国際的な森林認証諸制度間の連携と協力に関する

SGECの考え方

緑の循環認証会議理事会

2005年(平成17年)630日 東京

 

 

1 はじめに(Introduction)

 

SGECは、20036月、日本で定着している森林計画制度などの基盤の上に、独自の「我が国にふさわしい森林認証制度」として設立されたものであるが、制度の骨格を規定する「『緑の循環』認証会議大綱」の中で、その国際性について「森林認証に関するグローバルな活動に積極的に参画し、国際社会と連帯していくなかでSGECのアピール活動を対外的に行」うことを、強調している。

本稿では、その方向性の下に、この10年ほどの、国際的な森林認証諸制度間の連携と協力に関する議論をふまえ、SGECの当該分野に関する基本的な考えを明らかにするものである。

 

 

2 国際的な認証制度間の議論の評価

 

90年代中頃以降、様々な森林認証制度が国際的に生まれるようになり、政府間や、民間同士の様々な枠組みにおいて、相互承認や各認証制度の評価手法、連携についての議論が行われてきた。その主なものは、@IPF森林に関する政府間パネル)におけるガイドラインの合意[1]、AIFIR(国際森林産業円卓会議)の森林認証相互承認の国際的枠組みの提案[2]、BWBCSD持続可能な発展のための世界経済人会議)による適格性閾値モデル[3]、CCEPI(欧州製紙産業連盟)による森林認証マトリックス分析[4]、D世銀WWFによるQACC(認証制度の包括的評価に関する調査表)[5]、ETFD(The Forest Dialogue)「森林認証の影響と評価の枠組み」調査報告[6]などである。

欧州北米の先進輸出国などを中心とした相互承認の取り組みの進展はあるが、環境団体も含めた包括的な連携の取り組みについては、初期の相互承認の野心的な取り組みは実現に至らず、また、制度間の違いを評価する客観的な仕組みを作り出すという現実的なアプローチも、未だ成果を上げるにいたっていない。

ただし、「複数の制度が将来にわたって並立してゆく」という現実を、諸制度間で認めあう中で、並立する制度間の対話のベースが積み重ねられてきたことは、一つの成果であると評価できる。

 

 

3 SGECの考え方

 

3−1 大綱での立場

 

「『緑の循環』認証会議大綱」では「森林認証に関するグローバルな活動に積極的に参画し、国際社会と連帯していくなかでSGECのアピール活動を対外的に行い、SGECの国際性をふまえ相互承認の仕組みを検討する。特に、森林・林業構造、自然・文化的条件に共通性が多く、経済・社会的にも密接な関係にある、近隣アジアの国や地域との連携に努めるものとする。」と記述されており。国際性を強調するとともに、アジアにおける先進国の認証機関としての立場を強調している。

 

3−2 SGECの関係者の期待

 

SGECという認証制度に利害関係を持つ関係者は、第一にこの制度によって自らの森林管理水準および自らの商品の履歴を消費者・購入者に情報提供する立場の森林所有者・流通加工業者、第二に自ら購入する商品の環境負荷を知ろうとする林産物の消費者・購入者、第三に日本の森林の環境的・社会的な機能に関心をもつ行政関係者・環境団体・一般市民、などである。

SGECの国際性に対する上記関係者の共通する関心事項は、「SGECが国際的な森林環境問題をふまえて形成されてきた国際的な諸認証制度の水準に比べて十分に高い水準にあるかどうかという判断基準と比較の結果がほしい」という点である。また、流通・加工の業者の一部は、他の認証制度の認証製品を今後日本市場において取り扱うとした場合、当該認証制度とSGECの関係が明確になっていた方が戦略を立てやすい、という点で国際認証を展開する一部の制度との相互承認に関心を示している。ただし、多くの業界関係者にとって、我が国の木材製品を欧米を含む世界市場で販売展開するという点についてのモチベーションが乏しいため、一部の制度との相互承認を進めるというインセンティブは必ずしも大きくないのが現状である。

 

3−3 国際認証諸制度間との連携・協力に関するSGECの3つの方針

 

以上をふまえて、国際認証諸制度との連携・協力についてSGECは以下の方針で取り組むこととする。

 

(1)国際的・客観的な制度評価の取り組みに貢献する

 

国際的に多くの認証制度が並立する中で、「相互に差異を認めながらお互いの立場を尊重する」見地に立ち、FAOITTOなどの国際機関や、The Forestry Dialogueなどのような関係者がバランスよく集まる場において、各国各地域の自然環境、市民社会、生活慣習、風土文化などダイバシティ(多様性)を尊重した、各国の森林認証制度が平等かつ公正な立場で発展することに努める。

また、将来の包括的な相互承認という展望を維持しながら、当面、客観的な評価を提供する仕組みをつくる国際的な作業に可能な限り貢献することとする。

 

(2)SGECの国際的な評価を求める

 

CEPI(欧州製紙産業連盟)の森林認証マトリックス、世銀・WWFQACC(認証制度の包括的評価に関する調査票)などで開発され提案されている、認証制度を客観的に評価する枠組みに対し、当該枠組みが多くの評価事例を積み重ねられていることを前提として、積極的にSGECの評価を求め、SGEC制度の普及と改善に資する。

 

(3)アジアでの認証制度との連携をはかる

 

特に東南アジア、東アジア地域の認証制度の進展が重要な課題と認識し、この地域の認証制度との情報交換を進め、できる限りの協力を行う。



[1] Intergovernmental Panel on Forests (IPF), “ Report of the Ad Hoc Intergovernmental Panel on Forests on its third session”, Para. 163(c), Geneva, Sep. 1996, E/CN.17/IPF/1997/2

[2] WG on mutual recognition between credible sustainable forest management certification systems and standards of International Forest Industry Roundtable, “Proposing an International Mutual Recognition Framework”, Feb. 2001

[3] World Business Conference on Sustainable Development (WBCSD), “Forest certification systems and the Legitimacy Thresholds Model (LTM)”, Oct. 2001

[4] Confederation of European Paper Industries (CEPI), “Comparative Matrix of Forest Certification Schemes”, Nov. 2000

[5] World Bank WWF alliance for Forest Conservation and Sutainable Use,” The Questionnaire for Assessing the Comprehensiveness of Certification Schemes/Systems (QACC)”, May, 2003

[6] Ruth Nussbaum and Markku Simula(2004),” Forest Certification: A Review of Impacts and Assessment Frameworks”