大きな林業と小さな林業の関係ー山林会オンラインシンポ「脱・国産材産地」時代の林業・木材産業から(2020/10/10)

9月17日開催された大日本山林会シンポジウム「「脱・国産材産地」時代の林業・木材産業」に(オンライン)参加しました。

本年3月に大日本山林会から出版された「「脱・国産材産地」時代の木材産業」という書籍の執筆者を中心にした報告とディスカッションでした。

この本については、ちょうどウッドマイルズフォーラムの中で、国産材時代といわれているが、山づくりは大丈夫なのか?という「「地域の家と小さな林業」全国ネットワークを求めて」と言った議論をしていくなかで、今回の著作はグローバル化の進展状況を示しているが、新しいローカリズムという視点がたい大切なのでないかと、議論をしてきた経過がありました。

ちょうど、森林技術誌に本の紹介をしたばかり。

輸入材のグローバルリズムに国産材大規模事業者がグローバリズムで対抗する「大きな林業」とは別に、森林関係者・地域の木材関係者と、地域の建築関係者・消費者が連携する「新たなローカリズム『小さな林業』」

報告の概要を紹介します

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(「脱・国産材産地」時代の林業・木材産業一新たな木材生産構造形成の序曲一遠藤(基調)報告))

著作の編者で有り、冒頭の報告にあたった、鹿児島大学名誉教授遠藤日雄氏

、これまでの産地形成の歴史をレビューしながら本書の位置づけ説明する。

(戦前の産地形成)

、戦前型林業産地の特徴は、(吉野林業地が灘、西宮の酒造業と結びついた樽丸生産技術〈密植・多間伐・長伐期施業〉、飲肥地域が台風常襲地域のためスギ挿し木造林(疎植)瀬戸内の造船業と結びついて弁甲材産地、など))固有の使用目的に対して、もっとも適合する木材を生産する産地としての性格をもつもので、あった。

(戦前産地の変質と戦後製材産地形成)

@高度経済成長によって木材需要が全国的規模に拡大。A地方の少量、分散、間断的な木材生産を集積して中央消費市場へ木材を供給していた産地問屋の役割が大幅に低下。

こうした産地問屋の機能の低下に代わって、少量・分散的な木材生産と地方需要を結合する機能を製材業(素材生産業)が担うことになった。したがって「脱・国産材産地」の「国産材産地」とは製材産地となった(東濃ヒノキが典型

もともとの林業産地は農産物産地と同様、地域の森林の特性に規定されていたが、製材産地になることにより、また製材が性能を重視するEW化することにより、地域から離れて加工過程の特性い規定されることとなった(脱産地)

((「脱・国産材産地」化を進める木材産業一地域ブランドカ、ら企業ブランドへー・・・山田壽夫木構造振興代表(もと林野庁木材課長)報告))

山田氏が行政の木材行政の責任者となった時、新たに制定さえ森林林業基本法に基づく、森林林業基本計画策定議論の中で国産材利用の方向を議論(左の図)

(森林林業基本法に基づく国産材利用の方向性)

木材の需要構造の変化(品質・性能の重視等)する中で、@小規模でロットが小さく、新規殴備投資も進まない木材加工過程、A複雑多段階で高コストな木材流通過程などが重要な問題に

その課題に対応するため、二つの対応策を提示

@大量消費の市場に向けた取組

コスト、ロット、品質で外材に対抗しうる製品を大手住宅メーカ一等に供給するため、
ースケールメリットを活かした徹底した低コスト化と大ロット化を促進、
ー利用技術開発を通じた国産材の集成材、合板等の製造を促進

A顔の見える木材での家づくりの取組

関係者が連慌して、最終消費者のニーズに応じた多様な製品を供給するため、地域の特色を活かしつつ、顔の見える木材でのいえづくりシステムを構築

(取組の成果)

大量消費の市場に向けた取組については、2002年から新流通・加工システム、2024年から新生産システムというかたちで、助成システムを改定して「国産材の商品製造を低コスト化し、国際競争力のある体質にする」方向に。

右の図のように、大きな成果が上がる。

国内製材工場の大規模化、効率化した、

顔の見える木材の小さな林業の方は、各地に定着しているが、主流にはなっていない。

(脱・国産材産地時代の木材商品)

国産材産地とは、すでに存在せず、そこには、市場が必要とする商品が存在するだけ

川下の木材産業は市場が必要とする商品をつくり、その材料として国産材が選んでもらえるような取り組みを川上の林業がすることが基本

川下分野では商品の規格・品質・性能の向上が求められる基本的な流れは不変と考えるが、既存概念にとらわれず、将来の木材製品の動向を見通し、中国など世界市場での競争を視野に入れて、木材産業界自身が木材産業の体質・体力を作っていくこ

そのことが、川上である森林所有者への利益の還元になり、資源、の循環利用で、林業が本当の意味で、成長産業となり、新しい国産材産地になる

(「脱・国産材産地J化を進める住宅・プレカット産業の展開ー坂野上報告))

(拡大変化するプレカット業界)

建築材流通の中で、プレカット工場に流通が急増(左図)

