日本の杉桧を守る会 活動趣旨

 国内の林業、木材産業は過去に例のない状態です。住宅様式、工法の変化にともない杉桧の使用量が激減し、北米、北欧、ロシア、二ュージーランド等世界中からの外材輸入が急増いたしました。
 日本は過去、戦中の木材供出で伐採過多になり、戦後の復興や経済成長時代に国産材の供給不足が起こりました。そのため、国策として外材輸入が始まり、また国内の山林には、約1000万ヘクタールに及ぶ拡大造林、再造林が推進されました。そして、その1000万ヘクタールの山林は、先人の育しみにより立派に成長し、木材とじての利用を待っているのですが、現在の立木価格は限りなくなく0円に近づき、間伐材に至っては立方米当たり5000円以上も赤字となる状況です。国は、間伐補助金を始め各種の助成を行い、国土の保全に努力をしていますが、その効果以上に山林の荒廃が進み、林業、木材産業は破滅寸前となっています。    
 このような現実を、我々業界関係者は深く認識し、同時に、時代の変化やユーザーの嗜好に充分な対応を出来えなかったことを、深く反省し、使ってもらえる木材づくりを目指すべきと考えています。
 さらに、私たちにとって、最近 追風となるべく いくつかの事象が有ります。
 第一に「日本人は木造が好き」 「住まい手の9割が木造住宅を希望」と,いう世論調査結果です。多くの日本人は、木の調湿作用、音響性能、衝撃吸収性が優れていること、目や心に優しいこと等、杉桧が本来持ち得ている特性を愛しているわけです。
 第二に、住宅分野での環境問題、特に省エネルギー推進の必要性です。杉桧には、適正な管理のもとであれば数百年サイクルの再生可能な典型的なリサイクル資源であり、生産はもとより、加工においても薬品の使用もなく、大きなエネルギーを使わず、かつ大気中のCO2の固定化を行い、地球温暖化対策になる環境面で最も優れた材料であることがクローズアップされていることです。このことは、心身共に健康で快適な居住環境を常に切望している都市圏の市民に認知されつつあります。
 第三に、わが国は、明治初頭以来、国際化の中で西欧化してきましたが、最近、わが国固有の文化を重視する動きがあることです。和食ブーム、骨董ブーム、民家ブームなどです。同じ理由で、住宅についても日本らしさが求められています。「西欧の石の文化」に対し、「日本の木の文化」があり、日本の気候風土、伝統文化にねざした杉桧の住宅文化を大事にする動きです。
 第四に日本の大量木材輸入に対し、諸外国から「木食い虫」バッシングが起こっており、生産国においての再生不能な林地、無許可伐採などの問題も発生させているのです。
このようなことにより、杉桧の利用の有効性を多くの方々に、ご理解していただき、全国の林業地の森林木材産業を復活させることで、各地でおきている地場産業空洞化を防ぎ、地域活性化の原動力になると考えます。
 時代は、人と共に変わり、人の価値観も変化していきますが、私たちは、変化する時代を超越して、守り育て、次世代に引き渡していかなければならない物があると思います。
 そして、それが環境であると考えます。水、空気にとって、必要不可欠な、我が国の森林環境を守る担い手たる私たちは、経済優先の合理的社会から孤立し、今や絶滅の危機に瀕していると言わざるをえません。

 以上の観点にから、このたび林業、木材流通加工業、建築設計業者が中心となり各業界団体が手をつなぐ「日本の杉桧を守る会」を設立することとなりました。国産材産業の存続のために杉桧の最も優れた特性を広報し、利用推進を目指し活動していきます。
ご理解、ご支援を切にお願い申しあげます。

                       日本の杉・桧を守る会
                          会長 武内達男