地域材認証制度の検討にあたって

NPO穂の国森づくりの会

 

1.森林認証の意義と目的

@世界の森林減少を食い止め、森林経営を持続可能なレベルにコントロールする。

『森林資源および林地は、現在および将来の人々の社会的、経済的、生態的、文化的、精神的なニーズを満たすために持続的に経営されるべきである。これらのニーズは、木材、木製品、水、食料、飼料、医薬品、燃料、住居、雇用、余暇、野生生物の生息地、景観の多様性、炭素の吸収源・貯蔵庫といった森林の生物およびサービスを対象とするものである』(92年リオ・サミット「森林原則表明」)

『森林資源およびそれらを育む土地が、われわれおよび将来世代のさまざまな要求を満たすよう管理されるべきであることは広く認識されている。その要求範囲は、社会的、経済的、生態学的、文化的、そして精神的分野にまで及ぶ。さらに消費者は、森林の破壊や劣化に対する関心の高まりにより、木材や他の林産物購入が森林破壊につながるのではなく、むしろ将来の森林資源確保に役立つものとなることを求めるようになってきた。これらの要求に呼応する形で、木材製品の認証および自己申告型の認証プログラムが市場において急増してきたのである』(FSC原則と基準)

A「森林条約」交渉の停滞と消費市場における「グリーン購入」の高まり=「環境破壊材」の市場からの排除による持続可能型森林経営への誘導

B「京都議定書」CO2排出権取引と森林

森林認証を検討するにあたっては、上記@ABのファクターを押さえておくことが、とくに重要であると思われる。

 

2.地域材認証の動向

 @日本の森林経営とくに戦後の林業施業の特徴として、ア.保続型林業経営を理論的・技術的には実現していたこと、イ.針葉樹一斉林を経営の根幹にしていたこと、ウ.小規模所有・農家林家的副業経営や資産保持的経営が相当部分を占めていたこと、エ.海外市場に出ることがほとんどない上に、外材圧力によって林業活動そのものが衰弱していったこと、が挙げられるが、これらの要因は全て、国際的森林認証を経営に持ち込む必要に対してはマイナスに働いてきたと言える。

Aしかし、社会全体の環境意識の高まりやその政策・制度面への反映、森林への多様なニーズの発展、従来型林業経営の行き詰まり、過度な人工林造成への反省、国際森林認証の広がりと認証材の市場価値優位性の実証などが背景となって、国際認証への対応が始まったが(FSCISO14000シリーズなど)、いまだごく一部分にとどまっており、上記@ア〜エ等の諸条件を越えるだけのインセンティブは不足している。また国際認証の主役であるFSC基準が日本の林業経営の実態に即していないこと、国内認証機関の不在により認証コストが高すぎることも、足かせとなっているが、ここから日本独自(あるいは地域独自)の認証基準の策定や、国内認証機関育成への動きも始まっている。

B一方、「グリーンコンシュマー」運動やその法制的後押しである「グリーン購入法」制定、また欠陥住宅被害回避のための住宅品質確保法の導入、シックハウス防止からの天然素材への要求、あるいは各自治体ごとでの木材利用推進のための諸施策の導入など、消費市場の変化は、林業経営の現状をはるかに越えて進みつつあり、「環境に配慮され、かつ品質信頼性のある材」を求める消費者との間に、新たな「需給ギャップ」とさえ呼べる状況が生じている。

Cここから、都道府県単位あるいは流域単位で、地域材認証のシステムを構築し、木材需要の拡大、産地ブランド化促進、間伐材利用の推進による資源調整、生産‐流通・加工‐消費過程の合理化、品確法対応による信頼醸成等を目指した動きが増えてきている。現在のところ、これらは行政と業界がタイアップして、業者申請と行政認定によって産地認証や品質認証を行い、その認証材に対する域内消費を拡大するための諸施策(公共事業への優先利用やブランド材化など)を組み合わせることで、ある種の域内完結をはかったり、認証へのインセンティブとしたりするものが主流と見られる。またこの地域認証を最初からFSC連携として組み立て、地域全体で国際認証に対応しようとする構想も出てきた。大体においてこれらは、県単位の財政支出と認証手数料徴収を、システム構築の原資としているようである。

 

3.東三河地域の特徴

 @高い人工林率と低調な林業生産

 A流通・加工・産地ブランド化・域内消費など 各方面の立ち遅れ→域外流出と他産地ブランドへの吸収

B愛知県全体としての県産材認証制度企画の不在

CHOLZ三河の開設と操業

D「豊橋住宅」方式等下流域住宅マスタープラン策定の動き

E流域森林NPOの存在

F2005EXPOと森林祭構想

 

