われ,域内で合板や製材品が生産されていた。2000 年代以降スマトラにおけるパルプ・チップ生産がインドネシアで最も木材を消費する木材製品製造業となり,原料は主にスマトラの人工林コンセッションからの木材が使われているが,他の地域の人工林コンセッションからの木材や,スマトラにおける住民林業によって生産された木材も使用されていると推定された。合板・製材品の生産の中心はジャワに移動し,ジャワの住民林業がその最大の資源供給源となるとともに,カリマンタンの天然林コンセッションの木材も使われている。カリマンタンでは天然林コンセッションの木材を主な原料とする合板生産が維持されているが,一部人工林コンセッションからの木材も使用されていると推定された。
 ポスト天然林時代のフォリピン林業  葉山アツコ
久留米大学
 1950年代から1970年代までフィリピンは,世界の主要丸太生産国,輸出国であったが,近年の国内木材生産量は拡大する木材需要に応えることができずにいる。2011 年の全面的天然林伐採禁止令によって採取的林業に終止符を打ったが,国有林地における育成的林業への展開は不発である。管理主体である国有林管理コミュニティ及び産業造林契約者ともに木材生産者になり得ていない。木材需要に応えているのは国有林地管理主体に比べて相対的に規制の緩い私有地における人工林造成者である。国有林地における育成的林業展開の不発は,戦後の採取的林業が国家アクターによるレント・シーキングと深く結びついたことに関連している。マルコス失脚後に誕生したアキノ政権以降森林・林業行政における「非マルコス化」が進んだ。その一つが周辺化されていた住民, コミュニティを新たな国有林地管理主体に据えたことであり,伐採権と密接に繋がっていた木材産業の放置であった。木材産業の衰退は,国有林地管理主体による人工林造成への投資意欲を阻害している。マルコスによる採取的林業の私物化への反動が,結果として国有林地における育成的林業の展開を不発にさせた。
 人工林材へと原料転換が進むベトナムの森林資源戦略  岩永青史
森林総合研究所
 ベトナムの資源政策は,東南アジア諸国の中では最も包括的に取り組まれていると言える。本稿では,その実施過程を明らかにするとともにそれら資源政策を実現に導いた森林資源戦略の背景を考察した。そのために、ベトナムの資源政策を,森林の動態と保護,木材加工産業における原料消費,木材の合法性と持続性という3つの視点から分析した。その結果,人工林資源を拡大した上で天然林伐採禁止や丸太輸出禁止を行ったという政策実施の妥当性や,国際市場に復帰するタイミングの良さ,そして人工林材に適した製品を国際市場に供給したことといった特徴を明らかにした。これらを可能としたのは,社会主義と市場経済が混合したベトナムの政治経済体制が,公共性と経済性を併せ持つ森林・林業に関連する課題解決に適していたからであると考えられた。
     


二つの質問を事前に提出してありました。

(質問1 人工林の持続可能性の確保に関する政府・公的機関の関与と可能性)

FSC・PEFCの第三者認証の普及が進んでいて、消費国もそれに頼る動きがある(EUのFLEGTとか日本のFITバイオマス燃料調達など)。

ただ、木材の持続可能性を担保するのに、すべてのサプライチェーンを第三者認証することには、経済的な非合理性があることは間違えない(EU域内でもそんなことはしていない)。

本来公的機関が確り機能すれば、それだけで(あるいは第三者認証、業界団体認定などと組み合わせて)木材のグリーンなサプライチェーンは効率的に達成できるのでないか、という立場で考えた場合(市場での競争相手となる化石資源の巨大なサプライチェーンによる効率的な供給システムに対して、市場の中で効率的に対処する意味でも)、3カ国の公的機関の森林の持続可能性を担保する、これまでの対応と今後の可能性は、どのように評価できるか?

公的機関の信頼性と、第三者機関の信頼性の比較、根拠なども含めて伺いたい。

(質問2 人工林造成(特に木材生産林)に関する公的資金(補助金)の投入とその根拠)

それぞれの天然林から人工林化への道に公的機関が様々な形で関与している。

公的資金がどの程度投入されているか?その条件は?

流域管理、自然公園の保全などさまざまな条件で公的資金が投入されているだろうが、木材生産林に対して公的資金がどのように投入されているのだろうか?

産業資本、地域住民など人工林の管理主体の違い、まったく木材生産が行われていない箇所における初期投資と一度販売された後の再造林投資など産業化の過程の違いなどによって公的資金の投入の度合と、根拠がちがってくるだろう。

再造林投資への公的助成については、市場側からの議論であるWTOの補助金協定などとの関係も検討されなければならないだろう。(日本の造林補助金の根拠との関係も視野にはいるかもしれない)

以上を踏まえて、各国の木材生産林の含む人工林造成に関する公的補助金の投入の条件、規模、その根拠などを伺いたい。()

 

学会のオンラインイベントでの質疑というのは難しいですね。対面でのやりとりとは違って、オンラインだとするとどなたが聞いているか解らないので、確り根拠のある回答しかできません。

問2については、政府の投入した資金に関するネット上の情報に関する情報いただきました。

インドネシアに関しては、環境林業省が公表している毎年の決算報告書(LaporanKeuanganKLHK)、年次報告(Statistik)を分析されるとよいかと(ただしインドネシア語)。https://www.menlhk.go.id/site/download
フィリピンについても森林管理局の年次統計を分析されるとその盛衰が分かるのではないかとhttp://forestry.denr.gov.ph/index.php/statistics/philippines-forestry-statistics

ありがとうござおました

住民支援のような枠組みの補助金の推移と、木材生産との関係、それ自体には関心を持ってもらえたのかと思います。

chikyu5-7<postNFSEasia>


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