春の学会の季節ー135回日本森林学会コレクション (2024/3/20)

年度末に開催される森林学会大会、今年は都内の東京農業大学世田谷キャンパスで、3月8日から11日まで第135回日本森林学会大会が開催されたので、最初の1日だけ出席しました。

「森林学の進歩と普及を図り、学術の振興と社会の発 展に寄与・貢献することを目的」(定款の目的規定)とする森林学会の大会。アカデミアと行政の間にたって勉強しようという勉強部屋サイトにとって、重要な機会です。

気になった報告をすべてフォローすることはできませんが、第135回日本森林学会講演集に掲載れた要旨もとにを紹介します。ご本人のご厚意によりいただいた発表資料データなども追加してまいります

標題 発表者 要旨:関連データ 趣旨・注目点
国内の森林ガバナンス構築の道筋
A1  地方自治体の森林行政担当者の知識と情報源 石崎涼子(森林総研) 講演集P.117 森林政策の実施を担う地方自治体の森林行政担当者は、どういった知識を必要とし、どのように知識や情報を得ているのだろうか。。都道府県職員、市町村職員とも、知識を得るための情報源の不足よりも時間の不足を強く感じている
A2  森林環境譲与税の使途に対する選好評価:秩父市を事例とする選択型実験 片田陽菜(筑波大学大学院生命地球科学研究群)他 講演集P.117 林業関係者だけでなく広く市民が森林の恩恵を感じるケースが増えている。そのため、森林の取り扱いには何らかの形で社会の要求を取り入れることが必要。選択型コンジョイント分析を用いて市民の森林・林業への支払意思を推計
A3  都道府県による小規模林業者への機械導入支援の実態 尾分達也(兵庫県立大学地域創造機構) 講演集P.117 小規模林業者を対象に機械導入の補助金を実施している都道府県を対象に、予算の種類、補助の開始年度、補助対象機械、予算規模、実績および補助金の意図や経緯について聞き取り調査を行い、都道府県による小規模林業者に対する機械導入支援のあり方について考察を行った。
A16  2020 年代における自伐型林業研修受講者の特性と就労意向 佐藤宣子(九州大学大学院農学研究院) 講演集P.120 自伐型林業の研修者を対象に実施したオンラインアンケートを基に、研修者の特性と林業就業意向を明らかにする。自伐型林業に対して、地域の森林保全、防災・減災効果、地元住民の森林整備意識の向上等を期待し、自由記入欄には多くの楽しみが記された。
A17  事例にみる森林組合経営の課題 松本美香(高知大学自然科学系農学部門) 講演集P.120 多くの森林組合で林産事業が主要事業へと変化し森林組合の経営にも変化をもたらした変化を調査。現状では人材不足が様々な悪循環を生み出している例が多く、経営への深刻な影響は看過できない状況にあったほか、利益獲得の仕組み自体についても経営悪化に繋がる要素が確認された。
A24  山林評価人に関する研究 大塚生美( 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所東北支所・ 講演集p.122 森林所有者にとっては経営意欲が後退局面にあるとは、林地の流動化を促す可能性を有しているといえる。日本において林地売買にかかわる評価制度に相応する競売評価人に視点をあて、その現状を報告する。
A25  森林認証取得が事業体に及ぼした変化 ─浜松市の事例─
松本清貴(名古屋大学大学院生命農学研究科) 講演集p.122 FSC 認証の取得面積が国内で最も広い静岡県浜松市を事例に、FSC 認証取得の効果を把握することを目的に、FSC 認証取得前後の変化に関するアンケート調査などを実施。企業イメージの向上や地域社会との良好なつながりに効果を感じる傾向がわかった
国内森林の生物多様性確保
S3-1  昆明・モントリオール生物多様性枠組実現に向けた産学官の役割 香坂 玲(東京大学大学院農学生命科学研究科) 講演集P93 国内の環境省の自然共生サイトの概況、登録をする民間企業の取組みなどを紹介し、国際的には海外の民間保護区の動向、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)、国際標準化機構ISO)、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の動向にも触れる。