4.穂の国森づくりの会のスタンス

 @『森づくりプラン』(99年)の考え方=林業経営の合理化・集約化、放置林の再自然化誘導、森林への多様なニーズに応える利活用、市民参加の森づくりの推進、などによる森林構成の再配置と、それによって森林を流域循環型社会の基盤資源として保全・整備するシステムの構築をはかること。

 Aこの考え方から地域材認証にコミットするとすれば、第一には、それは一般的な林業救済や木材需要拡大ではない。第二には、循環型・保続型経営の意思のない森林経営と意欲ある経営との差別化を結果として容認し(あるいは推進し)、流通・加工の全過程において品質管理・環境経営管理を貫くことのできない木材業とそれに取り組む木材業との差別化を結果として容認する(あるいは推進する)ことである。第三には、それによって流域の森林経営全体を再構築するテコとして(認証制度を)使うことにつながる。つまりは漠然とした産地認証や従来型のブランド化のために認証制度を使うという範疇であれば、NPO組織としてここにコミットする意味はないと考えている。(もちろん行政や業界がこのようなことに取り組むことに反対するものではない。)

 B森林認証の国際的流れや京都議定書にもとづくCO2取引の将来を考えるならば、地域材認証も、出発時からFSC基準もしくはISO基準に対応可能な規範を、その構成や原理に組み込んでおくことが必要であるし、結果として有利な立場を確保できると考える。この認証システムへの第三者機関としての関与や、モニタリング活動への参与などが、NPO組織としてのかかわりの中心をなすと思われる。

 C生産地段階においてはFSCもしくはISO14000、流通・加工段階においてはISO9000もしくはCoC、最終製品段階においては品確法やJAS、これらに対応可能で、かつ一貫した原則とシステムによって検証される基準づくりが求められる。消費市場(住宅建設)における行政側の利子補給や銀行融資の優遇、グリーン購入法による優先利用、公共工事への一定割合使用、環境意識に訴えた差別化等に堪えうる認証となるためには、ある程度のハードル設定が欠かせない。

 Dこうしたシステムを構築するためには、当初の規模いかんにかかわらず、生産者、流通・加工業者、製材業者、住宅建設業者、設計者、消費者、行政各部門、各専門研究者等の幅広い合意と協力体制が不可欠となってくる。またシステム構築費および認証事務費、モニタリング費用などの算定と負担方法は、つまるところ、この制度導入の事業メリットとも関係して、最大のポイントになると思われる。

 E原産地における森林認証については、「森林施業計画を満たすこと」(施業計画にもとづいて産出された材であること)をベースとするのが、もっとも簡便かつ有効であると考えられる。FSCの国内認証の事例をみると、施業計画の公正な実施と日常的な記帳によって、かなりの範囲がカバーできることが推測される。また現在の林業経営の実態を考慮すれば、原産段階における認証コストが過大であれば、まず実行不能と見積もるべきであろうし、むしろ認証コスト=ゼロもしくはマイナスを基点とすることが有効であろう(施業計画樹立者への交付金交付制度が、来年度から開始されることを契機に組み込むこと)。したがって、生産段階では施業計画ベース、流通・加工・製造段階ではISO9000レベルベース、最終製品段階では品確法ベースを土台にして、各段階における仕分け方法もしくはラベリング方法を確立する。

 

5.システム構成図(別紙)

6.認証費用のシミュレーション

 @FSC基準の仮適用

 A費用を吸収しうる最終需要刺激策(認証材使用奨励施策)の見積り

 B生産・流通・加工各段階における費用分担の試算

7.認証制度導入のプロセス

 @関係事業者、団体、機関の洗い出しおよび意向調査

 A検討組織の立ち上げと包括プランの策定

 B認証機関の決定と実務体制整備

 C「豊橋住宅」やEXPO、森林祭等を起爆剤としたモデル事業の企画

 Dモニタリングとシステム確立


システム構成図

    

 


       

流 域 森 林    施業計画  県・市町村

                  (森林組合)

生 産 者

                 申請     情報通知

テキスト ボックス: 国際認証・国内認証への対応               認証

                

         市 場          認

  I

 


                      証

  S

    品 加 工・製 材         機

      

  O 確                 関

                        

          

    法   市  場

          

 

 

施   工   者         住宅優遇

                       公共事業

     消   費   者         グリン購入etc