「ウッドマイルズ」(木材総輸送距離)と地域材利用住宅

森林総合研究所 藤原敬

木材情報2002年8月号

 

1 イギリスの消費運動家ティムラングがFood Miles(フードマイルズ)という概念を提唱し、食料の輸送距離をなるべく少なくするという運動を進めているが、木材の輸送過程のエネルギー消費を少なくし顔の見える経営を実現するため、木材の輸送距離と木材の量を乗じたウッドマイルズという指標を提唱する。

2 世界の木材貿易の国別輸入量では米国がトップであるが、輸入距離と輸入量によりウッドマイルズを計算すると日本は米国の4倍のとなり、我が国の消費者にとってウッドマイルズの意味は大きい。

 

3 我が国の平均的新築住宅の建築で使用される木材の産地別使用量から住宅ウッドマイルズを計算すると、146kmm3となる。これを100として、それと比較したそれぞれの住宅建築のウッドマイルズの値を住宅ウッドマイルズ指数(HWI)とすると、近くの山の木ですべて建築した住宅は1となり全部北米材で建築した住宅は150となる。すべての住宅ウッドマイルズ指数はこの間に収まる。

4 日本の消費者が「家造り」という一生に一度か二度の重要なイベントの機会に、地域材利用の意義を確認し、地球環境に優しい消費選択を行うきっかけとしてウッドマイルズが重要な役割を果たす可能性をもっている。近くの山の木で家をつくる運動や、県産材の家づくりなどの施策の中に住宅ウッドマイルズ指数(HWI)の概念が導入され推進のための道具となることを期待したい。