高知県森林局作成
FSCの森林認証を梼原町森林組合が取得。
〜団体としては国内第一号(森林認証は国内2例目)〜
1 はじめに
県では、平成11年度より環境保全に配慮し経済的にも持続可能な森林経営を進めるため、四万十川流域の森林をモデルに国際的な森林認証の取得推進に取り組んできました。この10月、梼原町森林組合(組合長中越利茂)が管理する森林約2,250haについて、国際的な機関であるFSC(森林管理協議会)の森林認証を、団体では国内で初めて取得しました(FSCの森林認証は速水林業(三重県)に次いで国内2例目)。
2 FSCによる認証とは
FSCによる森林認証とは、FSCが定めた森林管理の国際規準に基づいて、それぞれの森林が持続可能な森林経営が行われるかを審査・認証し、そこから生産される木材、木材製品にラベル(FSCのロゴマーク)を付けて販売することを保証してくれるシステムです。すでに2000年8月末現在、世界33カ国、約1800万haの森が認証を受けており、その面積は年々著しく増加しています。
3 森林認証への挑戦
梼原町は、スギ人工林を中心とした戦後の林業地で、コストの低減を図るため早くから林道などの路網の整備、高性能の林業機械の導入を進めてきました。また、間伐士などの認定制度や各種講習会の開催など林業技術の向上に努めてきました。最近では四万十川の源流域の水質を保全するため、森林の整備などに積極的に取り組んでいます。
こうした取り組みを進める中で、梼原町森林組合では、森林認証に関する勉強会(県主催)などへの参加をきっかけに、FSCの取得に挑戦することとしました。組合はFSCに挑戦することによって、@環境保全型の林業経営を目指せることA町内から生産される木材に新たな付加価値が生まれる可能性があることB環境保全に対する取り組みが地域の活性化につながると考えたからです。県では平成11年度から組合のFSCの取り組みを支援してきました。
4 森林認証の申請と取り組み
組合では、FSCへの参加者を募るため、町広報誌でのPRや森林所有者への個別訪問などを行った結果、97名(団体を含む)が認証に参加しました。認証には、「森林管理の認証」と「加工部門の認証」の2種類があり、組合はその両方を平成11年12月にアメリカの認証機関(スマートウッド)に申請しました。組合と取引のある池川木材工業(有)も、加工部門の認証を申請しました。
FSCを取得するにあたり、組合では環境方針を決めました。その主なものは、@沢沿いの人工林については、現場の状況をみながら間伐を繰り返し、広葉樹林へ誘導していくことA今ある広葉樹をできるだけ守っていくことB林業用の道路をつくる場合、環境への影響を最小限に努めることC環境にやさしいチェーンオイルを使用することなどです。
こうした環境方針は、職員や作業班員の有志が月1回集まり、環境や動植物などに関する勉強会の中で決められたものです。この方針以外にも事務所のゴミの分別や組合に出入りする車のアイドリングストップなどが提案され、すぐに実行に移されました。FSCの取り組みを進める中で、職員や現場班員の環境に対する意識は非常に高くなっていきました。
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5 森林認証審査
平成12年5月14日から一週間、スマートウッドの審査員ウォールタ・スミス氏と日本の審査員3名(審査チ−ム)が梼原町に入り、世界基準による認証審査が始まりました。
審査チームは、伐採や間伐された現場などで、山の手入れと環境への配慮、林道などの開設に対する考え方などについて現場の職員へ質問を行いました。普段何気なく行っている作業についても、審査員から「なぜ」「どうして」「別の方法は」などの質問が繰り返され、組合は森林の管理について、環境や経済性をいろいろな角度から検討し、行うことの重要性を改めて強く感じることとなりました。
また、審査期間中には、森林所有者などへの面談や組合の取引先(製材工場、木材生産業者など)、環境団体、町内外の人など約40名が審査チームにより集められ、日頃の森林組合の取り組み状況についてヒアリング(意見の聴取)が行われました。
6 審査結果
10月待望の「森林管理の認証」の決定通知が認証機関から届きました。組合は池川木材工業(有)とともに「加工部門の認証」も受け、これでFSCのマークを付けた製品が生産できることになります。
組合では、今後とも環境に配慮した森林管理や木材の品質向上に取り組むとともに、「四万十川」と「国際基準の森林認証」の相乗効果により販売を強化することを考えています。
また、中越組合長は、『町内全部の森林をFSCに認証し、認証製品を安定的に供給する体制づくりを進めたい。』と考えられています。
7 今後の取り組み
県では梼原町森林組合に続きFSCへの挑戦を考えている機関もありますので、積極的に支援していくこととしています。また、県内の森林所有者の方にも、森林環境への配慮と経済性を両立した森林経営を目指していただきたいと考えています。
こうした取り組みを進めるためには、県民の皆さまにできるだけ県産材を利用していただきたいと考えています。県産材の利用が人工林の間伐を進め、災害にも強く、またきれいな水を多く育んでくれる森づくりにつながっていきます。地域の環境を守るためにも、是非皆さまの御理解と御協力をよろしくお願いします。
2000.10.30
高知県森林局作成
森 林 認 証 関 係 参 考 資 料
●梼原町森林組合等の認証状況
・ 申請者 梼原町森林組合
森林認証(認証期間:平成12年10月1日〜平成16年9月30日)
流通加工認証
池川木材工業(有)
流通加工認証(認証期間:平成12年6月15日〜平成16年6月14日)
梼原町森林組合は資源管理者として申請。審査に通れば、団体による
認証は日本初。(認証日本初は速水林業)
・ 認証面積 2,249ha(97名:団体を含む)
・ 認証機関 スマートウッド(アメリカ)
・ 審査日 平成12月5月13〜20日
5月
13日 池川木材工業(有) 流通加工認証審査
14日 梼原町森林組合製材工場 流通加工認証審査
