WWFジャパン プレスリース  2000年2月22日
(転載可。重複して届いた場合はお許しください)


(下記について、WWFジャパンは昨日2月22日、農政クラブ、農林記者会、
林政記者クラブ、環境庁記者クラブにおいて記者会見を行った。発表者はWWF
ジャパン森林担当前澤英士、速水林業代表速水亨氏、スミエイト(株)伊藤健一
氏。速水氏からは認証証及びFSCロゴマーク付きのまな板が紹介された。FS
Cではそのロゴマークの使用については厳しい規則を設けており、認証を取得し
てもロゴマークの使用が適切なものかどうか許可をとらなければならない。その
許可を得て、今回国産材初のFSC認証の製品が紹介されたことになる。なお、
認証審査概要レポート・認証審査に使われた基準はスミエイト(株)伊藤健一氏
より入手できる。速水氏、伊藤氏の連絡先は最下欄。)


FSCの森林認証取得、国内第一号誕生!
−三重県の速水林業、環境に配慮した森林経営として国際的に認められる−


 WWFジャパン(世界自然保護基金日本委員会、会長大内照之)は、「FSC
による森林認証制度*1」を広く普及させることで、経済性そして環境保全の観
点から、適切で持続的な森林管理を推進している。そしてこの2月、速水林業
(三重県北牟婁郡海山町、代表速水亨氏*2)所有・管理の森林1,070haが、こ
のFSC認証を国内で初めて取得した。

 世界の森林保全に向け、適切な森林管理のあり方が議論されているが、これは
持続的に木材資源が収穫できることだけでなく、生物の多様性の保全、災害防止
への貢献、地域社会への長期的・多面的な貢献等への配慮も求めている。独立し
た第三者機関が、FSCというNGOが設定した基準に基づいて、個々の森を審
査・認証し、そこから産出された木材・木材製品にラベル付けを行うのが、FS
C森林認証制度であり、すでに世界30カ国、約1,800万ヘクタールの森が認証を
受けている。

 WWFジャパンは、このFSCの認証制度を紹介するワークショップを、これ
まで岩手県、長野県、高知県、三重県、大分県で開催してきた(*3)。そうし
たなか、速水林業は認証取得を目指し、昨年9月にFSC認定の認証機関サイエ
ンティフィック・サーティフィケーション・システムズ(SCS、米カリフォル
ニア)による認証審査を受けた。スミエイト株式会社(東京*4)を事務局と
し、SCSの森林専門官と3名の日本人専門家がチームを作り、「木材資源の持
続性」5項目、「森林生態系の維持」5項目、「財政的・社会経済的観点」4項
目について審査が行われた。その後、さらに別の日本人専門家による審査を経
て、今回の認証証の発行に至ったものである。

 今回認証を取得した速水亨代表は、「FSCの認証を取ることは、林業の生産
目標である木材以外の森林の生き物、微生物から人間まで、優しく配慮した森林
管理を実行していくと共に、地域で認められる林業経営であることが求められ
る。このためには従業員の意識改革、自主性を促し、社会での存在意義を意識さ
せること、そして経営者は従業員のそのような変化を誘導するためにも、彼らと
可能な限りの経営情報を共有することが必要だ。もちろんこのような情報は、従
業員に留まらず地域の人々に対しても公開する事が重要となっている。これらの
努力がグローバルスタンダードであるFSCの認証につながる。そして認証は従
業員のより一層の自信や活力につながる。もちろんCOC(*5)による生産品の
差別化は期待するが、それ以上に林業の慣習的な経営の打破にもつながり、補助
に頼りがちな林業の自立への一つの方向を示すことになる。環境を背景とした新
時代林業戦略をもとに、林業不況に真っ向勝負を挑んでいる」と述べている。

 日本におけるFSC認証制度の今後の広がりに世界中が注目している。日本は
その木材需要量の約8割を外材に頼っており、世界でも最大規模の木材輸入国で
ある。日本で認証を受けた木材・木材製品の需要が伸びると、海外の木材供給国
での認証への関心が一層高まると思われる。一方で、経済的に厳しい日本の林業
界から認証取得者が出たことは、認証制度の今後の展開にはずみをつけ、ひいて
は森林保全に対する日本の姿勢が高く評価されるだろう。「持続可能な森林の管
理・経営」については様々な議論が交わされてきてはいるが、その一つの方向性
を日本の林業関係者、研究者、森林政策決定者に具体的に示した意義は非常に大
きい。消費者にとっては、マークの付いた製品を選ぶことで、適切な森林管理を
目指す林業者をサポートし、森林保全に貢献できる一つの選択肢が増えたことに
なる。

 今回初の国産認証材が出ることをきっかけに、WWFジャパンは、以下の活動
を展開していく予定である。
@FSC森林認証制度のさらなる紹介
  認証取得のためにはどういう手続きを経てどのような基準をクリアしなけれ
ばならないか等、ワークショップ等を開  催しながらより具体的に紹介してい
く。
 A認証製品を積極的に開発し扱っていく企業グループの設立
  認証を受けようとする林業者と、認証された木材・木材製品を生産・流通・
販売させていこうとする企業のネットワ  ークを作ることで、認証製品の流通
拡大を目指す。
 B日本の認証基準の作成
  国際的に整合がとれていると同時に、国内の状況にも配慮した日本の認証基
準を幅広い利害関係者の参画のもとで作  成し、円滑な認証審査を目指す。
C国内での認証審査事業の支援
  現在日本にFSCで認定された認証機関がないため、認証手続きが複雑にな
るとともに、コストも割高になってしま  う。今後は、既存の海外の認証機関
の日本での審査認証を支援、もしくは日本独自の新たな認証機関設立のための支
  援を行う。
 DFSC国内メンバーの増大
  FSCのメンバーに日本の組織が増えることで、日本の実状を反映した意
見・提案が可能となる。積極的にFSC内  での議論に参加しながら、より円
滑な審査と信頼性の高い基準作りを目指す。




┌──────────────────────────┐

│この件に関するお問い合わせは下記までお願いいたします │

│WWFジャパン 前澤/水野  │

│電話:03−3769−1713〜4 │

└──────────────────────────┘

 


 *1 添付「森林認証制度、特にFSCについて」を参照 
 *2 速水林業 代表: 速水亨氏
    〒519-3413 三重県北牟婁郡海山町大字引本浦345番地
    пF05973-2-0001 Fax : 05973-2-1012 E-mail:
hayami@u-net.or.jp
 *3 添付ワークショップリストを参照
 *4 スミエイト(株)東京営業所営業課 伊藤健一氏
〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町2-25-1 ナイトービル
     : 03-3662-9399 FAX : 03-3662-9398  E-mail :
kito@sumieito.co.jp
*5 FSCの認証制度は森林管理の認証だけでなく、認証された森林からの木
材を使って製品を作り、流通させている     かどうかを確認する認
証がある。これを加工・流通過程の認証(Chain of Custody)というが、これに
より初め     て製品にFSCのロゴマークをつけることが可能となる。






かどうかを確認する認証がある。これを加工・    流通過程の認証(Chain
of Custody)というが、これにより初めて製品にFSCの    ロゴマークをつ
けることが可能となる。