ニュースレター No.186 2015年2月22日発行 (発行部数:1240部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                         一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原

目次
1 フロントページ:途上国の森林管理への資金援助ーREDDプラス資金問題の取り組み(2015/2/22)
2. 木質バイオマス発電とバイオマスの需要量(2015/2/22)
3 論文:国有林野事業の一般会計化について(2015/2/22)
4. 第14回世界林業大会;南アフリカダーバン会合(2015/2/22)

フロントページ:途上国の森林管理への資金援助ーREDD プラス資金問題の取り組み(2015/2/22)

森林総研が主催した公開セミナー「REDD+の資金メカニズムとその活用」(2月3-4日)、森林総研が世銀東京事務所と共催で開催した「自然資本の持続的な管理に向けた革新的資金メカニズム」(同5日)に出席しました。

気候変動枠組み条約の新たな枠組み作りが12月のCOP21に向けが進んでいきますが、途上国の参加の枠組みづくりに大きな役割を果たしてきた、「途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減」(REDD+)の課題について、具体的な資金配分といった一番重要な事項が枠組み作りの中でどのように取り扱われるのか、重要な局面だといえます。

二つの会合を主催した森林総研も、REDD+の科学技術的な貢献は自分たちの得意分野だけれども、資金の枠組みのようなマネジメント部分は十分な蓄積のない部分だが、あえてそこに挑戦という、気持ちが伝わってくる、イベントでした。

 第一日目
基調講演:気候変動に対処する資金メカニズム - その到達点と課題: REDD+の観点から
高村 ゆかり 名古屋大学 教授 (以下高村基調講演)
セッション 2: REDD+のための国際資金メカニズム−準備段階から実施へ
セッション 3: REDD+資金の調達に向けた民間企業とNGOの役割
パネルディスカッション: REDD+のための国際資金スキームはどこへ向かうのか?

第2日目
基調講演:  REDDプラスの資金:論点と課題
ウィリアム・サンダリン 国際林業研究センター 首席研究員
セッション 2: REDDプラス関連資金の管理と運用
セッション 3: 森林保全と持続可能な森林経営に向けた制度設計−環境サービス支払いから
パネルディスカッション: REDDプラス資金のアクセスと活用に向けた課題

気候変動対策資金の全体像から具体的なプロジェクトの報告まで、二日間にわたる二つの基調講演を含む14の報告の全ての資料は、森林総研の関係ページからダウンロードできるようになっています。

気候変動に対処する資金の全体像につていは、温暖化ガス排出量の大幅削減(Mitigation緩和策)で年間数千億ドル、と適応対策(Adaptaiotn)に数百億ドルから数千億ドルとい単位の対策費が毎年いるそうです(高村基調講演データなど)。(日本円でいうと年間百兆円。)

 

それに対して、現在資金(左の図)は気候変動特別基金SCCF3.5億ドル。後発発展登場国基金LDCF9.15億ドル、グリーン気候基金GCF100億ドル、適応基金AD18.8億ドルといったところ(高村基調講演データなど)で、桁数が1ケタ以上違うといった状況です。

今後グリーン気候基金がどの程度広がっていくかがポイントです。

需要先は、緩和(Mitigation)と適応(Adaptaiton)に半分ずつ、緩和に関しても、エネルギー供給、低排出輸送、都市開発、にならんで森林が最後に並んでいますが、現在の資金の配分額では、森林に回るのは、緩和のうちの、5%ほどなのだそうです(タオ・ワン(緑の気候基金)GCFの作業進捗状況)

 

いくつかの講演の中で、持続可能な森林をを含む持続可能な土地利用に必要な資金の中で、気候気候変動基金の占める位置についてのグラフが提示されました(エリザバトーディ(世銀)異なるタイプのREDDプラス資金の連携:森林炭素パートナーシップ基金と森林投資プログラムを中心としてマリア・ホセ・サンサンチェス(FAO)準備段階から実施へ - 多国間資金援助のあり方 (同じ図が引用されているのでオリジナルは別のようです上の図)。

5つの資金の内温暖化関係が上の二つで、気候変動対策(REDD関連資金)はとりあえずの役割をはたすが持続可能でなく、持続可能な森林管理のためには別の持続可能な資金が必要、とのメッセージです。(ブラジルの例など、ウィリアム・サンダリン(CIFOR)REDD+ finances: Current issues and questions)

いずれにしても、削減効果や便益の定量的評価といった森林側の努力と、野心的な削減目標による排出権の市場化といったフレームワーク全体の抜本的改善のについての、息の長い取り組みが必要のようです高村基調講演

