みどりの食料システム戦略の中の森林林業木材産業(2021/4/11)

農林水産省が、3月26日「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめというのを発表しました

「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現〜」というサブタイトルがついているので、森林林業分野はどうなっているのかな、読んでみました。

目次は、
1 はじめに
2 本戦略の背景
3 本戦略の目指す姿と取組方向
4 具体的な取組
5 工程表など
となっています

左の図は、2から3までの総論部分を示したポンチ絵です

その中に森林関係のことがどのように記載されているか、また、ちょっと気になった点を書き加えてみました

(戦略の背景説明)

図の左上の「背景」ですが、2背景説明の、地球環境問題に関して記載してある部分の冒頭は、「カーボンニュートラル2050の農林水産省版かな」と思ってみてみたんですが、もちろん、そうでもあるのですが、「地球の安定性を維持する限界値を意味する「プラネタリー・バウンダリー」は、9つの項目のうち、気候変動、生物多様性、土地利用、窒素・リンの4項目で限界値をすでに超え」とされてます。

・・・プラネタリーバウンダリー20年度環境白書からPlanetary boundaries: guiding human development on a changing planet

「気候変動だけを問題にしているんではないんですよ」というわけですね。

(政策手法のグリーン化)

3の「本戦略が目指す姿と取組方向」のなかに、「政策手法のグリーン化を図る」とあります(4ページ)。「政策手法のグリーン化とは、補助・投融資・税・制度等の政策誘導の手法に環境の観点を盛り込むこと」なんだそうです。

そして、その中に記載されているのは・・・

@ 2030年までに施策の支援対象を持続可能な食料・農林水産業を行う者に集中していくことを目指す。農林水産省の補助事業については、技術開発の状況を踏まえつつ、2040年までにカーボンニュートラルに対応することを目指す・・・

C 持続可能な食料・原材料や資材の利用など、環境保全に取り組む企業の情報開示等の取組を促すため、表彰やESG投資等の引き込みを検討する。
D 農林水産・食品事業者の取組が適正に評価され、消費者等の行動変容等を促進する事業者の取組の可視化を促進する。

など

ということで、補助金の対象となる、路網の整備、森林造成などの作業の機械の電動化などが進められ、カーボンニュートラルを進める企業を応援するシステムなどが進むんでしょうか。

(苗木の中のエリートツリーの割合)

また、戦略が目指す目標を具体的な数値で示していくようです。とりあえず、今回の中間とりまとめでは、以下のような記述があります

K エリートツリー等の成長に優れた苗木の活用について、2030年までに林業用苗木の3割、2050年までに9割以上を目指すことに加え、2040年までに高層木造の技術の確立を目指すとともに、木材による炭素貯蔵の最大化を図る(7ページ)。

現在検討中の森林林業基本計画改定作業などのなかに、こんな数値があったんでしたっけ。結構重要な数値ですよね。

(具体的な取組)

右の図は目次の「4具体的な取組」のポンチ絵ですが、そのなかで、気がついた点を拾ってみたものです。

具体的な取組は

(1)資材・エネルギー調達における脱輸入・脱炭素化・環境負荷軽減の推進
(2)イノベーション等による持続的生産体制の構築
(3)ムリ・ムダのない持続可能な加工・流通システムの確立
(4)環境にやさしい持続可能な消費の拡大や食育の推進
(5)食料システムを支える持続可能な農山漁村の創造
(6)サプライチェーン全体を貫く基盤技術の確立と連携
(7)カーボンニュートラルに向けた森林・木材のフル活用によるCO2吸収と固定の最大化

という7つのセッションから構成されています。

内容を見てみましょう

(カーボンニュートラルに向けた森林・木材のフル活用によるCO2吸収と固定の最大化)

森林が中心となっているセッション(7)は森林に関する以下のような内容からなっています、

@ 林業イノベーション等による森林吸収の向上
・間伐の推進に加え、利用期を迎えた人工林について「伐って、使って、植える」循環サイクルを確立し、林業の成長産業化を実現・CO?吸収を最大化するエリートツリー等の開発・普及による再造林の推進
・レーザー計測等による森林資源情報把握
・自動化林業機械の開発等による省力化、生産性の向上
・ICT等の活用による生産・流通の効率化
・健康で豊かなライフスタイル実現のための森林サービス産業の創出・推進
・安心して暮らせる社会実現のための適切な森林整備・治山事業による国土強靱化
・国民参加の植樹運動の展開
A 木材利用拡大による炭素貯蔵・CO?排出削減効果の最大化
・木造化・木質化を取り入れた新たな生活スタイルによるサーキュラーエコノミーの実現・高層建築物等の木造化の推進
・木材利用の多様な取組を推進(土木分野、家具、オフィス空間、外壁等)
・改質リグニン、セルロースナノファイバー( C N F)を活用した高機能材料の開発や、それに続く木質由来新素材の開発
・高効率な木質バイオマスエネルギー利用(熱利用等)の推進
・木のお酒、飼料への活用等、木材の新たな付加価値の創出

(その他のセッションの森林・木材関連事項)

森林木材の話は上記にすべて記載されている、ということかもしれませんが
(1)資材・エネルギー調達における脱輸入・脱炭素化・環境負荷軽減の推進
(2)イノベーション等による持続的生産体制の構築のなかにも、関連事項があります

(消費者との連携)

また、食品にくらべて、森林関係の記述がうすいのは、、(4)環境にやさしい持続可能な消費の拡大や食育の推進、の部分ですね。

A 消費者と生産者の交流を通じた相互理解の促進といった事項が、食品に関して記述されています。

森林や木材についても、建築関係者との連携など、川下との交流を通じた木材の利用拡大、など、是非記述を充実させて、5月の最終報告に向けて検討を進めて欲しいです。

関連して再造林の確保、のようなガバナンスの確保の部分も、市民や消費者との連携が大切なような気がします

junkan1-25<midorisyokuryo>

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