昨年6月に「令和国民会議」(略称令和臨調)という会議が立ちあがり、議論が進んでいるようです。
もともと臨調とは「臨時行政調査会」の略で国鉄・電電公社・専売公社などの民営化・行革などに繋がった総理の諮問機関(1981)(第2次臨調=土光臨調)
「あくまで現場から、とことん現実に即して、もっとも本質的な課題を取り上げる。そこに聖域は設けない。」
その後、1992年民間政治臨調(小選挙区制導入など)、1999年21世紀臨調(官邸主導の霞が関改革?)と「臨調」という名前で日本の基本問題を議論するが続き、今回の令和臨調に繋がるんだそうです(老政治学者の「最後の一戦」 令和臨調が目指すもの【政界Web】)
いままで、だれも手をいれられなかった、政治改革とか行政改革に大きな役割をはたしてきた「臨調」ですが、今回は少し手を広げて「国土構想」まで検討の対象にしようようとしているようなので、森林のガバナンスにどんな関係が出てきそうなのか見てみました
(発足宣言と三つのテーマ)
令和臨調発足宣言(要約)2022年6月 (全文はこちら)
本日、ここに、「令和国民会議」、通称「令和臨調」の発足を内外に宣言いたします。
令和臨調は、平成時代以来、先送りされてきた積年の課題で、とくに立場や党派を超えて取り組まなければ解決困難な課題に取り組むものであります。
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実際、日本の人口減少問題はますます深刻さを増しております。また、平成時代以来、30年余の日本の経済社会の停滞や、国力の低下を評して、しばしば、「失われた30年」「日本の衰退」「地盤沈下」といった言葉も耳にするようになりました。このような危機感は、いまや多くの国民の共有するところであろうと思います。
私たちには、こうした日本の現実を真摯に受けとめ、次の世代が希望をもてるような、持続可能な日本を作りあげる責務があります。令和臨調はそのための一助となるべく、時代認識や問題意識を共有する各界有志の皆さんとともに立ち上げます。
現在、主宰する日本生産性本部の呼びかけに応じ、経済界、労働界、学識者など各界の有志約100名の皆さんが本日の発足大会までに参加を表明されております。発足後も活動の輪を広げ、各界の多くの方々にご参加を呼び掛けてまいります。
令和臨調は、佐々木毅さん、小林喜光さん、増田寛也さん、私の4名の共同代表制で運営してまいります。
取り上げるテーマについてでありますが、当面、次の3つの課題を中心に検討を進めてまいります。
第一は、「統治構造改革」であります。政府、政党、国会、選挙など課題は山積しております。平成時代の諸改革を検証しながら、とくに、国会審議のあり方など、与党だけでも、野党だけでも、解決できない課題に取り組み、「令和の政治改革」に挑戦します。
第二は、「財政・社会保障」であります。現下のコロナ禍や食料・エネルギー価格の高騰等により政府支出の暫定的な増大は避けられないにせよ、財政・社会保障の持続可能性を担保するための取り組みに道筋をつけることは、もはや避けて通ることのできない、まったなしの課題であります。誰かが声を挙げねばならない、このように考えております。様々な危機をしっかり受けとめることができる、社会・経済政策ビジョンの国民的な合意形成を進めてまいります。
第三は、令和時代の「国土構想」であります。人口減少・少子高齢化・デジタル化に加え、コロナを契機に加速しつつある、人々の多様な生き方、暮らし方、働き方を踏まえた、次世代に引き継ぐに相応しい、日本社会の新たなビジョン、自治体のあり方等について合意形成に努めてまいります。
令和臨調では、こうしたテーマを議論するために、3つの専門部会を設けました。すでに各部会とも、精力的に検討を開始しております。
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宣言にあるように3つのテーマ、@統治構造改革、A財政・社会保障、A国土構想
@統治構造改革は、臨調が目指してきた「交代可能な2大政党による政治システムができていない!」、Aの財政・社会保障は「高齢化して介護保険・高齢者医療などに投入されている社会保障を次世代お若者にまわせないのか!」といった、難しい課題にチャレンジしようとしているのでしょうが、Bはそれらのバックグラウンドとしての経済社会基盤をつくる国土構想ですね。
今までの臨調では登場しなかった、次世代の循環社会を担う森林が国土構想の中にどのように登場するのか?このページで取り上げようとしている理由です。
(第三部会の報告書ー人口減少を直視せよー所有から利用へ・私有から公共有へ・・経済至上主義から自然と文化の尊重へ)
令和臨調のなかに専門部会ができ、、第3のテーマを担当するのは、第三部会です。
第3部会は6月21日(水)、人口減少という現実と課題を共有し、地域のあり方を含む日本社会の未来像を提案する呼びかけ第一弾「人口減少危機を直視せよ?人が成長し、産業がかけ合わさり、地域がつながる?」を取りまとめ、公表しました。
下にあるように、4つのチャプターからなる4ページほどの文書。森林という単語が2回でてきます。そんなこともふくめて、気の付いた点を拾い出してみました
「人口減少危機を直視せよ」
?人が成長し、産業がかけ合わさり、地域がつながる?(概要)(全文はこちら) |
I はじめに |
令和臨調は、日本社会と民主主義の持続可能性を高めることを目的に発足した。このうち第三部会は、主として「国土構想」を担当する。しかしながら、その課題は狭い意味での国土構想にとどまらない。むしろ国土の上に暮らす一人ひとりの個人が自由で心豊かに暮らせるために日本社会がどうあるべきか、日本の新たな社会像を議論し、理念となる哲学とその実現のための方策について問題提起することを使命とする。混迷し、流動化する世界にあって、日本から世界に向けて新たなビジョンを提示していきたい。 |