(多くの国の経験に基づく報告をすべてフォローできませんでしたすみません。是非こちらから

kokusai2-51<REDD+fund>


木質バイオマスエネルギー利用を巡る情勢(2015/2/22)

地方創生が施策のキーワードの一つになる中で、木質バイオマスのエネルギー利用が注目されており、関連していくつかのセミナーに参加する機会がありました。

分散型エネルギー社会の実現と地域社会環境ビジネスをどうすすめるか?(2/22)
バイオマス産業社会ネットワーク第144回研究会「バイオマス発電等で使用されるアブラヤシ核殻(PKS)の最新動向」 (1/29)

木質バイオマスエネルギーの情勢は再生可能エネルギー固定価格買取制度で、大きく変わりました。

((木質バイオマスの需給見通し))

(発電用木質バイオマスの需要量)

今後の需給見通しを踏まえて、どんな方向になるのか、経済産業省の調達価格等算定委員会の第18回委員会で農林水産省から「小規模な木質バイオマス発電の推進について」という資料が配布されました。

木質バイオマス発電施設で認定を受けているものは43か所であり、これが稼働すれば400万立方メートルの木質バイオマス需要が発生するが、森林林業基本計画では平成32年度に600万立方メートルのエネルギー利用を想定しており、200万立方メートルの余裕があるとしています(5ページ)。

この問題を幅広く議論したものとして、「未利用材の供給不足が懸念される木質バイオマス発電─地域別需給推計と展望─(安藤範親)」という論考がネット上に掲載されています。需要量の推定は既存の公開された情報を引き延ばして発電量から推定しているので、上記農林水産省と同じような精度のものです(稼働時の需要量を427万トン)が、地域ごとの分析していて、全国の四分の1が九州で発生するとしています。

(木質バイオマスの供給量)

安藤論文にも引用されていますが、供給量の方は、NEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)が作成した、バイオマス不遜亮有効利用可能量の推計というデータが使われています。

市町村ごとの森林バイオマスj林地残材賦存量:都道府県ごとの樹種別素材生産量をベースにその一定割合が林地に放置されると仮定して、都道府県ごとに森林バイオマス林地残材賦存量を計算し、市町村ごとに森林面積で割り振ったもの。(同様に都道府県間伐面積のデータから、一定量が林地に放置されると仮定して、市町村ごとの森林バイオマス切捨て間伐材の量を推計)

これらの量は全国924万トンとされるが、経済的な理由から供給量は半数程度のされ、さらに地方ごとの分析を行い、九州地区と中部地区の供給不足を指摘しています。

(発電用バイオマスの輸入)

これを裏付けるように、計画中の木質バイオマス発電は、その燃料の供給計画の中に、輸入バイオマスを念頭にいれていることころがあり、東南アジアからのヤシガラ輸入が急増しているようです(バイオマス産業社会ネットワーク第144回研究会「バイオマス発電等で使用されるアブラヤシ核殻(PKS)の最新動向」

国際的な視点にたって、バイオマスエネルギー利用を図ることは必要なことかもしれませんが、世界中でバイオマス燃料の貿易のグローバル化が始まるとすると、輸送過程のエネルギーなど問題がおこるでしょう。

((木質バイオマス発電の規模問題))

需給に関係する事項として、今計画されている発電所の規模が大きすぎて、これが地域の需給問題を複雑にしているという指摘があります。クローズアップ現代「急増!バイオマス発電〜資源争奪戦の行方〜」

小さなサイズの発電を可能にする技術開発、規模別の価格設定、などが課題となっており、2000KW以下の小規模な発電事業者に別の買取価格を設定する方向で検討が進んでいます(調達価格等算定委員会(第18回)‐議事要旨)。

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論文、国有林野事業の一般会計化について(2015/2/22)

元の林野庁次長、現在一般財団法人日本農業研究所理事長田家邦明氏から、標記の論文をお送りいただきました。

2012年6月に成立し13年4月から施行された国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るための国有林野の 管理経営に関する法律等の一部を改正する等の法律関連資料林政審議会(平成24年3月29日))、に基づく、国有林野事業の一般会計化されました。

このことについては、私も含めた国有林野事業にかかわってきたものにとっては「労務・給与関係法令の一部改正」(国営企業形態の廃止に伴い、国有林野事業職員の労務・給与について、一般 の国家公務員と同様の仕組みに変更)という部分について目が行くのですが、本論は、特別会計発足時の議論の分析に基づく、当時の特別会計化の議論の問題点、会計発足後のミクロな経済分析をに基づいて戦後復興ステージにおける特別会計の果たした積極的意義について検討していて、いままで会計制度が「森林林業政策上のグランドデザインに従って選択されたものではない」ことを指摘し、今後の議論への問題提起をしたものとなっています。

