木材利用とビックビジネス(1)ーT工務店(2022/12/15)

10月17日、所属している日本林政ジャーナリスト会議が主催した共同取材のイベントで、木材の集積地(で昔あった)木場のフラッツウッズ木場という建物を見せてもらい、大手スーパーゼネコン竹中工務店の木材への取り組みに関するレクチャーを聞く機会がありました。

大手のゼネコンが木造中高層ビルについては取り組みを進めていますが、2016年に木造・木質建設推進本部を立ち上げ耐火木質部材「燃エンウッド」開発など、木造中高層ビルの取り組みをある意味リードしてきた、竹中工務店の取り組みを報告します。

木造中高層ビル群が都市の森になるプロセスの、技術開発の現状と課題、循環資材の担保、その原動力の在処は?という問題意識で、これから順番に大手ゼネコンの取り組みを時々報告しようとしていますがその第一回です。

(FLATS WOODS 木場とは)

フラッツウッズ木場2020年竣工の地上12階だての集合住宅(アパートのことをFLATSというんだそうです)。

紹介サイトでは、都市木造の技術発展に挑戦する、免震高層木造ハイブリッド建築とされています。

ハイブリッド?そとからみると、全部木造のように見えます(意匠性)が、1階から4階まではRC造、5階より上は、木造とRCを組み合わせたハイブリッド(混構造)なんだそうです。

世界的な都市建築の木造化の流れの中、高い耐火・耐震性能が求められる日本の高層建築に「木造」という新たな選択肢を与えるパイロットプロジェクトです。

つまり、高層建築を木造化していくときに、耐火性能、耐震性能という二つハードルがあるので、全部木造にするのでなく、木造という部分的な選択肢をどこまで、拡大できるかというプロジェクトなんですね

そして、「鉄筋で補強した燃エンウッド梁、屋外で使用できる燃エンウッド柱、耐震改修に適用できるCLTエストンブロックを意匠的に活用した壁など、当社が開発した最先端技術の有効性を実証しています

つまり、RCと木造を比べたときに、RCは耐火性能、耐震性能はよいが、木材は同じ性能をだすのに(太くしなければならないけれど)軽い、木造は環境にも人にも優しいというメリットを実感する意匠性という二つのメリットがあので、そのメリットを引き出すための先端技術を開発しています。

2020年度グッドデザイン賞のグッドデザイン・ベスト100を受賞。最上階に位置する共用のカフェテリア、フィットネスルーム、スタディールームをはじめ、高層ビルの内外装に木造部材や木質建材を“木の現”で使用。

(耐火性木質部材燃モエンウッドの進展)

燃エンウッドは、2013年に竹中が開発した1時間耐火の集成材で、木造で4階建てがたてられるようになりました。

耐火建築物を造るための木質構造部材は、被覆型、燃えどまり型、鉄骨内蔵型大きく三つある。んだそうですが、被覆をしないで燃えどまりを追及した、竹中工務店が開発した燃エンウッド。

各社が耐火木質構造部材の開発競争をしていますが、現時点でプロジェクト実績が一番多い(21件232千M3)のが燃エンウッド、(二位は鹿島・住友林業)なんだそうです。

開発がすすみ、2時間耐火(14階まで可能)が実用化して、3時間耐火(何階でも可能)も開発が進みました(右図)。

竹中工務店、耐火集成木材「燃エンウッド」(3時間耐火)を開発

(耐震性)

耐火部材の開発が進み、何階でも建てられるようになっているのに、なぜ、1−4階はRCだったり、5階以上もハイブリッドなんですか?とお聞きすると、耐震性なんだそうです。

耐火性を確保しながら、構造的な強度を確保する方法はについて、木梁長大スパン技術の開発(燃エンウッドSAMURAI)などが行われています。

ですが、1階から4階までをRCにした理由は、木製にすることはできるけれど、柱がふとくなって、1階のスペースが狭くなるといった、コマーシャルベースの選択なんだそうです。

(意匠性)

耐火性、耐震性という重要な分野でさまざまな技術開発が進んでいる中、もう一つインパクトがあったのは、これは木材です!という「意匠性」についての開発です。

このビルは木質部材で出来上がっています!!という外から見た場合の外部への訴求(外部使用燃エンウッド図右)

皆さんがすんでいる住宅は地球と人に優しい木材で来ているんですよ!といユーザーへの訴求(CLTエストンブロック図左)。

(今なぜ木造建築なのか?)

竹中工務店のウェブページに木造木質建材の拡大に取組む考えをまとめて訴求するページがあります

持続可能な森づくり

森に関わる人や森に入る資金が増えることで、森を手入れし守る山主や林業経営者の活動が支援されます。その結果、経済的にも自立し、環境配慮が行き届いた持続可能な森がつくられ、SDGsの達成にも大きく貢献します。

ビッグビジネスが、当面の市場だけでなく、将来を見据えて環境的、社会的課題に取り組んでいこうという考えが伝わってきます。

(森林認証材は?)

ということがよーくわかったので、最後に質問してみました?

「環境や循環社会を視野に入れた木材木質建材の利用拡大だとすると、木材をFSCやSGECなどの森林認証された木材にしていくという考えはありませんか?」

丁度、石巻森林組合でのプレゼン「森林認証プロセス拡大の可能性ー次世代の森林づくりを消費者とともに(2022/11/1)」を控えていたので、伺いました。

答えは、「コストの面で問題があるので考えていません」

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木材の利用促進を自社の社会的な貢献を訴求する一環として取組んでいる、ビッグビジネスの方々が、@確かに(少し)高い森林認証材の調達コストと、A「森林認証材をつかって持続可能な次世代の森林資源づくりをリードしています!」という社会的な評価とのバランスを、冷静に検討するように、どのような道筋でなっていくのかな?

フォローしていきますね
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