15日〜20日 梼原町森林組合森林認証審査
ヒアリング、公聴会、現地調査
・ 審査員 ウォールター・スミス氏(SW)、末田先生(林業担当)
大田先生(社会・経済担当)、有光先生(森林生態担当)
・ コスト 認証機関への直接経費(梼原) 330万円
・ 査察 年1回の査察(認証期間は5年間)
●県の支援内容
・ 平成11年度森林認証制度普及定着事業(職員提案事業)
内容
認証審査までの技術的支援
認証基準の解釈、各種資料作成指導、認証制度及び基準等の勉強会の開催
現場への技術指導、認証機関との調整、審査への対応、
●今後の取り組み
*地域
・ FSC製品の消費が四万十川源流の自然を守ることのPRと販売促進
・ 環境に配慮した住宅メーカー、工務店との提携
・ 今後も品質、健康、安全には配慮した製品の販売
・ ホームセンター、通販などと提携し、環境に優しい製品を消費者への提供
・ どこの森林から産出したか(原産地)を明らかにし、生産者と消費者がお互い確認するこ
とができるシステムの提供
・ 認証森林をはじめ、自然に触れることのできるエコツアーなどの企画。
*県
・ 森林認証制度の普及及びFSC認証製品のPR
・ 新たな認証森林及びFSC認証加工場の取得(西土佐村森林組合が挑戦)
・ FSC商品を選択的に取り扱う流通業者のグループへの協力
・ 日本国内の認証機関(審査機関)の設立及び国内の認証規準の策定への応援
*県民
・ FSC製品を含め県産材の積極的利用
・ 県産材を利用することが人工林の間伐を促進し、災害にも強く、またきれいな水を多く育 んでくれる森づくりにつながっていくことの理解促進
●森林認証とは
熱帯雨林の破壊など森林環境に対する関心が高まるなかで、適切な森林管理を行うことが
求められている。
こうした中、国際的な審査機関である森林管理協議会では、環境に配慮し適切な森林管理 を進めるため、環境団体、木材関係者等と協議し、適切な森林管理に関する原則と規準をつ くるとともに、こうした森林を認証し、認証した森林から生産される木材に「FSC」マーク付け販 売することを保証する仕組みをつくっています。
●FSC(森林管理協議会)とは
・ 世界の森林を対象に森林認証制度(中立独立した第3者機関適正に管理された森林を認 証、審査する制度)を実施する機関。1993年設立。本部メキシコ。
・ 林業者、流通業者などの経済グループ、先住民団体などの社会グループ、自然保護団体など 環境グループの各利害関係者(会員)が合議し、森林管理の基準等を作成。
・ 会員数 49カ国356機関・人[1999.11現在]。会員には、WWF(財団法人世界自然 保護基金)、世界トップレベル木材業者も多数(インターフォ(アメリカ)、アッシドメーン社(ス ウェーデン)などが加入していると聞いている。
・ 認証森林面積 平成12年8月末現在。約1800万ha。
・ 審査評価は認証機関が実施。
・ ISOとの違い。FSCは製品ラベリング、森林管理に関する基準があること。
●FSCの認証機関
・ 世界には認証機関7機関(アメリカ2、イギリス2 カナダ1、スイス1,オランダ1)
●森林管理に関するFSCの原則(要約) ※原則の下に53の規準がある
@各国の法律や国際条約、そしてFSCの定める規準を守ること
A土地を使用したり、所有したりする権利は、明確にしておくこと
Bもともとの土地に住んでいる先住民の権利を尊重すること
C森林管理は、地域社会や地元の人たちにとって有益なものであること
D森林のさまざまな恵みを、有効に使えるようにすること
E森林にすむ生き物の環境や景観を大切にすること
F事業を行う際は、長期的な計画と手段を明確にして取り組むこと
G森林の状態、産出される木材の量、作業の状態を調査・評価すること
H貴重な自然林を守り、植林などに置き換えたりしないこと
I植林については、以上の原則を守ること。植林の活用を社会にとって有益なものとし、自然 林への負担を小さくすること。
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●変わる消費者
消費者は、「FSC」マークが付いた製品を選ぶことにより、環境に配慮した森林づくりを応援
することになります。欧米では、消費者が環境に負荷の少ない製品を選択的に購買しようとす
る動き盛んなため、ホームセンターや木材流通業者などと環境団体が、「FSC」マーク製品の
流通に協力するバイヤーズグループを立ち上げて、消費者にFSC製品を提供しています。
●森林認証への取り組み
日本国内でも、消費者が環境に負荷の少ない製品を選択的に購買する動きが今後盛んとな
ることや地域環境の保全(適正な森林の管理)と林業の両立を進めるため、県は流域として環
境保全への取り組みを進めている四万十川流域の森林をモデル(梼原町森林組合:組合長 中越 利茂)に国内でいち早く取り組み、2000年10月に団体としては国内で初めて認証を
取得しました。
〈参考〉 資源管理者としての申請。認証は日本初。
認証日本初は速水林業。平成12年2月。取得面積約1000ha。
※FSCは、環境団体、木材取引企業、先住民団体、地域林業組合などが中心になり、1993年に設立された非政府機関(NGO)です。本部はメキシコにあり現在55カ国、300機関以上が会員となっています。
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問い合わせ先 |
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○高知県森林政策課
木の文化県推進班 小原
TEL 088-821- 1399
FAX 088-821-4576
e-mail:tadashi_ohara@ken4.pref.kochi.jp
○梼原町森林組合
組合長 中越 利茂
TEL 0889-65- 0121
FAX 0889-65-0788
e-mail:yusumori@mb.inforyoma.or.jp
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