森林の多面的機能に関するQ&A(平成28年度森林整備保全事業推進調査成果物より)というページが、林野庁のサイト内に公開されています。
林野庁の委託をうけて林業経済研究所が実施した、平成28年度森林整備保全事業推進調査(文献収集期間:平成26年度〜平成28年度)により取りまとめたものです。
林野庁の委託事業にはいろいろ関わりましたが、この作成作業には思い入れがあります。
林野庁が提示した、以下の95問にその道の研究者が根拠となる学術文献を示しながら答えています。
森林の多面的機能に関するQ&A全体像
I. 共通
問01 森林整備が実施されないことにより森林の有する多面的機能が発揮されず、国民生活及び国民経済の安定に対して支障が生じる可能性が考えられるのは、如何なる場合か。
問02 伐採跡地の再造林を行わないことにより森林の有する多面的機能が発揮されず、国民生活及び国民経済の安定に対して支障が生じ疋可能性が考えられるのは、如何なる場合か。
問03 森林施業等は各機能の発揮にどのような影響を与えるのか(下表の組み合わせについて)。
|
間伐の実施 |
枝打ちの実施 |
皆伐の実施 |
皆伐跡地へ植栽の実施 |
人工林化 |
複層林化 |
高齢級化 |
Il. 水源涵養機能 |
更問01 |
更問02 |
更問03 |
更問04 |
更問05 |
更問06 |
更問07 |
皿土砂災害防止/土壌保全機能 |
更問08 |
更問09 |
更問10 |
更問11 |
更問12 |
更問13 |
更問14 |
V. 生物多様性保全機能 |
更問15 |
更問16 |
更問17 |
更問18 |
更問19 |
更問20 |
更問21 |
U 水源涵養機能
問04 水源涵養機能が高度に発揮される森林とはどのようなものか。
問05 条件の違いが水源涵養機能の発揮にどのような影響を与えるのか(下表の組み合わせについて)。 |
条件 |
地種(裸・草・森) |
優先樹種 |
林相構造(単・複) |
令級 |
細分機能 |
水資源貯留機能 |
更問01 |
更問05 |
更問09 |
更問13 |
蒸発散 |
更問02 |
更問06 |
更問10 |
更問14 |
浸透能 |
更問03 |
更問07 |
更問11 |
更問15 |
保水能 |
更問04 |
更問08 |
更問12 |
更問16 |
洪水緩和機能 |
更問17 |
更問18 |
更問19 |
更問20 |
水質浄化機能 |
更問21 |
更問22 |
更問23 |
更問24 |
III. 士砂災害防止/土壌保全機能
問06 土砂災害防止槻能が高度に発揮される森林とはどのようなものか。
問07 土壌保全機能が高度に発揮される森林とはどのようなものかロ
問08 条件の違いが士砂災害防止/土壌保全機能の発揮にどのような影響を与えるのか(下表の組み合わせについて). |
条件 |
地種
(裸・草・森) |
優先樹種 |
林相構造
(単・複) |
令級 |
細分機能 |
|
|
|
表面侵食防止 |
更問01 |
更問02 |
更問03 |
更問04 |
表面崩壊防止 |
更問05 |
更問06 |
更問07 |
更問08 |
その他の土砂災害(落石・土石流・飛砂等)防止 |
- |
更問09 |
更問10 |
更問11 |
土砂流出保水能 |
更問12 |
更問13 |
更問14 |
更問15 |
土壌保全機能 |
更問16 |
更問17 |
更問18 |
更問19 |
その他の自然災害(雪崩・防風・防潮等)防止 |
更問20 |
更問21 |
更問22 |
更問23 |
W 快適環境生成機能
問09 快適環境形成機能が高度に発揮される森林はどんなものか?
問10 条件の違いが快適環境形成機能の発揮委どのような影響を与えるのか(下表の組み合わせについて) |
条件 |
地種
(裸・草・森) |
優先樹種 |
林相構造
(単・複) |
令級 |
細分機能 |
気候緩和 |
- |
更問01 |
更問02 |
更問03 |
大気浄化 |
- |
更問04 |
更問05 |
更問06 |
快適生活環境生成 |
更問10 |
更問07 |
更問08 |
更問09 |
V. 生物多様性保全機能
問11 生物多様性保全機能が面度に発揮される森林とはどのようなものかc
問12 条件の違いが生物多様性保全槻能の発揮にどのような影響を与えるのか(下表の組み合わせについて)。 |
条件 |
地種(裸・草・森) |
優先樹種 |
林相構造(単・複) |
令級 |
細分機能 |
遺伝子保全 |
- |
- |
- |
- |
生物種保全 |
- |
更問01 |
更問02 |
更問03 |
生態系保全 |
- |
更問04 |
更問05 |
更問06 |
|
例えば最後の95問目は以下のようになっています。
問12-6 齢級の違いは生態系保全機能の発揮にどのような影響を与えるのか |
答
人工林や二次林の発達にともなって、森林の階層構造や表層土壌有機物層の発達、林床の枯死木(粗大有機物)の堆積など、森林の様々な生物の生息場所とそれを取り巻く非生物環境が生まれ、生態系保全機能の発揮につながるという研究成果は多くあるが、地域や優占樹種などにより効果の発現の仕方は多様であり、今後の研究が必要である。
(林分の発達段階と齢級)
齢級の違いと生態系の関係を考えるに当たって、Oliver (1981)と藤森(1996)にもとづいて、大規模な攪乱後の林分の発達過程を以下のような4つの段階に分けるのが、両者の関係を捉えやすい(根拠@、A、B)(問答 1203 参照)。
1)初期段階:攪乱後〜初期林分成立まで。人工林では〜約 10 年、広葉樹二次林では〜約 15 年
2)若齢段階:新たな木は侵入しなくなり、林木間の競争激化、優劣の差がついてくる。
3)成熟段階:やがて 40〜50 年もすると下層植生が林床に再び現れてくる。
4)老齢段階:上層木が不規則に枯れるが、下層木が成長して交代する。およそ 100 年〜。
(林分の発達段階に応じた生態系機能の変化)
以下略 |
根拠@
知見
・大規模攪乱が森林の構造や組成を決定
・様々な年代を含むような森林の相観は、しばしば
同齢級の林分で起こること、
・新しい林木のリクルートは一定に起こるのではな
く、攪乱に伴うこと、
・攪乱後、森林は次のような概観的段階を経る
林分分初期→幹の減少期→下層の再発達期→成熟
・攪乱の強度が優占種を決めるが
・攪乱の頻度も広域の森林タイプを決定する
文献
発表年:1981/筆著者:Oliver, C.D./掲載誌:For. Ecol. Manag.
3:153-168, 1981 / タ イ ト ル : Forest development in North America
following major disturbances.
略 |
それぞれに、新しい知見が示されているわけではなく、学術知見の検索を主たる目的とした作業でした。
当該分野の研究者は知っていることでしょうが、利用者は森林の機能に興味を持つ(森林を専門にしない人も含めた)学術研究者。ネットで早く公開してほしいと思っていましたが、準備作業がおわって公開されました。
興味のある方は自分の関心分野をご覧頂けるとありがたいです。
問いに行き着くまでに手間が掛かるかもしれませんが、以下から上記ページの以下から入って下さい
junkan2-3<kinouQA>