国際熱帯木材機関第35回理事会林野庁長官挨拶
 
                       日時:平成15年11月3日10時〜
                       場所:横浜市 パシフィコ横浜3階
 
 各国代表各位、フリーザイラー議長、ソブラル事務局長、並びに御列席の皆様方、本日、国際熱帯木材機関(ITTO)の第35回理事会が開催され、各国代表団、各国際機関・NGOの関係者を当地横浜にお迎えできたことは、誠に喜びにたえません。
 常日頃より、熱帯林の持続可能な経営と保全に取り組まれているITTO事務局をはじめ、加盟国の皆様方の御努力に対し、心より敬意を表する次第であります。
 
 議長、
 ITTOは、熱帯林、熱帯木材に焦点をあてて活動している唯一の国際機関であります。
 これまで、ITTOは、西暦2000年目標の設定、天然林経営、人工林経営、生物多様性の保全、森林火災対策等についてのガイドラインの策定、熱帯林の持続可能な経営のための基準・指標の策定、約580件に及ぶプロジェクトの実施やセミナーの開催などを通じて、熱帯林の持続可能な経営と保全に多大な貢献を行ってきました。
 昨年9月には、南アフリカ・ヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)のサイドイベントとして、ITTOは、「持続可能な熱帯林経営」に関するセミナーを実施し、熱帯林の持続可能な経営と保全のための活動が高く評価されたところであり、今後、一層の活動強化が期待されます。
 
 議長、
 この機会に、我が国の森林・林業の現状について簡単に述べることをお許しいただきたいと思います。我が国は、国土の3分の2が森林であり、地形が急峻で、毎年多くの災害に見舞われてきたことから、国民の森林に対する期待は、木材の供給に加え、古くから国土保全機能であり、水源かん養機能でありました。さらに、近年、レクリエーションの場の提供、生物多様性の保全、二酸化炭素の吸収・固定等の森林の有する多面的な役割への期待が高まってきております。
 こうした状況に対応するため、我が国は、2001年7月、林業基本法を抜本的に見直し、新たに森林・林業基本法を制定し、森林の多面的機能の持続的な発揮を目指す政策の強化を図ったところであります。
 また、我が国は、地球温暖化防止に係る京都議定書を、昨年6月に批准したところであり、温室効果ガスの削減を行っていくために、活力ある森林の育成を図っていくこととしております。 
 
 議長、
我が国はこのような経緯を経て、今や森林・林業政策の基本を、持続可能な森林経営の達成と地球規模での環境保全の推進に置いております。
近年、違法伐採及び違法伐採木材の貿易が持続可能な森林経営を達成するための著しい阻害要因になっていることが認識されておりますが、我が国は、持続可能な森林経営の達成と地球規模での環境保全の推進という森林・林業政策の基本的考え方から、様々な国際会議の場において、違法伐採問題に取り組むことの重要性を強調してきたところであります。
 WSSDにおいては、森林法規の実行、違法伐採への対処、違法伐採木材の国際貿易における取扱い等、違法伐採への国際的な取組の必要性を強調した実施計画が採択されました。
 また、WSSDにおいては、我が国とインドネシアがイニシアティブをとり、他の関心を有する国や国際機関等にも参加を呼びかけ、アジア地域における持続可能な森林経営の推進のための枠組み「アジア森林パートナーシップ」を発足させたところであり、違法伐採問題への取組は、この枠組みの中でも進めていくこととしております。この枠組みの中には、違法伐採対策ガイドラインの策定・実施、木材追跡能力の開発、ラベリング等の証明制度の導入、違法伐採木材に関する地域的なデータの共有等の協力分野が含まれています。
 さらに、本年6月、我が国はインドネシアとの間で、合法伐採木材の確認・追跡システムの確立、違法伐採木材を貿易から排除する仕組みの検討等を中心的な内容とする「共同発表」・「アクションプラン」を策定し、両国大臣間で署名、公表したところであります。今後とも、この日本とインドネシアとの間での取組を先駆としつつ、二国間・多国間での協力や、アジア森林パートナーシップの活動との連携等を通じて、地球規模での持続可能な森林経営への取組を推進することとしております。
 
  議長、
 以上のような取組みと併せて、我が国としては、国内において蓄積された知識と技術を活用し、生産国における持続可能な森林経営に資するため、国際協力機構や国際協力銀行による協力、ITTO、国連食糧農業機関、国際林業研究センターなどの国際機関を通じた協力に取り組んでいるところであり、今後ともその推進に努めてまいりたいと考えております。
 とりわけ、ITTOについては、我が国が世界有数の木材輸入国であり、また、本部が当地横浜に置かれていることから、その活動を積極的に支援してまいる考えであります。
 
  議長、
  今次理事会において違法伐採問題等の諸問題について活発な議論が行われ、今後のITTOの活動にとり有益な成果が得られることを期待いたします。
  また、ITTOの事務局長をはじめ事務局職員の皆様が、この会議の準備に献身的に努力されたことに心から敬意を表したいと存じます。
 最後に、ITTOの更なる御発展を祈念し、私の挨拶とさせていただきます。
 御静聴ありがとうございました。