S3-2  生物多様性の価値評価とWeb 調査分析 栗山浩一(京都大学大学院農学研究科) 講演集P93 生物多様性の価値評価におけるWeb 調査分析の手順を示すとともに、今後の可能性と課題について検討する。
S3-3  自然共生サイトの概要と傾向 蒲地紀幸(環境省自然環境局) 講演集P94 2023 年10 月、環境大臣は、「自然共生サイト」122 箇所を認定したが、森林や里地里山、都市の緑地、沿岸域など多様な自然環境を有し、様々な活動が実施され、その結果として生物多様性の保全が図られている。この概要と傾向について紹介。
S3-4  炭素貯留・生産林の効率的な管理に向けたドローン3 次元計測の試行 山口毅志(鹿島建設株式会社技術研究所) 講演集P94 全国に森林を保有する鹿島グループでは、Nature Positive Business への移行の一つとして、森林の機能・価値を高めていく取組みに着手。生物多様性、木材生産・炭素貯留、水源涵養、アメニティ等の機能・価値の評価に基づいて、持続的な森林管理・活用を目指したゾーニング
S3-6  スマートフォンによる市民参加型生物多様性モニタリング
○藤木庄五郎(株式会社バイオーム) 講演集P94 生物多様性データ不足の解決には、市民から生物の発見情報を広く募ることも重要。発表者は、生物多様性モニタリング手法の開発を目指し、市民が撮影した位置情報付きの生物画像を収集する取り組みを実施し、生物データ投稿機能を備えたアプリ「Biome」を公開
T1-9  生物多様性保全と森林管理のための制度的取り組み
堀靖人(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所林業経営・政策研究領域) 講演集p.111 「生態系サービス対する支払い(以下、PES:Payment for Ecosystem Service)」により、森林の多面的な機能を提供する持続的森林経営の支援が試みられている。本報告ではPES の手法を援用して、生態系サービスを評価生態系サービスの提供をクレジット化するメリットについても検討する。
木質バイオマスエネルギー利用の環境負荷
S10-1  木質バイオマス燃料供給の現状とこれからの木質バイオマスの可能性 ○有賀一広( 宇都宮大学農学部) 講演集p.104 再生可能エネルギー固定価格買取制度FITが開始され、未利用木材の買取期間20 年間安定調達、FIT 終了後の木質バイオマス発電後の採算性、木質バイオエネルギーの持続可能性などが懸念されている。日本全国の木質バイオマス発電のための未利用材利用可能量を推計
S10-2  東北における木質バイオマスを含めた木材流通の実態 鈴木信哉(ノースジャパン素材流通協同組合) 講演集p.104 発電所と素材供給者が需給ウィンウィンの関係になるには、伐採したA 材、B 材が安定的に納入できる工場のキャパシティがあること、C 材、D 材を利用して、林内に放置されていた資源を活用すること、工場受け入れの工夫が必要である。
S10-3  九州における木質バイオマス発電・燃料供給の実態 森山和浩(日本フォレスト株式会社代表取締役) 講演集p.104 FIT 制度施行以来、木質バイオマス発電所の稼働が先行していた九州地域においては燃料調達の懸念があり、各発電所はこれまで使用されていなかった燃料を使用するなど燃料種の多様化を図ったり、自社で林地未利用材の回収や運搬を行うなど燃料調達の工夫を行っている。
S10-4  定期アンケートに基づく国内の木質燃料の需給動向と安定供給に向けた一考察 大久保敏宏(1 日本木質バイオマスエネルギー協会・2 早稲田大学人間科学学術院) 講演集p.104 近年、発電用木質燃料の需要量が増加し、安定的な木質燃料の供給を危惧する声がある。本発表では継続的なアンケート調査から発電用木質燃料の需給状況を概観するとともに、木質燃料の安定供給に向けた末木枝条の利用事例について報告する。
S10-5  木質バイオマス燃料を目的とした早生樹導入の可能性と課題 當山啓介(岩手大学農学部) 講演集p.104  発電用木質バイオマス燃料の需要の高まりに応えるため、早生樹導入の試みも盛んになってきている。FIT 制度上では「未利用木材」調達価格が適用できるかが非常に重要となる。そのため、市町村森林整備計画で造林樹種として認められることがほぼ必須