II 危機意識の共有 |
日本社会が直面する最大の危機の一つは、人口減少である。
厳しい現実の渦中にある、日本の各地域の現実を直視すべきである。国土構想に関していえば、日本の地域社会において、森林や河川、農地、空き家など、国土を維持・管理する担い手の減少は深刻な現実である。このままでは日本の国土と文化の荒廃を食い止めることは難しくなるばかりである。
確認しておくべきなのは、人口の少なさ自体が問題ではないことである。人口が少なくても輝いている国々は世界に少なくない。重要なのは、人口減少に対して、いかに社会が適応していくかである
重要なのは@人口減少に適応する過渡的な取り組みであり、A人口減少を徐々にやわらげ安定化させる工夫であり、B人口が安定したあとの多様で、経済的にも精神的にも豊かな社会の姿を描くことである。社会の持続性と多様性を高め、豊かな社会・風土・文化を継承できるよう、未来像の共有が不可欠である。 |
III 新たなフューチャーデザイン |
大切なのは、仮に人口が6000 万人程度になったとしても、一人ひとりが自由で心豊かに暮らせる日本社会となることである
これからの日本の地域社会の未来像として、「人が成長し、産業がかけ合わさり、地域がつながる」ことを提案したい
第一は「人が成長する」である
多様な教育の機会によって、地域ネットワークに溶け込みにくい困難を抱える人々も包摂する地域コーディネーターや、全世代型の主権者教育によって、地方政治や議会を担い、地域を牽引する政治的・社会的リーダー層を育てていきたい。
第二は「産業がかけ合わさる」である
ミッションを共有した人々が協働することで全員参加型の産業革命を実現したい。
その際には、@企業を超えて技術を糾合するためのシステム、A地域を超え、業種を超えて横串で捉えて共通課題の解決に技術やサービスを結びつける「課題解決プラットフォーム」、B中小企業が個別に保有できないマーケティングやブランディングなどの機能を持つプラットフォーム、C柔軟な組み合わせを可能にするデジタル技術の活用、Dワーケーション、ブレジャー、滞在型ツーリズム、付加価値の高いコンテンツの提供に向けての地域全体のブランド化、E森林資源などを有効に活用するためのゾーニング、所有と切り離した利用・管理の集中化などが重要である。
第三は「地域がつながる」である。
これから重要になるのは、個人・組織・地域が固有性を維持しつつ、多様な関係性・重層的な網(ネット)で支え合う、課題解決のためのしなやかなネットワーク型社会である |
IV 求められるパラダイムチェンジ |
人口減少危機を機に、自立性と多様性に基づく、新たな時代にふさわしい社会のあり方を今こそ再定義したい。人口増加を前提にした旧来型の競争主義では、日本社会は持続できない。「人が成長し、産業がかけ合わさり、地域がつながる」ことを目指すべきである。
求められるパラダイムチェンジとしては、所有から利用へ、私有から公共性へ、分業からマルチ・タスクへ、標準化から多様性へ、経済至上主義から自然と文化の尊重へ、などを指摘することができる。
今後、令和臨調第三部会はさらに、海外からの移民問題を含め、日本社会をさらに外に開いていくための方策や、より自律・分散的で、自由な生き方を可能にする具体的な諸制度の構想、そして政治・社会参加のための新たな仕組みや、成長/脱成長の二項対立を超えた「幸福」の価値を検討していく。地球温暖化対策の目標となる2050年を経て、2100 年までに必要な諸改革の具体的なロードマップを描く予定である。ここではまず、人口減少への危機感を共有し、人口減少正面から受け止め、必要となる社会の適応を検討することを訴えたい。そして、一人ひとりの個人が自由に人生を選択し、自分が「本当に生きている」と実感できる包摂型の社会を発展させることを主張したい。
デジタル化や脱炭素化が進むなか、人類は変化する環境において自らも変化していかなければならない。誰もが希望をもって未来に向かって挑戦できる社会を目指し、まだ答えのない人類的課題に向けて、日本からその第一歩を踏み出すべきである。 |
具体的な施策を述べる新たなフュチャ―デザインの中の産業政策の6つの中の一つが、「森林資源などを有効に活用するためのゾーニング、所有と切り離した利用・管理の集中化など」
また、既存の枠組み大転換(パラダイムチェンジ)として目指されている所有から利用へ、私有から公共性へ、分業からマルチ・タスクへ、標準化から多様性へ、経済至上主義から自然と文化の尊重どれ一つとっても森林ガバナンスの重要な要素、あるいは森林ガバナンス論で先行的に議論されてきた内容が重要な役割をはたすチャンスなのではないでしょうか?
(勉強部屋もしっかりフォローします)
令和臨調は3年をワンサイクルに「駆け抜けていく」(発足宣言)そうです。後二年以内に、次世代にむけた循環社会の中での森林産業と市民の連携確立の2100までのロードマップが!!
もちろん令和臨調は日本生産性本部というビジネス界の司令塔のようなところが事務局をしているので、「自らの成長」を目指す大規模ビジネスと市民利益の利害関係の乖離といったリスクが。
ただビジネスにもESG投資の流れがあり、将来にわたる視点をしっかりもっていないと、我々の年金を集めた積立金管理運営法人(GPIF)のような巨大機関投資家からの資金が受けられない、となっています。
そんなことも含めて、臨調の議論をフォローしてまいります。
junkan1-33(Rrincho1)
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