そのプレカット産業は大きく変化競争が進んでいる

@大型化と淘汰の時代
Aプレカット材が構造材だけでなく多機能化の時代
Bさらなる効率化を目指して24時間稼働など

(脱国産材産地化時代の国産材需要とは)

口2000年代以降、プルカット向上の大型化、効率化の進展と、建築基準法品確法などの法制度改革で、変形やわれが少ない(人工乾燥材)KDや集成材への需要を高めた
□2000年代前半の積極的な設備投資は、大型プレカットやハウスメーカーが求める品質及び価格水準を備えた国産材製品を供給可能にした。
口管柱で先行していた国産材KD集成材の需要は、2010年頃からハガラ材でも拡がり、大手ハウスメーカーが主導している

(脱国産材産地化が産地になにをもたらすのかー新たな産地争奪競争)

□輸入材との価格競争の中で、国産材KD集成材にメーカーが原木産地に求める条件はっきびしい
□目合いがそろい、欠点の少ない丸太を材料として入手し、歩留まり生産性を向上させることは死活問題
□かつての銘柄材産地とは異なる基準の新たな『産地』要件が生じている。
『脱国産材産地化時代』は、新たな『産地争奪競争』が始まりっている


((四国における木材工業一旧木材産地の構造と新生産システムの相克一川田勲氏報告))

四国でも,素材生産量は、製材用、合板用、チップ用材とも増加しつつ有り、最も大きな需用者である製材が大型化しつつある

大型製材所は来歴は、@既存の工場協業化、再編、A大型外材工場が国産材に転換、B森林組合の広域合併と加工基盤強化、C資源をもとめて他地域の大型資本が新規と投資など多種多様

(国産材の需給逼迫と広域流通の課題)

@四圏内森林資源の成熟と国有林材供給の増大
A進む需要の大型化と新規需要の発生→木材需要の大幅アップ
B大型需要に対応した木材流通の再編
C従来型流通機構(市売システム等)の崩壊と小規模製材工場の後退
D四圏内素材生産量の大幅拡大は限界
一地形・所有・生産基盤・労働力・価格・再生産一
E素材生産の拡大と広域集荷体制の確立

報告の内容は以上でした

(手を上げて質問ーオンラインシンポジウムの進め方)

後で聞いたら、150名近い参加者が聞いていたらしいのですが、当方はそれがわからず、司会者が時々、ご質問がありませんか?というのですが、余り手が上がらず。

そこで、遠慮しながら?おずおずと手を上げて気になっていたことを質問してみました

(ローカルなたがが外れたら森林はどうなるの)

2000年代から始まった、民間企業への補助金を投入も含む、「新流通・加工システム」、「新生産システム」という、思い切った林野庁産業政策が実を結んだ、脱産地化した木材産業は、グローバル化した国際市場に立ち向かう我が国産材業界の成功物語でもあるのですが、「ローカルのたががはずれて、森林はいったいどうなのだろうか?」と心配があります。

(問1)山田さんに伺います。山田さんが産業政策に関わっていたとき、本日のメインテーマである「@大量消費の市場に向けた取組」の他に、「A顔の見える木材による家づくりの取組」について話をされたので、興味深く聞きました。本日の主たるテーマではなかったようですが、顔の見える木材での家づくりについて、どのような評価をされていますか?

(答)報告の中で示したように(左の図)、顔の見える木材でのいえづくりというのは、地域によって確り根をはり、存在感を示しています。今後大切な役割を果たしていくでしょう。

(感想)と前向きの答弁をいただきましたが、図の中にあるように、増えてきたといっても年間2万戸程度ということで、マーケットの主流にはなる気配はないですね。

この運動が、地方の特殊な方たちの素晴らしい文化運動のようなかたちで細々と続いていくのか、次世代の森づくりに影響をあたえるような運動になるのか、気になっています)

関連して

問2)四国の話をされた川田さんに伺います。四国は九州と違って皆伐でなく間伐材に依存する割合が多いですが、皆伐が増えていることは間違えないでしょう。皆伐跡地の森づくりという視点に対して、メインプレーヤとなってきた大規模事業者の方々はどのような意向をもっていますか?。(「なにか元気の出る話ありますか?」と言ったかどうかわすれましたがそんなニュアンスの質問)

(答)難しい質問です。なかなか、「こんな良い事例があります」と答えられません。(と率直なご回答をいただきました)

(大きな林業と小さな林業)

以上が私の目から見た、シンポジウムノやりとりです。

終わってから、山形から参加されていた、ウッドマイルズフォーラムの藤本会長から連絡をいただきました。

重要なことなので、共有しておきます

「小さな林業は放置されるから川下が支えなければならない」と考えてきましたが大きな林業も同じだとは大変驚いています。川中の業界の責任を持った議論がなされるべきではないでしょうか

このコメントの背景は、ウッドマイルズフォーラムが検討している、「地域の家と小さな林業」の全国ネットワークを求めて」というプロジェクト。

林業成長産業化の山側の条件である循環型資源である森林の次世代がうまく形成されているのだろうか?などなど、少し長くなりますので、近々ご報告します

junkan8-3<sanrinsinpo>

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