「貿易自由化の環境影響評価に関する検討会」(座長:山口光恒慶應義塾大学経済学部教授)の報告書についての意見(2003/1/1)

表記報告書について以下の通り意見を申し上げます。

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環境影響評価の目的を限定するのは不適切である
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報告書は、自由化の是非を論じるのではなく、予防・緩和措置を講じるために行うべきであると主張している。(11ページ)

このことについて報告書は、「貿易自由化は直接的な要因ではなく、貿易自由化に伴う環境問題は、一般に、そこに適切な環境政策が存在しないために生じるものであり」、影響評価の結果を受けて貿易自由化について問題のある/ないの評価を行うよりも、環境影響を予防・緩和するための措置を事前に講じるために行うもの、としている。

このように環境影響評価の目的を限定するのには次のような問題がある。
第一に、貿易規制が環境目的そのものの場合、その規制をはずすことと、環境への影響を別個に議論することは困難である。
第二に、国境措置が環境目的ではなくても結果的に、貿易自由化が環境に悪影響を与える場合、この影響が国内に限られる場合は、論理的に報告書の指摘は正しいと考えられる。しかし、これが、例えば熱帯木材輸入国の林産物の国境措置をはずすことが輸出国の熱帯林違法伐採を促進するというように、国外の環境に与える悪影響の場合は、必ずしもそういえない。なぜなら、不適切な環境政策は環境影響を受ける輸出国の問題であり、それを予防緩和する措置は輸出国内で行われるべきことであり、自由化を行う国が実施することができないからである。

このような可能性を考えると、環境影響評価を単に予防緩和措置を検討するという目的に限定するのみでなく、自由化そのものの是非を論じるためにも行うべきである。

以上

2002/12/27

藤原敬

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