公益財団法人日本農業研究所農業研究第27号に掲載されています;「国有林野事業の一般会計化について(田家邦明)」

林業経済学会では3月29日の春季大会で「一般会計化のもとでの国有林の公共性」をテーマとしたシンポジウムが開催される予定ですので、楽しみです。

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第14回世界林業大会;南アフリカダーバン会合(2015/2/22)

 

およそ5年に一回開催されている、林業関係者の国際的イベント世界林業大会が、今年9月南アフリカダーバンで開催されます。

XIV World Forestry Congress公式サイト

Forest and People; Inveting in a Sustainable Future
森林と住民:持続可能な未来への投資

第13回世界林業会議の結果(2009/11/14) 開発における森林:大切なバランス(アルゼンチンブエノスアイレス)
第12回 世界林業会議の記録(2003/12/15)森林、命の源泉:地球とその住民のために(カナダケベック市)

「地球環境の視点から、日本の森林と木材を考える」産官学民の情報交流の広場をめざします。とするこのサイトとしては重要なイベントで、過去の大会も上記のようなフォローをしてきましたが今回は出席してプレゼンテーションをしようと、以下のような内容の登録をして、文書の発表とイベントを計画中です。

 持続可能な木材製品の需要の拡大のための緑の消費者との連携に関して  Cooperation with green consumers toward demand expansion of sustainable timber products

再生産可能で持続可能な木材は、来たるべき循環社会の主役になる可能性がある。2010年日本において、公共建築物での木材利用を促進する法律が成立したのも、その背景である.

木材の利用促進のため、林業関係者や木材関係者は環境にこだわりのある消費者と連携する努力が必要である。ただし、違法伐採問題や森林管理の脆弱性 がそのためのネックである。FSC、PEFCなど森林認証とCoC認証を組み合わせたサプライチェーンによる対応は重要な貢献であるが、コストの問題がある。


日本の合法性証明のためのガイドライン、ウッドマイルズによる地域材の取組みについて紹介する。



2006年日本のグリーン購入法で違法伐採対策に応じて合法性が証明された木材を国は優先的に購入することが決まったとき。その証明のために林野庁はガイドラインが作成した。伐採時点で各国の森林法の手続きを確保して供給された木材をサプライチェーンを通じて証明の連鎖を図るものだが、その連鎖の信頼性を業界団体による証明で確保しようというものである。

問題点も多いが複雑なサプライネットワークの木材製品に幅広い現実的な環境の網をかけていく手段としてグローバルな可能性を持っている。



 またウッドマイルズフォーラムは木材の輸送過程の環境負荷を定量化手法を提示するなど地域材の普及を環境的側面で提案してきた。伐採時点の環境負荷情報を消費者に伝えるにはその距離は信頼性に決定的な影響を与える。

Timber is reproducible and sustainable material. It potentially takes the leading role in the coming sustainable society. That is the rationale for passage of the Act for Promotion of Use of Wood in Public Buildings in 2010 in Japan.

To promote timber utilization, the forestry and timber business sectors should make efforts to work together with green consumers. However, there are a several challenges to address to get on the same side with green consumers- issues of illegal logging and vulnerable forest management and related trade. FSC and PEFC have made great contribution in this field, however they have a bottleneck of cost to be a main stream of the global timber supply chain.

In this context, this paper introduces recent development in Japan including “Guideline for Verification on Legality and Sustainability of Wood and Wood Products”(As we call “Gohowood”, here in after called “the guideline” and the activities of Woodmiles Forum, promoting the locally harvested wood.

In 2006, to tackle illegal logging issue, when the Government of Japan decided to purchase legality verified wood preferentially according to the Green Purchasing Law, the Forestry Agency made the Guideline how to verify timber legality.

The system designed in the guideline is, in short, passing legality information by ensuring paper trail in the whole supply chain from harvest origin with guarantee by industry associations

After 8 years of implementation, over 11,000 companies have implemented the Guideline. A few problems have been indicated, however, it has the potential to be an efficient and realistic global standard covering complicated supply chains of wood and wood products.

The Woodmiles Forum has promoted locally harvested wood, by methods such as quantifying the environmental impact of transportation process. The distance from harvest origin and end consumer gives significant factor in credibility with lower cost and burden to collect sufficient environmental load information. 
今後、具体的なプログラムが決まり次第報告します。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp