コロナ渦からの「緑の回復」(グリーンリカバリー)論と森林(2020/9/15) | |||||
気候変動に対処するためゼロエミッションに向けて大きな動きが広がる中でのコロナ渦。ここから、どうたちなおるか、という議論の中で、以前よりも持続可能な社会に作り替えようという議論がが広がっています。グリーンリカバリー(緑の回復)。 緑の回復(グリーンリカバリー)の中で森林や木質資源はどうなるのか?気になっていたときに、「日本もコロナ渦からの「緑の回復」(グリーンリカバリー)を」(松下和夫京都大学名誉教授)という、バックグランドの情報をもしっかりフォローした解説記事が公表されていたので勉強してみました。 同記事は、@コロナ渦から見えてきたものA新型コロナウィルス対策による新経済活動と環境への影響B「緑の復興」を求める世界の動きC「グリーンな復興策とはDおわりに、という構成です。 最終節は「コロナ禍から教訓をくみ取り、脱炭素で持続可能な社会への速やかな移行を進めることが日本や世界が目指すべき方向である。こうした移行は、 経済、社会、技術、制度、ライフスタイルを含む社会システム全体を、炭素中立で持続可能なかたちに転換することを意味する。そしてそれは、民主主義的でオープンなプロセスを経て着実に進められなければならない。」として、欧州で進められている国民を巻き込んだ政策決定プロセスを紹介して、日本の政策決定プロセスの課題で終わっています。 読み応えがありました。 このページでは、丁寧に引用された文献もふくめて、緑の回復が提唱する政策がどんなものなのか整理すると共に、森林政策とどんな関係になっていくのか、セッション毎にみてみます。 ーーーーここから日本もコロナ渦からの「緑の回復」(グリーンリカバリー)を (コロナ渦から見えてきたもの) 国連環境計画(UNEP)は4月にSix nature facts related to coronaviruses(コロナウイルスに関連する自然中の事実)を発表しました (新型コロナウィルス対策による新経済活動と環境への影響)
新型コロナウイルス対策として各国で都市のロックダウンなど経済活動と人の移動を制約する措置が導入さ短期的には大気汚染物質や温室効果ガスの排出量が減少しました。 その後、アジア金融危機、リーマンショック後のように、リバウンドが始まっています。(左の図) 新型コロナウイルス感染症の対策により在宅勤務、時差通勤、遠隔会議などが広がりました。 これらの変化は、環境負荷の少ない経済活動・ライフスタイル・ワークスタイルや、一部の都市では自転車利用の拡大が進み、自転車道整備の機運が高まっています。 リバウンドの中で回復して良い回復と、そうでない回復をわけて、緑の回復!! (「緑の復興」を求める世界の動き) 国連事務総長やグローバル企業のCEOなど各界リーダーは、「目指すべきは原状回復ではなく、より強靱で持続可能な“より良い状態”への回復である」と訴え、経済対策を脱炭素社会の実現に向けた契機とすべきと提言しています(国際マザーアース・デーに寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長ビデオ・メッセージ(ニューヨーク、2020年4月22日)) 「COVID-19からの復興への取り組みに多額の資金を費やすなか、環境に配慮したグリーンな方法で新しい雇用やビジネスを提供しなければなりません。」など 国際エネルギー機関(IEA)の事務局長は、3月に行った演説でコロナ危機からの復興の中心にクリーンエネルギーの拡充と移行を置くことが「歴史的な機会」であると述べ、7月には「クリーンエネルギーへの移行に関するサミット」(IEA Clean Energy Transitions Summit を開催しました (40カ国の大臣(日本は梶山経済産業大臣)からなる)「参加者は30の実行可能で野心的な政策提言と目標とする投資を定めたIEAの持続可能な回復計画を賞賛。国際通貨基金(IMF)と協力して策定されたこの計画は、世界経済の成長率を年間1.1%押し上げ、年間900万人の雇用を節約または創出し、排出量のリバウンドを回避し、構造的な衰退に置く。これらの結果を達成するには、今後3年間で年間1兆米ドルのグローバル投資が必要とした」など(サマリーに各国の大臣の名前が引用されていましたが日本の大臣の名前はなかったです) 欧州連合(EU)は、「欧州グリーン・ディール」A Europian Green Dealををかかげて、着実に推進することを明らかにしています
(グリーンな復興策とは) コロナ禍からの復興策が、化石燃料集約型産業や航空業界への支援、建設事業の拡大などの従来型経済刺激策にとどまるならば、短期的経済回復は図られても、長期的な脱炭素社会への転換や構造変化は望めません、そして 英国のニコラス・スターン卿と米国コロンビア大学のスティグリッツ教授が共同議長を務める「炭素価格ハイレベル委員会」の報告書REPORT OF THE HIGH-LEVEL COMMISSION ON CARBON PRICES は、「パリ協定の気温目標に一致する明示的な炭素価格の水準は、2020年までに少なくともCO2排出量1トン当たり40〜80ドル、2030年までに同50〜100ドルである」としています(日本の炭素前CO21トン当たり289円の10倍以上)。 (おわり) 2019年10月からフランスで、2020年1月からは英国で、国レベルで脱炭素移行に向けた市民参加の討議がおこなわて、次々と結果が公表されているのだそうです〜フランス及び英国の気候市民会議の最新動向〜その1「環境政策対話研究所」 2019年秋以降、欧州では、フランス及び英国に相次いで気候市民会議が誕生。脱炭素トランジション(転換)に向けて、くじ引きで選ばれた150名及び108名の市民が、専門知識を吸収しながら、市民目線で互いに意見を述べ議論を闘わし、それぞれ8ヶ月及び4ヶ月に及ぶ討議を経て、フランスは6月に、英国は5月に終了。ーーーーここまで日本もコロナ渦からの「緑の回復」(グリーンリカバリー)を ((緑の回復と森林の関係は?)) 欧州の動きを中心に、、コロナ後の今後の社会政策で議論されるであろう「緑の回復」の内容を見てきました。 以上のように、コロナ後のグリーンリカバリーは、@コロナのあとという意味でそもそもコロナとは一体何かという視点と、A気候変動緩和対策の新しいチャンス視点でという、二つの視点があります。 (生物多様性保全と森林政策) 森林に関する議論は、コロナウルスの発生メカニズムにも関係する「生物多様性保全」が大切なコンセプトになってくるでしょう。土地利用計画、森林林業基本計画などで土地政策、森林管理政策とを議論していく場合に。グリーンインフラ、都市の緑、天然林の保全などなど また、関連してEUでは新たな森林政策を作成ることになるようです(当然以下の気候変動にも関連して)(New Forestry Strategy) (気候変動−炭素税と木材の利用) 気候変動の緩和策という視点で、フランスの市民会議の議論のように炭素固定のツールとしての森林地域の保全の議論が当然重要な視点です。森林だけでなく農地、都市緑地も。しっかり欧州の議論をフォローする必要があると思います。 ただ、欧州の議論でかけているのは「木材の利用」という視点ですね(注)。もちろん、「持続可能な経営がされている」前提つきで、都市の建築物のなかで木質資源をつかっていく、という議論がもう一つかけているように思います。炭素税などとの関係で、木造建築物は非木造建築物住宅より製造過程の温室効果ガス排出量が明らかに少ない、そして炭素を固定する。グリーンリカバリーの中で木材の利用の議論が進んでいくことを期待します。 日本学術会議、提言地球温暖化対策としての建築分野での木材利用の促進(2020) (注)と思ったのですが、新型コロナからの再生はグリーンリカバリーでから、アムステルダムのポストコロナ経済をはかる「ドーナツモデル」で「建築業者が可能な限りリサイクルまたは木材などのバイオベースの建材を使用するように市が規制する計画」がでてきます。次号に補足
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