S10-6  木質バイオマスガス化発電に適した燃料供給の現状と課題
久保山裕史(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所) 講演集p.104 高いエネルギー効率を実現できる熱電併給(CHP)は、欧米では政策的に導入されてきたが、日本においても、小型で発電効率20 % 以上を実現できるガス化CHP の導入が増えてきた。しかし、十分な採算がとれていない可能性が高い。チップサイズ、チップ乾燥が適切に行われていない可能性が示唆された。
S10-7  転換点における木質バイオマス産業用熱利用の導入形態に関する考察 澤田直美(日本木質バイオマスエネルギー協会) 講演集p.104
関連データ
導入可能性のある産業部門における脱炭素・非化石に向けた取組み状況を確認するとともに、蒸気ボイラーにおける木質バイオマス熱利用の技術的課題を整理し、産業用ユーザーにおける木質バイオマスエネルギー導入の意思決定に関わる要因の分析を行った。
D2  木質バイオマスのサプライチェーンGHG 排出量の把握と低減に向けた検討 丸葉亮太(早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科) 講演集p.131 FITで、燃料材の生産から供給に至るライフサイクルGHG 管理が、今後のバイオマス発電事業の前提となる見通しである。木質バイオマス発電のサプライチェーンにおける森林施業管理プロセスを対象として、GHG 排出量の把握ならびに低減に向けた考察を進める。
企業の環境志向と森林木材利用
T1-8  王子グループの生物多様性保全の取り組み ネイチャーポジティブの実現へ 豊島悠哉(王子マネジメントオフィス株式会社王子の森活性化推進部) 講演集p.111 王子グループは、国内に民間企業で最大の約19 万haの社有林を保有・管理してきたが、経営環境の変化を踏まえた新たな取り組みが必要になっている。王子グループの事業とネイチャー・ポジティブに向けたロードマップ・取り組みについて紹介するとともに、解決していきたい課題について話題提供を行う
これからの林業経済学を考える
S6-1  林業経済学の歩みをふりかえり、これからを考える 柴崎茂光(東京大学大学院農学生命科学研究科) 講演集p.98 林業経済学会のこれまでの研究活動に焦点をあてながら、研究の発展を振り返りつつ、将来取り組むべき課題を述べる。2025年に林業経済学会が設立70 周年を記念事業の柱についての紹介する
S6-2  2000 年代以降の研究史を概観する 三木敦朗(信州大学農学部) 講演集p.99 林業経済学分野の約20 年間の研究史をまとめるにあたっての視角を提示する。2000 年頃までの研究史を扱った『林業経済研究の論点』(2006 年)に比べて、森林・林業をとりまく状況は大きく変化した。
S6-3  林業経済学に求められているリサーチクエスチョン:ワークショップを経て 岩永青史(名古屋大学大学院生命農学研究科) 講演集p.99  2022 年から実施しているリサーチクエスチョン事業では、談話会、アンケート、個別インタビュー、ワークショップを経て、林業経済学に関するリサーチクエスチョンを抽出することを目的としている。本報告では、計2 回実施したワークショップの結果を提示する
S6-4  林業経済学の未来に向けて:リサーチクエスチョン探求の経緯と議論 田村典江(事業構想大学院大学) 講演集p.99 林業経済学会で現在行っている、70 周年記念事業として、林業経済学におけるリサーチクエスチョン(RQ)(よりよい森林、林業、山村社会を実現するために、今後とりくむべき研究課題)を行っており、その議論の進展を紹介

森林学会の報告全体はこちらから

発表資料をいただける方は、ご連絡いただけるとありがたいです。

たくさんの報告の中から、立場上政策がらみの報告をピックアップしていますが、全部がフォローできていないません。生物多様性にエビデンス問題とかバイオマス利用の助成問題など、結構重要な課題を含んでおり、もう少し突っ込んで勉強していきたいと思います。

gakkai<sinrin2024>


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